ムラサキシキブとは
源氏物語の作者で有名な、平安時代の女流作家「紫式部」と同じ名を持つ魅力的な植物、ムラサキシキブについて、ご紹介してまいります。この植物に、なぜ彼女の名前がつけられたのでしょうか。
Japanese Beautyberry
ムラサキシキブは英名で“Japanese Beautyberry”といいます。直訳すると、「日本の美しい実」。原産地が日本、朝鮮、台湾だと知ると、その容姿が和の雰囲気をもっているのもうなずけますね。紫色が持つ高貴なイメージも、雅やかな和の趣を感じさせます。
元は「ムラサキシキミ」だった
名前の由来は平安時代の女性作家「紫式部」だが、この植物にこの名が付けられたのはもともと「ムラサキシキミ」と呼ばれていたためと思われる。「シキミ」とは重る実=実がたくさんなるという意味。
「シキミ」がたくさんなる実を表すということで、合点がいきます。ムラサキシキブの紫の実は、まるで小さなブドウを寄せ集めたように房状につくのです。
ムラサキシキブの花言葉
ムラサキシキブの花言葉は、ある一人の女性の性格がそのまま反映しているといわれています。その魅力的な女性とは、誰なのでしょうか?名前から、想像がつきますね。
「上品」「聡明」「愛され上手」
花言葉は、「上品」「聡明」「愛され上手」。源氏物語の著者として有名な平安の女性作家、紫式部は、豊富な知識を持ちながらそれをひけらかさない、控えめで上品な性格だったと推測されています。その紫式部の性格がそのまま、花言葉となったのでしょう。
ムラサキシキブの実
花言葉どおり、とても綺麗で上品な紫色の実ですが、食べられるのでしょうか?いったい、どんな味がするのでしょうか。
実は食べられる?
紫の実は食べられますが、好んで料理に使うほど美味しい味ではありません。少し甘みがある程度です。お子さんが小さければ、お庭でおままごと遊びに使うのに採ってあげるとよいでしょう。きれいな色なので、大喜びされますよ。
鳥の大好物
秋になり紫の実が枝を覆いつくすようになると、鳥たちが実を食べに集まってきます。ムラサキシキブの実を食べに来るのは、スズメ、メジロ、ヒヨドリ、ウソなどです。小鳥たちが実をついばむかわいい姿を見るために、庭植えするのもいいですね。
実の使い道
とても小さくてかわいい紫の実には、どのような使い道があるのでしょうか?
ドライフラワー
その美しい紫色の実は、ドライフラワーとして専門店でも販売されています。ご自分でドライフラワーにされる場合は、熟した実が少し触っただけでぽろぽろ落ちることがありますので、注意して吊るしましょう。
ハーバリウム
実の色の美しさを活かして、今注目されているハーバリウムにムラサキシキブを入れて、手作りしてみるのもいいですね!花言葉と同じ「上品」な作品に仕上がることでしょう。色味を紫系だけにしぼると、より洗練された印象に仕上がります。
秋の花瓶
混み合っている枝を整理するついでに、実のついた枝をカットして花瓶に秋の花と一緒に飾りましょう。飾っている間に自然と水揚げできますので、その後、挿し木にするのもアイデアです。
このような一輪挿しのスタイルが、最もムラサキシキブを引き立てます。よく熟したムラサキシキブを、葉を落とした状態で、焼き物の壺に一枝だけ。それだけでじゅうぶん、秋の深まりを感じさせる空間が生まれます。こちらの写真の壺は備前焼き、添えられた大きな葉は深紅の縁取りが美しいドラセナです。
生け花
ムラサキシキブは、生け花にも活用されています。秋を感じさせる紫色と、動きのある枝の形が好まれているようです。ただし、実がぽろぽろ落ちやすいので気をつけて触る必要があります。
アクセサリー
なんと!ハート型のピアスの中に閉じ込められているのは、ムラサキシキブの実です。確かに、大きさがビーズやパールなどのアクセサリーパーツと同じぐらいですね。こうして閉じ込めることで退色や腐敗などの心配も軽減します。
リース
よく、玄関ドアにナチュラルフラワーのリースを飾っているお宅を見かけます。クリスマスシーズンだけでなく、季節の花をリースにアレンジして、家の顔である玄関を飾るのです。秋にはぜひムラサキシキブの枝でリースを編んでみてください。秋色の美しい紫のリースが、人目を引きます。
ムラサキシキブの植え方
実の色が魅力で、庭木として人気の高いムラサキシキブ、その植え方や植え替えについて学んでいきましょう。
植える場所
南の庭の花壇に植えていますが、5年間順調に成長しています。午前中によく日の当たる東南の花壇でもよいでしょう。真夏の暑さにも耐えますので、植え替えの際にもとにかく日当たりの良い場所を確保してあげるようにします。
植え付け
