自作ナイフの鋼材とは?
刃物用の鋼材!
ナイフに使われている鋼材というのは通常の鋼材ではなく、熱処理をすることで固く鋭い刃が付く刃物用の鋼材が多いです。この刃物用鋼材は数多くの種類があって用途に合わせたものを使うことで使い心地の良いナイフを作ることができます。
安い大量生産のナイフは「ステンレススチール」などの表記がありますが、最低品質のものが多く、長持ちすることはあまりありません。
用途に合わせた特性がある!
刃物用鋼材はそれぞれに用途に合わせた特性があります。例えば、刃が欠けたり潰れたりしにくい鋼材や、サビに強い鋼材、ミラーフィニッシュがしやすい鋼材など様々です。
自分が使いたい用途に合わせて使わないと鋼材の力は発揮できないので、よく考えてから購入しましょう。また、加工の難易度もあるので加工する道具が少ない人などはその事も考えなければいけません。
黒皮付きと表面研磨済み
販売されている刃物用鋼材には次のような2種類の鋼材があります。一つは黒皮(酸化皮膜)付きの鋼材です。こちらは鋼材を作った時にできた酸化皮膜がそのまま残っている状態で材料の表面を研磨しないとナイフにはできません。
ベルトサンダーなどの電動工具があると楽ですが、無いと黒皮を剥がすのが非常に大変なので注意しましょう。工具が少ない人には黒皮を取り除いて販売されている表面研磨済みのものをおすすめします。
自作ナイフの鋼材の種類!
炭素鋼
炭素鋼は錆びやすいですが、よく切れる刃がつく鋼材です。価格も安めで大きい材料も手に入りやすく、加工難易度も低くいので良い自作ナイフをつくりやすいのですが、錆びやすさのせいで加工中と完成後のメンテナンスが大変なのが残念な点ですね。
ステンレス鋼
ステンレス鋼は現在の自作ナイフでは1番オードソックスな材料です。サビに強く、鋭い刃がつきやすいのが特徴で一番種類が多く販売されています。しかし、加工する際にはステンレス専用の工具が必要なことから自作ナイフを作る際の初期費用が高めになるのが考えどころです。
積層鋼
積層鋼はいくつかの鋼材を重ねて鍛造された鋼材です。加工すると独特な積層模様が現れるのでコレクション用のナイフ等にはよく使われます。使われている鋼材によって特性が変わるので、何が使われているのかをよく調べてから購入するようにしましょう。
粉末鋼
粉末鋼は金属粉末を特殊な製法で圧縮して作る鋼です。一般的な鋼材と違ってほぼ錆びることもなく、一部では熱処理することもなく刃物になる鋼材で最強の自作ナイフが作れる鋼材となっています。
しかし、加工の難易度が非常に高くてプロのナイフメイカーでさえ、苦労する鋼材なので入門者は販売されていても購入しないでください。
自作ナイフの鋼材! No.① ATS-34
自作ナイフの定番鋼材!
ATS-34は日立金属の特許鋼種で自作ナイフとして販売されている鋼材では定番となっている材料です。販売されている大きさの種類も多く、いろんな大きさのナイフを作ることができます。この鋼材は近代ナイフの父であるR.W.ラブレスが使用して以来、自作ナイフの主流となっています。
安定した性能のステンレス鋼
ATS-34はステンレス鋼の中でも非常にバランスの取れた鋼材で、どんな用途にも使える万能な材料になっています。加工に関してもそれほど難しいものではなく、熱処理前も後も問題なく作業することができます。数多くの鋼材でどれがいいのか迷ってしまった時にはATS-34を使うのがおすすめかもしれません!
自作ナイフの鋼材! No.② クロモセブン
ほぼ錆びないステンレス鋼!
クロモセブンはカミソリ用に開発された刃物用鋼材です。炭化物を取り除いたおかげで錆びにくく、表面処理が非常にしやすい鋼材となっています。熱処理による硬度は少し下がりますが、その分だけ研磨やミラーフィニッシュなどがしやすくなっているのでおすすめです。非常に靱性が高くて刃が長持ちします。
鏡面仕上げなどが簡単!
クロモセブンは他の鋼材と比較して鏡面仕上げ(ミラーフィニッシュ)がしやすい鋼材です。ミラーフィニッシュにすることによって汚れ等が付きにくく、酸化しにくくなるので非常にサビに強い刃を作ることができます。フィッシングナイフなどの海水に浸かる機会が多いナイフやデザインナイフなどにおすすめです。
自作ナイフの鋼材! No.③ SUS440-C
初心者におすすめの鋼材
SUS440-Cとは自作ナイフ用のステンレス鋼材では2番目に販売されている種類の多い鋼材です。加工がしやすくて完成後も研ぎやすいなど、自作ナイフの中では入門者用におすすめとなっています。刃の持ち具合や錆びにくさは普通ですが、コストパフォーマンスに優れるので自作にはもってこいの材料です!
