穂高岳山荘について
登山ガイドの今田重太郎が築いた歴史ある山小屋です。北アルプスの人気スポットである穂高連峰の標高2996mに位置にあり、奥穂高岳をはじめとした山々の登山基地になっています。付近にはジャンダルムや大キレットに代表される北アルプス屈指の急峻な岩峰が連なっています。
穂高岳山荘の周辺
穂高岳山荘は奥穂高岳の頂上まですぐという、北アルプス登山の人気スポットの中にあります。
穂高連峰
上高地からその雄大な姿を望むことができる穂高連峰は、標高3190mの奥穂高岳をはじめとして、北穂高岳、西穂高岳、前穂高岳、涸沢岳などから形成されます。ジャンダルムや天狗ノ頭に代表される岩稜地帯が連なります。
槍ケ岳
標高3180m。北アルプスの象徴ともいえる存在です。槍の穂先のような独特の姿は登山者にとって憧れです。登山を始めたら誰もが一度登ってみたいと思う山です。
上高地
穂高岳や槍ケ岳登山の入り口となる場所です。大正池や梓川に架かる河童橋で有名です。河童橋からは穂高連峰を望むことができます。ここまでは、バスやタクシーで入ることができるために一般の観光客も多数訪れます。ここで写真を撮って終わるか、その先を目指すかで北アルプスの本当の美しさに触れることができるかどうかの分かれ道になります。
新穂高温泉
穂高連峰へ登山するときの岐阜県側からの入り口になります。白出沢や前穂高岳経由で穂高岳山荘を目指すときの出発点です。
穂高岳山荘へのアクセス
穂高岳山荘へアクセスするルートは大きく5つあります。初心者には、上高地~涸沢を経由してアクセスするルートがおすすめです。
上高地~涸沢を経由してアクセスするルート
最もポピュラーなアクセスルートです。途中の涸沢で1泊して2日かけて穂高岳山荘を目指すのが、体力的にも無難な工程になります。1日目は上高地を出発して徳澤、横尾を経由して涸沢に入ります。横尾までの道は比較的平坦ですが、横尾から高度を上げていく形になりますので、大きな荷物を背負っていると、結構体力を消耗します。涸沢は氷河が作ったカールと呼ばれる地形で、山小屋も2つありテント場も比較的広いところです。涸沢で1泊して、2日目にザイテングラードを通って穂高岳山荘を目指します。
上高地~岳沢~奥穂高を経由してアクセスするルート
前穂高岳と奥穂高岳の2つのピークを踏むことができるアクセスルートです。岳沢を過ぎると山小屋はなく、移動距離は長く、上高地からだと約9時間半になります。前穂高までの道は長い登りが続きます。前穂高と奥穂高の間の吊尾根は転落事故も多発する岩場になっています。注意して登ってください。
新穂高温泉~白出沢を経由してアクセスするルート
岐阜県側から登るアクセスルートです。奥穂高岳登山口からは途中に小屋はありません。新穂高温泉から穂高岳山荘まで約9時間かかります。沢筋で迷いやすいところがあったりします。経験者と一緒に登ることをおすすめします。重い荷物を担いで白出沢のガレ場を歩くのはかなり辛いです。
槍ケ岳~大キレットを越えてアクセスするルート
南岳と北穂高岳のあいだにある難所の大キレットを越えるルートです。岩場で鎖やはしごが連続したルートの登山になり、体力と技術力が必要です。槍ケ岳から穂高岳山荘までは9時間を超える工程になります。途中に山小屋がありますので、無理のない計画を立ててください。
西穂高~ジャンダルムを越えてアクセスするルート
穂高連峰の縦走で最難関といわれているルートです。天狗ノ頭やジャンダルムといった岩稜地帯が続きます。西穂山荘から穂高岳山荘までには山小屋はありません。工程も10時間を超えます。落石と浮石に注意しながらの登山になります。経験と体力を蓄えて挑んでください。
穂高岳山荘の魅力その1
1番目はなんといってもそのロケーションだから味わえる景色でしょう。標高2996mに位置しているため山小屋からの北アルプスの眺めは最高です。広大な穂高連峰の姿を目の当たりにできます。稜線に昇る朝日、稜線に沈む夕日を見ていると心の中から洗われるような感じです。また、眼下には涸沢を眺めることができます。特に紅葉シーズンのカールと色づく木々の風景は圧巻です。
穂高岳山荘の魅力その2
2番目はすぐそこにある星空です。夜には空一面が星で埋め尽くされます。都会のように高層ビルの隙間から空が顔を出しているのとは訳が違います。2996mの高さで遮るものがなくて、灯りといえばヘッドライトの灯りぐらいしかないので、夜空にはこんなにも星が広がっているのだとびっくりするくらいです。それに、星が本当に手の届きそうな位置に見えます。じっくりと眺めていると流れ星み見つけることができるはずです。
穂高岳山荘の魅力その3
3番目は食事です。食事は登山の楽しみの1つです。山小屋の食事というと下界の食事よりはレベルが落ちても仕方がない、さらに高緯度というロケーションを考慮すると食事への期待は低くなってしまいますが、穂高岳山荘の食事はクオリティーが高いと評判がいいです。夕食はボリュームもあり、なんと、朝食には郷土食の朴葉味噌を味わえます。食事以外でも喫茶メニューも充実しています。喫茶は宿泊者以外でも利用できます。ラーメンが美味しいと評判です。2996mで北アルプスの山々を眺めながらビールを味わえば、登山の疲れも取れるはずです。
