栽培しやすいぶどうの種類
美味しいぶどうを育てるために、日本の風土に合うぶどうの種類をみてみましょう。一般的に米国種は病害虫に強く育てやすく、ヨーロッパ種は味はよいけれど、病害虫に弱いとされています。品種改良により作られた欧米雑種が育てやすく、味もよいため、人気が高いです。ヨーロッパ種栽培の最低温度は、冬季でマイナス15度、米国種、欧米雑種はマイナス20度です。
ここでは、育て方が易しい順に記載しています。
デラウェア(欧米雑種)の栽培
小粒で甘みが強く、欧米雑種のため、病害虫に強く、とても育て方が容易な品種です。冬季の最低気温がマイナス5度以上であれば、戸外で越冬が可能です。実と皮がスッと離れるので、食べやすい品種です。
ナイアガラ(米国種)の栽培
米国種のため、害虫、耐寒性が強く、香り高い品種です。一本で結実するため育てやすいでしょう。生食以外に、ジュースやワインに適しています。1粒5〜7gの中粒ぶどうです。
スチューベン(米国種)の栽培
中粒で甘みが強く酸味が少なく、米国種のため育て方が容易な品種です。ニューヨーク生まれで寒冷な気候を好みます。。日本では東北地方を中心に栽培されています。粒は3-5gで、皮と果肉の間に甘みと栄養が詰まっています。
マスカットベリーA(欧米雑種)の栽培
中粒で甘みと酸味が強い濃厚な味わいの品種です。米国種に比較して少々病気に弱いのが難点です。
ジベレリン処理をしたものはニューベリーAとよばれます。ジュースやジャムに適している他、凍らせてシャーベットにしても美味しい品種です。
巨峰(欧米雑種)の栽培
大粒で甘みが強い品種です。病気に弱く育て方が難しい部類に入りますが、ぶどうの王様と称され、とても人気が高い品種です。巨峰という名前は、品種改良をした研究所から見えた富士山に因んでつけられた登録商標です。
シャインマスカット(欧州種)の栽培
収穫までに3年かかり、欧州種のため病気に弱い品種です。味の良さから栽培に意欲を燃やす人が増加しています。育て方は難しいですが、上手に収穫できたら喜びもひとしおですね。摘果時に30〜40粒にすると収穫時の重さが450〜500gになります。
糖度が18ー20度もあり酸味は控えめ、香りはマスカットに似ています。ジューシーで上品な甘みに加え、皮ごと食べられるのも人気の理由です。
よいぶどう苗木の選定方法
ぶどうの苗は、病気に強い接木苗を植えると育てやすいです。苗の枝がしっかりしていて、芽の間隔が狭くしっかりした芽がついている苗木を選びましょう。根の状態を見ることができるなら、ひげ根(細かい根)が多い苗を選んでください。ぶどう栽培初心者の方は、育て方が優しい品種から始めることをおすすめします。
ぶどう栽培のタイムスケジュール
ぶどうの植え方や育て方の中でも大事な作業を月ごとにまとめました。各作業については、後で説明をしています。
1月〜2月
苗木の植え付け、植え替え、前定を行うのに適した時期です。寒いので、防寒対策をして作業をしましょう。
3月
苗木の植え付け、植え替え、芽かきを行うのに適した時期です。1〜2月に植え付け、植え替えができなかった場合は必ず3月中に行いましょう。
4月
開花前の時期です。水不足にならないように土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをしましょう。芽かき、花房の間引きに適した時期です。
5月
摘芯、花房の間引き、つるの誘引に適した時期です。花房が育つ前に行うと良いでしょう。
6月
つるの誘引、花房の間引き、ジベレリン処理に適した時期です。ジベレリン処理については、別途説明しています。
7月
