はじめに
バイカウツギは、漢字で「梅花空木」と書きます。「空木」というのは、枝の中心が空洞になっていることを意味しています。また、花の姿が梅に似ているため、この名がついたとされています。どんな木なのか詳しくみていきましょう。
バイカウツギとは
バイカウツギは、アジサイ科(またはユキノシタ科)バイカウツギ属に分類されています。成長すると約2mになる落葉低木です。5~6月に3cm位の大きさの白い花が咲きます。
バイカウツギの種類
バイカウツギの種類は大きく分けて2種類です。ヒメウツギやサラサウツギなど似ている名前の木もありますよね。たくさんの種類があるのですが、それらはウツギ属に分類されます。バイカウツギもウツギのように枝の中心が空洞になっています。このような木は、ウツギ(空木)と名がつくことがあるのですが、分類上は少し違った仲間になるのですね。
バイカウツギ(自生種)
バイカウツギは、日本では岩手県南部より南の地域で自生します。学名Philadelphus satsumiの中の「satsumi」は、薩摩地方(現在の鹿児島県)産という意味です。市場に出回る自生種は、あまり種類が多くありませんが、古くから芳香を楽しむ花として親しまれてきました。「シコクバイカウツギ」や「ニッコウバイカウツギ」など、地名が名前の由来になっているものがあります。
セイヨウバイカウツギ(園芸品種)
品種改良によって種類が増えました。出回っているものとしてはこちらの種類のほうが主流です。白の花の中心にワインレッドの色目が入る「ベルエトワール」や、白の花が八重咲きになる「スノーベル」などが人気です。
バイカウツギの育て方は?
バイカウツギは耐寒性・耐暑性があり丈夫です。育て方もそれほど難しくはありません。うまく育てると、毎年美しい花を楽しむことができますよ。セイヨウバイカウツギなども種類によって特別違うというわけではなく、バイカウツギの育て方と同じです。
バイカウツギに適した環境について
バイカウツギには日本の気候が合っているので、日本の寒さや暑さはあまり問題ありません。自生範囲の岩手県より南であれば、そのまま夏越し・冬越しが可能です。日なた~半日陰の日当たりのよい場所を好みます。ただし、強い西日はなるべく避けるようにしましょう。
バイカウツギの用土について
砂質土に、粘土分が3割くらい混ざったような壌土質の土を好みます。赤玉土:黒土:腐葉土=3:6:1の割合で混ぜた土が適しています。あまり土質を選ばないので、市販の観葉植物などの培養土でも心配ありません。庭植えの場合は、あらかじめ腐葉土などを入れてから植えるとよく成長してくれます。
肥料について
バイカウツギに使う肥料は、緩効性の化成肥料や、油かす・骨粉を混ぜたものが適しています。肥料を頻回にあげる必要はありません。開花時期を過ぎた後のお礼肥料として、また冬の時期の寒肥として与えます。寒肥をしておくと、春、暖かくなり枝葉を伸ばす際に勢いがついてよく成長してくれます。
庭植えの場合
バイカウツギは庭植え(地植え)と鉢植えのどちらでも育てられます。庭植えのほうが、植え替えなどの手間がなく簡単で、自然に近い形で育てられます。平均的に樹高は2m前後になります。少し剪定をしながら育てれば樹形が広がりすぎる心配もありません。開花時期には芳香があるので香りが楽しめる場所だといいですね。
鉢植えの場合
バイカウツギは鉢植えでも育てられます。鉢植えのバランスで小さめに育てたい場合は、主となる幹をある程度の高さで切り戻すと樹高が抑えられ、コンパクトにまとまります。鉢植えは2~3年に1度は植え替えを行う必要があります。植え替えによりリフレッシュすることで株が傷みにくくなります。
植え付けの方法
苗の植え付けが可能な時期は、2月~3月、あるいは11月~12月です。購入してきた苗がポット苗の場合は、根を少し崩してから植え付けると、最初に根が生育しやすくなります。根が麻布などで包まれた根巻き苗の場合は、周囲より少し高い位置になるよう、布のまま植えます。株の周りに土手を作り水が少し溜まるようにしておくとうまくいきます。
水やりの方法
バイカウツギの水やりは神経質になる必要がありません。庭植えの場合は、自然の雨だけでも十分なことがほとんどです。夏、極端に雨が少ない場合や、鉢植えで土の乾燥が著しい場合では、適宜水やりをします。乾燥したら水をたっぷりと与えるのが基本です。また、挿し木をしている場合は、定着するまで水切れしないように気をつけましょう。
バイカウツギの増やし方は?
