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登山靴の寿命
登山靴は道具です。インテリアとして部屋に飾っておくために購入する事は稀でしょう。道具として購入したからには、実際に荒れた登山道を歩き、摩耗しながらあなたの足元を支えてくれているはずです。履けば履くほど足に馴染んで最高の相棒になりますが、それでも寿命は訪れます。
寿命は3年から5年程度
一般的に、登山靴の寿命は3年から5年程度と言われており、使用頻度によって変わります。一番傷みやすいのはビジネスシューズやスニーカーと同じく、靴底のかかとやつま先で、岩場やガレ場でグリップを発揮しながらすり減ってしまいます。靴の内側も汗を吸ったり吐き出したり常に仕事をしています。すり減って溝がなくなった登山靴や、内側がボロボロになった登山靴は危険ですから、「そろそろ寿命かな」となる訳です。
登山靴の修理は可能なのか
登山靴はそこそこ「高価なシューズ」の部類に入ると思います。それにせっかく足に馴染んできたのに、靴底のすり減りや、割れただけで捨ててしまうのはもったいない。捨てるまでもないけど、内側の破れやほつれが気になる。何とか修理して履くことはできないでしょうか。
修理は可能
結論から言うと修理は可能です。靴底やかかとの減りを修理して、もっと長く履くことが可能です。ただし条件が2つあります。1つは日頃の手入れや保管方法が適切であること。もう1つは、信頼できる品質で製造された登山靴であることの2点です。この条件をクリアすれば、よほど特殊な登山靴でなければ修理は可能と言えます。逆に、ディスカウントショップで格安で販売されているような登山靴は、修理に対応できないことが多いと言えますね。
簡単な修理は自分でも可能
靴底が部分的に割れた場合や、ちょっとしたかかとのすり減り程度なら、自分でも修理ができるかもしれません。自分で修理できれば料金も時間も節約できます。あとでご紹介しますが、修理キットや接着剤が市販されています。
登山靴の状態をチェック
登山に出かけられる前に、まずはあなたの登山靴の状態を確認しておきましょう。仮に修理を依頼するにしても時間や日数がかかりますので、日頃から状態をチェックしておく必要があります。チェックする箇所は大きく分けて2つあり、靴底とアッパーです。アッパーとは靴底より上の甲の部分を指し、靴の内側も含みます。
靴底のチェック
靴底がもっとも傷みやすい箇所で、はがれや割れがないか確認します。その中でも重点的にチェックすべき箇所が、かかととつま先です。かかとは着地した際に体重を受け止めてくれますし、つま先は石や木にぶつけたりと特に減りやす箇所です。目安としては、溝が目に見えて無くなっていたり、2〜3重の靴底の「ゴムの層」を超えて磨り減ったりしている場合は注意です。すぐに修理に出しましょう。
靴底のひび割れ
目視でチェックした次は、登山靴を屈曲させてみて下さい。細かいヒビ割れが靴底に広がっていませんか?靴底をよく観察して、もしひび割れが広がっていたり、ボロボロと靴底が崩れたりした場合は要注意です。ひび割れは靴底のゴムの劣化が進んでいる証拠です。特にボロボロと崩れてしまうようなら、後述する「加水分解」を起こしているかもしれません。登山中に靴底が割れたりはがれるかもしれませんので、使用を中止してすぐに修理に出しましょう。
アッパーや内側のチェック
靴底をチェックしたら、今度はアッパーや内側のチェックです。傷みやすいのはインソール、靴の内側、金具類、マジックテープ、甲ゴム、靴紐などです。インソールや靴紐は自分でも簡単に交換できますので、登山前にチェックしておきましょう。もしかたら、かかとの内側や親指の付け根あたりがすり切れているかもしれません。完全に修理ができなくても補強可能な場合もありますので、修理店やメーカーに問い合わせて見ましょう。金具やマジックテープも同様です。
加水分解について
靴底のトラブルで起こりやすいのが「加水分解」と呼ばれる症状です。一度起きてしまうと、市販の修理キットや簡単な修理では元に戻らず、靴底を全て交換しなければなりません。登山靴の内側も加水分解を起こすことがあります。これは登山靴だけではなく、スニーカーやビジネスシューズでも起こる症状です。
