アユカケとは
アユカケとはカサゴ目カジカ科に属する日本固有の魚です。体長は5~30cm、カジカ類では中型程の大きさをしていて、食性は動物食。水生昆虫を好むほかに淡水の釣りエサではミミズ、成長すると鮎などの魚を食べるようになります。
.アユカケの外観
体色の下地は灰褐色、その上に暗褐色の横帯が4本並んでいます。エラ蓋には四対の棘が生えており、棘の一対が大きく上に向いているのが最大の特徴です。この棘はアユカケの生態とその名前に欠かせない要素となっています。
アユカケの近縁種
アユカケの仲間としてはカジカ、カンキョウカジカ、ハナカジカ、ウツセミカジカ、エゾハナカジカ、ヤマノカミが存在します。他のカジカ類との見分けは、前述の通りエラ蓋の棘の有無を見れば簡単です。より細かく見分けるなら胸鰭を調べると良いでしょう。胸鰭の軟条は15~19本、さらに鰭の先端が分岐しています。この胸鰭の特徴はアユカケ以外のカジカ類には見られません。そして、後述の生態を見ればより理解が深まるでしょう。
アユカケの生態
1.詳細な分布域の解説
アユカケは日本海側で青森県以南、太平洋側では茨城県以南です。九州では佐賀県と宮崎県に分布。主に河川の中流域や下流、河口部に生息し、砂礫混じりの水底を好みます。また、生育に適する水温は10~22℃、生存できる水温の限界は24~27℃、水温の低い河川に適応した生態です。
2.産卵期と成長
アユカケの産卵期は1~3月、冬季に河口まで下って沿岸部で産卵を行います。降河回遊型の生態をしており、この時期に口内と鰭の一部が赤く変色しますが、雄に見られる特徴で雌にはありません。雌は産卵後に死んでしまい、残った雄は卵の孵化を見届けて力尽きるとされています。
3.アユカケの名前の由来とは
アユカケが動物食であることは先に触れましたが、エサの食べ方にも独特の生態を見せます。これを石化けと呼び、石の陰に隠れて獲物を待ち伏せするエサの食べ方をします。このときは呼吸を止め、エラ蓋すら動かしません。また、魚の中では特に鮎を好むとされ、「エラ蓋の大棘で鮎を引っ掛ける食べ方をする」との伝承が存在します。これが鮎掛け(アユカケ)の名の元です。
アユカケ釣りのポイント
アユカケ釣りはここを狙おう
アユカケを探すなら砂礫底を持つ河川の中流域を探すとよいでしょう。石化けの生態を持つ例から、大きめの石周辺で水深のあるポイントが狙い目です。また、アユカケは遊泳力に優れる魚ではないため流れの緩いポイントも好みます。釣りで狙うなら、石周辺で適当な深さの流れが緩いポイントを見つけましょう。
アユカケ釣りの仕掛け①:ウキ釣りで狙う
1.ウキ釣り仕掛けの解説
川のウキ釣りは延べ竿に各種ウキを使用するのが特徴の単純な釣り方です。釣り道具がシンプルだけに仕掛け構成もシンプルな物となっています。エサには水生昆虫やミミズなどを使います。
2.ウキ釣り仕掛けのタックル解説
ウキ釣りに必要な竿は渓流用、または清流用と表記されているものを使います。竿先にミチイトの先を結び、ウキ止めゴムを通してから小型のサルカンに結びましょう。サルカンの先にハリスと釣り針を結べば完成です。ミチイトは0.8号、ハリスは0.6号を30cm程度必要。針にはヤマメ針7号が適しています。玉ウキは小さめにするか棒ウキ。サルカンの上のガン玉は浮きの浮力に対応した重量を使いましょう。
アユカケ釣りの仕掛け②:ミャク釣りで狙う
1.ミャク釣り仕掛けの解説
ミャク釣り仕掛けとはイトの弛みで魚のアタリを見分ける釣り方です。ウキ釣り仕掛けとは異なりウキは使いませんが、イトの弛みを見やすくする目的で目印を付けるのが特徴的。こちらもウキ釣り仕掛けと同じくエサを使用する釣り方です。
