はじめに
ホイールインセットという言葉は自動車のホイールを社外ホイールに交換したことのある方々なら必ず聞いたことのある言葉です。昔ではオフセットなどとも呼ばれていたこの表現は、ホイールの何を示す言葉なのでしょうか。
今回はホイールインセットに関わる基本情報から計算方法、ホイールインセットの注意点などをお伝えします。これから社外ホイールの購入を考えている方なら必ずチェックしたい情報が満載です。
ホイールインセットとは
ホイール中心線と取り付け面の距離
ホイールインセットとは、ホイールの中心線とホイール取り付け面の間の距離を示すものです。
自動車のホイールの中心周りには小さな穴が4-5穴あるのですが、これらの穴は自動車の車体側(足回り)に取り付けられているハブボルトに通すための穴になります。
4本または5本のハブボルトにこれらの穴を通した状態でホイールナットを締めることでタイヤは自動車に固定されているのです。
個の取り付け面の位置と、取り付けたホイールのちょうど中心を通る線の間の最短距離を示す数値、それがオフセットとなります。
車検やセッティング、カスタムに必要不可欠な要素
ホイールインセットは自動車の車検やセッティング、そしてカスタムを行ううえで必ず理解する必要がある要素です。
ホイールインセットの数値が数ミリ変化するだけでフェンダーとタイヤの位置関係やトレッド数値が変化、そして走行性能などにも大きく関わってきます。同時に視覚的にも印象が変わってくるのです。
車両によっては取り付けられるホイールインセット数値が異なりますので、ホイール購入時などには必ず適合や許容範囲を理解しておく必要があります。
ホイールインセットを知るためのホイール知識
ホイール自体のサイズ
ホイール自体のサイズを表す表記、つまりホイール外径とホイールの幅を理解するとホイールインセットの表記や見方、計算のイメージがしやすくなります。
チェックしておきたいのは、「リム径 (インチ)x リム幅(インチ)」です。リム径はホイール外寸を示す表記で、リム径と一致するタイヤのみ組むことが可能です。
リム幅はタイヤの外側についているフランジの内側の幅を示す数値になります。このリム幅が示す数値のタイヤ、ないしは適合する(許容範囲)のリム幅タイヤであれば取り付け可能です。
その他のホイール要素
上記で紹介した要素以外に、P.C.Dやホイール穴数、ハブ径などがあります。
ホイール穴数はホイールの中心にあるハブ径の周りを加工用に存在する穴で、この穴を車体側のハブボルトに入れることでホイールを固定します(すでに紹介したとおり)。
P.C.Dはそれらホイール穴の、それぞれの穴の中心を通る点を結んだ時にできる仮想の円の直径を示す数値です、つまりホイールのP.C.Dは取り付け車両のハブボルトの位置関係で変化するので車両によって違いが出てきます。
P.C.D値100の車にはP.C.D100のホイールしか取り付けられません。
ホイールインセットの表記方法
昔はオフセットと呼ばれていた
ホイールインセットという表現が使われるようになったの2008年です、それまではオフセットと呼ばれる表記方法が日本国内で用いられてきました。
今でもホイールインセットと呼ばずにオフセットと呼ぶユーザーの方は一定数いるのですが、意味を理解したうえで使っているのであれば名称は特に問題ないでしょう。
2008年に表記方法がホイールインセットに適合された理由は、海外ではホイールインセットで表記するのが基準となっているからです。ということですので、日本国内ならまだオフセットで表現しても問題ないでしょう。
インセット・ゼロセット・アウトセット
こうして国際基準となったホイールインセット表記ですが、取り付け面との位置関係によってゼロセットやアウトセットと表現が変わります。
これらの違いですが、ホイール取り付け面よりも車体側にホイール中心線がある場合にはインセット、取り付け面と中心線が垂直線上(オフセットがない)にある時はゼロセット、そして取り付け面の外側にホイール中心線があるときにはアウトセットと呼ぶ、これら3つの違いです。
2008年以前の古い表現でいえば、インセットがプラスオフセット、ゼロセットはゼロオフセット、アウトセットは-オフセットとなります。
ホイールインセットの仕組み:数値を基に説明
ホイールインセット40
ホイールインセットをより具体的に説明するためにホイールインセット40の15インチ x 6.5Jのホイールを例に紹介します。
見方として、このホイール情報を見ただけでわかるのはホイール取り付け面から内側(車体側)40mmのところにホイールの中心部分が位置しているということです。
この時点でサスペンションと内側のタイヤの間隔が10mm、重りを付けた糸をフェンダーに沿って地面に降ろした時にその糸とタイヤの間隔は5mmとしておきましょう。
サスペンションやフェンダーとの間隔
上記の状態であれば、インセットの数値をあと5mm小さくすると5mmフェンダー側に寄り、反対にサスペンションから同じ5mm離れることとなります。
これと同じ仕組みでインセット数値がこれより10大きいものを取り付けるとサスペンションとタイヤの間隔は0mm、つまり接触するのです。
フェンダーに関しては数値・理論上ではまさしくツライチ状態になりますがフェンダーと干渉する可能性があるので注意が必要となります。
