MAMMUT Rock Rider
ジャンダルムとは
西穂高岳と北穂高岳を結ぶ尾根のルート上にあるドーム型の岩です。奥穂高岳から見るとちょうど西南西にあたります。付近には、馬の背や間ノ岳などの岩稜があり、初心者を寄せ付けようとしない風貌は登山者の憧れです。このコースは北アルプスのコースの中でもいつかは行ってみたいコースのひとつです。
登山者の憧れ
登山初心者でも、はしごを登り、奥穂高岳の頂上まではなんとかたどり着くことができると思います。でもその先には初心者を寄せ付けない風景があります。はしごを登り、歩き疲れてやっと到達したその向こうにもっと凄いものがそびえ立っている。それがジャンダルムです。その先に見えるジャンダルムには圧倒されるはずです。その瞬間から、自分もいつかはあの頂に立ってみたいと思わせる風格を持っています。
ジャンダルムの難易度
初心者向けのコースではありません。ロッククライミングのバリエーションルートを除き、歩きで行ける一般道としてのコースでは最難関と言われています。登り方としては、ひとつひとつ岩の状態を確認しながら歩き進める感じです。浮石に足を掛けてしまえば、落石を発生させることになりますし、自分もバランスを崩すことになりかねません。普通の登山道よりも数段神経も体力も消費するコースになります。
ジャンダルムへのルート
まず地図で確かめてみましょう。ジャンダルムは西穂高岳から奥穂高岳を結ぶ尾根伝いのコース上にあります。破線で示されているところから初心者向けではないことが読み取れます。ロバの耳や馬の背といった痩せた尾根が続くコースで、いつ落石が発生するか分からないコースです。登り方としては、西穂高岳あるいは北穂高岳から尾根沿いのコースを辿るか、岳沢から天狗沢を経由するコースになります。
西穂高側から
西穂高側からジャンダルムを目指すコースとしては、奥穂高岳へ縦走するコースになります。すなわち、西穂山荘~西穂独標~間ノ岳~天狗ノ頭~ジャンダルム~奥穂高岳の岩稜地帯に挑むコースです。
奥穂高側から
奥穂高側からジャンダルムを目指すコースとしては、馬の背を通ってジャンダルムでピストンする方法と、そのまま、西穂高方面へ縦走するルートがあります。ジャンダルム初心者なら、奥穂高岳からピストンすれば、縦走する登り方よりは幾分危険個所を避けられます。体力的に自信がなかったり、経験値的にも無理は控えておきたいというなら、ピストンをおすすめします。
岳沢から
岳沢からジャンダルムを目指すコースとしては、天狗沢を通ってジャンダルム、さらに奥穂高岳へ行くルートがあります。西穂高岳から縦走するコースよりも幾分距離は短くなります。
初心者には難しい?
はっきり言って、初心者が入る山域ではありません。歩き方がおぼつかないような人は奥穂高岳から眺めるだけにしておいてください。ジャンダルムへ行くには、垂直に近い崖を上り下りすることになります。高いところが苦手な人にもおすすめできません。慣れない初心者にとっては足がすくんでしまう場所です。装備を新調しても技術がついてこないと歩き方もぎこちなく見ているだけで危なっかしい登り方になってしまっています。難コースの上に距離が長いため、体力と精神力が必要です。
ジャンダルムを攻略するための装備
一般の登山道の位置付けですが、普通の縦走路ではありません。そこは岩稜地帯です。簡単に言うとザイルのないロッククライミングと言えます。そこは落石、滑落の多発地帯です。しっかりと装備を整え身体を守ったうえでチャレンジしてください。
ヘルメット
MAMMUT Rock Rider
落石多発地帯ですので、装備としてはヘルメットを必ず持参してください。ロッククライミング用のヘルメットがさまざまなメーカーから出ています。どのメーカーのものでも大丈夫です。自分の頭に合ったものを購入してください。マムートやブラックダイヤモンドなどがおすすめです。
クライミングシューズ
SC22026
頭とともに足元の装備もしっかり固めておくのがいいでしょう。
こちらはセミワンタッチアイゼンにも対応したシューズ。足首までガードしていて、安定性と耐久性を兼ね備えた底の固いクライミングに適応したシューズがおすすめです。
春〜秋の山でこの1足があればどんな山でもOKでしょう。 防水性や歩行安定性、特に下山時に真価を発揮するはずです。
