からすみとは何か
からすみは未だ、未経験なかたも多いかもしれません。からすみの正体とは一体なんなのか、そのへんから迫って行きます。
乾燥させた魚の卵
からすみを簡単に言い表わせば、ボラなどの魚の卵を乾燥させた食べ物です。生の魚の卵はそのままでは日持ちしませんが、乾燥などの決まった処理を施すことによって、長期的に保存の効く美味しいおつまみになるのです。
日本三大珍味のひとつ
日本では江戸時代の頃から、日本三大珍味と呼ばれ、酒の肴として人気の食べ物がありました。それは越前国(新潟)のウニ、三河国(愛知)のコノワタ、そして肥前国(長崎)のからすみです。
からすみの見た目と味
ボラの卵を使ったからすみは、見た目はたらこに似て、オレンジがかった朱色をしています。直径は15から20センチ程度で、重さは100~150グラムあります。チーズとウニを合わせたような、塩辛い味わいと香りが独特で、調理法は様々です。
使われる魚の卵の種類
一般的に日本ではボラの卵を使った、長崎県産のからすみが有名です。しかしサワラ、サバ、アブラソコムツといった魚の卵を使って、からすみを作っている地域もあります。台湾からすみで使われるのもボラです。ヨーロッパのからすみでは、その他にも様々な魚の卵が使われます。
からすみの賞味期限
販売しているからすみの製品によって、賞味期限の記載は異なっていることがあります。冷蔵庫に保存した場合、30日から60日ほどが目安になります。しかし実際には3ヶ月や半年以上、冷蔵庫や冷凍庫に入っていても問題がないとの意見もあります。台湾からすみなど、海外産でもほぼ同じです。
からすみの歴史
からすみの語源とは
むかしから書道で使う墨の形状は、細長い形状をしており、これを唐墨と呼んでいました。安土桃山時代になってから、中国からボラの卵を乾燥させた食材が伝来してきましたが、その形状は唐墨に似ているものでした。
豊臣秀吉が、肥前国の名護屋城(唐津市)へ行った時、鍋島信正に「これはなにか」と尋ねました。すると「唐墨」と答えたことが、からすみの名が使われだした始まりとも言われています。からすみは洒落から生まれたようです。豊臣秀吉も日本酒のおつまみに食べていたようですね。
からすみの起源
からすみは中国が原産地ではありません。最も古いからすみの記録は、古代のエジプトやギリシャにあります。地中海地方の人々が製造して、食べていた食材だったのです。からすみが遥か遠方から、日本に伝わってきたのは意外な話です。
からすみの名産地(国内編)
日本でからすみを名産品として生産している地域は、主に2か所あります。それぞれのからすみは、違った特徴を持っていました。
長崎県のからすみ
中国から日本に最初にからすみが持ち込まれたのは、安土桃山時代の肥前国(長崎県)。長崎県はいまでも日本最大の、高級からすみの産地です。長崎では野母崎半島で取れるボラを使って製造しています。沖合の五島列島も有名な産地です。
香川県のからすみ
主食がうどんで、水道の蛇口からめんつゆが出るとうわさの香川県も、古くからからすみが作られています。しかし香川県のからすみは、ボラではなく、サワラやサバの卵を用いた安価なからすみが作られており、長崎産とは一線を画するものです。調理法には、やっぱりうどんとの組み合わせが存在します。
からすみの名産地(海外編)
台湾からすみ
台湾からすみは現地で「烏魚子(オーヒージー)」と呼ばれています。台湾からすみは、長崎産の外見そのままで、それほど高級食材ではありません。台湾のボラの漁獲量が多いことが影響しています。しかし市場などでは、台湾からすみの偽物も置いてあるというので、買う時は要注意です。
ヨーロッパ諸国のからすみ
ヨーロッパの地中海地方では、今もからすみが作られています。イタリアではボッタルガ、フランスではブタルグ、英語ではボターゴといいます。魚の卵の塩漬けを乾燥させる製法は変わらず、ボラを始め、クロマグロ、メカジキなど幅広い種類の卵も使われます。
からすみの作り方
釣りで産卵前のメスのボラが釣れたら、自宅でからすみを作ることができます。その製法は台湾からすみでも欧州でも同じです。いったいどんな方法なのか覚えて、実践してみませんか。
1・ボラの卵を取り出す
ボラの腹を包丁で裂いて取り出す時には、卵を包む膜や卵自体を傷つけないよう、切り方に細心の注意を払います。ボラの卵は15センチから20センチほどの大きさです。卵の形は崩さないように、全体を水洗いします。
2・塩漬けにする
トレイや桶などの容器を用意します。ボラの卵には全体に粗塩を塗りつけた状態にするのが、下ごしらえでは最初の段階です。3~6日、容器内で塩漬けにします。夏場は冷蔵庫で保存することで、腐る心配がなくなります。
