アカザはどんな魚?
正直言って、アカザなんて見たこともない、名前すらも聞いたこともないなんて事態は、現実的ではないですか?まずはアカザの基礎からです。
アカザとはナマズの一種
ひと目見て、誰もがアカザとはドジョウの仲間かと思う、そんなとぼけたドジョウ的な顔つきと体つきをしています。しかしこの魚、実はナマズ目アカザ科で、ナマズの仲間です。英語圏でもナマズかドジョウか分からなかったせいか、Loach catfish=ドジョウナマズと呼ばれているのです。
アカザの見た目
全長は大きくなっても15センチと、極めて小柄な体型です。その細長い体には、丸みを帯びた胸びれや尾ひれがあり、顔を見れば大小8本のヒゲを蓄えています。赤みを帯びた色合いをしているので、川で実物を見かけたときも、ほかのドジョウやナマズとの違いは明白です。
アカザの名前
アカザとは赤いからアカザなのだと発想できます。しかしその名前の由来には諸説あり、地方によっても呼称が定まっていない様子です。
アカザの別名
岐阜県郡上八幡で、赤みがかった色をしているからアカザ(赤佐)といわれ、これが一般的な呼称になりました。しかし全国で名前が決まりきっていないのが特徴の1つです。福井県でアカニコ、徳島県の貞光町でガナッチョ、秋田県でアカメロ、ほか毒ナマズ、ネコナマズなど多種多様です。
毒が影響してアカザ?
アカザは毒を持っているのですが、毒を受けた場所に赤みが差すので、毒でアカザスことが転訛し、アカザになったとも言います。このアカザスとは、岐阜県の白鳥町で使われている呼び名です。
アカザの毒はどこにある?
もしも赤い色したアカザが釣れたなら、手で掴むことは問題があります。アカザの毒で、痛い思いをする可能性が高いのです。
胸びれと背びれの毒
アカザというナマズの仲間です。昼間は石のすき間などに隠れていることが多いです。背ビレと胸ビレのトゲに毒があり、さされると痛みます。 pic.twitter.com/0rZ2fFaMdY
— 世界淡水魚園水族館 アクア・トト ぎふ (@aquatotto) September 20, 2017
気になるアカザの毒がある部分は、丸っこい胸びれと、背びれの部分。棘条(きょくじょう)と呼ばれる、トゲトゲとした部位の1本だけが、毒線を含んでいます。この毒を持っていることで、アカザは外敵に襲われた時に備えているというわけです。
アカザの毒の強さ
アカザに刺されると痛みが走り、刺されたところは赤みを帯びた状態になってしまいます。小動物なら気絶したり、命にかかわる可能性があります。しかし人間にとってその痛みは激痛というほどでもなく、一時的なものだから、命にかかわるほど強い毒ではありません。
アカザ毒の対処
アカザの毒の効果は、放っておいても数十分や1時間程度で、すぐ収束するのが通常です。刺された部位を洗浄したり、殺菌しても良いでしょう。しかし痛みが気になったり、ひどい場合は病院に行くことも対処法になります。
アカザの生息地
澄んだ淡水域にしか生息できない
アカザは淡水魚のなかでも、非常にデリケートな魚です。生息できる環境は、清らかな流水に限定されています。河川上流で、川底に石が敷き詰められたような場所を好んでいます。高すぎず低すぎない水温に生息しますが、水温が25度を超えると死亡率が高くなってしまいます。
秋田県より南の日本列島
アカザは本州、四国、九州など、各地の淡水の河川の中流から上流にかけて生息する魚です。北限は秋田県の雄物川といわれ、残念ながらそれ以北の青森や北海道では、確認されていません。
絶滅危惧種Ⅱ類
山間部には多いアカザですが、関東平野をはじめとして、アカザを確認できない地域が増えてきました。今では絶滅危惧種Ⅱ類にも入っているほどです。夏に平均気温が30度を超え、水温も常時25度を超え、水質も悪化したことで、アカザが生きづらい世界になってしまったのです。