ジャンダルム攻略のための身体作り
危険個所を通過するには、体力はもちろんのこと精神力も鍛えておく必要があります。ほぼ垂直に登り降りをするような場所が連続しています。足がすくんだりして精神的に無理とか怖いとか感じるようになれば歩き方にも支障が出てきます。そのためにも、体力だけでなく精神力も鍛えておく必要があります。
体力
ガレ場が歩行がメインです。浮石に注意しながらの歩きは想像以上に疲れます。登り方も普通の登山道と違って一歩一歩に集中するひつようがあるので、体力の消耗は激しいです。また、前穂高岳~奥穂高岳の縦走コースになると、歩行距離も長くなります。小屋到着が日が暮れてからというようなことがないように体力作りをしておく必要があります。
精神力
絶えず落石に注意しながら歩き進めることになりますので、精神的にもかなり疲労します。自分が浮石に注意するのはもちろんですが、絶えず上からの落石に注意し集中しながらの登山になります。もしも落石に遭遇するようなことがあっても、適切に避難できるよう現場での的確な判断も求められます。さらに、目の前で滑落の現場に遭遇することもあるかもしれません。そんな時にも落ち着いて行動できるようにしておく必要があります。
技術力
どれだけ立派な装備に身を包んでいても、技術が見に付いていないと前には進めません。少なくともロッククライミングの基礎知識は身に付けて置いてください。たとえば、三点支持など基本中の基本のことができないと登り方がどうのという以前の問題になります。最難関のルートへの登り方を問われる前に基本の技術を習得しましょう。
ジャンダルムでの事故
ジャンダルム一帯は事故多発地帯です。毎年、落石や滑落で何名かの死傷者が出ています。過去の事故例を参考にするのが良いでしょう。どういった状況で滑落したのか、どのあたりで落石事故が発生しているのかなどの情報を入手して、危険回避に努めてください。また、事故に会ったときもできるだけ軽傷で済むようにヘルメットなどの装備を忘れないでください。
落石
落石は常に発生しています。自然に落ちてくるものもありますが、多くは人為的に発生しています。ジャンダルム近辺では浮石だらけの岩稜地帯を歩きます。どれだけ注意をした登り方をしても、浮石を踏み抜く可能性はゼロにはなりません。また、自分は気を付けていても他の人もいるわけです。どこでだれが浮石を踏み抜くかはわかりません。一つ転がればそれが他の落石を誘発していきます。岩に張り付いて登っているような場所では、逃げようがない場面も想定できます。足元に神経を集中させて落石を起こさないように努めてください。
滑落
滑落の原因としては、足を滑らしたり足や手を置いた岩が崩れたりするほかに、ザックのストラップが岩に引っかかったりして転落することなどが考えられます。岩の状態をきにするのはもちろんですが、ザックの外側にマグカップを付けたり、ペットボトルを差しこんだりしないでください。ザックに服をくくり付けていて、素の服が岩に引っかかって滑落したという例もあります。ザックの外側には何も引っ掛けたり、くくったりしないで、すっきりとさせてください。
ジャンダルムに挑む前に
ランニングなど日頃のトレーニングも大切ですが、登山においてはなによりも経験が大切です。アルプスにはジャンダルムよりももう少し難易度が下がるコースがあります。それらの山域に入って経験を積むのも一つの方法です。
経験を積む
ジャンダルムは初心者には難易度が高いと場所です。まず、他のルートで経験を積んでから挑みましょう。どこでどんな登り方をすれば良いのかは現場をどれだけ経験したかという経験値がものを言います。経験として踏んでおくとよいのは次のコースです。
練習用コース
・北穂高岳~槍ケ岳間の大キレット ・白馬岳~唐松岳の不帰キレット ・五竜岳~鹿島槍ヶ岳の八峰キレット これらのコースも、切り立った岩場を上下するコースです。岩場を攻略するにはどうしたらよいのかを体験できます。
ジャンダルムを目指す時期
天気が安定するのは、梅雨明け10日といわれる日です。天気が崩れるとガレ場は滑りやすくなり非常に危険です。特に初心者は天気の安定する時期に登山を実施するようにしてください。ただし、誰もが天気の安定する時期に山を目指しますので混雑します。また、午後に入ると山の天気は崩れる傾向にあります。特にガレ場で天気が崩れると危険が増します。稜線で雷雨に襲われると非常に危険です。
