山本勝之助商店 七玉長柄箒
亀の子束子 棕櫚たわし極〆No.4
高田耕造商店 しゅろのやさしいたわし
はじめに
シュロはヤシ科の植物の総称
ガーデニングを楽しんでいる方でも「シュロ」という名前はあまり馴染みがないかもしれません。ヤシの種類に属するものは、全てシュロという名前で総称されます。
ワ(和)ジュロ・トウ(唐)ジュロ・アイジュロ
そのため、単にシュロと言うだけではコレだという種の特定はできません。
大まかに分類してシュロという名で呼ばれる植物は、主に中国やミャンマー、そして日本の九州地方に自生している「ワジュロ」と、中国大陸が主な生育地で、日本ではあまり馴染みのない「トウジュロ」。そして、ワジュロとトウジュロの交雑した種である「アイジュロ」の三種類が存在します。
ワジュロについてご紹介!
今回は日本で一番、馴染みのあるワジュロを主に取り上げてご紹介します。また、表記は基本的にシュロで統一させていただきます。シュロという植物がどのようなものなのかを是非ご覧ください!
シュロとは
シュロの名前は中国由来
シュロは漢字では「棕櫚」「棕梠」「椶櫚」など、少しややこしい表記で書かれます。これは、シュロの命名者であるイギリスの学者が漢字の国である中国大陸でシュロを初めて目撃したことに由来しています。
ヤシ目ヤシ科ヤシ属の植物
シュロはヤシ科の植物らしく、太い幹をつけ、まるで扇子の骨組みのように大きく広がる葉を幹の上部先端から生やします。また、ヤシの木らしく実もつけますが食用には適しません。
高い耐寒性
シュロの木の特徴として、もっとも代表的なものは「耐寒性」です。一般にヤシの木というと、暖かい熱帯地方に自生しているイメージがあることでしょう。このシュロの木は、ヤシの木のなかでも特に強い耐寒性をもつ植物です。
マイナス12度にも耐えられる
マイナス12度の環境でも冬越えが可能とすら言われています。そのため、熱帯や温帯などの温暖な気候だけでなく、例えば北海道などでも枯れることなく成長できます。
耐火性も有する
また、シュロの木は耐寒性だけでなく、火災に対しても強い耐性を保有しています。そして、もともと沿岸に自生していたヤシの木らしく、海の塩分に対しても強い耐性を有していますので、植物界全体でみても大変頑丈な部類に入る種類のものと言えましょう。
シュロの木の生態
常緑高木の植物
シュロは一年を通して青い葉を生やす「常緑」で、かつ幹を高く生やす「高木」の種類に属する植物です。日当たりの良し悪しにも関係なく、乾燥しているか湿潤しているかにも関係なく場所をほとんど選ぶことなく根を生やして定着します。ただ、マングローブなどの完全に根や幹が浸水してしまうような環境では流石に生きられません。
高さは最大で10メートル以上
木の高さは最大で約10メートル以上で、幹は丸い円柱状をしており枝分かれすることなく真っ直ぐに上まで伸びます。そして、幹の先端から葉を茂らせます。
シュロの花
シュロの木にはオスとメスの区別があり、メスのシュロの場合には梅雨の時期、5~6月ごろに幹の先端、葉の生え際から黄色い小さな花を複数個咲かせます。
シュロの花言葉
このシュロの花は独特な形状をしていますが、あまり目立つことはない存在です。ただ、シュロの木がもつ頑丈さや野性味あふれる迫力ある容貌からさまざまな花言葉がつけられています。
ポジティブな花言葉がたくさん
「変わることない友情」「勝利」「優勝」など、ポジティブなワードが多くあり、これらの花言葉はガーデニングとして植えられる際の人気の一因にもなっています。
実が黒くなれば完熟のサイン
開花後には徐々に実をつけていき、その半年後の冬になるまでに果実を少しずつ成熟させます。黒く変色してきたなら完熟のサインだとされています。
生長スピードは遅い
この木はほぼどこにでも根を張れるだけの頑丈さがあり、かつ人の手を必要とせず、放置しても枯れることなく生長する植物です。ただ、生長にかかる時間は長く、関東に生育している個体では10年で30センチほどのスピードで伸びていくとされています。
シュロの木と人類との関係
シュロは利用価値が高い植物
シュロの木は古くから人によってさまざまな用途で利用されてきた植物です。葉はもちろん、実や木の皮にいたるまで文字通り余すところなく徹底的に利用されます。
頑丈で根を張る場所を選ばない
なぜ、ここまでこの植物は人に利用されるのでしょう。その理由はいくつかありますが、主な理由としては先述したとおりのシュロの木がもつ頑丈さと、場所を選ばすに生育できるという利便性の高さがあげられます。
部位ごとにシュロの特徴をご紹介!