花房の間引き、房作りは充実した実を栽培するために、必ず行いましょう。詳細は別途説明しています。ジベレリン処理には引き続き適した時期です。梅雨明け後に水不足にならないように、水やりを続けましょう。
8月
収穫の時期になりました。実の付け根の軸が茶色くなったらお待ちかねの収穫です。ふさ全体が色付き、とてもよい香りを放ち始めます。実はふさの上部から順に熟していきますので、先端の実が甘くなったら完熟です。
9月
収穫、追肥に適した時期です。水不足にならないように水やりをしましょう。
10月
収穫、地植えの追肥に適した時期です。水不足にならないように水やりをしましょう。
11月
苗木の植え付け、植え替え、地植えの追肥に適した時期です。購入した肥料の分量を守って追肥しましょう。水不足にならないように水やりをしましょう。
12月
苗木の植え付け、植え替えに適した時期です。
ぶどう栽培に適した土と肥料の準備
ぶどうが育てやすい果樹である理由の一つは、土を選ばないことです。最低「水はけ・水もちがよい」という条件を充せば、元気に育てることができます。
市販の土を配合する場合は、赤玉土70〜80%、腐葉土20〜30%で準備しましょう。
ぶどうの肥料
果樹の肥料には、大きく分けて2種類あります。化学肥料と有機肥料です。有機肥料は少し値段が高くなりますが、果実の甘みが強くなりますので、できれば化学肥料より有機肥料をおすすめします。
植え付けの時と、収穫後に肥料をやります。量は購入する肥料によって違いますので、購入した肥料の説明に従った量をあげてください。
ぶどうの鉢植えと地植え栽培について
ぶどうは鉢植えでも育ちますので、ベランダで楽しむことが可能です。軒下に鉢を置いて葉を日よけとして利用するのもよいですね。
地植の場合は、アーチや棚にする他、垣根や日よけとしても多く利用されています。
ぶどう苗の植え方
鉢植えの植え方
ぶどう苗の植え方は、準備さえしっかりできていれば決して難しくありません。苗の休眠中に植えることを守りましょう。
まず、鉢底に鉢底石を入れ、配合した土、肥料を入れます。根を広げた苗を乗せ、土を入れます。接木部分が埋まらない高さに調整します。土の表面から30cm残して、幹を切ります。支柱を3〜5本立てたら鉢底から水が流れるまでたっぷりと水やりをします。
植木鉢の選び方
一般的に果樹の植木鉢には、通気性が良く、根がまっすぐ伸びる余裕のある深さがある素焼き鉢をおすすめします。目安としては、2年目の苗木で10号鉢程度が適しています。
軽さではプラスチックの鉢が優位です。通気性、湿度過多になりやすいことから、プラスチックの鉢を使用する場合は、水やりを控えた育て方が必要になります。
地植えの植え方
深さ50cm・直径60cm程度の穴を掘ります。苦土石灰一握り、肥料を混ぜた土を戻す。根を広げて苗を植えます。接木部分に土に隠れないような高さで植えます。戻す土には水はけを良くするために、赤玉土・腐葉土を混ぜましょう。地表から60cm残して幹を切り、支柱を5本立てます。苗の周りに円形に土を盛り上げ、たっぷりと水やりをします。
ぶどうの前定
ぶどうの剪定は、木の冬眠時期に行います。ぶどうは新しい枝に花をつけますので、この作業は必須です。
1年目のぶどうの剪定
地植えのぶどうは、地面から60cm、鉢植えのぶどうは30cmの高さで切りましょう。
2年目以降のぶどうの剪定
短梢剪定
マスカットベリーAに適した方法は、2芽残して剪定する方法です。樹勢があまり強くない品種に適した方法で、他にはシャインマスカットにもこの方法が適しています。
中梢剪定
樹勢が中程度のナイアガラなどの品種に適した方法です。芽を4~5芽残して剪定します。
長梢剪定
デラウェアなどの品種は4〜6芽残して剪定します。また、巨峰などは、超長梢剪定といい、7〜8芽を残します。
ぶどう苗木への日当たりは?
