キャブレタークリーナーでオーバーホールする前に
キャブレターの構造と働きを知ろう!
キャブレターはアクセル開度に合わせてガソリンを霧状にする装置です。インジェクションほどシビアではありませんが、キャブレターがバランスを崩すとエンジンの調子が悪くなります。
また、キャブレターは突然バランスを失う装置ではないので、症状を感じてから対処することが多い装置です。キャブレターの構造を紹介している動画を紹介しますね。
キャブレターの働き
CV(負圧式)キャブレターがガソリンを霧状にする仕組みを分かりやすく現した動画を紹介します。キャブレター内部をガソリンと空気が通り、霧状になっていく様子を確認してください。アイドリング時とアクセル開度に合わせて現していますので、ガソリンと空気の通り道を理解できるでしょう。
エンジンの症状から原因を探る
エンジンの調子が良くない=キャブレターのオーバーホールと考えるのはナンセンスです。キャブレター以外に原因がある可能性も考えながら、症状を確認する必要があります。キャブレター以外に原因が考えられる症状をエンジンの回転数別に挙げますね。
アイドリング回転、低速のエンジン不調
アイドリングから低速回転時の不調でキャブレター以外に原因があるとするならば①点火装置(プラグを発火させるタイミングを制御する装置)の不良、②キャブレターとシリンダーをつないでいるインシュレーターからの二次空気の流入③点火プラグの不良…があります。
キャブレターが原因での不調はパイロットスクリューの調整不良が挙げられます。
中~高速回転時のエンジン不調
中~高速回転時のエンジン不調で、キャブレター以外が原因となるのは①燃料タンクキャップの通気穴の詰まり②プラグの不良、③エアクリーナーの詰まり③点火装置の不良④バルブタイミングの不良⑤カムシャフトの磨耗…などが挙げられます。キャブレターが原因での不調は混合気が濃い(ガソリン量が多い)ことを疑いましょう。
キャブクリーナーでの洗浄が必要なケース
手軽にできるところからエンジン不良の原因を探ってメンテナンスしても症状が改善しない場合は、キャブレターの詰まりを疑いましょう。手順と方法を間違わなければ難しくないので、チャレンジする価値があります。
特にアイドリングの不調や、走行時にエンジンが苦しそうに息継ぎをする症状がでたら、キャブレターの詰まりが原因だと思っていいでしょう。
こんな人は要注意
通勤や通学で毎日乗るバイクならキャブレターの詰まりは起こりにくいのですが、月に数えるくらいしかエンジンを動かさない人は要注意です。
エンジンを動かす機会が少なく、バッテリー上がりを起こした経験がある人なら、真っ先にエンジン不調の原因はキャブレターにあると思いましょう。キャブレター内に残ったガソリンが変質して詰まるケースは多いですよ。
添加剤を試してみる
添加剤の使い方は簡単ですので分解洗浄する前に試してみましょう。それでも症状が改善されなければ分解洗浄を決行すればいいのです。使い方は給油時に規定量の添加剤をガソリンタンクに投入するだけです。エンジンを動かしていない間はキャブレター内部に成分が浸透し、エンジンを回せば新たに添加剤の成分を送り込むことができます。
添加剤でのキャブレター洗浄の注意点
添加剤でのキャブレター洗浄は使い方が簡単な分、劇的に症状が改善されることはありません。添加剤の成分が入ったガソリンを使いきってからでしか結果を確認できませんし、添加剤の成分は燃えにくいので一時的にパワーダウンすることも知っておきましょう。症状がでてからの添加剤投入は洗浄効果が低いという人もいます。
キャブクリーナーでお手軽洗浄
キャブクリーナーを内部に注入する使い方ががあります。エアゾールタイプのキャブクリーナーはキャブレターを分解しない使い方(直接洗浄)も推奨しています。一定の効果がありますが、、キャブクリーナーは洗浄力が強く、ゴムや樹脂のパーツを痛める可能性があるので分解しないとダメ!という人も多いですね。
推奨される直接洗浄方法
