キレットって何?
『キレット』って聞くと、登山をやっている者なら、なんかすごい場所で難しそうな場所じゃないかと連想してしまう言葉です。登山用語として使われている言葉には、英語かドイツ語などの場合が多く『キレット』もカタカナで書かれるので外来語かと思われるかもしれません。ところが、この『キレット」という言葉は、実は日本語です。漢字を当てると『切戸』と書きます。落差が大きく、鋭く切れ込んだ難所を『キレット』と呼んでいます。登山ルートは難易度の高いルートになります。初心者向きのルートではありません。
日本三大キレットってどこ?
『キレット』といわれているところは、北アルプスだけでなく、日本全国にいくつかあります。代表格は穂高岳と槍ヶ岳を結ぶルート上にある『大キレット』でしょう。八ヶ岳にも『キレット』はあります。『キレット』のなかで、北アルプスの3つのキレット(『大キレット』、『八峰キレット』、『不帰キレット』)を『日本三大キレット』と呼びます。登山道としては、難易度が高レベルのルートです。どのキレットも急な岩場で梯子や鎖があります。落石が多いルートです。ヘルメットは着用してください。日本三大キレット『大キレット』、『八峰キレット』、『不帰キレット』)について、少し説明していきます。
大キレット
日本三大キレットの中で、一番難しいランクとして君臨するのが、『大キレット』です。北穂高岳と南岳の間の切れ込んだ場所が『大キレット』です。『信州 山のグレーディング表』でも最難易度の高いルートとされています。初心者には手ごわい難所が連続します。北穂高岳と南岳までは直線距離では約1.4㎞です。しかし、そこを通過するのには3~4時間必要です。遭難事故も多発しており、毎年数名の死亡者がでています。
八峰キレット
日本三大キレットのひとつ『八峰キレット』は、後立山連峰の五竜岳と鹿島槍ヶ岳の間にあります。そのなかでも難所となっているのは、鹿島槍ヶ岳とキレット小屋の間にあります。ここも遭難事故の多発地帯です。
不帰キレット
日本三大キレットのひとつ『不帰キレット』は、後立山連峰にある白馬三山の天狗ノ頭と唐松岳の間にあります。特に難所とされているのは、不帰嶮二峰と一峰の間あたりです。やはりここも遭難事故の多発地帯です。
日本三大キレットの難易度
『信州 山のグレーディング表』に掲載された難易度は次のとおりです。『大キレット』を最高位に、いずれも難易度は高いと評価されている山域になっています。
グレーディング | |
大キレット | 技術的難易度『E』 |
八峰キレット | 技術的難易度『D』 |
不帰キレット | 技術的難易度『D』 |
この表をもとにしても、初心者が安易に踏み込める登山ルートではないということがわかります。日本三大キレットを制覇すれば、一目置かれる存在になれます。初心者だけど挑戦したいというひとは、ベテランのかたと同行して、ルートでの判断を仰いでください。
日本三大キレットへの登山ルート
日本三大キレットの登山ルートと参考所要時間です。所要時間は天候等に左右されますので、余裕を持って行動してください。天候が悪いときは難易度がアップするだけでなく、危険度が増します。通常の稜線ではありませんので、慎重に判断して行動してください。
大キレットへの登山ルート
大キレットへの登山ルートです。槍ヶ岳山荘から南下するルートを紹介します。
登山ルートと所要時間
登山ルートは次のようになります。
槍ヶ岳山荘 ⇒ 中岳 ⇒ 天狗原稜線分岐 ⇒ 南岳小屋 ⇒ A沢のコル ⇒ 北穂高小屋
所要時間は、槍ヶ岳山荘から南岳小屋までが約2時間30分、南岳小屋から北穂高小屋までが約3時間30分、合計の所要時間が約6時間となります。所要時間はあくまでも参考です。個人差があります。
ルート上の難所
大キレット最大の難所は、『長谷川ピーク』と『飛騨泣き』の2ヶ所です。
長谷川ピーク | 『長谷川ピーク』の『長谷川』はここで滑落した救助されたひとの名前だそうです。大キレットの中間あたりにある難所です。岩に「Hピーク」と記されている場所です。 |
飛騨泣き | 長谷川ピークの南側にあります。飛騨側に落ちるとまずは助からない難所なので、『飛騨泣き』と付けられました。 |
八峰キレットへの登山ルート
八峰キレットへの登山ルートです。五竜山荘から鹿島槍ヶ岳方面へ南下するルートを紹介します。
登山ルートと所要時間
登山ルートは次のようになります。行程が長いので、2日かける行程を示します。
1日目
五竜山荘 ⇒ 五竜岳 ⇒ 口ノ沢のコル ⇒ 南岳小屋 ⇒ キレット小屋
1日目の所要時間は、約5時間となります。所要時間はあくまでも参考です。個人差があります。
2日目
キレット小屋 ⇒ 鹿島槍ヶ岳北峰 ⇒ 鹿島槍ヶ岳南峰 ⇒ 布引岳 ⇒ 冷池山荘
2日目の所要時間は、約4時間となります。所要時間はあくまでも参考です。個人差があります。
ルート上の難所