ぶどうの育て方の重要なポイントとして、日当りは欠かせません。なるべく日当りのよい場所に植えつけましょう。鉢植えの場合は、移動して日光を当てる方法もよいですね。
ぶどうの水やり方法
植えつけた苗が根付いた後は、水は控えめに育てましょう。土の表面が乾いたら、たっぷりと水やりをしてください。
花が咲いた後の夏は朝と夕方にたっぷりと水やりをしましょう。この時期の水切れは、果実の生育に悪影響を及ぼします。
ぶどうの木の仕立て方
ぶどうはつる性のため、好みの樹形に育てることが可能です。つるを誘導しながらお好きな形に形作ることも楽しみのひとつですね。
行燈(あんどん)仕立て
鉢植えでは、果実を収穫しやすいように行燈に仕立てるとよいでしょう。柔らかいつるを少しずつ支柱に誘導し、針金や紐で固定しながら形作りましょう。育った花房が土に触れない高さに仕立てるのが理想的です。植え方は容易ですが、狭いスペースで風通し良く育てる仕立て方が少し難しいかもしれません。
棚仕立て
地植えの一般的な仕立て方です。ぶどうの果樹園では収穫しやすくするために少し低めの棚に仕立てています。棚にすると、確実に日当りが確保できて、収穫量も増えるので、スペースがある場合は、棚で栽培するとよいでしょう。植え方は、鉢、地植えどちらでも棚に仕立てることができます。
垣根仕立て
外部からの目隠しとして使用する垣根に仕立てる場合は、芽かき時に10本程度の枝を伸ばして仕立てます。植え方よりも誘引が少々難易度が高いでしょう。垣根として完成するには、3年程度かかります。また、この植え方は、ヨーロッパのワイナリーでの植え方として一般的です。
ぶどうの植え替え方法
地植えのぶどうには、特に植え替えは必要ありません。
鉢植えで育てているぶどうは、2〜3年に一度植え替えが必要です。鉢の中に根が一杯になってしまうからです。ぶどうの植え替え時期は、植え付けと同様に落葉期の11月〜3月の休眠中が適しています。
鉢植えぶどうの植え替え
まず支柱を取り、根を切らないようにぶどうを鉢から抜きます。次に根についている土を根を傷めないように崩したら鉢の中で一杯になっている根をハサミで切ります。次に使う鉢より一回り小さく仕上げましょう。
鉢底石を入れ、配合土と肥料を入れ、苗を置きます。配合土を鉢に入れます。植え替えが終わったらたっぷりと水をやり、2週間程度半日陰で養生し、徐々に日当りのよい場所に移動します。
ぶどう栽培で大切な芽かき作業
芽かきとは?
春になり、木の成長が始まると芽が動き始めます。良く見ると、同じところから二つの芽がでることがあります。木のエネルギーが分散されないように、二つの芽のうち一つを取りましょう。この作業は、「芽かき」と呼ばれ、美味しいぶどうの収穫のために欠かせない作業です。
1年目の苗の芽かき
植え付けて1年目の苗では、力強く芽吹いた芽を2〜3個の芽を残して芽かきをしましょう。無農薬で育てる場合には、害虫や病気で枝が枯れこむ可能性があるため、少し多めに芽を残した芽かきをおすすめします。取った芽は天ぷらにして食べると美味しいですよ。
2年目以降の苗の芽かき
ぶどうの苗のエネルギーは、先端に行くほど強くなります。2年目以降の苗では、先端に栄養が集中しないように、先端部の強い芽を芽かきし、新しい枝の根元に近い部分の力強い芽を残す芽かきが、苗全体のエネルギーのバランスを整え、各花房がうまく育ちます。
ぶどうの育て方で大事な作業
花房の間引き
新しい枝に房を一つ残すことを守ると、美味しいぶどうが食べられます。栄養の分散を防ぐためです。切るときに少し勇気がいりますが、よい結果を得るために必要な作業です。花房より後に伸びる枝には、10〜15枚の葉をつけておくと、実に栄養を十分に集めることができます。
摘果作業
ふさのでき始めに先端から3.5cm程度の蕾を残して、それより上の蕾を全て落とすことが必要です。全ての実に栄養をいき渡せるために必要な作業です。
摘果のヒント
美しい仕上がりのための摘果のポイントです。上部の粒は、上向きのものを残し、中部の粒は水平のものを残し、下部の粒は下向きのものを残します。この摘果で、ぶどうの全ての粒に均等に栄養が渡り、お店で見るようなぶどうの房を育てることができます。
袋かけ作業
虫や鳥の害を防ぐために袋かけは欠かせない作業です。また、ぶどうは、完熟前になると「ブルーム」という白い粉が実をおおう状態になります。このブルームが雨で流れないように、袋をかけます。
ジベレリン処理
ジベレリン処理は、植物ホルモンを使用して、ぶどうの種をなくしたり、粒を大きくしたりする方法です。今回お薬を使用する内容として一つだけ、ジベレリン処理についてお伝えします。