原因はポリウレタンの劣化
写真のように、靴底がボロボロに崩れた状態が加水分解です。これは靴底に使われる素材に原因があります。靴底に使われる素材には、合成ゴム、EVAスポンジ、ポリウレタンなどがありますが、ポリウレタンが経年変化により水分と反応して劣化するのです。経年変化ですから、履く履かない関係なく劣化が進み、素材の特性上避けられません。また靴の内側にポリウレタンが使用されている場合も、同様です。
靴底修理について
市販の修理キットでの修理、かかとやつま先だけ部分的に修理する方法、靴底を全て取り替える修理など、靴底の修理にも種類があります。靴底の減りの具合によって、部分的な修理で済むのか交換が必要なのかを判断します。特に減りやすい、かかとやつま先を小まめに修理した方が靴底全体の寿命をのばせます。
オールソール
靴底修理の中でも、靴底全体を交換する修理をオールソールと呼びます。靴底を新品に取り替えるので、まるで新品のような性能がよみがえります。靴底全体がすり減り交換が必要な頃は、自動車でいう慣らし運転が終わったころです。足にちょうど馴染んできたころですね。料金は相場で10000円〜20000円ほど、時間もかかりますがオールソールをする価値は十分にあります。
靴底の種類
登山靴の種類は沢山あり、それだけ靴底の種類も多いです。合成ゴムやポリウレタンを使用した底が大半ですが、中には靴底にエアーを入れたり通気性を持たせたり多様です。それぞれの登山靴にあった靴底で修理しますが、その中でも有名なVibram(ビブラム)社の靴底をご紹介します。
ビブラムソール
1937年にイタリア人登山家、ヴィターレ・ブラマーニ(VITALE BRAMANI)氏によって設立されました。氏は1935年に登山仲間を事故で亡くしており、それをきっかけに加硫ゴムを使った合成ゴム靴底を開発し、それまでの鋲を打った革製の靴底(革底は滑りやすい)を駆逐しました。現在では合成ゴム製のビブラムソールが登山靴の主流になっています。
修理の依頼方法
靴底の減りや割れた場合、どこに修理を依頼すればよいでしょうか。
登山靴メーカーへ依頼
1つは登山靴メーカーに修理を依頼する方法です。ここではmont-bell(モンベル)を例にご紹介します。他メーカーでも、依頼方法に大きな違いはないでしょう。
モンベルカスタマーサービスの場合
商品の状態を正確に把握することができないため、電話やメールでの見積もりはお受けしていません。実物を下記のモンベル・カスタマー・サービスまでお送りいただければ、修理の可・不可や料金、修理に要する日数などを折り返しご連絡します。また、モンベルストア各店およびお買い上げいただいたお店へ直接お持ちいただいても結構です。修理品をお送りいただく際には、できるだけ汚れなどを落していただくようお願いします。また、破れなどが数カ所にわたる場合などは、テープなどで修理箇所を明示していただきますようお願いします。
モンベルカスタマーサービス
住所:〒550-0013 大阪市西区新町2丁目2-2
TEL:06-6531-3544
FAX:06-6531-4055
修理店に依頼
登山靴メーカーに依頼して修理ができない場合も、もちろんあります。その場合は靴修理店に相談してみてください。断られた修理でも、代替えの靴底やパーツを利用するなどして対応できる場合があります。また靴底の部分的な減りや割れた場合は、修理店の方が時間も料金も抑えらるかもしれません。
信頼のある業者に依頼する
あなたの大切な登山靴を預けるのですから、信頼できる業者を選びましょう。とは言っても、靴の修理は特殊な世界で一般の方には業者の良し悪しは分かりにくいですよね。業者を選ぶ目安として、こちらの希望をしっかり聞いてくれる。店内の整理整頓が行き届いている。修理の内容や可否、料金など納得できる説明をしてくれる。このような業者を選べば、まずは安心できるでしょう。当たり前のことのようで、徹底できていない業者も中には存在します。