低価格の材料
SUS440-Cの特徴には販売されている価格が非常に安いという点があります。他の鋼材と比較すると安いSUS440-Cは入門者にも優しくて手が出しやすいので、練習用の材料としては最適でしょう。SUS440-Cでいくつかナイフを作って慣れてきたら他の鋼材にレベルアップするのもおすすめです!
自作ナイフの鋼材! No.④ D-2
元々は金型鋼だけど?
D-2鋼は日本ではJIS形式でSDK11と呼ばれる金型鋼です。なぜ金型鋼が刃物用鋼材に使われているのかというと、熱処理によって変形しにくくて硬く頑丈な刃が作れることから自作ナイフでは使われています。炭素鋼なので若干錆びやすい点がありますが、他の炭素鋼よりは錆びにくいので使いやすいですね。
タフな使い方におすすめ!
D-2鋼は販売されている材料が厚めのものが多いので山鉈や山刀などのアウトドア用ナイフにおすすめです。5mmほどの厚みがベストで長さが20cmもあればどのような状況でも使えるよいナイフになるでしょう。加工も簡単なほうなので自分の好みにあったナイフを作るにはおすすめです。
自作ナイフの鋼材! No.⑤ V金10号
武生特殊鋼材の特殊鋼
V金10号は武生特殊鋼材社が作っている特殊なステンレス鋼です。刃物用鋼材として良いものになるように調整された鋼材で、程よいバランスのナイフを作ることができます。武生特殊鋼材ではこのV金10号を使った積層鋼も開発していて、この積層鋼が非常に人気のある鋼材となっています。
鍛造された積層鋼がおすすめ!
武生特殊鋼材で作られたV金10号はさらに改良されて積層鋼として使われています。積層鋼は加工することによって特殊な模様が現れて非常に見栄えのよいナイフを作ることができます。この模様は鍛造された時の方法によって変わるので同じV金10号の積層材でも全く違うものになります。オリジナリティや個性を出したい方にはおすすめです!
自作ナイフの鋼材! No.⑥ HMS67
ミラーフィニッシュが綺麗な鋼材
このHMS67はクロモセブンと同様にミラーフィニッシュがしやすい鋼材です。クロモセブンとの違いは若干加工性が良い点と人気があって品切れになりやすい点ですね。
この鋼材を使って自作ナイフを作るならフィッシングナイフやデザインナイフなどがおすすめです。美しいミラーフィニッシュにエングレーブ等を掘ればきっと綺麗なナイフになりますよ!
折りたたみナイフにおすすめ!
HMS67は非常に靭性が高いので折りたたみナイフのスプリングにも使われます。強度があってしなやかな曲がり具合のでるHMS67はスプリングのバネに使うことで使い心地のよいフォールディングナイフを作ることができるでしょう。
販売されている大きさの種類が少ないので売り切れになりがちですが、定期的に補給されるのでよくチェックしておきましょう!
自作ナイフの鋼材! No.⑦ ZDP189
硬度が最強の鋼材!
ZDP189は八田工業株式会社が開発したステンレス粉末鋼です。通常の鋼材とは違う特殊な方法によって作られているので不純物がなく、刃物鋼材として理想的な状態になっています。
非常に硬く、錆びにくく、刃持ちが良いのでこれを使ったナイフはまさに最強に近いナイフになるでしょう。このZDP189は焼入れが必要ですが、開発元の八田工業株式会社が熱処理を受け付けているので最適な熱処理をしてくれます。
手を出すときはご用心!
ZDP189は最強に近い鋼材なのですが、最強な分だけ加工の難易度も最強クラスになっています。まず熱処理をする前からかなりの硬さなので刃を作ったり穴を開けたりすることすら手こずるレベルです。
ステンレス用の工具で加工できますが、それでも大変なのでベルトサンダーなどの電動工具で加工するのがおすすめです。
自作ナイフの鋼材! No.⑧ O-1
アメリカ産の工具鋼!
アメリカで使われているオーワンスチールと呼ばれる工具鋼です。アメリカの有名なナイフメーカーである「W.D.ランドール」がこれを利用して鍛造式のナイフを作っていたことからアメリカでは一般的なナイフ用の鋼材としても使われています。
炭素鋼なので錆びやすいですが、工具鋼なので硬さがあって熱処理によって良いナイフに仕上がります。
ランドールナイフを再現するならこれ!
