美味しいだけじゃない!梨は栄養豊富な果物
梨はバラ科ナシ属の果物です。梨とよく比較されるりんごも同じくバラ科の果物になります。梨は夏の終わりから店頭に並びだし、旬である秋を迎えるとさまざまな品種がお目見えします。品種によって収穫時期が異なるため、秋の終わりまで品種の違いを楽しめる人気の果物です。
梨は皮をむくと真っ白な果肉をしているため、栄養が少ないと思われがちですがそんなことはありません。健康にうれしい栄養成分がたっぷり詰まっています。
梨の特徴
梨の特徴はなんといってもそのみずみずしさとしゃきしゃきした食感といえます。また、みずみずしさや特徴的な食感以外にも、香りが豊かなのも特徴の1つです。同じバラ科の果物りんごと比べると、酸味が穏やかで甘さをより強く感じられる点も梨の特徴といえるでしょう。
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梨の栄養成分
梨には大きく分けて「中国梨」「和梨」「西洋梨」の3つがあります。この記事では日本で頻繁に食べられる「和梨」(以下梨と表記)の栄養についてご紹介します。文部科学省発表の「日本食品標準成分表」によると梨100gに含まれる栄養成分(三大栄養素+食物繊維)は以下の通りです。
エネルギー | 43kcal |
水分 | 88g |
たんぱく質 | 0.3g |
炭水化物 | 11.3g |
脂質 | 0.1g |
食物繊維 | 1.9g |
100gの梨の88gは水分です。梨がみずみずしく感じるのはまさにこの豊富な水分量によるものでしょう。カロリーは100gあたり43kcalで、このカロリーは炭水化物に由来。梨が甘いのも納得でしょう。
りんごより甘く感じますがカロリーはりんごよりわずかに低くなります。特筆すべきは食物繊維量でしょう。しゃきしゃきした梨の食感は食物繊維によるものです。そのほかの栄養成分や健康作用についてみていきましょう。
梨の栄養と健康作用①疲労回復
期待できる健康作用の1つが「疲労回復」です。梨は夏の終わりから秋の終わりまでが旬。夏バテや残暑の厳しさで疲労を感じている人にもおすすめの果物です。
ほぼ水分といわれる梨ですが、夏の暑い時期に冷たい梨はまさに水分補給にうってつけの果物ともいえますね。どのような栄養成分が疲労回復に作用しているのかチェックしてみましょう。
疲労回復に効果的な梨の栄養①アスパラギン酸
梨に多く含まれる栄養成分の1つがアスパラギン酸です。アスパラギン酸はたんぱく質のもととなるアミノ酸で、高い疲労回復効果を発揮するといわれています。
アミノ酸の1つであるアスパラギン酸には疲労回復効果のほかにも利尿作用があり、体内の不要な成分やアンモニアを体外へ効率よく排出。体の水分を効率よく巡らせたい人、代謝速度を上げたい人などにおすすめの栄養成分です。
アスパラから見つかったアミノ酸「アスパラギン酸」
疲労回復に効果のあるアミノ酸「アスパラギン酸」ですが、名前も独特。それもそのはずアスパラギン酸は野菜のアスパラから発見されたアミノ酸です。
アスパラギン酸は疲労物質といわれている乳酸をエネルギーに変換する作用がある栄養といわれており、そのほかにも「うまみ」を感じさせるアミノ酸でもあります。
疲労回復に効果的な梨の栄養②クエン酸
梨にはリンゴ酸やクエン酸などの有機酸が豊富です。梨のさわやかな酸味はこのリンゴ酸やクエン酸といった有機酸によるもので、これらは細胞でエネルギーを作り出す「クエン酸回路」に欠かせない物質でもあります。
クエン酸などの栄養を効率よく梨から摂取することでエネルギーを作り出し、疲労回復効果が期待できるでしょう。
梨の栄養と健康作用②整腸効果・ダイエット
梨は体が疲れているときでもみずみずしさとさわやかな酸味で食べやすい果物です。水分補給や疲労回復以外にもうれしい栄養成分がほかにも。梨を食べることで、整腸作用が期待でき、お通じ改善がみられることもあります。
また、暴飲暴食を防ぎダイエットが期待できることも。具体的な栄養成分についてご紹介します。
整腸・ダイエット効果的な梨の栄養①ソルビトール
ソルビトールは果糖の1種です。梨は甘みを強く感じますがそれはこのソルビトールを多く含むためで果物の中でも梨のソルビトール量はトップクラスといわれています。
ソルビトールは砂糖と比べて吸収が穏やかな栄養(糖)のため血糖値の上昇が起こりにくいといわれており、糖のなかでは太りにくい栄養ともいわれるほど。また、整腸作用が期待できるためお通じでお悩みの人にもおすすめできます。食べすぎには注意しましょう。
ソルビトールには炎症を抑える効果も?