穂高岳山荘の魅力その4
4番目は山小屋の設備です。疲れた身体を薪ストーブが迎えてくれます。3000m近くなので夏でも夜は冷え込みます。夏なのにストーブで暖を取るようなところまでよく来たと自分を称えながら、軟らかな薪の炎を見つめているとほっとした気持ちになります。驚くことに、水が貴重な場所なのにトイレは水洗です。さらに、こんな場所にある山小屋なのにクレジットカードが使えます。キャッシュレスの波がこんな山の奥までやってきてるのかと感心することでしょう。
穂高岳山荘の魅力その5
5番目は山小屋が情報の交差点となって情報交換ができることです。穂高岳山荘は槍・穂高の各方面からの登山者がやってきます。そのため、ジャンダルムを越えようとしている人に、まさに今、西穂高岳からジャンダルムを越えてきたという人から生の情報を入手することができます。ベテランも初心者も入り交じっていろんな話を聞けます。初心者にとっては、ジャンダルムや大キレットからやってきた人の話はうらやましいと同時にいつかは自分も行ってみたいと感じるに違いありません。ときにはヘリが飛び交ったリアルな遭難情報が伝わってくることもあります。
穂高岳山荘に宿泊するには
穂高岳山荘に直接電話をして宿泊の予約してください。 電話番号:090-7869-0045 宿泊料金: 1泊2食付9800円、1泊夕食のみ8800円、素泊り:6,600円 定員:250名 個室もありますが、混雑時は利用できない場合があります。 山小屋の性格上、宿泊予約していない登山客も受け入れますのでかなり込み合うことがあります。
穂高岳山荘のテント場
山小屋より少し高い場所にあります。40張ほどテントを張れます。手に取るような位置にある星空のもとでテント泊ができます。テント場使用料は1人1000円です。水は山小屋で購入できます。テント場の予約は不要です。受け付け順となります。テント場以外にはもちろんテントを張ることはできませんので、テントが張れなかった場合は、小屋泊になります。
穂高岳山荘の混雑時期
夏山シーズンの土曜日や秋の紅葉シーズンの連休はかなり混雑します。山小屋へアクセスするのにも多くの人でごった返している場合があります。最高に混雑したときは1枚の布団に3人寝たという話も聞きます。1枚の布団に2人というのはごく普通のことです。宿泊予約していたからといって布団を独占できるとは限りません。それくらいの混雑になることは覚悟しておいてください。食事も順番に取るため時間がかかる場合があります。宿泊予約の混雑予想については、穂高岳山荘の公式ホームページに情報があります。登山計画や宿泊予約の参考にしてください。
穂高岳山荘の別の顔
穂高岳山荘は山小屋だけでなく、登山者のサポートを行っている別の顔があります。
山岳遭難の前線基地
穂高岳山荘の周辺はジャンダルムや大キレットに代表される岩稜地帯です。険しい山々の姿は美しいですが、険しい分危険も多いです。このエリアでは転落事故などの遭難も多数発生しています。そうした遭難事故にいち早く対応するために夏の最盛期には、穂高岳山荘に岐阜県警山岳警備隊が常駐しています。
登山者の健康サポート
転倒などによるケガへの対応はもちろん、身体の不調を感じた登山客に対応できるように夏のシーズン中には岐阜大学医学部の診療所が開設されています。
穂高岳登山の心得
山のグレーディング
槍ケ岳、穂高連峰の山々は難易度の高い山です。グレードも高いほうに設定されています。登山には体力と技術力が必要です。余裕を持った登山計画を立ててください。
装備について
岩場を歩くので、靴はハイカットのクライミングブーツをおすすめします。ストーブで暖を取るような場所ですから防寒対策も忘れないでください。また、穂高岳一帯は岩稜地帯で長野県の山岳ヘルメット着用奨励山域にしてされています。落石や滑落のときに頭を守るためにヘルメットを持参することをおすすめします。
悪天候のとき
天候が悪いときは中止する勇気を持ってください。次の山小屋の予約があるからと強行する必要はありません。山小屋のキャンセルは当日でも大丈夫です。強い風のときは身体のバランスを崩して転倒する恐れがあります。雨に濡れると岩は非常に滑りやすくなり、滑落の危険もあります。ガスがかかっていると、落石があっても気付かないことも多く非常に危険です。
まとめ
穂高岳山荘から見る星空はとても素敵です。奥穂高岳の山頂に立って、槍ケ岳の雄姿やジャンダルムの岩肌を眺めたときはその美しい姿に見とれてしまうことでしょう。来て良かったときっと思うはずです。苦労してたどり着いた山小屋で飲むビールは最高です。ぜひ、一度訪れてみてください。夏に来たなら、次は秋に来るぞと誓うはずです。
ジャンダルムについてはここもチェック
ジャンダルムは難易度最高レベルの一般登山道です。でも全く無理なルートではありません。行ってみたいと思ったらのぞいてみてください。
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長野県のサイトからPDFをダウンロードできますので、登山計画の参考にしてください。