ミズウオってどんな見た目?
魚類の中でも独特な容姿を持った深海魚のミズウオは、一度その特徴を覚えてしまえば、その後は見分けができやすい魚です。
巨大な背びれ
最大の特徴と言えるのが、怪獣やバショウカジキにも通じるような形の、ミズウオの背中の全体に立っている背びれ。黒っぽい色合いをして、歯ブラシのようなギザギザカットです。これは体長の3分の2の長さに達し、広げるとミズウオ本体と匹敵する面積があります。
細長く巨大な体
ミズウオは近海の根魚よりもずっと大きく、細長い外観が目を引きます。その成体は口の先から尾びれの先まで、1.5メートルを超えています。ミズウオは大きくなると、全長2~2.5メートルほどまで成長します。全体に厚みがなく、平べったい印象です。
大きな口と鋭利な歯
ミズウオの成体の口は、人の手を飲み込むほどの大きさとなります。口の中には犬歯よりも長く鋭利な長い歯が何本か出ているのが目に付きます。この口からは、一度食いついたエサは逃さないというミズウオの意思を感じられ、巨大背びれと合わせてやっぱり怪獣にしか見えません。
うろこがない銀の光沢
この魚にはうろこがどこにもありません。ギラギラとした銀色の光沢をもち、若干黒や青の色が入った、ツルツルとした肌をしていますが、触ってみるとぶよぶよとして水分と弾力が感じられます。これは大食らいのミズウオが、胃の膨らみを妨げないためのやわらか進化なのです。
ミズウオの種類
ヒメ目ミズウオ科
このミズウオ、ヒメ目ミズウオ亜目ミズウオ科の魚で、ヒメ科と呼ばれるずんぐりとした顔の魚の仲間に含まれています。深海に適応したために、体は他のヒメ科とは似ても似つかない、独特な進化を遂げました。
ミズウオダマシ
ちょっとミズウオに似ている見た目の近縁種に、ミズウオダマシという魚がいます。これはミズウオ同様に細長く鋭利な歯を持っていますが、背ひれがなく、巨大なサンマのようにも見える種類です。ミズウオダマシには、くれぐれもダマサれないでください。
ミズウオの名の由来
ミズウオの名
元来は静岡県のあたりで、水魚=ミズウオと呼ばれていました。それがいつしか全国的な名称になったのが、ミズウオの由来です。これに加えて、神奈川県小田原市の国府津あたりでは、ミズサワラ(水鰆)の名で呼ばれていました。この魚は、水とは切っても切り離せないようです。
水分の多い体なので
ミズウオがどうして水魚と呼ばれているか、その理由はミズウオの水分量に関係しています。他の魚と違って水分を多く含んでおり、こんにゃく状の肉体を持っているため、調理すれば身から水分がしたたり落ちて止まりません。多くの水を含む魚なので、ミズウオというわけです。
岸に上がると雨が降る?
