はじめに
今回はストラット式サスペンションの紹介です。自動車のサスペンションに興味がある方や自動車に興味がある方なら必ず一度は聞いたことがある部品の1つ。タイヤを外すだけで簡単に見えますが、いったいこのサスペンションはどのような意味・特徴を持っているのでしょうか。キャンバー調整はできるのでしょうか。
ストラット式サスペンションとは
自動車に使うサスペンションの1種
ストラット式サスペンションとは自動車に使うサスペンションの1種です。ストラット式サスペンション以外には、ダブルウィッシュボーンやマルチリンク、トーションビームにトレーリング式サスペンションなどが存在します。このうち、ストラット式サスペンション、ダブルウィッシュボーン、マルチリンクそしてトレーリング式サスペンションは独立懸架式サスペンションと呼ばれます。なお、トーションビーム式サスペンションは車軸懸架式と呼ばれています。
独立懸架式と車軸懸架式
独立懸架式サスペンションと車軸懸架式サスペンションは異なる構造しています。車軸懸架式サスペンションは左右の向かい合う車輪をフレームから独立させた1本の軸で綱が合わせた構造をしているのに対して、独立懸架式サスペンションは左右それぞれのサスペンションが独立した構造となっているのです。もっとも簡単な構造と言われる車軸懸架式サスペンションですが、左右輪がつながっているため左右のタイヤどちらかに入力が入ると、もう片方にも入力が入って動いてしまうというデメリットがあります。
左右独立して動くサスペンション構造
それに対して独立懸架式サスペンションは独立した状態で車体に取り付けられている構造となっているので、タイヤを経由してサスペンションに入力が入っても反対側のサスペンションにその入力から入ることがありません。これによってロール時や段差に進入したときの車両の傾きを減らすことができるのです。これによって乗り心地の向上やコーナーリング性能の向上などが期待されます。
ストラット式サスペンションの特徴
コイルスプリングとショックアブソーバーが一体
ストラット式サスペンションの特徴の1つがコイルスプリングとショックアブソーバーが一体になっていることです。一体化したコイルスプリングとショックアブソーバーでサスペンション自体の軸なる枠割を果たしています。ショックアブソーバーの外側・周りを囲むようにコイルスプリングが取り付けられているのです。ちなみに、シェルケースと呼ばれる部品がアブソーバーと一体になる形でショックアブソーバー下部に付いています。
ストラット式サスペンションの構造
12点の部品から構成される
ストラット式サスペンション自体は12点の部品から構成されています。それらの部品を下から順に紹介しますと、ハブキャリア結合部、ショックソーバーとスタビリンク取付部、スプリングシート、フレキシブルカバー、スプリングインシュレーター、コイルスプリング、バンプストップラバー、ベアリング・スプリングアッパーシート、アッパーマウント、アッパーサポートインシュレーター、そしてマウンテンキャップです。
ロワアームやナックルと組み合わせて組み付ける
12点の部品から構成されるストラット式サスペンションを車両本体に取り付ける時には、ロワアームとナックルと呼ばれる部品も一緒に取り付けられます。これらの部品をまとめて、ストラット式サスペンションの完成です。ハブキャリア部分にナックルと取り付け、その取り付けたナックルにロワアームを取り付けます。
ロワアームとアッパーマウントで車体へ固定
そしてさらにロワアームをクロスメンバーに取り付けることで車体と繋ぎます。サスペンションのアッパーマウントにある3本のボルトをボディに開けられた穴に通してナットを締めボディに固定する、これでボディへの取り付けは完了です。
ストラット式サスペンションのメリット
部品点数が少ない
ストラット式サスペンションを採用するメリットの1つが部品店の少なさです。ストラット式サスペンションはシンプルな構造をしていることもあり部品点数を少なく抑えることに成功しています。ストラットと同様に採用率の高いダブルウィッシュボーン式サスペンションと比べると部品点数の差は明らかです。部品点数が少ないのでサスペンション交換時や取り外し時の着脱も工程が少なく済みます。
バネ下重量が小さい
もう1つのメリットはバネ下重量が小さいことです。サスペンション構成部品にブレーキ関係部品やドライブシャフトなどの重量をバネ下重量といいますが、ストラット式サスペンションでは部品点数の少なさも影響してこの重量が少なく抑えられています。これの意味は、路面からの突き上げ感の減少や全体的な性能の向上となっています。ホイールを軽くするとバネ下重量を小さくできるので意味があるのです。
ストラット式サスペンションのデメリットその1
剛性が低い
ストラット式サスペンションのデメリットの1つが、ダブルウィッシュボーンと比較したときに剛性で劣っている点です。ストラット式サスペンションを採用した自動車がコーナーを曲がる時、サスペンションには横方向の力がかかってしまいます。これによってショックアブソーバーが本来持っている性能を発揮できないのです。ショックアブソーバー内のピストンロッドと呼ばれる部品がなめらかに動かないのが原因となります。
ダブルウィッシュボーン式はどうなっているのか