ホイールリム幅を大きくすると
全く同サイズのホイールでリム幅のみ6.5Jから7.0Jに変更すると、リム幅が0.5J分太くなります。この場合外側と内側両方向に伸びるので、6.35mm分狭くなるということです。このホイールを取り付けるとサスペンションとタイヤは接触しませんがフェンダーからはみ出します。
ホイールインセットの計算方法
そんなに難しくない
ホイールインセットの計算方法はそれほど難しくありません。
ホイールインセットの計算において影響するのはホイールの幅や横方向に関する数値ですから、リム幅とオフセット数値をインチからmm単位で表記するメトリックに換算してしまえば計算はほぼ終了です。
純正ホイールや純正タイヤを取り付けた状態でタイヤのオフセット値やリム幅を確認して、タイヤ内側とサスペンションの間隔やフェンダーとの間隔をチェックしておけは後々の社外品適合の可否の確認や取り付けもスムーズに進められるでしょう。
基準を作っておく
純正ホイールや純正タイヤを取り付けた状態でタイヤのオフセット値やリム幅を確認して、タイヤ内側とサスペンションの間隔やフェンダーとの間隔をチェックしておけは後々の社外品適合の可否の確認や取り付けもスムーズに進められるでしょう。上記で紹介した例をベースに行えばできるはずです。
ホイールインセットと車検
フェンダーからはみ出してはいけない範囲がある
ホイールインセットと車検は切っても切れない関係です。なぜなら車検ではホイールのある部分がフェンダーからはみ出しているかどうかを確認しているかです。
ホイールの中心を通る地面に垂直な線があるとして、その線から前方向に30度と後ろ方向に50度の範囲、この2つの範囲にあたるタイヤとホイールがフェンダー内に収まっている必要があります。
この範囲内にあるタイヤやホイールがフェンダーからはみ出していると車検に通りません。
許容範囲さえパスすれば問題ない
しかし、別の言い方にすればこの許容範囲さえ満たしていれば車検時に検査官から何も指摘はされないということです。
とはいえ検査官にも個人差がありますので、指摘を受けそうなものや仕様で車検を受けないようにするのが無難でしょう。
そのためにもオフセットの正しい計算方法を覚えて余裕もって車検をパスできるようにしておくことが車検を円滑に終えるために重要です。
ホイールインセットを利用したカスタム
ツライチ
ホイールインセット・アウトセット・ゼロセットを利用したカスタムの1つがツライチです。ツライチはフェンダー面とホイール面が同じ垂直線上にあるような見た目のカスタムになります。
フェンダーの内側に収まっているタイヤと違い、ツライチタイヤでは迫力があります。ツライチにすると同時にタイヤ外径を大きくするのが主流です。
鬼キャン
鬼キャンとは鬼のようなキャンバー、または鬼のようにキャンバーを効かせたキャンバー角度のことです。
ネガティブキャンバータイプの鬼キャンは正面からの見方では完全なるハの字、ポジティブタイプで正面からの見方では逆ハの字となっています。一般的なキャンバー調整とは違い、計算的に必要以上に傾けているので性能は良くありません。
ホイールインセットを利用したセッティング
ワイドトレッド化
カスタムとは違い自動車の走行性能を高めるために行うのがチューニングないしはセッティングです。
ホイールインセット・アウトセット・ゼロセットを使ったセッティングとして挙げられるのがワイドトレッド化になります。
トレッドとは地面に接する左右タイヤの中心線間の距離を示すものです。トレッドの違いで走行性能が大きく変化します。トレッドを広くすると走行時の安定性が増すのがメリットの1つです。
フェンダーの許容範囲を超えないようにする
ワイドトレッドにしてもフェンダーの許容範囲を超えるとアウトです。車検に通らなくなるのでやめておきましょう。フェンダーの許容範囲に適合する範囲でトレッド化してください。
ホイールインセットの注意点
サスやフェンダーのタイヤとの接触に気を付ける
ホイールインセットの注意点はサスやフェンダーとタイヤが接触しないように気を付けることです。
ホイールやタイヤを変更することなくそのまま車を運転するのであれば、インセット・アウトセット・ゼロセットなど気にする必要ありません。
しかし、社外ホイールを付けたい、太いタイヤを履かせたいとなって社外ホイールを付ける場合などはインセットの違いが影響するので適合するものを計算などから導く必要があります。
異音やタイヤの摩耗の原因に
仮にタイヤがサスペンションに接触したまま走行するとタイヤの編摩耗や車高調のスプリングシートやロックシートが擦ってしまう可能性もあるのです。
ホイールサイズの見方や計算方法を学んで適合するものを取り付けることが大切なのです。
まとめ
自動車のホイールやタイヤを交換するのは手っ取り早く着手できるセッティング・カスタムの1つです。
しかし、インセット・アウトセット・ゼロセットやP.C.Dなど車両に適合するものや取り付けても異音や干渉などがなく、車検に通るように調整するのが重要となります。
ホイールサイズの見方やインセットの見方を覚えて計算方法も理解することで、許容範囲にホイール選びが可能となるのです。
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