はじめに
車のタイヤを性能・ドレスアップの目的でもう少し外側に傾けたい・内側に傾けたい、または鬼キャン車両を作りたいなど、キャンバー角をつけるには部品がキャンバーボルトです。
キャンバーボルトの仕組みや、そもそもキャンバーの仕組み、付け方や付け方の注意点、必要な工具などを、キャンバー角をつけるには何が必要か詳しく紹介します。
車検に対応しているのか気になるところですので車検との関係性もお伝えします。キャンバーボルトの仕組みを理解してキャンバーボルトの取り付けを楽しみましょう。
キャンバーとは
タイヤの倒れ角度
キャンバーとはタイヤがどれくらいの角度で倒れているか(地面に接しているのか)を表すものです。アライメント調整作業で調整する要素の1つで、トーイン・トーアウトやキャスターなどに並ぶ重要な調整要素になります。
車のタイヤを正面から確認すると、地面に垂直にタイヤが接している場合やななめ外側に向かっている車両、斜め内側に向かって倒れている車両など様々です。
キャンバーの角度で名称が違う
キャンバーの角度ごとに名称が付いています。車を正面から見た時にタイヤがななめ外側を向いて取り付けられている場合の角度をネガティブキャンバー、反対にタイヤが斜め内側に向いて取り付けられている時の角度をポジティブキャンバーといいます。
キャンバー角度によって操縦性や車の挙動に変化起きるため、車両の使用目的に合わせてキャンバー角度は調整されることが多いです。
モータースポーツではコーナーリング時にタイヤのトレッド面が地面にすべて設置するようにキャンバー角をセッティングするのが主流となっています。
調整式アッパーマウントを使ったキャンバー調整
キャンバー角をつけるには、調整式アッパーマウントが組まれた車両ならアッパーマウントの調整のみでキャンバー調整が可能となります。調整式アッパーマウントは、車体に固定する3つのボルトとナットに加えてキャンバー調整用のネジが4つ付いています(調整には六角レンチを使用)。
これを緩めて車体の内側に取り付ける(=ネガティブキャンバー寄りになる)又は外側に取り付ける(ポジティブキャンバー寄りになる)ようにして調整するのです。
キャンバーと言えば鬼キャン車両
キャンバー角をとにかくつけてタイヤを斜めらせることを、鬼キャンと呼びます。鬼のようにキャンバーのついた車です。鬼キャンのメリットはドレスアップ効果と自己満足感だけです。上下にまともにストロークせず乗り心地が悪い、タイヤが編摩耗する、などのデメリットが満載です。
とはいえ、鬼キャンだから車検に通らないというわけではないので、一般的な車といえば一般的な車となります。
キャンバーボルトの仕組み
アッパーマウントで調整できない場合に活躍
調整式アッパーマウントはアッパーマウントの調整でキャンバー調整が可能ですが、どの車両にもそれが付いているわけではありません。そんな方々が角をつけるにはキャンバーボルトを使用します。
キャンバーボルトはキャンバー調整を行うためのボルトです。サスペンションとナックルの取り付けブラケットの上下2本のボルト取り付け部分で、上下どちらかにキャンバーボルトを使って調整する仕組みとなっています(付け方は口述)。
ナックルアームを寝かせてキャンバー角を付ける
角をつけるにはキャンバーボルトを使う方法がありますが、上下のナックルとブラケット固定ボルトのうち1本をキャンバーボルトを取り付けるだけでキャンバー角が付くのはナックルアームの取り付け位置変化によるものです。
上述したように、ナックルアームはサスペンションのブラケットに2か所で取り付けられています(ストラット式サスペンションの場合)。
このブラケットの上下どちらかのボルトをキャンバーボルトに交換すると、純正ボルトよりもネジ径が細いので左右方向にナックルを動かして調整できるようになるのです。
上下どちらに付けるかは、キャンバーを付けた時に他の部品に当たらないかどうかで決めます。片方のボルトは純正サイズで固定しているので、ガタつくことなくキャンバー調整できるという仕組みになっています。
角をつけるにはナックルを傾けるという仕組みを理解する必要があるのです。
キャンバーボルトのデメリット
キャンバーボルトが緩む
デメリットの1つは、キャンバーボルトを使うリスクは走行しているうちにキャンバーボルトが緩む可能性があることです。純正ボルトでナックルをブラケットに取り付けても緩むときは緩みますが、純正ボルトより細いボルトを使うため締め付けトルクが純正サイズよりも低くなります。そのため緩む可能性が高くなるのです。
締め付けが強すぎるとボルトが切れる
キャンバーボルトのネジ径が純正サイズより細いので、純正サイズと同じような力加減での付け方をするとボルトが切れるというデメリットがあります。緩みやすいためできるだけ強く締め付けたいところですが、ボルトが切れてしまってはどうしようもありません。
緩みやすいけど締め付けすぎると切れる、それがキャンバーボルトを取り付けるリスクです。
キャンバーボルトの注意点
キャンバーを付けるとタイヤが編摩耗を起こす
キャンバーボルトや調整式アッパーマウントを使ってキャンバー角を異常に変化させるとタイヤに編摩耗が発生します。
本来トレッド部分全体が地面に接するようなキャンバー角度になっているので、その状態からネガティブキャンバーやポジティブキャンバー側にキャンバー角を与えるとタイヤの一部分だけが地面に接する形となります。