アカザの日常
常に川底の石の隙間や、水草に隠れる形で潜んでいます。夜行性であり、水中の上の方に上がって泳ぎ回る姿は滅多にありません。アカザが好んで食べるのは、イトミミズやカワゲラなどの水生昆虫、それに小魚の類いです。
アカザは釣りじゃなく罠で捕獲
アカザは昔から食用にされてきましたが、釣り竿を使った釣り方法は一般的には行われていないといいます。ではどういった手法で捕まえるのか気になります。
昔の子供は手づかみした
昔の子供はアカザに刺されてもお構いなしに、川でアカザを手づかみで捕獲したと言います。どうやらヤンチャが功を奏し、度胸試しや競争を兼ねていたといいます。しかしぬるぬるな魚であり、毒の痛さもあるのに手づかみするのは、ちょっと気が引けてしまいます。
釣り竿とワームで
物は試し風に、釣り竿と小さな釣り針とルアーで、アカザ釣りをしてみても良いかもしれません。日中は水底の岩陰などに隠れて、釣りには不向きなアカザですが、早朝ならば活発に泳いでいる姿もあります。
網を使う
水底に網をセット、アカザがいそうな水底の砂利を手でガサガサとまさぐったりして、網にアカザが入り込むようにうまく捕まえる方法です。この方法は精度が低いかと思いきや、アカザはのんびりとしていることが多いので、もっとも単純に捕獲できる方法になります。
登り落ち漁(滝わけ)
魚が遡上する性質を利用した伝統漁法です。四国の四万十川、中部地方や東北地方では現役で用いられています。川の一部に石を積んだり、川に板を置いて魚道を作ります。魚道は徐々に狭くなる形にし、最後に落とし箱をセットするのが基本です。
筌を使う
筌(うえ・うけ)とは、日本を含むアジア諸国で古来から存在している伝統的な漁法で、アカザ漁でも用いられています。筒状の形をしているもので、外側から入ってきた魚が、外に出れない仕組みになっています。旬の時期、暗い時間帯を含む半日から1日ほど、水底に仕掛けておきます。
アカザの旬の時期とは
もしもアカザを味わうなら、昔から春が旬、初春が旬と言われてきました。産卵を5月から6月に備えているため、春に大人の個体は油が乗っているからです。もしアカザ料理を食べたいとなれば、旬の春を狙ってみてください。
アカザ料理の下ごしらえ方法
泥抜きは必要?
ナマズは通常の調理前に、泥抜きという下ごしらえを行っています。泥の中に生息するナマズなので、全身に泥臭さが付いているためです。一方ナマズと近縁なアカザは清流に棲んでいる魚なので、必ずしも泥抜きは必要としません。しかし気になるならやってみても構わないことです。
毒のひれを切除する
アカザの調理をするなら、まずは安全のため、毒のあるひれを切除するところからです。包丁、またはハサミを使って、毒の胸びれと背びれを切除します。捕獲時もそうですが、調理中に毒ひれが付いている段階では、手で直接的にアカザのひれに振れることは避けるべきです。
ナマズの下ごしらえ方法と同じ
先ほど申し上げた通り、アカザはナマズの仲間なのです。だからアカザの毒ひれを除去したあとは、基本的な下ごしらえ方法は、アメリカナマズと同じと考えて差し支えないでしょう。
三枚におろす
三枚におろす調理法は覚えておいて損はしません。アカザの背びれから首まわりに切り目を入れたら、背骨を折って下に引くと、頭と内臓までも一緒に取れます。その後三枚におろし、ひれを切り落とし、腹骨と皮を取り去れば綺麗な白身が登場します。
アカザの料理①唐揚げ
今もアカザが多い地方では、旬なアカザの定番的な食べ方の1つが唐揚げです。唐揚げの場合、下ごしらえは三枚におろすまで行かず、極めて簡単です。