静岡県の駿河湾のあたりの古い言い伝えに、ミズウオが海辺に打ち上げられると、2~3日後には雨が降るという話があります。雨が振っている日の2~3日前には、もしかするとミズウオが打ち上げられていたのかもしれませんよ。
ミズウオの生息地
ミズウオが確認される海域
日本の近海では、北海道以南の温暖な海域を好んで、太平洋、日本海、東シナ海などの広範囲で生息が確認されます。そして日本列島からはるか遠く離れているインド洋、大西洋、地中海など、世界中の深海域にも同じ種類のミズウオが生息しています。
生息している水深
普段の成体のミズウオは、水深900~1,500メートルまで潜っているのが通常です。しかし深海魚と言っても、ミズウオは比較的に浅い海まで顔を出す生態があります。稀に海面近くまであがってきているのです。
ミズウオの大食いな生態
見境なく食いつく貪欲な生態
ミズウオは目の前にやってきた生物には、魚だろうがイカだろうが、確認せずになんでも鋭いお口で食らいついて丸呑みにしてしまいます。時には自分より大きな魚に食らいつく、大食い根性を発揮します。ミズウオの食事面では、貪欲で見境なしの生態があるのです。
ゴミまでむさぼる生態
そんな見境なしのミズウオの生態が影響して、近年では海に漂うビニールゴミまでも捕食している個体も見つかっています。口から入ったビニールやプラスチックは消化されず胃に残り続けるため、他の魚を消化できず、また腸管に詰まるなどで死ぬ個体が見つかっているとの話です。
ミズウオは売ってない
見た目がごっついミズウオですが、ぜひとも試食してみたいという好奇心が湧き上がります。しかしそうは問屋がおろさないといった状況が待ち受けているようです。
食用として見られないミズウオ
ミズウオは一般的にも、商業的にも食用として見られてはいない魚です。その理由は捕獲される個体数が少ないということや、料理すればクセが強く、商売にならないという理由が大きいと考えられます。ミズウオを頻繁に食べたり手にする人も、あまりいないと考えられます。
スーパーでも市場でも見かけない
そのためにミズウオは全国の有名スーパーはもちろん、商店街の魚屋や、名のある漁港の魚市場でも全く見かけることがない魚です。幻の魚と言って差し支えないですが、すごく美味しいと評判なわけでもないので、仮に捕獲されても高い値段が付けられることはなさそうです。
ミズウオは釣れる?
ではミズウオを釣り上げれば良いのではないか?という回答に行き当たりますが、釣れるかどうかは運任せといった感じになります。
稀に釣れることがある
ミズウオが生息しているのは、多くの場合は水深700メートルよりも深い、深海域です。そして多くの人が釣りをするのは、水深数十メートルまでの表層域なのが実情です。そのため、ミズウオを釣り上げる場面に遭遇するのも、稀なケースと言えます。
深海狙いで
船の上から、アカムツやクロムツといった深海魚狙いのタックルで、稀にミズウオが釣れることがあります。その場合、電動リールや胴突仕掛けを用いて釣れているようです。
ショアなら海が荒れた後に
ショアからミズウオを釣ってみたい場合は、海が荒れた日やその翌日が狙い目です。浅い海で普通の根魚の釣りをしていると、稀にヒットすることがあります。
ミズウオを拾う?
ミズウオを海岸で拾ったという人が、稀に見かけられます。太平洋では、海が荒れ波の高い日に、混乱して弱ったミズウオが打ち上げられることがあるのです。海が荒れている日に海岸に行ってみれば、新鮮なミズウオをゲットできるかもしれませんよ。
ミズウオの味や食感とは
食べた経験のある人が少ない、ゲテモノ呼ばわりされるミズウオですが、一体どんな味や食感があるのか、なんでも食べたい食通としてみれば気になるところです。
こんにゃくやゴムのような食感
生のミズウオを口に含んでみれば、生臭さはあるも、身は柔らかく弾力のある食感を得られます。その食感はこんにゃくのような、ぐにゃっとした状態に例えられます。
ミズウオの味
生の新鮮な状態のミズウオを食べてみれば、その味は水っぽく薄く、食感だけでなく味自体もこんにゃくであるとか、アマエビの刺し身と例えられます。若干生臭いのであまり評価は高くないミズウオですが、焼き物や唐揚げにすることで、美味しくなる食べ方も存在しています。
熱を加えると堅く縮む