そして、それに加えてこのシュロの木の葉、実や皮がもつ、他の植物にはない独特の特徴に理由があります。それでは、順番にシュロの葉からご紹介していきます。この植物がもつ驚異の特徴について見ていきましょう。
シュロの葉が利用される理由.1
扇子の骨組みのようなシュロの葉
幹の先端から複数枚生えている、扇子の骨組みのような放射状の形状をした葉がシュロの葉です。この葉はシュロ同様に頑丈な性質を有しており、さまざまな用途で使用されます。
シュロの葉で作られたほうき
例えば、代表的なものに「シュロほうき」があります。シュロのほうきは、竹や他の材木などを柄にして先端にシュロの葉を何枚か捲き付け、そしてツルなどで結びとめたものです。
人気の民芸品
実用品として使用するのはもちろん、民芸品としても有名で特に青竹を柄として使用したシュロほうきはお部屋の装飾として大変人気があります。
ほうきの他にも利用されるシュロの葉
ほうきの他にも、ハエタタキなどの先端部分にも、シュロの葉を編みこんだものが使用されます。昔はプラスチック樹脂などが一般に普及していなかったので、このような素朴な素材を有効に活用したほうきやハエタタキなどを生活に使用しました。
最適の素材
頑丈でかつ適度な柔軟性があるので、ゴミやハエなどの害虫を捕らえるのに適した素材として知られています。
シュロほうきは一流の品
特にシュロのほうきは今でも一流の料亭や旅館で使用されるほどの一品で、シュロの葉から出る天然の油がほどよくタタミやフローリングなどの床をコーティングして、掃除をしながら独特の艶を出してくれます。
シュロの葉が利用される理由.2
シュロほうきは通販でも手に入る
山本勝之助商店 七玉長柄箒
シュロの葉を使用した民芸品は今でも和歌山県などの商店で販売されています。シュロのほうきは種類が多く存在しており、お安いものですと数千円からお求めになれます。また、通販でも手に入れられますので、気になる方はチェックしてもよいでしょう。
最初自分用に購入し、すごく良かったので、友人への新築祝いにプレゼントし、更に別の友人へも新築祝いにプレゼントしました。掃除機とは違い、静かで細かいところまで手が行き届きます。子供にも小さい箒でお手伝いしてもらっています。おばあちゃんになるまで使いたい、そんな逸品です。
保管方法に注意!
シュロのほうきをもしも手に入れた場合には、必ず保管の際に壁に吊るす形をとりましょう。これは、シュロの葉で作られたほうきの先端部分が重力で床に押さえつけられて曲がるのを防ぐための措置です。
長く使えるシュロ製の品
シュロを素材として使ったものはとにかく長く使えることで有名です。職人の方がひとつひとつ手作りしたシュロの民芸品を是非、お手にとってみましょう。
生薬としても利用されるシュロの葉
また、シュロの葉は民間で生薬としても利用されました。内服薬としては、この葉を乾燥させて煎じた汁を飲むことで高血圧や脳卒中に効果があるとされます。また、血を止める効果があるとされ、血尿などに対処するためにも使用されました。ただ、あくまで民間療法なので科学的な立証に基づくものではありません。
シュロの実が利用される理由
シュロの実は食用には適さない
シュロの実は、一般的に知られているようなヤシの実と同じようには食べられません。ただ、果実自体にはわずかに甘みがありイモのようなでんぷん質の味わいがあるという話も存在します。しかし、基本的に食用には適さない素材です。
シュロジツは有名な漢方薬
ただ、シュロの実は古くから漢方薬として大変重宝されます。棕櫚実(シュロジツ)という名前で市販されています。そもそも、この実が食用に適さない理由として、苦味・渋みのもとになるタンニン成分を多く含有していることがあげられます。
高血圧治療などに利用される
この実に含まれるタンニン成分は「ロイコアントシアン」という名称で知られます。シュロの実は下痢や婦人病に効果があるとされ、他には葉と同じく高血圧治療にも利用されます。
シュロの皮が利用される理由.1
シュロの皮も薬になる
シュロの皮も葉や実と同じく漢方薬としてよく利用されます。薬用としては、葉や実が内服薬であるのに対して、皮は主に外傷の治療に使用され、止血のために傷に当てられます。
棕櫚皮(しゅろかわ)
しかし、シュロの皮の真骨頂はあくまでもその頑丈な繊維質でしょう。一般に「棕櫚皮(しゅろかわ)」として知られるこの素材は採取にとても手間がかかります。
シュロの皮は幹に巻きついている
シュロの皮は通常の木の皮とは全く性質が異なります。通常の木の場合ですと、皮を採取しようとすればまず木自体を切り倒してから刃物などで薄くスライスしますが、シュロの木の場合は幹を保護するように皮が複数枚巻きつく形で結合しています。