2.ミャク釣り仕掛けのタックル解説
ミャク釣り仕掛けのタックルはウキ釣り仕掛けと全く同じで問題ありません。違いはウキと目印の違いだけです。ミチイトに通すタイプの目印を付ける場合は、サルカンと結ぶ前に準備しておきましょう。
アユカケ釣りのエサの種類
1.水生昆虫類
アユカケが食べる水生昆虫はチョロやピンチョロ、トビゲラ、ヤゴなど。チョロはカゲロウ、ピンチョロはカワゲラ、トビゲラはクロカワムシ、ヤゴはトンボ、いずれも昆虫類の幼虫です。釣り針に掛ける際は頭に刺し、アゴから針先を抜くとしっかり固定できます。また、これらの昆虫は石の裏に隠れているので流下に網を構えた上で石を起こせば簡単に採取可能です。
2.ミミズ
多くの川魚が好む虫エサ。土を掘り起こせば採取できるほか、釣具店でも販売されているので入手しやすいのが利点です。
3.イクラ
こちらは鮭の卵で、釣具店などで販売されています。カジカ類をはじめ、マス類も好むエサです。針には2粒程度刺してエサとし、色が落ちて白くなったら交換しましょう。
アユカケ釣りの仕掛け③:ルアーで狙う
1.ルアーの釣り方解説
ルアーでアユカケを狙う場合、使用するルアーは小型のスプーンやスピナー、プラグなどです。概ね5cm程度、重量は5g以下のものでOK。ソフトルアーを使う場合は小魚を模したものや昆虫を模したタイプが良いでしょう。アユカケの潜んでいる石周りにルアーを投げ入れて底まで沈め、ゆっくりと引きずるように泳がせれば食いついてきます。
2.ルアー釣りのタックル解説
アユカケのルアー釣りに必要な竿はライトアクションのトラウトロッドやバスロッド5~7ftです。リールは小型スピニングタイプにナイロンラインの1号を巻き込んでおきましょう。河川の中流域に棲む個体を狙うのであれば淡水用リールで問題ありません。河口付近で潮の影響を受ける場合は海水に対応したものを選びましょう。
3.評価の高いルアーをご紹介
管理釣り場を攻略!ルアーやタックルなど、おすすめの釣り方をご紹介!
管理釣り場でのルアーフィッシングは、自然のフィールドではなかなか出会えない大物トラウト類を手軽に狙うことができる、夢のような釣りです。この記...
こちらの記事では管理釣り場のタックルやルアー類を解説しています。管理釣り場で使用するルアーは殆どが小型。評価の高いルアーもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
アユカケ釣りの仕掛け④:転がし釣りで狙う
1.転がし釣り仕掛けの解説
転がし釣りとは掛け針が長く連なった仕掛けで、魚を引っ掛ける釣り方です。本来は下流などで鮎を引っ掛けて釣るための仕掛けですが、石周辺のアユカケを狙えば引っ掛けられる確率も高くなります。
2.転がし釣りの仕掛けタックル解説
転がし釣りに必要な竿は清流用の延べ竿5.4~6.3m、ミチイトはナイロン2号を使用します。転がし仕掛けの針の間隔はそれぞれ20cm程度取りましょう。ミチイトと仕掛けを合わせて竿の長さ一杯の長さにしておきます。
アユカケ釣りの仕掛け⑤:フライで狙う
1.フライフィッシングの解説
フライフィッシングとは水棲昆虫に見立てた毛鉤を使った釣り方。ルアーフィッシングの元祖のような存在です。ところが、ルアーとは違って毛鉤単体では投げられるほどの重量が得られません。そこで、重量のある専用のラインを用いて飛距離を出すことになります。また、使用するフライによって竿やラインの規格が厳密に決まっているのも特徴です。
2.フライフィッシングのタックル解説
