伊達インターから車で5分
モンベツ岳は北海道の南にある(道南という)伊達市にある。北の湘南と呼ばれる温暖な土地で農業と酪農の町だ。近くには活火山の有珠山がある。
モンベツ岳の登山口は「太陽の園」という児童養護施設の脇にある。太陽の園に隣接して駐車場があり、砂利だが30台ほど停められる。
10時ころに到着するとがすでに駐車場はほぼ満車だ(僕は買い物に行く妻に便乗して来た)
市外ナンバーが目立つ。札幌はもちろん函館ナンバーの車も何台か停まっている。
函館はここから下道で4時間、高速でも3時間はかかる(北海道では高速道路を通る場合と下道を走った時間がさほど変わらないことがある)
それもそのはず、登山口の駐車場は最寄りの伊達インターから5分ほどなのだ。道もわかりやすい。
インターチェンジから近くで簡単に稜線が楽しめるなら、人気なのも納得できる。
七号目まで一気に登る
手軽に稜線と言っても登山口からいきなり稜線にでるわけではない。それなりに登る。しかも急登。
松の葉が積もった登山道を息を切らしながら登る。時折林が切れ視界が晴れる。低山だが〇号目という標識があるので士気が上がり、「あと少し、あと少し」と登る足にも力が入る。
紅葉の季節が終わりすっかり落ちてしまった葉を踏みながら行く。柔らかい腐葉土に敷き詰められた落ち葉の乾いた音が気持ちいい。
登山はいつだって辛い。運動不足の人もベテランも登っていれば息が切れ、誰でも苦しく誰でも危険が伴う。
しかしその危険をコントロールし、苦しくてもう嫌だという気持ちをがまんして行った先に素晴らしい景色が待っているのだ。
そう思ってがんばるのだが苦しいものは苦しい。ベンチがあったので一休み。
う回路を作ってくれてました
稜線まで急登と書いたが、この山、スタートから本当に急登なのだ。事実登山届の箱までも5分ほど息を切らすことになる。
この日登山口に入ると「う回路」とかかれた標識があった。それに従い道を行くと草刈り機を操作する一団がいた。
「すいません。こっちでいいんですか?」「ここキツイっしょ、いまう回路作ってるから通っていきな」
丁寧に刈られた道を進むとさらに2グループほど作業している人がいた。少しお話すると僕がこのう回路を通る最初の登山者だという。なんだかうれしい。
労いと感謝の気持ちを込めここに写真付きで紹介する(掲載の許可は取っている)
見て!この景色!
七号目にはベンチがあった。先客と談笑しながら呼吸を整え踏み出すと目の前に広がるこの景色。思わず「うわあああ」と声が出る。
そのまま稜線を進む。ときおりロープの張られた急登や足場の悪いところもあるが、概ね
平坦な稜線を歩く。
それにしても景色が素晴らしい。林も七号目で終わり、稜線は視界が広がっているので秋晴れの空が特に広く感じる。
ついつい立ち止まって深呼吸するのでなかなかペースが上がらない。けれどこの景色を前にしたら誰だってこうなってしまうはずだ。秋は日没が早いのでそれだけ気を付けて帰ればいい。
頂上到着!と思ったら
30分くらい歩いただろうか。太平洋からの風に帽子が飛ばされないように気をつけながら歩いていると看板が見えてきた。「あそこが頂上か」と脚に力が入る。
ラストスパート。一気にペースを上げると看板には「前紋別岳」とある。
周りに登山客はいない。というより、さらに道が続いている。どうやら頂上ではないらしい。
ペースをあげたので息も上がった。少し休憩。風は強いが煙草に火を点け太平洋を眺める。
快く送り出してくれる妻と、最近は忙しいと言って一緒に行動してくれなくなった息子の顔がなぜか浮かぶ。成長と老いと変化。変わりゆく中にも変わりたくないことがある。煙越しの海に見つめる。
向こうには有珠山と100名山の羊蹄山
腰を上げて少し行くと先ほど僕を追い越して行った青年が戻って来た。
休憩直後でペースが上がらず息が切れていた僕が聞くともう少しだと言う。登山者の「もう少し」ほど当てにならないものはない。それでも力が入る。
頂上到着。お決まりの鐘をならしたら、地元で有名なサンドイッチと朝挽いてきたポットのコーヒーで昼食。風は収まっていた。未だ活発な活動を続ける有珠山の向こうには100名山の羊蹄山がうっすらと見える。この時期にまだ雪が無いのは珍しいように感じた。
さっきまで下山者が多かったので頂上は僕一人。見事な秋晴れとこれぞ北海道という景色にいつまでも留まりたくなるが、秋は日没が早い。暗くなる前に下山することにした。
手軽に稜線と景色を楽しめる山
今回は日差しの温かい秋晴れの日を狙って道南「モンベツ岳」登山に行ってきた。
地元ではあまり知られていない様だが、登山口駐車場には道内各地のナンバーが停まっていた。それも高速道路出口からほど近く2時間急登を登れば素晴らしい稜線を楽しめるからだろう。
登山口駐車場のある「太陽の園」は伊達インターを出たらすぐにあるプライムヘルシータウン湘南の交差点を左折し、道なりに行くと到着する。1区画先にはコンビニもあるので飲料水などはここで購入するとよいだろう。
今回は晩秋にいったので紅葉の時季は過ぎていたが盛りの時季にくればそれは見事なものだったろう。登山道が稜線と急登なので積雪期は難しいが、雪が解け春が芽吹いたころにもう一度行きたいと思う、すてきな山だった。
出典:ライター撮影