実際の修理の工程
それでは、実際にどのような手順で修理するのかご紹介しましす。
靴底を剥がす
まずは傷んだ靴底をはがすところからスタートです。電熱器にかけて、ゆっくりと靴底を温めます。そうすると接着剤が緩み外しやすくなるのです。しっかり温まった状態で、他の部分を傷つけなように慎重に工具ではがしていきます。
靴底を接着する
新品の底と靴底をはがしたアッパーを、接着材がしっかり効くように下処理をします。アッパーはバフ掛けして古い接着剤を落としたあと、接着剤を塗布して乾燥。新しい底は処理液と接着剤を塗布して乾燥させます。十分に乾燥したあとに貼り合わせ、圧着機で圧力をかけます。
コバを仕上げる
最後に新しい靴底のコバを整えます。大きさを揃え、はみ出した接着剤や汚れを除去し、塗料を塗って完成です。
靴底修理にかかる時間・料金
実際に修理を依頼した場合、どのぐらいの料金や時間がかかるでしょうか。
料金
メーカーや修理店、また登山靴の製法や状態によって料金は大きく変わります。靴底を全て交換するオールソールで約10000円〜20000円ほど。かかとやつま先の部分補修で、両足で約3000円ほどです。依頼するメーカーや修理店で料金の見積もりを出してもらいましょう。
時間
かかとやつま先の部分修理であれば、店頭でその日のうちに修理できる修理店もありますが、オールソールなど複雑な修理になれば、1ヶ月以上かかる場合もあります。どちらにせよ、登山靴を預かって丁寧に修理してもらった方が安心です。修理にはそれなりの時間や日数がかかるものと考えて、日頃から登山靴の点検をしておきましょう。
登山中に靴底が割れた!はがれた!
入念に登山靴のチェックをしたつもりでもトラブルが起こることがあります。中でも厄介なのが、登山中に靴底が割れたりはがれること。現代人は靴がないと山の中を歩けません。顔面蒼白になってしまうかもしれませんが、まずは落ち着いて。応急処置を施して何とか歩ける状態にしましょう。
とにかく歩ける状態にする
こんな時に役に立つのが、ガムテープ・針金・テーピングテープです。どれか1つはザックの中に忍ばせておきましょう。方法はとにかく靴底とアッパーを固定すること。ガムテープや針金でぐるぐる巻きにしましょう。これだけでも、はがれた状態よりは歩けるようになります。
即刻下山する
応急処置の後は下山です。安全に早く下山できるルートを選定して下さい。あくまで応急処置ですから、靴底の耐久性は望めません。またいつ靴底がはがれてもおかしくない状態です。そんな状態で登山を続けられますか?「せっかく遠くまで来たのに」「山頂までもう少しだから」、なんて声が聞こえてきそうですが、関係ありません。タクシーも病院もない山中で事故が起きてからでは遅いのです。
靴底を自分で修理する方法
ちょっとした減りやはがれの修理なら、比較的簡単で自分でも修理しやすいです。料金も抑えられますし、手先の器用な方や日頃から登山靴のお手入れをされている方は、自分で修理してみようと考えられるかもしれません。そんなあなたのために、便利な靴修理キットが市販されています。
すり減った靴底の修理
靴底修理キットの中でも定番。シューグーは1978年に日本で発売が開始された靴底の補修剤で、ペーストとヘラのキットで販売されています。写真のように靴底のかかとやつま先に塗布し、すり減りをり補修します。ペーストは24時間で乾燥、合成ゴムになります。
使い方は簡単で、塗布する面をヤスリなどで汚れを落とし、キット付属のヘラでペーストを盛ります。その後24時間乾燥させて完成です。
はがれた・割れた靴底の修理
割れた靴底やはがれを修理するときの注意点は、素材にあった接着剤を選ぶことです。靴底は歩きに合わせて屈曲し足の動きに追従します。つまり接着剤が硬化したあとでも、「柔軟性」が必要なのです。柔軟性のない瞬間接着剤などを使うと、すぐに接着剤が割れたりはがれたりします。セメダインGのような、ゴム素材専用のものを用意しましょう。
接着剤の使い方