直接洗浄での使い方は①エンジンを始動し、暖まったら停止②エアクリーナーを外す②キャブレターのエアー取り口いっぱいに吹きつけ5分放置③エンジンを始動し回転を上げて再度吹きつけ④エンジンを止めて5分放置⑤エアクリーナーを取り付けてエンジン始動⑥白煙が出なくなるまで空ぶかし…です。
キャブクリーナーによって使い方が違いますので取扱説明を守りましょう。
他の直接洗浄方法
キャブレター最下部のドレンからガソリンを抜き、ドレン穴からキャブクリーナーを注入する人や、キャブレターの燃料チューブを外して、そこからキャブクリーナーを注入する人が人がいます。
どちらの使い方も30分放置して成分を浸透させ、ガソリンを送って洗い流します。効果はあるようですが、キャブクリーナーが推奨する使い方ではないので自己責任でおこないましょう。
キャブクリーナーでO/H(オーバーホール)
キャブレターを分解してオーバーホールする使い方が一番効果を得られます。洗浄した状態を目で確かめられるので達成感もあるでしょう。しかし、キャブレターの分解洗浄には注意が必要です。キャブレターは複雑で繊細な装置ですので、慎重かつ丁寧な作業が必要となります。手間をかけたほうが効果は高いでしょう。
キャブレターオーバーホールの注意点
キャブレターのオーバーホールで難しいのは、分解したキャブレターを組み立てる作業です。分解して詰まりを解消するまでは難しくありませんが、元通りに組み立てる段階になって「どう組み立てればいいか思い出せない」となることが多いのです。忘れてしまわないように、パーツを外すごとにカメラで撮影して記録することをおすすめします。
分解洗浄する前に…
オーバーホールに取り掛かる前にキャブレターの気密性を高めるパッキン(Oリング)を入手しなければなりません。Oリングは変形することで気密性を保っているので再利用できませんので、専用のOリングを事前に入手しておきましょう。ケチって再利用すれば分解洗浄の効果を得られないばかりか、エンジンの調子が悪化しますよ。
キャブクリーナーでオーバーホール:工程1
キャブレターの取り外し
キャブレターをオーバーホールするためにエンジンから取り外します。4ストロークエンジンに搭載されている負圧式キャブレターは本体が大きいので、ガソリンタンクやシートだけでなく、エアクリーナーボックスやサブフレームも外したほうが作業しやすい車種があるかもしれません。
キャブレターを外したらシリンダーに異物が混入しないように、清潔なウェスで塞いでおきましょう。
キャブレターの取り外し順序
キャブレターの取り外し順序は①キャブレター最下部のドレンからガソリンを抜く②キャブレターについているスロットルセンサー、スロットルワイヤー、チューブ類を外す③インシュレーターから引き抜く…です。何がどこにどのように取り付けてあったかを必ず記録しておきましょう。
キャブクリーナーでオーバーホール:工程2
キャブレター上部の分解
上部のカバーはスプリングで下から押されていますので注意しましょう。キャブレターの上部にはダイヤフラム、ピストン、ジェットニードルが組み込まれていますので外します。
ダイヤフラムの破損や穴あきがないかを必ず点検しましょう。ゴムや樹脂のパーツは洗浄力の強いキャブクリーナーの成分で痛む可能性がありますので、全て外さなければなりません。
キャブレター上部の分解順序
キャブレター上部の分解順序は①パイロットスクリューを外す②上部カバーを軽く押さえながらビスを外す③ダイヤフラムごとスロットルバルブ(ピストンとジェットニードル)を持ち上げる④その他ゴムや樹脂のパーツを外す…です。チョークレバーやチョークバルブも外しましょう。
キャブレターによっては側面にエアカットオフバルブがついていますので外しましょう。
パイロットスクリューを外すときは…
パイロットスクリューを外すときは元の開度に戻せるようにしなければなりません。外す前に右に回して止まるまでの回転数を記録しておきましょう。通常、1~2回転の間になっており、1回転半や1回転3/4など、正確に数えておきましょう。奥にOリングが入っていますので必ず取り外してください。