繰り返し採取可能
この皮はシュロの木を切り倒さなくても刃物で丁寧に剥がせば採取可能です。
剥いて洗って干す
まず、シュロの皮を幹から刃物で薄く丁寧に剥いていき、そして剥いた皮からほこりなどの不純物を払い落とします。そして、生の皮に残った水分を軽く拭いてから天日で干して、ようやく素材として利用できます。
シュロの皮は素材としては一級品
棕櫚皮
ただ、手間がかかる分だけ素材としては一級品の活躍を見せます。編み込めば、かなりの重量にも耐えられる縄になり、布状に加工すればこれまた丈夫な敷物の完成です。
シュロ縄はいろいろな場面で利用された
そのため、火災が天敵であった日本の木造住宅にはこのシュロ皮製の縄がよく利用されました。
シュロの皮が利用される理由.2
シュロ皮のたわし
現在、シュロ皮を使った身近な民芸品としては「たわし」が販売されています。シュロ皮でたわしを作る場合には、まずたわしに適したシュロ皮を選別して、繊維状に加工してから、たわし状にまとめた後で針金によって固定します。
現在でも十分に使える
この「シュロ皮たわし」はほうきと同様に、実用性のある民芸品として販売されています。現在、たわしには化学繊維などいろいろな素材が利用されていますが、このシュロ皮たわしはそれらの製品と比較しても全く引けを取らない優秀な品です。
シュロ皮たわしの価格帯
亀の子束子 棕櫚たわし極〆No.4
ほうき同様に耐久性があり、長く使用できます。通販でも購入できますので気になる方は是非、購入を検討してみましょう。価格帯は1000円程度のものからさまざま用意してあります。
使いやすいたわしに感じたので購入してみました。よさげな手触りでいいと思います。また購入するかもしれません。
ボディウォッシュ用のシュロ皮たわし
高田耕造商店 しゅろのやさしいたわし
また、台所用のたわしだけでなく、ボディウォッシュ用のシュロ皮製たわしも販売されています。天然由来のシュロ皮製たわしは敏感な肌にも最適の一品です。
シュロとトウジュロの関係
トウジュロは低木で草が垂れない
シュロはガーデニングにおいてもよく育てられている植物です。一般にガーデニング用途では木の背丈が高くなるワジュロよりも、低木で葉も垂れずにピンと上を向くトウジュロの方が人気のある種だとされています。
ガーデニングではトウジュロも人気
トウジュロもまた他のシュロと同じく頑丈で手間のかからない植物です。鉢に植えて育てるにせよ、庭に植えて育てるにせよ鑑賞用として見栄えがよいのはどちらかといえばトウジュロの方でしょうか。
トウジュロの丈は2~3メートル程度
今回、ご紹介したワジュロは生長すると10メートルほどにまで伸びますが、トウジュロの場合には2~3メートル程度で止まるのが一般的です。エスニックな雰囲気が漂うこのトウジュロなら日本の庭にもぴったりとマッチします。
トウジュロの価格帯
チャボトウジュロ
価格帯は鉢に植えてあるもので約3000円から購入できる場合が多いですが、販売店により異なります。最近では通販でも購入できますので、興味をお持ちの方はチェックしてみるとよいでしょう。
背丈50cm程度のかわいいヤシの木が届きました。新築の我が家と同時に購入したので、成長を見守るのが楽しみです。
まとめ
シュロは身近に自生していることが
今回はシュロについてご紹介しました。さまざまな用途で使用されるこのシュロの木は、意外と皆さんの身近に自生しているかもしれません。例えば公園や野原など、いろいろなところを散策してシュロを探してみるのも面白いでしょう。
シュロ製の品に思いを馳せよう
また、是非シュロ製の品をご自身の手で使用してみてください。実用性も十分にありますが、数百年前から伝わるシュロ製の品に、歴史と情緒を感じてみるのも趣があり大変おすすめです。
ユニークな植物に関する情報はコチラをチェック!
当サイト「暮らし~の」には他にもユニークな植物に関する情報が多数存在します。そんな面白い記事のなかから特におすすめのものをピックアップしましたので、是非ご覧ください。
絶滅危惧種「オキナグサ」とは?その種類や特徴、育て方をご紹介!
オキナグサは本州以西に自生する多年草ですが、現在は激減しており絶滅危惧種とされています。ですが群生地は存在し、栃木県塩谷町大久保が有名です。...
オダマキ(苧環)とは?その種類や特徴、育て方までご紹介!
オダマキ(苧環)は春から秋の季節の長い間、開花します。大変多くの種類があり、バリエーションに富んだ花色や花びらの成り立ちで、ガーデンの脇役の...