火を通すことによって身が引き締まって食べやすくはなりますが、料理によってはゴムのように固く縮んでしまい、食べづらくなってしまうのが、ミズウオの身です。茹でると食べられないほどに身が引き締まります。火力を使用した食べ方をするなら、調理方法が重要になります。
ミズウオの捌き方
頭とひれと内臓の除去
巨大なミズウオですが、捌き方については他のよく見かける魚と大差ありません。まず邪魔な巨大な背びれ、頭部、内蔵を取り去ります。巨大な黒い胃袋を取り出すと、中には何らかの魚が入っていることがあるので、興味があれば中身を確かめてみてください。
皮を引く
ミズウオにはウロコがなく、ぶよぶよとした肌触りなので、ウロコを削る作業の必要がありません。通常はミズウオを刺し身で食べる場合には、皮を引いて綺麗な白身だけにします。皮を付けたままにすると生臭さが強いだけなのです。
三枚におろす
巨大な個体の場合、三枚におろす作業は一苦労となります。ミズウオの全身の身は、大きさに応じて3分割や4分割にしてから、刺し身や煮付けにする部分だけ三枚におろします。大きいほど捌きがいを感じられそうです。
ミズウオの料理①
ミズウオの刺し身
【ミズウオ/刺身】
— 海鮮料理bot (@sea_foodbot) August 17, 2018
これはマジでやばい。生臭い蒟蒻ゼリーに骨を混ぜた感じ。pic.twitter.com/fW4STFZUOX
ゲテモノ道を進む人が一度は試してみたくなるのが、ミズウオの刺し身です。作った瞬間から水がジワジワ出てきて、生臭さのある刺し身ですが、食べてみた気持ちは収まりません。ただあまりにも水がじわじわ滲み出て来るために、寿司には向いていないでしょう。
刺し身のレシピ
三枚におろして皮を引いたたミズウオの白身は、適当な大きさに切り分けます。腹側の身は針のむしろのように小骨が多いので注意したいところ。しかしお皿に盛り付けている間にも、すぐに水が皿に溜まっています。生臭さを消すレモン、わさびなども忘れてはいけない材料です。
ミズウオの炙り
刺し身にするなら、美味しさアップのために炙りにする食べ方があります。バーナーを用いて、ミズウオの皮や身を炙るのです。その香ばしさが加わっ、て一味違ったミズウオの刺し身となります。
ミズウオの料理②
ミズウオの塩焼き
極めて簡単な食べ方の代表格が、ミズウオの塩焼き。小骨が大変多い魚なので、食べる時には喉に刺さらないよう気をつけたいですが、塩焼きにすると身が引き締まった、食べやすい食感となります。塩焼きはミズウオ料理の中でもハズレがない食べ方としておすすめできます。
ミズウオの塩焼きのレシピ
適当にぶつ切りにしたミズウオの切り身は、ひれを取って皮はそのまま付けた状態で構いません。ミズウオの全体に粗塩を適量まぶしたら、グリルで適度に焼き上げます。
焼き加減の調整
ミズウオは全体に熱を加えすぎてしまうと、当初よりも身がかなり縮んでしまうという特徴を持っています。したがってグリルは強火にし過ぎないことや、あまり長時間焼き過ぎないことが重要です。それさえクリアすれば身が引き締まって焼きイカのような食感のミズウオが味わえます。
ミズウオの料理③
ミズウオの唐揚げ
最後にミズウオの唐揚げ。コラーゲンがすごい pic.twitter.com/gYGNw58mtp
— まて╰U╯かい (@matekai1102) April 30, 2016
小骨を気にせずボリボリとした食感の食べ方ができるのが、ミズウオの唐揚げ。酒の肴としても今夜のおかずとしてもよろしく、熱を加えると身が縮んで固くて食べられないという問題を解消できる食べ方にもなります。
ミズウオの唐揚げのレシピ
から揚げ粉や片栗粉などの粉を用意します。三枚におろしたミズウオは塩コショウして、粉を付けて油で揚げます。ミズウオの身は油で揚げるとかなり縮んでしまいますが、よく揚げることによって固さがなくなり、小骨も余すところなく食べられます。
いつか出会いたいミズウオ
なかなかレアリティに満ちた大食らいの魚ミズウオは、何やら興味をそそられてしまう深海魚でした。偶然釣れて、偶然拾って楽しく、意外に普通の食べ方でも美味しさを齎してくれるミズウオには、いつか出会ってみたいものです。
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