ジベレリン処理の方法
一般的にジベレリン、フルメットという薬剤が使用されます。いずれも植物性ホルモン剤で、使用に対し安全とされています。
- 1回目:コップに液を入れ、花が咲く前の花房をつけます。デラウェアは花の2週間前、大粒のぶどうは花が満開になった頃行う。
- 2回目:デラウェアは満開10日後、大粒のぶどうは満開〜満開後3日
栽培したぶどうの収穫時期
ぶどうの収穫時期は、一般的に7〜8月です。地域・種類により多少の違いはありますが、路地で栽培するぶどうは夏の終わりに収穫ができます。
ぶどうの保存方法
粒のまま保存
収穫したぶどうを一度に食べてしまわず、少しずつ食べたい時は、この保存方法が簡単です。そのままふさにつけたまま置いておくと、甘みが減少したり、カビが生えたりしてしまいます。実の上に少しだけ枝を残してハサミで切って、野菜室で保存すると、美味しいままで保存ができます。もっと長く保存したい方は、粒を平らに並べて冷凍保存すると1ヶ月くらいの保存が可能です。手間暇かけて育てたぶどうですから、長く楽しみたいですよね。
ジャムにして保存
収穫したぶどうでジャムを作ってみましょう。
1:ぶどう1房をミキサーにかけ、ペースト状にする。
2:ぶどうの重さの半分のグラニュー糖を1と一緒に鍋に入れ、火にかける。
3:弱火で約5分煮ると、とろみが出てくるので、火からおろす。
4:長期保存をする場合は、熱湯消毒した瓶に詰める。
*ぶどうの粒を3に足して作っても美味しいジャムになります。
ぶどう栽培の大敵
害虫
ぶどうの樹にも多くの害虫がやってきます。大切なブドウの樹を枯らさない為にもしっかりとした害虫対策を取りましょう。ここでは主な害虫を紹介します。
ブドウトラカミキリ
ブドウトラカミキリは5〜6月に新しい蔓に産卵します。春に幼虫の食害で枝が萎れます。毎日の水やり時や産卵期か冬の前定時に注意深く枝を観察すると見つけることができます。萎れた枝の下部や、膨らんだ枝を見つけたら、ナイフで枝を裂いてみて、中から幼虫が出てきたら捕殺しましょう。
ブドウスカシバ
ブドウスカシバは5〜6月に産卵し、翌年4月頃から幼虫の食害で枝が萎れはじめます。前定時や日々の水やり時、枝にヤニがついている部分があれば、枝の中に幼虫がいる可能性が高いので、発見した部分の下部で枝を切りましょう。
フィロキセラ(ブドウネアブラムシ)
フィロキセラはかつてヨーロッパのぶどうの木を全滅に追い込んだ害虫です。このアブラムシの害は、耐性のある米国産のぶどうに接木された苗木を植えることで防ぐことができます。新芽や葉の裏をよく観察し、幼虫を見つけたらこまめに捕殺しましょう。
ぶどうの病気
家庭で作るぶどうには、農薬を使わずに作りたいですね。ここではぶどうがかかりやすい病気とシンプルな防ぎ方をお伝えします。
べと病
べと病は、葉や花房に白カビを生じさせる病気です。
生育初期に湿度が高い日が続くと発生の可能性が高まります。白カビの発生を見つけたらすぐに切り取り、他にうつらないようにしましょう。
サビ病
サビ病は梅雨明けから秋への角の感想がもたらす病気です。梅雨の時期後期に葉の表面に黄色や黒い斑点を見つけたら、サビ病です。斑点が出た葉は速やかに切り取り、他に広がらないように処分しましょう。
黒とう病
黒や茶色の小さな斑点が葉や新しい蔓に発生する病気です。雨が多いと発生の確率が高まります。見つけたらすぐに切り取りましょう。
ぶどうに含まれる栄養
カテキンやアントシアニンがたくさん含まれるぶどうは、ポリフェノールの宝庫と呼ばれています。その上、最近話題のレスベラトールが含まれていることでますます人気が高まっています。レスベラトールもポリフェノールの一種で、活性酸素を取り除いてくれる優れものです。シミやシワのない美肌効果、老化防止に加えて、メタボリックシンドロームまで防いでくれるという研究結果まであるのです。美味しい上にこんなにたくさんのプレゼントをもたらしてくれるくれるぶどう、大ファンになりそうです。
まとめ
ベランダやお庭で日陰を作ってくれて、おまけにおいしい果実をつけてくれるぶどうは、家庭で育てる果樹の中でもとても人気が高い果樹です。今回はそんなぶどうの育て方をお伝えしました。植え方、剪定、芽かきなどの育て方の基本的なポイントを押さえると、確実に美味しいぶどうを収穫できますので、ぜひお試しください。
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