編摩耗が進んでタイヤにスリップサインが見えてくると、部分的に減っているにも関わらず車検に通らなくなるので注意しましょう。
キャンバーボルトに緩みがないか定期的に確認する
キャンバーボルト径が純正サイズより細くなるので定期的にキャンバーボルトが緩んでいないかどうか確認するようにしてください。緩んでいないかどうか確認するための方法としてアイマークを付ける手段があります。アイマークを使えば一目で緩み具合の判断が可能です、詳しくは口述します。
キャンバーボルトの取り付けに必要な工具
ジャッキアップ関係の工具
キャンバーボルトの取り付けには車をジャッキアップする必要があります。ジャッキアップに必要な工具は、フロアジャッキ、ジャッキスタンド、車高が低い車をジャッキアップする場合にはスロープが別途必要です。
フロアジャッキで車を持ち上げた状態で作業をする人がいますが、万が一フロアジャッキが落ちてきて下敷きになることがあるのでジャッキスタンドを必ずかけましょう。
インパクトレンチやメガネレンチ
インパクトレンチとレンチは、ナックルとサスペンションのブラケット部分を固定しているボルトを外すために使用します。すでに紹介したようにキャンバー角の仕組みのメインとなる場所です、インパクトレンチは高額のためメガネレンチを2つ購入して使う方法でも良いでしょう。
キャンバーボルトの取り付け作業その1
ジャッキアップする
まず車両をジャッキアップします。フロントサスペンションをジャッキアップする流れで紹介するので、メンバー部分にフロアジャッキを当ててジャッキアップしてください。後ほどの作業をしやすいように、できるだけ高くまでフロアジャッキで車を持ち上げましょう。
ある程度の高さまで持ち上げたらジャッキスタンドの高さを左右合わせてジャッキアップポイントに当てて、フロアジャッキを降ろします。ジャッキアップポイントは事前に確認しておきましょう。
ジャッキアップを終えたら、タイヤを外してサスペンションを弄れる状態にしてください。タイヤを外すにはホイールナットの径と同じサイズの十字レンチがあると作業しやすいです。
キャンバーボルトの取り付け作業その2
ナックルアームのボルトを交換する
タイヤを外したら、ナックルアームとブラケットを固定している2本のボルトを緩めます。1本はキャンバーボルトに交換するので外し、キャンバーボルトに交換しましょう。
ネガティブキャンバーを付ける付け方はハブ上部を押すなどしてナックルをエンジン側に傾けた状態を作り出して固定します。ポジティブキャンバーはこの反対の作業をしてください。純正ボルトを片方に必ず取り付けて上下に動かないように固定しましょう。
トーイン・トーアウトをアライメント調整する
角をとりつけるにはこれで十分ですが、ナックルの角度を弄ったことでトーイン・トーアウトにズレが起きます。このズレを調整するためにアライメント調整が必要となるのです。
トーイン・トーアウトを調整するには様々な方法がありますが、筆者はアライメントゲージを使ってトーイン・トーアウトを調整しています。
アライメントゲージの代わりとなる工具は自作もできるので、自分に合った調整手段を確保しましょう。トーイン・トーアウトがズレたままだとタイヤの摩耗に良くないので、必ず調整してください。
キャンバーボルトと車検
キャンバーボルトは車検に問題なし
1-2年で必ず受けなければならないのが車検です。キャンバーボルトを取り付けた車両は車検に通らないということはありません。というのも、キャンバーボルトそれ自体が車検通過に関係ないからです。それよりも重要なのは、キャンバー角を変化させたことで変化した他の調整部分です。
サイドスリップやタイヤのチェックが待っている
車検の検査ではサイドスリップのテストやタイヤにスリップラインが出ていないかどうかなどを確かめます。ステアリングをまっすぐにした状態で1m走って、ズレがないかどうかを確かめるのがサイドステップです。
1m走ってプラスマイナス5㎜以内のズレであれば車検を通過できます。タイヤはスリップラインがでてくるほど消耗していなければ大丈夫です、鬼キャンにしている方は気を付けましょう。
タイヤがフェンダーからはみ出さないように
タイヤの鉛直面と車軸が交わるところで、前方30°と後方50°の角度内の部分にあるタイヤに該当する部分がフェンダーからはみ出していなければ車検に通ります。
つまり、どれだけネガティブキャンバーを付けて寝かせてもその部分がフェンダーからはみ出していなければ問題ということです。
反対に言えば、鬼キャンのように強烈なネガティブキャンバーをつけてなくても、その部分がフェンダーから外に出た時点で車検には通らないということになります。
まとめ
キャンバー角をつけるには必ず必要なわけではありませんが、便利なのがキャンバーボルトです。キャンバー角をつけるにはとサスペンションブラケット上下2つのボルトを調整してズレを作ることで簡単に調整できます。
しかし、ボルトが緩みやすいデメリットやタイヤの消耗、サイドスリップのズレなどデメリットもあるのです。工具をある程度そろえる必要があります。キャンバー角を弄ることが本当に必要かどうか、メリット・デメリットを理解したうえで作業にかかりましょう。