鑿(のみ)はどんな道具?
昔からある工具のひとつ
鑿(のみ)は原型は石器時代からあると言われ遥か大昔から使われてきた工具の一種です。近年では鉄ですが以前は青銅でした。今では鑿を使う作業である木材や石材に凹凸を作ったり穴を彫るとい仕事はほとんどが電動工具でできるため使われないこともあります。しかし微妙な調整など細かい仕事をする時は鑿のほうが容易で大工など職人には欠かせない工具になっています。
鑿の基礎な使い方
カツラについて
鑿は使う前にしておかなければならない作業があります。詳しい種類は後述しますが一般的に鑿というのはゲンノウで叩いて彫る「叩き鑿」です。叩き鑿は柄の天頂部に金属製の輪が装着されていてこれを「カツラ」と言います。このカツラがあることでゲンノウで鑿を叩いても柄が割れないようになっています。
鑿の使い方 使う前に調整
カツラは購入したばかりの鑿では少し柄より飛び出てるためこれを少し奥にハメ直さないとゲンノウで叩いてもうまく力が刃先に伝わりません。ですのでカツラを奥にハメ直します。カツラの外し方はゲンノウで叩来ながら手前にずらして外します。次にカツラが装着されていたところから数ミリ奥から少し削ります。この時削りすぎないようカツラをいれて確認しながら少しづつしてください。
鑿の使い方 たたき方
まず一番初めに必ず加工する木材を作業台に固定します。クランプで固定してもいいですし、長い木材の場合は木材に横座りする事で固定する方法もあります。次にノミは必ず柄の頂点部、カツラの下を持ちます。そしてゲンノウで鑿の中心を叩きます。この時中心以外のところを叩いてしまうと鑿からずれて手を強打してしまうので気をつけてください。ゲンノウは平らな面と丸みがある面があるので平らな面で叩かないと危険です。
鑿の使い方 刃の深さ
先が斜めになっている方が表でまっすぐの方が裏になります。鑿を木材に垂直いれても刃が進んでいくごとに裏側に曲がります。ですので一回で深く刃を進めてしまうと垂直ではなくなるので少しづつ彫っていきます。
手を強打しないためには
鑿の柄とゲンノウが垂直になるようにします。そのためにはあらかじめ姿勢を正し、叩きやすい体勢にします。むりな体勢で叩いていくと必ず疲れてきて鑿の柄とゲンノウの垂直が取れなくなりズレてきます。
鑿の抜き方
穴を彫っている時に誤って深く入ってしまったら図のように抜きます。鑿に対して左右にゆする事で抜けますが前後に揺すると刃先などが折れたり傷ついてしまい使えなくなりますので注意が必要です。
穴を彫る時
鑿で垂直に刃を入れる場合必ず刃先の裏側が穴の外側になるようにします。穴になる方に表側が来るようにするので、鑿を正面から見て常に表側が自分の方に向いているうに使います。斜めから穴を彫る場合は刃の表側が見えていると彫ることが出来ません。穴を彫る時は裏側が見えているようにします。
穴を彫る時の使い方
ほぞ穴の彫り方
鑿はほぞ穴を彫る時によく使う工具なのでしっかり覚えていくと加工がしやすくなります。使い方は何度も作業をしているうちに自然と覚えてきます。
墨付け(下書き)を行う
いきなりほぞ穴を彫らないででまずはどのくらいの位置でどのくらいの大きさに彫るのかわかるようにしっかり印を書き込みます。専門的な道具もありますが鉛筆で大丈夫です。次に墨付けから内側に約2ミリの所にも印をつけていきます。これはいきなりほぞ穴を彫るのでわなく2ミリ程残して最初は内側を彫るためです。
穴を彫っていく
墨付けが終わると内側の破線で印をつけた部分を垂直に掘ります。深く彫らずおよそ3ミリと浅く掘ります。同じよに彫れていない破線を彫っていきます。このように彫り線をつけ、彫り線に向け斜めに彫っていきます。