3・塩抜きをする
塩の容器から取り出したボラの卵は、塩抜きを行います。良く水洗いをしてから、ボウルなどに溜めた水に浸け、一昼夜そのままにしておきます。全体に柔らかくなっていれば水から取り上げます。塩抜きの加減によって、からすみの味わいが決まってくるといいます。
4・水抜きと乾燥
傾斜させた木板にボラの卵を置いて、さらに板を上に重ねて水抜きをします。木板は重た過ぎず軽量で、それでいて水気にも強くしっかりした素材を選びます。一晩放置することで、いったん水抜きは終え、日中は日陰にて乾燥を続けます。2日目も、夜になったら板を重ねて水抜きをすることを繰り返します。
5・天日干し10日間
その後は天日干しを続けます。乾燥させている間、からすみの表面に脂質が浮き出てくるので、適度に拭き取りながらです。10日ほど経過すれば、美味しいおつまみ、からすみの完成です。
生からすみ
長崎には干したからすみとは見た目も味わいもまるで異なる、生からすみという亜種か存在します。からすみや日本酒好きならば、購入してみたいお土産です。
生からすみの特徴
この種類は、瓶詰めになっている、黄色いペースト状のからすみです。塩漬けと塩抜きをしたあと、干さずに練り上げる調理法で作られます。固形のからすみよりも磯の香りが強く、ペースト状なので料理に味と香りが絡まりやすい特徴があります。
生からすみの発祥
生からすみの元祖といえば、長崎県長崎市の松庫(まつくら)商店です。高度経済成長時代、三代目の店主だった上野初太郎が考案し、昭和47年には農林水産大臣賞を受賞、宮内庁御用達になるほどの美味しい商品です。
生からすみの食べ方
元祖の松庫商店によると、生からすみはそのまま炊きたてごはんに乗せる食べ方が、いの一番に挙げられています。大根おろしと合わせたおつまみにしてみたり、イカや白身魚などの刺身を食べる時、醤油代わりにしてみても美味しいとのことです。
美味しいからすみの食べ方①
そのまま食べる
長崎からすみでも台湾からすみでも、新鮮な状態ならば、そのままをおつまみとして食することもできます。昔から日本酒にはよく合う酒の肴として親しまれてきました。味がまろやかになり臭みが取れるので、からすみにはマヨネーズを付けて食べる人もいます。
薄切りにする
からすみをそのままで食べる時には、薄切りをするのがおすすめです。横向きにしたからすみを薄切りにすれば、綺麗な飴色をしてテーブルの上を飾ります。大根おろしを乗せる食べ方も好まれています。
美味しいからすみの食べ方②
焼きからすみ
そのままでからすみを食べるより、焼くことによって、からすみの風味が香ばしく高まります。おつまみとしては、ひと手間かけるだけで美味しい状態にできるので、焼く食べ方は試してみたくなります。
からすみの焼き方
からすみはフライパンを用いる焼き方、オーブンレンジを用いる焼き方、炭火を使う焼き方、バーナーを使った焼き方などがあります。いずれの焼き方でも表面に日本酒を塗ることで生臭さを消し、焼き色が付く程度に軽く焼くのみです。あまり焼きすぎると美味しいからすみが台無しです。
美味しいからすみの食べ方②
からすみ大根
からすみと生の大根の味が合わさった、日本酒にも合う格好の美味しいおつまみです。台湾からすみの本場台湾でも、この食べ方は好まれています。からすみ大根の調理法はとても単純であり、すぐにおつまみを用意したい時にも向いています。
からすみ大根のレシピ
大根は皮をむき、厚さ2~3ミリの薄切りにします。塩水の中に大根を浸して、10分ほどで取り上げてよく水気を切ります。からすみは薄皮をむいて2~3ミリの薄切りとして、皿の上に並べます。そのままでも良し、オーブンレンジを使う焼き方をしても良しです。大根の塩漬けと重ねて食べます。
からすみ大根 pic.twitter.com/bZr4Gf6D80
— hiroyuki imai (@gonnoski) March 23, 2018
台湾からすみのレシピでは、大根スライスに加えて、ニンニクの芽や長ねぎを切りそろえたものを、一緒に用意するのも一般的です。台湾からすみの食べ方でも試してみてください。
美味しいからすみの食べ方③
からすみのニンニク焼き
からすみがニンニク風味になってマッチしている、おつまみ料理です。この一品も焼き方は簡単で、ニンニクや日本酒好きな人に向いています。
からすみのニンニク焼きの材料
ニンニクはすりおろしたものを1/3程度、またはスライスで。日本酒大さじ1、オリーブオイル、長ねぎ(白髪ねぎ)を使用します。
からすみのニンニク焼きのレシピ