ジャンダルムへの心構え
ジャンダルムを目の前にして、前にして自分の歩き方、登り方などに少しでも不安があるなら、思いとどまる勇気も必要です。また、当日の体調とも向き合ってください。慣れない夜行バスなどで無理をしている場合などは判断能力が鈍る恐れがあります。注意してください。
諦める勇気
天気が悪い、体調が悪いというときはもちろんですが、このコースを歩き続けることができるのか、自分のつたない登り方で大丈夫なのだろうかという不安があるなら中止する勇気をもってください。コース上はほぼガレ場です。途中で動けなくなってもどうしようもなくなります。また、万が一事故とを起こしてしまっては取り返しのつかないことになります。
渋滞
西穂高岳~奥穂高岳間は狭いガレ場の尾根を歩くことになるので、登り下りで人が交差することになります。そのため渋滞が発生することがあります。特に、夏山の天候が安定する梅雨明け時期や秋の紅葉シーズンはかなりの人出が予想されます。そうなるとコースタイム以上に時間がかかる恐れがあります。登山計画を立てるときはその当たりも加味して計画を立てるようにしてください。さらに、人が多いということは落石の発生の危険も増大することを忘れないでください。
ジャンダルムへ向かう前に
出発前に準備するのは装備だけではありません。私はこれからここへ行くのだと宣言するために、登山届を提出してください。また、万が一のために山岳保険への加入を忘れないでください。
登山届の提出
登山届は、どこの誰がどの山域で行動しているのかをはっきり意思表示するものです。登山届を提出していないと、何かが起こったときにどこを探せば良いのかの検討を付けることもできません。自分の居場所を告げる手段です。登山届は必ず提出しましょう。
山岳保険への加入
事故が起こっても不思議ではない場所へ自ら行くということは、何かあったときの費用のことも念頭に置いておく必要があります。ヘリコプターを要請すると1時間当たり約50万円必要です。救護費用としてはトータルで最低でも100万円くらいになります。これらの費用のことを考えると山岳保険は必ず入っておいてください。
ジャンダルムに挑む当日
特に西穂高~奥穂高間の縦走を考えている場合は、足場の悪い中を長距離の移動となります。自分の状態、天気の状態を十分に考慮して行動するようにしてください。
体調の確認
自分の体調については本人が一番自覚しているはずです。足が痛い、頭が痛い、熱がある。少しでも異変があると感じたら早めに手当てをしておきましょう。また、最悪の場合を考えて予定を変更することも考慮に入れておきましょう。
天気の確認
天気は登山に大きく影響してきます。天気の悪いときにジャンダルムに挑むのは、いくら十分な装備を準備していても無謀な行為です。雨が降る中では足場はさらに不安定になり、滑落事故の危険性が増します。山小屋では天気の情報を発信してくれているはずですので、出発前に念入りにチェックしてください。
ジャンダルムからのエスケープルート
西穂高岳~奥穂高岳間の唯一のエスケープルートして天狗沢から岳沢への下りのルートが挙げられます。しかしながら、このるーとはエスケープルートと呼ぶには難易度が高すぎるルートです。体調不要や悪天候のときに使えるようなルートではありません。そこを踏まえると、ジャンダルムに挑むにはエスケープルートは存在しないと考えて行動してください。
ジャンダルムに立つ
装備も揃えました。トレーニングで体力も維持できています。そうなれば、いよいよジャンダルムです。特に晴れ渡った空の元でその頂に立てたときは最高の気分になるはずです。登山を続けてきて良かったと改めて感じるはずです。初心者だった自分がこんなところまでこれたのだと思うと自然と涙が込み上げてくるかもしれません。
まとめ
ジャンダルムは難しいコースです。いくら最新の装備を携行していても、登り方を間違えると滑落や落石などの事故を誘発してしまいます。しかし、経験を積み、きっちリと計画を立て、天気に逆らわず、確実に歩き前へ進むことで制覇できないものではありません。憧れであった風景を自分の足でしっかりト踏みしめて貴重な体験にしてください。