フライフィッシングは扱う毛鉤によって道具の規格が決まってくるため、今回は図の道具をそのまま準備すればOK。リーダーやティペット、毛鉤は番号の数字が大きくなるほどサイズと太さが小さくなるのが注意点です。リーダーとティペットは通常の仕掛けでハリスに相当し、リーダーと結束して使用します。リーダーとティペットの太さは同程度が結びやすいでしょう。また、毛鉤はドライとウェットの2種。前者は水に浮き、後者は沈み込みます。アユカケに対してはウェットタイプ、針のサイズは8番が最適です。
アユカケの料理法
1.から揚げ
小型のアユカケを料理するにはから揚げがベストです。下処理を終えたら衣を付けて揚げるだけ。アユカケには鱗が無いので処理に手間はかかりません。
2.煮浸し・煮魚
火を通す料理法でも硬くならないアユカケは煮ても美味です。白焼きや素焼きにして、甘醤油で甘露煮風に仕立てるとおいしく食べられます。煮魚の場合はうす味であっさりと仕上げれば上品な味わいが楽しめるでしょう。
3.鍋物
鍋物に定番の野菜とアユカケを一緒に煮れば出汁の効いた鍋料理ができ上がります。良い出汁の出るアユカケは汁物、味噌汁などにもうってつけ。汁物と合わせた食べ方が好相性です。
アラレガコ料理
1.アラレガコ料理のご紹介
アラレガコとは福井県九頭竜川地域でのアユカケの名称です。霰が降る寒い夜に腹を上にして川を下るとの伝承から名付けられました。料理の内容は先にご紹介したから揚げや甘露煮、蒲焼など。かつては家庭料理として親しまれていましたが、現在では料亭や旅館などで供される程度に留まっています。
2.アラレガコの養殖
近年ではアラレガコ漁は廃れる一方で年間に数千匹の養殖に成功。決して流通量は多くはありませんが、福井県内では料理店でその味を楽しめます。新たな料理法に挑戦するレストランなども現れ、アラレガコ料理の復活が少しづつ始まっていると言えるでしょう。
アユカケの名前の由来と生態
実際に鮎を引っ掛けて食べるか?
鮎を引っ掛ける食べ方をするから「アユカケ」。では実際にそのような生態は見られるのでしょうか?結論から言えばそのような生態は確認されていません。また、アラレガコの名の由来からの行動も残念ながら確認されていません。
アユカケ釣りの心がけ
1.実は絶滅危惧種
実のところアユカケは多くの自治体で絶滅危惧種に指定されています。理由は河川工事や河口堰の建設などで生育環境が破壊されてしまったため。本来、清流や中流域に生息するアユカケが産卵期以外で河口や下流に生息しているのは、河口堰の為に遡上できなくなっているのが原因です。
2.九頭竜川では国の天然記念物
かつてはアラレガコ漁(アユカケ漁)が盛んだった九頭竜川流域では、国の天然記念物に指定されています。やはり河川環境の激変により生息数も激減したことが背景です。これに伴ってアラレガコ漁も衰退してしまいました。
アユカケ特集のまとめ
自然にも魚にも優しく
以上でアユカケ特集は終わりとなります。アユカケの生態や釣り方、料理法や食べ方、文化に関してもご紹介してきました。しかし、アユカケが生息している河川、そしてアユカケ自体も貴重です。釣り針を飲み込んだり、引っ掛けてしまった個体は別として、釣りあげたら観察するに留め、できる限り放流することを推奨します。また、飲み込んだ釣り針を無理に外すと傷が深くなってしまうので、この場合は仕掛けを切ってしまいましょう。飲み込んだ針は自然に外れることが多く、無理に釣り針を外すより傷は浅くなります。自然にも魚にも優しい釣り人を目指しましょう。
周囲に合わせて体色を変化させる能力。因みに横帯は頭を上にして並べたときの特徴。