キャブクリーナーでオーバーホール:工程3
キャブレター下部の分解
キャブレターの下部にあるフロート室を分解します。フロート室には真鍮製のパーツが多いので慎重に分解する必要があります。真鍮製のパーツを外すときはドライバーを回す力3:押す力7くらいでおこないます。スロージェットはネジの頭がスリーブ内に入っていることが多いので、ネジの頭を舐めてしまうと外すのが困難になりますよ。
フロート室の分解順序
フロート室の分解順序は①フロートチャンバー(キャブレター下部のカバー)を外す②ピンを抜いてフロートを外す③スロージェットとメインジェットを外す(キャブレターによってはパイロットスクリューをここで外すこともあります)…です。
これ以外にもゴムや樹脂のパーツを見つけたら外します。フューエルストレーナー(ガソリンに混じったゴミを濾す樹脂製の網)がついているキャブレターもありますので、確認して外しましょう。
キャブクリーナーでオーバーホール:工程4
キャブレターの内部洗浄
いよいよキャブクリーナーでの内部洗浄です。スプレータイプと泡(ムース)タイプがありますが、内部に浸透させるなら泡タイプ…吹き飛ばすならスプレータープ…と使い分けてもいいでしょう。
キャブクリーナー3:ガソリン7で希釈して漬け込み洗浄するタイプのキャブクリーナーもあります。パーツクリーナーでは洗浄効果が弱いのでキャブレター内部の詰まりを溶解できません。
第1段階
キャブレターの内部洗浄第1段階ではキャブレターの本体やパーツにキャブクリーナーを吹き付けます。目詰まりしそうな箇所は成分が浸透するよう念入りにしましょう。キャブクリーナーはキャブレターの外側の汚れも落としてくれるので、ついでに清掃することをおすすめします。有機溶剤専用のゴム手袋をして手を保護したほうがいいですね。
放置するときの注意点
ケースにキャブレターを入れてキャブクリーナーを吹きつけて放置する方法もあります。泡タイプやスプレータープのキャブクリーナーは放置を前提にしていないので放置時間の指定がありません。放置しすぎるとキャブレターの本体やパーツを痛める原因になりますので注意しましょう。
第2段階
キャブレターの内部洗浄第2段階では付着したキャブクリーナーの成分をパーツクリーナーで落とします。キャブレターの本体やパーツの隅々までパーツクリーナーを吹き付けてキャブクリーナーを落とし、メインジェットやニードルジェットホルダーの小さな穴は細い針金で慎重に汚れをぬぐいます。そのあとはしっかり乾燥させましょう。
キャブクリーナーでオーバーホール:工程4
組立と取り付け
分解と取り外しをさかのぼるように組立と取り付けをおこないます。分解と取り外しの記録を必ず確認しましょう。
キャブレターの本体はアルミ製ですし、細かいパーツは真鍮製のものもありますので、力いっぱい締め付けるとパーツをねじ切ったり、ねじ山をつぶしたりします。トルク管理の必要はありませんが、止まるところまで回してクッと1回だけ締める程度でいいでしょう。
試運転をしよう
キャブクリーナーでのオーバーホールの効果を確認するために試運転をしましょう。エンジンが冷えた状態まで戻して試運転するのがベストです。キャブレターの調子は少しずつ崩れるので、オーバーホール後の状態を正確に覚えておく必要があります。動画を撮影してキャブレター周辺やマフラーからの音を記録するのもいいですね。
キャブクリーナーでオーバーホール:まとめ
乗る時間よりメンテナンスしている時間が増えたな…と嘆いている人は努めてバイクに乗るようにしましょう。バイクは動かさないと調子を崩しやすくなります。それは旧車でも最新モデルでも同じです。休日の朝、少し早起きをして少し離れたカフェへ連れて行ってあげましょう。なぜならバイクは寂しがり屋さんですからね。
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