掘り終えるとまた垂直に彫る
図のように最初に破線を垂直に掘った所まで彫ります。それが彫り終わると再び垂直に彫り線を刻みます。溜まった削りカスも取りながら作業をします。
あとは繰り返していく
垂直に彫り線をつけたらまた同じように斜めから彫り進めて行きます。後は必要な深さまでこの手順を繰り返してくだけでです。同様に反対側も同じように彫っていきます。
掘れたら下書きを掘る
墨付けの内側約2ミリを全て掘り終えたらあとは墨付けを慎重に垂直方向に掘ります。これでほぞ穴の加工完成です。
鑿の種類① 叩き鑿(追入鑿)
叩き鑿の中では追入鑿がポピュラー
叩き鑿は上記にあるようにゲンノウで柄の頂点部を叩いて使う鑿です。その為カツラがついています。逆に言えばカツラが付いてない鑿は叩いて使うことがない種類になります。刃は厚めでしっかりと大きめに彫る時に使われ、大きさは多種多様ありますがよく使われるのが3分、5分、8分です。
選び方
この鑿はバランスのいい鑿なのでいろいろな木工につかわれるので本来ならば加工する穴に合わせて大きさを変えて使います。しかし全て揃えると10本以上にもなり金銭的にも負担が大きくなるので、よく使われる3分、5分、8分の三本セットを買うことをおすすめします。そして慣れてきたり木工にハマったのであれば足りないサイズを買い足すと金銭的にも負担が少なくおすすめです。
鑿の種類② 丸鑿
穴を彫ったりする丸い刃
叩き鑿の一種ですが刃が丸く彫刻のように曲線がある時に使用します。これはどちらかと言うと彫刻に使われやすい鑿ですがプロの大工が使い特に宮大工(神社、宮殿などを専門とする大工)には必要な工具です。
選び方
R(円弧の半径)がきつくなるほど値段が高くなります。また彫刻の部類になるので大きさのおすすめと言うのはなく使いたい面にあった大きさを選ぶことが大切です。特に曲面を削るのであれば削りたいRとあったものが使いやすいです。また丸鑿には裏丸と外丸二種類がありまっすぐ砥石でも研げるのが裏丸です。
鑿の種類③ 向持鑿
狭い穴を彫る時に使う
向持鑿(むこうまちのみ)は追入鑿では彫りにくい狭い穴を彫る時に使います。狭い場合は電動工具を使ったほうが緻密にできると思いそうですが実は鑿を使うことで絶妙な加減で仕上げることが出来ます。
選び方
もともと狭い穴を彫る為の鑿ですので、大雑把に5分あればいいというものではありません。必要に応じて選ぶことが大切です。1分から4分と少ないようにみえますが中には1分5厘、3分5厘などの細かいサイズもあります。おすすめはやはり初心者だからといってセットを買わず必要なサイズだけ買い足す方がいいです。
鑿の種類④ 突き鑿(薄鑿)
手で使う為カツラはない
この鑿はゲンノウで叩いて使用しないためカツラはついていません。手で突くようにして薄く削るような使い方をするため柄が叩き鑿と比べるとかなり長いのが特徴です。表面の凹凸を削ったり鉋(かんな)が入らない狭いとこを仕上げる時に使います。刃も薄くなっていて一気に削るには不向きでゆっくり綺麗に削る時に使います。最小サイズは5厘(1.5ミリ)となっています。
選び方
仕上げ用の為いろいろな形をしているので適材適所の鑿を選ぶことが大切です。例えば溝の底を綺麗にしたい時はコテのようになった特殊な形をしている鑿を使います。接ぎ方などによっても形状がことなる鑿を使うのでこれを持っていればいいとかおすすめできる物はなく必要に応じて選ぶ必要があります。強いて言うならば3分、5分、8分を揃えると扱いやすいです。
鑿の種類⑤ しのぎノミ
特殊な接ぎ方に使う