からすみの薄皮をむいて3~5ミリほどの厚さに切り、フライパンにひいたオリーブオイルで焼き上げます。焼き方は念入りにすると固くなるので、調理法は軽く焼き色が付く程度です。にんにく、日本酒を混ぜて味を整えたら盛り付け、最後に生の白髪ねぎを乗せて完成です。
美味しいからすみの食べ方④
からすみパスタ
イタリアではからすみのパスタは、スパゲッティ・アッラ・ボッタルガという人気料理です。パスタにからすみやニンニクやオリーブオイルを絡めれば、チーズとウニと塩辛さがパスタにマッチして、和風のたらこパスタにも負けない味わいです。
からすみパスタの材料
パスタ1人前用です。おろし金などで粉状にしたからすみ適量、千切りからすみ適量、すりおろしニンニク適量、オリーブオイル大さじ2、塩、コショウ、乾燥パセリ、鷹の爪か唐辛子などを少々用意します。
からすみパスタのレシピ
パスタの茹で上げから、レシピのスタートです。フライパンにオリーブオイルを敷きニンニクを焼いたら、ニンニクはいったんお皿に待機します。そのフライパンに粉状からすみや千切りからすみ、すりおろしニンニク、塩コショウ、鷹の爪、パスタの茹で汁を混ぜ合わせ、茹でたパスタを絡めます。
お皿に盛り付けたら、焼いたニンニク、粉状からすみ、乾燥パセリをふりかけて完成です。
美味しいからすみの食べ方⑤
からすみ蕎麦
日本人がよく食べている蕎麦も、からすみと絡めることによって、独特な風味のからすみ蕎麦となります。このメニューは気温の高い夏場に冷やしで食べるのが美味しく、日本酒との相性も良い一品です。
からすみ蕎麦の材料
茹でた蕎麦、めんつゆ、日本酒、おろし金ですりおろした粉状のからすみを多めに用意します。
からすみ蕎麦のレシピ
蕎麦料理の中でも、調理法はかなりシンプルです。蕎麦は茹であげて冷水で締めます。めんつゆを作り、日本酒を加えます。蕎麦を盛り付けて、つゆとからすみ粉をそのままかければ完成です。お好みで唐辛子、刻み海苔なども合います。
美味しいからすみの食べ方⑥
生からすみの手巻き寿司
生からすみを手に入れたなら、手巻き寿司の時にイカと組み合わせることによって、美味しいひと品になります。普通の手巻き寿司とはちょっと違う味を求めている人におすすめします。
生からすみの手巻き寿司の材料
通常の手巻き寿司の材料を準備します。酢飯、海苔、イカの刺身、大葉、わさびに加えて、生からすみが必要です。
生からすみの手巻き寿司のレシピ
細く切ったイカに、生からすみを混ぜ合わせます。海苔を敷いた上に酢飯、大葉、生からすみを和えたイカを乗せて、ぐるっと巻いたらできあがりで、1分もかからぬ調理法です。
美味しいからすみの食べ方⑦
からすみピザ
ピザにからすみを乗せて食べる、イタリアンからすみピザです。普通のピザに乗せるだけの焼き方でも、一味違った大人のピザに早変わりで、ビールや日本酒のおつまみにも最高です。
からすみピザの材料
生地からの調理法では、中力粉、砂糖、ドライイースト、塩、オリーブオイル、ぬるま湯を用いて作ります。粉状のからすみ、ブラックペッパー、ピザチーズを準備します。
からすみピザのレシピ
からすみをピザ生地の上に、おろし金ですりおろします。全体にピザチーズをまぶしたら、オーブンでの焼き方が基本です。200度で13分程度焼き上げます。お好みでトマトやピーマンなど野菜を加えた焼き方もおすすめ。仕上げにブラックペッパーをふりかければレシピの完了です。
美味しいからすみの食べ方⑧
からすみのタラモサラタ
ギリシャではボラの卵をじゃがいもに混ぜた前菜を、タラモサラタ(タラモサラダ)と言い、トルコではタラマと呼ばれている伝統料理です。生のボラの卵ではなくても、からすみを使ってタラモサラタを作ることができます。日本式レシピでは、マヨネーズを混ぜ込む調理法が一般的です。
からすみのタラモサラタの材料
すりおろしたからすみ、じゃがいも、マヨネーズ(レモン汁、酢、オリーブオイル)、たまねぎ、ニンニク、塩、コショウが必要です。お好みで生クリームを混ぜても良いです。
からすみのタラモサラタのレシピ
じゃがいもは茹でてマッシュポテトの状態にします。そこにマヨネーズか、レモン汁+酢+オリーブオイルを合わせたものを混ぜ、みじん切りの生玉ねぎやすりおろしニンニク、からすみもよく混ぜます。皿にレタスやトマトを乗せ、タラモサラタを乗せたら、塩コショウをかけて完成です。
色んなからすみの食べ方を試そう
からすみには意外な歴史的な背景があり、また色んな調理法が存在していました。今では長崎や香川のからすみや、台湾からすみは、通販で容易に手に入ります。そのままでも良し、手間をかけて洋風にしても良しのからすみ料理、色々と食卓やおつまみに加えてみませんか。
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