バイカウツギを増やす場合、挿し木での増やし方、種からの増やし方があります。種から育てるのは時間もかかり、難しいことがあるので、家庭で育てる場合は、バイカウツギがしっかりと茂っているのなら、挿し木での増やし方のほうがおすすめです。
挿し木での増やし方
バイカウツギの増やし方としては最も一般的です。挿し木は6月~7月上旬が適しています。その年に新しく伸びてきた枝を、先端から10cmくらいで切ります。枝の部分が茶色く固くなっている(木質化)場所を選びましょう。切り口に発根剤を塗り、土に挿し明るい日陰で管理します。根が出るまでは水を切らさないようにやります。発根するまでは少し手がかかりますが挑戦してみてくださいね。
タネからの増やし方
バイカウツギは、初夏~夏の花期が終わると、秋に種が成熟します。その種を採れば種から増やせます。まずはポットなどに種をまき、ある程度まで苗が育ったら鉢に植え替えるか庭植えにします。
バイカウツギの剪定
バイカウツギは枝がよく伸びるので、樹形を整えるために毎年剪定する必要があります。夏から秋にかけて芽が作られ、それが次の年に花を咲かせます。冬に強く剪定すると、花の芽を切り取ってしまう場合があります。花が咲き終わったら早い時期に剪定を行いましょう。
剪定の方法
花付きが悪い古い枝は、株元のあたりから剪定し、間引きます。枝が込み合っている部分も整理することで、全体の日当たりや風通しが良くなります。伸びすぎた枝も、枝分かれしている部分から切り取りましょう。基本的な剪定はこのくらいで十分です。間引きで剪定した枝を挿し木に使うこともできます。
強い剪定をする場合
基本的には軽く剪定することで保てますが、株が大きくなり古くなってくると花が咲かないなどのトラブルが出てくる場合があります。そのような際は、古い枝を株元からバッサリと切り(切り戻し)強い剪定を行います。翌年は花が咲かないことになりますが、丈夫なので枯れずにまた新しく枝が出てきます。
バイカウツギの時期別お手入れ
1年を通してのバイカウツギの育て方ポイントです。時期別にみていきましょう。
春
春は、バイカウツギの花が咲く前の季節です。春、暖かくなると落葉期を終え、新しい葉が出てきます。落葉期が終わる3月ごろまでには、植え替えや植え付けを済ませておきましょう。気温が上がり害虫が出てくる時期なので見つけ次第対処しましょう。
夏
初夏の季節、バイカウツギはたくさんの花を咲かせ見頃を迎えます。暑い夏でも特に対策せずに夏越しができます。水やりは、庭植えの場合はあまり必要ありませんが、鉢植えの場合は土が乾いていたらたっぷりと与えます。花が咲き終わったら早めに剪定を行っておきましょう。挿し木をするなら真夏までに行います。
秋
バイカウツギは秋に気温が下がってくると落葉します。葉が落ち枝だけになった頃が、植え替えや植え付けに適した時期です。植え替えや植え付けの際には、たい肥や腐葉土を土に混ぜ込み、肥沃な状態にしておきましょう。秋は基本的に放任でも問題ありません。
冬
バイカウツギは日本に自生する木なので、寒さに強く冬越しも心配ありません。ただし、雪が多い地域では、枝に雪が積もると、重みで折れてしまう恐れがあります。あらかじめ枝を束ねておくなどの工夫が必要です。1~3月の寒い時期は、春に備えて肥料を与えましょう。
バイカウツギの花が咲かないときは
バイカウツギは、5~6月の初夏に開花の時期を迎えますが、花が咲かないとがっかりしてしまいますよね。花が咲かない場合、育て方に間違いがあるかもしれません。花が咲かないのにはどんな原因が考えられるのでしょうか。
日照時間が足りない
半日陰の環境でも育ちますが、日陰で日照時間があまりにも足りないと、花付きが悪くなります。日当たりをチェックし、花が咲かない原因だと思われる場合は、鉢植えなら日なたに移動させましょう。庭植えの場合、植え替えは難しいかもしれませんが、込み合った枝を適度に剪定することで、日当たりが改善する場合があります。
花芽を剪定してしまった
バイカウツギは、夏から秋にかけて翌年に咲く花の芽がつきます。剪定は開花時期が過ぎたら行うべきなのですが、この時にバッサリ切りすぎてしまうと、花が咲かないことになってしまいます。剪定の時期を間違えないこと、花芽を落とさない程度に注意して剪定することがポイントです。
注意したい病気や害虫
うどんこ病
うどんこ病は、ウドンコカビ科の菌によって起こるもので、庭木や家庭菜園などでよく発生する病気です。葉に白の斑点模様が広がっていきます。バイカウツギも、枝や葉が茂ってくると、風通しが悪く蒸れてうどんこ病が発生しやすくなります。風通しの良い場所に移動したり、生い茂った枝葉を整理したりして防ぎましょう。
アブラムシやカイガラムシ(害虫)
バイカウツギの育て方の中で注意したい害虫は、アブラムシやカイガラムシです。アブラムシは春先に新しい茎や芽に集まりやすくなります。この写真はカイガラムシです。カイガラムシは株が弱っている時、風通しが悪い時につきやすく、茶色の小さな粒のような虫が確認できます。木酢液や市販の専用駆除剤などで対処しましょう。
まとめ
いかがでしたか?バイカウツギの育て方や増やし方などについてご紹介しました。基本的には丈夫な木なので、ポイントをおさえておけばトラブルは少ないでしょう。初夏にさわやかな白い花とフレッシュな緑の葉が見られるのが楽しみになりそうですね。
バイカウツギの詳しい特徴やウツギについて気になる方はこちらもチェック!
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