しのぎ鑿は刃先が三角形の形をした鑿で、突き鑿の種類の一種です。使い方としては箪笥など家具を作る時に使われる蟻組み加工をする時に用いられます。そのため穴を彫るなどには使われないので使用する機会は少ないです。
選び方
蟻組み加工に使う為2分から1寸と幅広くあるので用途にあった大きさ、選び方をすることが大切です。
種類のまとめ
鑿は大きく二種類に分類される
一言に鑿と言っても大きく分けて二種類あり、それが叩き鑿と突き鑿です。叩き鑿というカテゴリーの中に追入鑿、丸追入鑿や向持鑿があります。同じように突き鑿というカテゴリーの中に薄鑿、しのぎ鑿、テコ鑿があります。他にも特殊形状の鑿や彫刻用のものがあります。
適切な鑿の選び方
価格に注目
価格もピンからキリまでありますが5000円を超えた鑿をおすすめします。安い鑿は刃があまり切れずになかなか上達せずすぐに諦めてしまうケースがあります。必ずしも安い物が全て悪いというわけではありませんが手頃な価格で始めてみるのが上達への近道です。
鑿の柄の種類
鑿の柄には主に赤樫、白樫、グミ、黒檀があります。赤樫は近年では見かけなくなり、白樫を赤くした物が増えてきています。赤樫は粘りがあり柄には一番いい素材です。白樫も同様ですが色は白いです。グミは関西方面でよく硬質と粘りを持っているため持ち手への振動があまり響かない材木です。黒檀は黒く、光沢もあり高級感のある木材ですが、打撃により稀に破損する事があります。
研ぐ回数も増えてくる
安いものは研ぐ回数がふえますが初心者の方がいきなり研げるかというと難しいものです。しかし研がないと刃が進まずと悪循環になります。そうならないためにも最初はできるだけ良い鑿を使うことが大切です。
研ぎ方と管理方法
研ぎ方 始めに砥石の準備
砥石はホームセンターにあります。1000番ぐらいの荒い砥石を使い仕上げに8000番などの細かい砥石を使います。ヤスリや砥石は目が細かいと数字が大きくなり荒いと数字が小さくなります。砥石を水に浸けると泡が出てくるので泡が出なくなるまで浸けてください。
研ぎ方
たまに水をかけながら砥石全体を使って角度をキープしながら研ぎます。この時角度はおよそ30度でこれ以上では刃が砥石を削ります。図のようにしながら鑿を前後に動かしていくと研げます。刃先までしっかり研げると裏側から触るとひっかかるような感触があります。これは刃先が裏側に少し反り返るためです。
仕上げと保管方法
反り返ると仕上げに入ります。裏面も研ぎ反り返った部分を平らにします。あとは同じように仕上げ用の砥石で表側を研いでいきます。光沢があり鏡のように周りが映るぐらいになれば完璧です。保管方法は水気をよく拭き取り錆止めの油を塗り布などで刃先を巻いて保管します。
まとめ
おすすめというのは実際にはない
鑿は木材を加工するのに必要な工具です。どんな大きさの穴なのか、どんな広さなのか、仕上がりは綺麗に整えるのかなど必要な種類が変わってくるのでこの一本をだけおすすめすると言うのは出来ません。選び方としては適材適所で今自分が何を彫っているのかを見極めて買い足すようにするといいです。唯一おすすめ出来るとしたこれから始めるという人であれば追入鑿であれば3分、5分、8分使えば大丈夫です。
砥石など参考になる記事
より詳しい研ぎ方はこちら参考にしてみるのもいかがでしょうか。ナイフの研ぎ方ですが参考になる部分もあります。
【ナイフの研ぎ方入門ガイド】基礎から教える研ぎ方のコツをご紹介!
登山にナイフは便利な持ち物で、種類もいろいろあり、どんなナイフを持てばよいか悩みます。ナイフを購入して、使った後に自分で研いでますか?研ぎ方...
向持鑿は細長い