アカザの唐揚げの材料
主役となるアカザ、片栗粉、お好みで塩コショウ、醤油、生姜を使います。それに調理にはサラダ油とフライパンが必要です。
アカザの唐揚げのレシピ1
アカザの危険な毒ひれはもちろんですが、頭部が固いアカザなので、頭部もしっかりと落としておきます。生姜醤油のたれに浸けて、予め味を整えても構いません。体の皮や毒のないひれは、そのままの状態で揚げることができます。
アカザの唐揚げレシピ2
小麦粉をまぶしたら、中火で1回揚げます。冷ましたらもう一度揚げます。アカザの唐揚げは2度揚げするのが、カラッと美味しく調理するコツなのです。塩コショウ味で食べてもいいですが、唐揚げにはタルタルソースもおすすめです。
アカザの料理②煮付け
アカザだらけの田舎の定番な料理といえば、やっぱり煮付け。このアカザの食べ方は、日本各地の郷土料理として存在しているようです。
アカザの煮付けの材料
他の魚の煮付けと、同様の材料を用意しておくことが求められます。必要とするのはしょうゆ、砂糖、みりん、お酒などです。
アカザの煮付けのレシピ
アカザに危ない毒ひれ、要らない内蔵を取り除いたら、まるごと鍋に入れます。しょうゆ、砂糖、みりん、お酒などで味付けです。落し蓋をすることで、味を染み込ませるのを忘れてはいけません。レシピは極めて簡単で、煮付けの所要時間は10分程度です。
アカザの料理③蒲焼き丼
うな重は高いですが、近年はうなぎの代用として、ナマズが使われつつあるようです。ナマズ同様に旬なアカザも、蒲焼きにして丼ぶりの食べ方を試してみたくなります。
蒲焼き丼の材料
うなぎの蒲焼きを調理するのと同様の材料を用意します。アカザは調理しやすい、大きめサイズが好ましいです。、お酒、砂糖、しお、醤油、みりん、山椒などです。それに炊いたご飯も必要です。
蒲焼き丼のレシピ
山椒以外の調味料は、カップに全部混ぜ、ちょうどよい味を整えます。アカザの身を焼く時には、小麦粉をまぶしてもよいです。両面をフライパンで焼き上げたらカップの調味料を投入し、水気が減るまで煮詰めます。ごはんにフライパンのたれをかけ、アカザの蒲焼きを載せ、山椒をかけたら完成です。
炭火焼きをしてもいい
うなぎの蒲焼きといえば、本来は七輪などの網で、炭火焼きの調理を行います。だから本格的な味わいを出したいなら、レシピでは炭火焼きも試してみたいところです。
アカザの料理④刺身(たたき)
アカザは刺身には向いていないためなのか、ネットを探してみても、刺身のレシピも食べ方も見当たりません。しかし旬なアカザの身を炙って、たたきにしてみるという刺身的な食べ方も、試してみて良さそうです。
アカザのたたきの材料
たたきの食べ方では、ぬめりのある皮を剥いで、三枚におろし済みのアカザの身が必要です。大きめサイズのアカザを選ぶようにします。たたきでは、刺身の表面を焼く時にガスバーナーを使います。たたきには忘れてはならない、長ネギにしょうが、ワサビを用意します。
アカザのたたきのレシピ
三枚におろし済みのアカザを、刺身同様に切りそろえます。一枚づつをバーナーの火で炙るか、またはフライパンでさっと火を通して焦げ目を付けてもいいです。いったんアカザの身を冷やしたら、刺身同様に盛り付けです。刻みネギを載せ、おろし生姜やワサビと共にいただきます。
是非とも出会いたいアカザ
今ではあまり見かけなくなった希少なアカザですが、関東から離れた清流ならば、まだウヨウヨと泳いでいる河川も珍しくありません。アカザを見つめるだけでもいいし、あわよくば味わってみたい気持ちも湧き上がります。山間部の清流に釣りに行くなら、アカザを探してみませんか。
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