まずは割れたりはがれた部分の汚れを取り除きます。紙やすりを使ったり中性洗剤でよく洗いましょう。そしてはがれた部分「両面に」接着剤を塗布します。片面だけではいけません。底と貼り付ける本体、両面に塗布します。その後10分ほど乾燥させ貼り合わせます。完全に硬化するまで24時間必要なので、その間は触らないようにしましょう。
自分で修理できる範囲には限界がある
登山中はある意味、登山靴に命を預けることになります。ご自分で修理なさるのは、本当に僅なはがれや割れ、軽度のかかと・つま先の減り、このぐらいに留めておきましょう。それなら万が一修理に失敗しても、事故に繋がるリスクは小さいでしょう。市販の修理キットで補修できる範囲は限られています。もし自分の手に負えないと感じたら、素直にプロに依頼するべきです。
靴底修理に必要な道具・キット
登山靴を自分で修理される場合に、あると便利な道具やキットをご紹介します。
シューグー
シューグー 100 ブラック
靴底補修ペースト、靴底修理の定番修理キットです。
ゴム用接着剤
セメダイン ゴム用接着剤 速乾G F 170ml CA-327
割れたりはがれた底の接着に使います。大事なのは、靴底修理にはゴム用接着剤を使うことです。
テラオ 靴修理用金台 2ウェイシューラスト5506 グレー
靴をおく作業台です。これがあれば靴を安定させて作業ができます。
KAKURI 紙ヤスリMIXセット 12枚入(#80・#150・#240・#400×各3枚)
シューグーや接着剤を塗布する面の、掃除に使います。ヤスリで整えることにより接着剤の食いつきが良くなります。
コロンブス 靴ブラシ 102
登山靴の汚れを落とすためのブラシです。日頃のお手入れにも使います。
コロンブス 靴の抗菌・乾燥・脱臭剤 シュードライ
登山靴の、特に内側の湿度を適切に保ちます。しっかり乾燥させることで加水分解を起こすリスクを抑えられます。
登山靴のお手入れ方法
登山靴の修理は可能と言えども、日頃のお手入れをおろそかにすれば、できる修理もできなくなります。お手入れに特別な技術は必要ありません。料金も時間もたいしてかかりませんし、あなたでも簡単にできます。
汚れはすぐに落とす
お手入れの基本は、使ったらすぐに汚れを落とすことです。山から帰宅し安堵感と疲れから、ついつい後回しにしてしまう登山靴のお手入れ。その間に、付着した汚れや汗が原因でどんどん登山靴が傷んでしまいます。そうなる前に、まずはブラシで土や泥を落としましょう。その後登山靴をよく洗い、日陰でゆっくり乾かしましょう。乾いたら撥水スプレーや、革登山靴ならクリームを塗って完成です。
登山靴の保管方法
登山靴の寿命は保管方法によっても左右されます。先述した「加水分解」を起こす多くの原因は、保管方法にあります。なるべく直射日光の当たらない風通しの良い場所を選び、湿気を遠ざける必要があります。湿気が加水分解をまねくのです。
靴箱には入れない
一番よくない保管方法が、購入した時の靴箱に入れて保管することです。これでは湿気がこもってしまい、加水分解が起きやすくなります。購入した時の箱は処分してしまいましょう。内側に乾燥剤を入れておくとさらに良いです。
時々履くこと
履かずに何年も仕舞いっぱなし、これも登山靴を傷める原因です。シーズンオフでも時々履いて、登山靴の状態をチェックしましょう。
まとめ
登山靴の修理についてご紹介しましたが、いかかでしょうか?登山中の足元を支えてくれる大事な登山靴。ちょっとした気遣いで、あなたの登山靴の寿命を伸ばすことが可能です。これを機に、あなたの登山靴をチェックしてみてください。大事な点を以下にもう一度まとめます。
修理は可能
修理は可能です。ただし、修理に耐えられる品質で製造された登山靴であること。日頃から適切にお手入れされた登山靴であることが条件です。自分で修理ができる場合もありますが、大抵はプロに任せることになります。日頃から状態をチェックして起きましょう。
お手入れが大切
お手入れは簡単です。使った後はすぐに汚れを落とすこと。靴箱は使わず、なるべく風通しが良い場所に保管すること。そして時々履いてあげることです。
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