八峰キレット最大の難所は、キレット小屋から鹿島槍ヶ岳北峰の間です。その中でも、特に難所といわれているのが、キレット小屋から少し南下した場所付近です。鎖場が連続している場所です。転落事故も頻発していますので、慎重に行動してください。
不帰キレットへのルート
不帰キレットへの登山ルートです。白馬三山から唐松岳へ南下するルートを紹介します。
登山ルートと所要時間
登山ルートは次のようになります。
白馬山荘 ⇒ 村営頂上宿舎 ⇒ 杓子岳 ⇒ 白馬鑓ヶ岳 ⇒ 白馬鑓温泉分岐 ⇒ 天狗平 ⇒ 不帰キレット ⇒ 唐松岳 ⇒ 唐松岳頂上山荘
所要時間は、白馬山荘から天狗平までが約2時間45分、天狗平から唐松岳頂上山荘までが約4時間45分、合計の所要時間が約7時間30分となります。所要時間はあくまでも参考です。個人差があります。
ルート上の難所
不帰キレットの難所は、「天狗の大下り」と「不帰嶮一峰~一二峰間」の2ヶ所です。天狗の大下りは約300mを下り降ります。数か所の鎖場があります。天狗の大下りをクリアすると、次の難所の不帰嶮です。天狗の大下りよりもこちらのほうが難易度が高いです。岩場のトラバースや鎖場が連続しますので、慎重に行動してください。
初心者にとっての日本三大キレット
初心者にとっては、日本三大キレットというのは憧れの存在であり、ちょっと近寄り難い存在でもあります。初心者がこの難所に挑戦するのはハードルが高いです。経験を積んだのち、まずは、ベテランとともに不帰キレットあたりから挑戦してみてください。途中でエスケープできるようなルートはありません。挑むなら「行く」と決心して前進あるのみです。
日本三大キレットのルート上の山小屋
日本三大キレットへの登山ルートの中で出てきた山小屋について紹介します。テント泊もいいですが、山小屋で情報を交換して、現地ルートの最新情報を入手してください。また、岩稜地帯を歩くので、できれば荷物は減らしたいということで山小屋泊を検討されてはどうでしょうか。どれも稜線上に建つ山小屋です。山小屋からの風景はすばらしいものがあります。
大キレット登山ルート上の山小屋
初心者からベテランまで登山者の憧れ槍ヶ岳を望める場所に各山小屋が建っています。見る位置が違ってもその存在感は大きい槍ヶ岳を眺めながらしばしの休息を楽しんでください。
槍ヶ岳山荘
槍ヶ岳の南側で、山頂の直すぐ下にあります。収容人数の多い大きな山小屋です。いろんな方面から槍ヶ岳を目指す人、槍ヶ岳を極めた人が集まる山小屋です。
南岳小屋
槍ヶ岳の展望と大キレットを間近に見れるという位置にあります。北側から『大キレット』を攻めるときは、これから挑戦する難所を目の前にして気合を入れてください。
北穂高小屋
北穂高岳の頂上のすぐ下にある山小屋です。『大キレット』をクリアしたなら、その充実感でゆっくりとできるか、興奮冷めやらぬかはあなた次第です。
八峰キレット登山ルート上の山小屋
それぞれの山小屋は、後立山連峰の稜線上に建ちます。後立山連峰の稜線からは黒部の渓谷を挟んで立山連峰や剱岳の姿を見れます。
五竜山荘
五竜岳と白岳との鞍部にある山小屋です。五竜山荘といえば、「山が好き 酒が好き」のTシャツです。
キレット小屋
八峰キレットから北に約20分のところの切り立った鞍部にあります。こんな場所に建物があるとはと思ってしまう場所に建っています。場所が場所だけにここにはテント場はありません。
冷池山荘
八峰キレットを無事通過し、布引岳の山頂を少し下った稜線上にあります。爺ヶ岳から鹿島槍ヶ岳を眺めるとその稜線上に見えるのが冷池山荘です。
不帰キレット登山ルート上の山小屋
こちらも、それぞれの山小屋は、後立山連峰の稜線上に建ちます。後立山連峰の稜線からは黒部の渓谷を挟んで立山連峰や剱岳の姿を見れます。
白馬山荘
白馬岳の頂上直下に建つ、収容人数800人の大きな山小屋です。スカイプラザという大きなレストランもあり、山小屋と思えない施設です。
村営頂上宿舎
収容人数416人の大きな山小屋です。簡易郵便局があります。ここからハガキを出すと『白馬山頂局』の消印が押されます。白馬岳山頂でテントを張るなら、テントサイトはこちらになります。
唐松岳頂上山荘
八方尾根を登って唐松岳を目指すと、その頂上のすぐそばにある山小屋です。八方尾根からのルートは初心者入門コースとして人気があります。
まとめ
日本三大キレットは、難易度も最高ですが、その風景も最高です。初心者にはちょっと近寄り難いエリアですが、経験を積んでチャレンジしてください。登山をしているといった醍醐味を味わうことができます。梯子や鎖、岩場は濡れるととても滑りやすいです。天候の変化にも注意を払って行動するようにしてください。
日本三大キレットの次はこちらもチェック!
『キレット」よりもさらに難易度の高いルートがここにあります。
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