ランドールナイフを再現して作るときにはO-1を使いましょう。販売されているO-1は鍛造されたものではなく、平面研磨されているので鍛造環境がない人でも加工することができます。材料として少々価格が高めですが、既に加工されていて扱いやすいことを考えれば妥当な価格になるでしょう。
自作ナイフの鋼材! No.⑨ ステライト6K
最強の刃物鋼
ステライト6Kはおそらく現在最強の刃物用鋼材です。ステライト6Kは粉末鋼でクロムとコバルトの合金となっています。
厳密的にはステンレスでも鋼でもありませんが、絶対に錆びないで熱処理不要、更には強固でメンテナンスがほぼ不要という最強の材料となっています。現在は入手できる機会が少なくなってしまっているので、なかなかこの最強の材料でできたナイフを見かける機会がありません。
ただし加工も最強の難易度
もしも、この最強の鋼材が販売されているのを見かけても安易に購入するのはおすすめしません。刃物用鋼材として最強のステライト6Kですが、その強さの分だけ加工の難易度も最強となっています。
熱処理をしないでいいということは、熱処理をする前の状態でも刃物として通用する硬さを持っているということです。電動工具を持っていない人ではかなり苦労するだけでなく、作業すらできない可能性もあるのでご注意ください!
自作ナイフの入門者におすすめなのは?
加工・仕上がりの良いATS-34
入門者におすすめなのはATS-34です。加工のしやすさから完成後の仕上がりまで安定した性能を発揮するAST-34はまさに入門者にはぴったしの鋼材です。鋼材の大きさの種類も多く、好きな形にナイフを作れるので自由気ままに作業することができます。
最近では生産数が減ってきていますが、同じ組織で代替品になるRWL34などの鋼材も増えてきたので変わらずにおすすめできる鋼材ですね。
低価格で手の出しやすいSUS440-C
入門者が1番に手を出しやすいのはSUS440-Cでしょう。非常に価格が安く流通量も多いので気楽に手に入るのがおすすめのポイントです。加工に関しても比較的に簡単で、道具が少なくても加工できるのが心強いですね。
最初のうちは失敗をしやすいですから高価な鋼材でいきなりやるのではなく、SUS440-Cなどで練習してから本番をするのがおすすめです!
自作ナイフの熱処理
ナイフの命を入れる熱処理
ナイフは焼入れと焼戻しという熱処理を行うことでようやく刃物として使えるようになります。熱処理には800℃近い温度で鋼材を熱しなければいけないので、通常の家庭では困難だと言えるでしょう。一応、家庭用の電気炉がありますが、高値ですのでいきなり購入するのもためらわれます。
業者に頼むのがおすすめ!
そんな時に便利なのは熱処理を行ってくれる業者さんです。カスタムナイフショップや鋼材屋さんの一部は作ったナイフを受け取って熱処理をしてくれます。1本1,000円ほどの安価で行ってくれるので、入門者だけでなく個人ではこちらに頼るのがほぼ常識となっています。
自作ナイフの鋼材はどこで買うのか?
ネット通販で
ネット上の鋼材屋さんなどで一部の鋼材が販売されています。こちらの場合は基本的な鋼材と、多く搬入出来る鋼材のみがメインで種類はないですからあまりおすすめはできません。悪質なサイトの場合は鋼材の組織が違う場合もあるので気をつけましょう。
カスタムナイフ専門店
安心できるのはカスタムナイフ専門店に直で行くのと、そのカスタムナイフ専門店のネット通販です。流石に専門店だけあって鋼材の種類も多く、専門的な知識もあるので丁寧にどれを買えばいいのか教えてくれます。
他の素材や工具、入門キットなどもあるので自作ナイフを作ろうと思う方はまずカスタムナイフ専門店に行くのがおすすめですね! おすすめのショップは「Matrix-AIDA」というショップでカスタムナイフ業界最大手になっています。下記にリンクを張っておきますのでご覧下さい。
自作ナイフの鋼材のまとめ
自作ナイフの鋼材まとめ
自作ナイフの鋼材についてはどんな特性があるか知っていただけましたか? ここで紹介したのはあくまでも一部でまだまだ数多くの鋼材が存在しています。自分にあった鋼材を見つけることが出来たら、きっと最高のナイフが作れるようになるので是非とも色々な鋼材を試してみてくださいね!
自作ナイフが気になった方はこちらもチェック!
自作ナイフが気になる方は下記にまとめ記事のリンクを掲載しておきますのでよろしければ合わせてお読みください! 下記の記事では自作ナイフのつくり方をまとめてあります。その他には自作ナイフに役立つ記事がありますので、おすすめですよ!
ナイフを自作してみよう!刃の切り方、ヤスリかけ、刃つけまで手順を紹介!
アウトドアなどで使うナイフは市販品もいいですが、自作をしてみると愛着が沸くものです。初心者でも自作でナイフを作れるように刃の作り方からナイフ...
【DIY】サンドペーパー/紙やすりの選び方!番手とその用途を解説!
DIYによく使うサンドペーパー(紙やすり)ですが、種類も多く用途に合わせて選ぶのも大変です。今回はサンドペーパー(紙やすり)の選び方や番手、...