これに対してダブルウィッシュボーン式サスペンションはロワアームだけでなくアッパーアームと呼ばれるアーム類のパーツが取り付けられます。アッパーアームはサスペンション上部に取り付けるパーツでショックアブソーバーを含むサスペンションをしっかり支えられるのです。これによってサスペンションの剛性が向上することとなります。これがストラット式サスペンションよりも剛性が高くなった理由です。性能的に非常に意味のあるサスペンションですが、交換の際には部品点数が増えるというデメリットがあります。
ストラット式サスペンションのデメリットその2
サスペンションの設計自由度が低い
ストラット式サスペンションのデメリットその2はサスペンションの設計自由度が低いということです。これはダブルウィッシュボーン式サスペンションと比較した時の話になります。アッパーマウントと除いた場合、ストラット式サスペンションでは車体との固定を行う部品はクロスメンバーとナックルに取り付けるロワアームのみです。しかし、ダブルウィッシュボーン式サスペンションではロワアームに加えてアッパーアームと呼ばれる部品をサスペンション(ショックアブソーバー)上部に取り付けることで、ストラット式とは異なる足回り調整作業ができるのです。
ストラット式サスペンションの交換手順・外し方
交換手順・外し方その1:ジャッキアップする
ストラット式サスペンションを取り外す場合には、作業対象車をジャッキアップするところから始まります。ストラット式サスペンションの交換、つまりはサスペンション交換を意味することとなるので車載ジャッキではなくフロアジャッキで車体を持ち上げ、ジャッキスタンドの高さを可能な限り高く設定してジャッキアップを行います。ジャッキアップポイントを事前にディーラーや行きつけの整備士に確認しておきましょう。ジャッキアップを終えたら、ないしは行う段階で、タイヤを取り外せるように段取りを取ってください。インパクトレンチを持っているならば、ジャッキアップしてからタイヤを外しても問題ありません。
交換手順・外し方その2:タイヤハウス内のボルト・ナットを取り外す
ジャッキアップしてタイヤを外したら、ストラット式サスペンションを固定しているボルトやナットを外していきます。この時に外す必要のあるものは、ハブキャリア結合部(サスペンションブラケット)のボルト2本とナット2個、スタビリンクを取り付けているボルト1本、ABSホースブラケット固定ボルト1本です。サスペンション交換時に外す必要があるボルト・ナットはこれらだけですので、これらをラチェットレンチやメガネレンチ、そしてインパクトレンチを駆使して取り外します。
アッパーマウントボルトのナットをすべて外す
上記のボルトをすべて外し終えるとストラットサスペンションがつられたような状態となります。これは、アッパーマウント部分でのみ固定された状態となっている意味になります。サスペンションを持った状態でアッパーマウントについているボルトを固定するナットを緩めていきます。この時、最後のナットを緩め終えるとサスペンションが重力で地面に落ちてくるので片手でサスペンションを持っていることを確認してから外してください。これで交換手順の1ステップ終了です。
ストラット式サスペンションの取り付け方
ブラケットとナックルにボルトを通す
取り付ける時はまずアッパーマウント上のボルトを車体の穴に通して、サスペンションブラケットとナックルを合わせてボルトを先に通してしまいます。こうすることによってサスペンションが落ちてくる心配がありません。
アッパーマウント側の固定
ブラケットとナックルにボルトを通してとりあえず固定できたら、アッパーマウント側を先に固定します。穴の位置とボルト位置を確認しながら手際よくさすようにしてください。3本とも穴に入ったらナットを締めていきます。固定してかまいません。
下部ボルト類を固定する
上記作業を終えたらABSホースブラケットやスタビリンクを再び車体に取り付けます。足回りの重要部品たちですので、緩まないようにしっかり締めてください。この時にサスペンションブラケットのボルトもナットでしっかり締めるようにしましょう。取付の際はインパクトレンチを使わずにメガネレンチを使って人間の力の範囲で締め付けるほうが部品を壊すことなく安全です。
ストラット式サスペンションとキャンバー角
ストラット式サスペンションにキャンバー調整を行うことは可能です。キャンバー調整にはキャンバーボルトを使用します。ブラケットとナックルを固定する2本のボルトのうち1本、下側のボルトをキャンバーボルトに交換し、上側を緩めた状態にしたらローターを押し込んで内側に傾けるのです。傾けた状態で純正ボルトキャンバーボルトを固定したら完成です。
まとめ
部品点数の少なさやそれによる製造コストの低さ、そして交換作業のしやすさなど、ストラット式サスペンションはDIYで自動車整備をしてみたい方にとって着手しやすい意味のあるサスペンション構造です。キャンバー調整も可能ですので、タイヤ交換の次いでに少しいじってみるのも良いでしょう。性能の有無はさておき、お手頃価格の車高調キットなども発売されているので、予算に合わせて足回りを弄ってみる意味はあるでしょう。
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