2月ごろが植え付けの適期です。苗で購入した場合は、二回りほど大きい鉢を用意します。赤玉土2に腐葉土1の割合で混ぜ込んだものを鉢に入れて、植え付けましょう。地植えの場合は深い穴を掘り、庭土に完熟堆肥を混ぜ込んで植え付けます。
用土
通気性と保湿性を併せ持つ、黒土に腐葉土を混ぜた土が適しています。普通の庭土のままでは酸性土壌であることが多いため、植え付けや植え替えの際はpH値の高い弱アルカリ性の完熟堆肥をたっぷり混ぜ込んでから、植えることをおすすめします。
ムラサキシキブの育て方
季節ごとの育て方のポイントをご説明いたします。ムラサキシキブの育て方は、決して難しくはありません。ガーデニング初心者の方でも、まず失敗することはないでしょう。
春の育て方
地植えの場合は特に必要ありませんが、鉢植えの場合は春に置き肥を施します。挿し木をして増やす場合は、前年に成長した太い枝を使用します。簡単な増やし方「株分け」をするなら、春が適期です。ムラサキシキブには、株分けや挿し木という増やし方があります。
夏の育て方
鉢植えの場合は、水切れに注意しましょう。耐暑性はある方ですが、完全に乾燥してしまうと根が弱る可能性があります。地植えの場合でも、真夏は早朝にたっぷり水をやって保水することが大切です。日が昇ってからだと水がお湯のように熱くなるため、水やりは涼しい早朝に済ませます。
初夏に花が咲きます
6~7月は開花時期です。花言葉どおり上品で繊細な花が、実のなる場所に咲きます。とても小さな花なので、遠目では気が付かないくらいです。この花が咲き終わった場所に、あの紫色の実をつけます。
秋の育て方
秋は実がなるので、鑑賞価値が最も高い季節です。実のつき始めは薄い緑色で、熟してくると濃い紫に変化します。房なりの実のグラデーションがきれいです。十分に熟した後は、自然とぱらぱら地面に落ちます。
冬の育て方
2月頃、寒肥を施します。春から夏にかけて枝がぐんぐん伸びますので、冬の間に伸びすぎた枝を剪定しておきましょう。全体のバランスを見ながら、整える程度でじゅうぶんです。剪定した枝を挿し木にすると、無駄がありません。
盆栽として育てる
盆栽仕立てにすると、ムラサキシキブの美しさがさらに芸術的なものへと昇華します。こちらは「吹き流し」という剪定方法です。風に吹き流されたような様子が表現されています。
ムラサキシキブを苔玉の盆栽仕立てにされています。このような育て方をするには、まず春の株分けで、小さな株を選り分けることから始めます。剪定で小さく仕立て、小さな秋の世界を表現しましょう。
ムラサキシキブの剪定
剪定となると、初心者の方は勇気がいるものです。どんなタイミングで剪定するのが適しているのか、解説してまいります。
冬に剪定
ムラサキシキブの落葉が始まったら剪定します。冬の寒い時期、2~3月がおすすめです。ただし、樹形を整えるための剪定なら特に時期は選びません。夏に剪定したからといって、枯れる心配はないのです。
枝が重くなったら剪定
9~10月にかけてびっしりと房状に実がつきます。光沢のある、鑑賞価値の高い美しい実です。たくさんの実がなるため枝先が重く垂れ下がり、地面につくことがあります。そんな時は、少し枝先を剪定してバランスを保ってあげるとよいでしょう。切り枝は挿し木にしてもよいです。
ムラサキシキブの冬越し
ムラサキシキブは耐寒性に優れた植物で、冬越しには何の問題もありません。積雪や、霜に当たっても平気です。
ムラサキシキブの植え替え
地植えの場合は、特に植え替えの必要はありません。ムラサキシキブは非常に頑健で大きく成長するため、鉢植えの場合は1~2年に一回、ひと回り大きい鉢に植え替えた方が無難です。
ムラサキシキブの増やし方
増やし方にはいくつかの方法があります。最も簡単な方法は、挿し木です。その年に成長した丈夫な枝を選んで剪定し、挿し木用の土に植えておきます。根が出てきたら、育てたい場所に植え替えます。
もっと簡単な増やし方
挿し木というと、挿し穂は専用度に植え替え、日陰で管理するものですが、切り取った枝を直接半日陰の地面に差し込んでおくだけでも根つくことがあります。この方法は、ムラサキシキブが欲しい場所に直接増やすことができるので、簡単です。
ムラサキシキブの育て方:まとめ
耐寒性・耐暑性に優れ病害虫の心配もほぼ無用なムラサキシキブは、初心者の方にも育てやすい植物です。繊細な花は夏に、美しい実は秋に鑑賞することができます。植え方・育て方・増やし方のコツを覚えて、ぜひお庭に取り入れてみてください。
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