体内への吸収が穏やかな栄養「ソルビトール」はダイエットにも心強いですが、そのほかにも炎症を抑える効果があるといわれています。中国ではその栄養の高さから漢方として扱われることもあり、喉が痛いときや咳が出る時に使われることも珍しくありません。
これはソルビトールの働きによるもので、のど飴などにもソルビトールは含まれています。夏風邪で咳がでて辛いときなどに梨はおすすめの果物です。
整腸・ダイエットに効果的な梨の栄養②食物繊維
前述したように、梨には食物繊維が豊富。食物繊維豊富で有名なりんごにも劣らないほどの量が梨にもふくまれています。食物繊維には不溶性と水溶性の2種類がありますが梨にはどちらもバランスよく含まれており、整腸・ダイエット効果が期待できるでしょう。
食物維繊維は、糖類と一緒に摂ると糖の吸収がゆるやかになる栄養といわれており、吸収されやすい糖を多量に含むお菓子を摂るのであれば梨にしたいところですね。
食物繊維はコレステロール吸収にも作用
食物繊維自体は消化されることもなく栄養もありません。そのため、これまでは不要なものと考えられていましたが近年食物繊維は健康にさまざまな作用を及ぼしている栄養であることが明らかになってきました。
その作用の1つがコレステロールの排出です。食物繊維を十分に摂っているとコレステロールの吸収が起こりにくく、体外へ排出されやすくなるといわれています。
梨のしゃきしゃき食感はなぜ?
梨はざらざらした独特の食感が独長ですね。りんごにも梨のように豊富な食物繊維がありますがそんな食感はしません。あの食感は梨特有の「石細胞(せきさいぼう)」によるものです。石細胞は食物繊維が重なり合って作られた細胞で人は消化できませんが体内の不要なものを外に押し出す働きが期待できます。
梨の栄養と健康作用③塩分排出・消化促進
梨にはエネルギーを作り出し疲労回復に効果的な栄養成分を持ち、食物繊維や糖による整腸作用があるとご紹介してきました。ほかにも健康作用があり、なかでも現代人にありがたいのが「塩分排出」と「消化促進」です。
肉や油などが過剰で栄養バランスが乱れた食事を摂る機会が多い人にはぜひ知っておいてほしい梨の栄養成分をご紹介します。
塩分排出・消化促進に効果的な梨の栄養①カリウム
梨にはミネラルの1種であるカリウムも豊富にあります。カリウムは塩分(ナトリウム)の排出の役割を果たしており、塩分過剰によるむくみなどに効果のある栄養です。
塩分の摂りすぎはむくみ以外にも血圧上昇の原因になるともいわれており、そんな生活を続けていると血管や心臓といった循環器に大きな負担をかけてしまいます。摂りすぎた塩分を効率よく排出するためにもカリウムは取り入れたい栄養といえるでしょう。
脚がつる人にもおすすめのカリウム
カリウムは筋肉の収縮にも作用している栄養成分です。そのため、脚がつりやすい人にもおすすめ。バナナに豊富なことが知られるカリウムですが梨にも多く含まれており、夏の暑い時期は水分不足にもなりやすくより脚がつりやすくなります。
梨はこのどちらの問題も解決してくれる果物といえるでしょう。
塩分排出・消化促進に効果的な梨の栄養②プロテアーゼ
梨をソテーやカレーなどの煮込み料理に使っているのを見たことがある人もいるのではないでしょうか。梨にはプロテアーゼというたんぱく質分解酵素が含まれており、梨に肉を漬け込むと酵素により肉が柔らかくなります。
そのため、消化器官に負担をかけがちな肉類と一緒に食べると消化促進作用が期待でき、食後の辛い胃もたれなどが軽減できるかもしれません。塩分排出作用もあるため料理の具材として使いたい果物といえるでしょう。
二日酔い予防にも効果がある?
アミノ酸、食物繊維、ミネラル、有機酸とバランスよく栄養を含む梨はアルコールの分解速度を上げ、二日酔いを予防する効果があるともいわれています。飲酒する前に梨果汁を飲んでおくとよいともいわれており、食べすぎ・飲みすぎになりやすい会食の際には取り入れたい果物かもしれませんね。
生で食べる以外にも!おすすめの梨レシピ
冷蔵庫で冷やした梨は甘くて冷たく、なんともいえない美味しさですね。暑さがこもる体に水分が吸収されていくのを感じられる心地よさでしょう。
生で食べてももちろんおいしい梨ですが、大量に手に入ったときはそのほかの食べ方も試してみたいところです。梨の栄養素や健康作用がより発揮できる食べ方をご紹介します。
おすすめの梨レシピ①梨スムージー
材料
豊水梨:1/2個
バナナ冷凍輪切り:1本
牛乳:200㏄
梨には前述してきた栄養成分以外にも栄養成分があります。その1つがポリフェノール。高い抗酸化作用を発揮し体の細胞をさび付かせません。そんなポリフェノールは果肉よりも皮に多く含まれます。ジューサーで皮ごとスムージーにすれば栄養満点で美味しく食べられますよ。
くわしい作り方はクックパッドで
塩分排出作用が高く、糖の吸収を穏やかにする梨スムージーは健康づくりやダイエットに興味がある人におすすめのレシピです。ジューサーでスムージーに細かく砕いても梨のシャリシャリした食感は残っており、満足感ある1杯に仕上がりますよ。
おすすめの梨レシピ②梨の生姜焼き
材料
豚肉ロース生姜焼き用:170グラム
玉ねぎ:1/4 個
サラダ油:小さじ2~大さじ1
豊水梨すりおろし:1/4個
市販の焼き肉のタレ:大さじ2
梨の生姜焼きは、梨に含まれるプロテアーゼによってお肉がしっとり柔らかくなるレシピです。冷えても柔らかいままなのでお弁当のおかずにもおすすめ。いつもの生姜焼きのレシピに梨のすりおろしを加えるだけで塩分排出効果や糖の吸収を穏やかにする効果を一緒に期待できます。
くわしい作り方はクックパッドで
市販の焼肉のタレを使えば面倒な調味料の軽量も不要です。梨は皮に含まれる栄養も摂りたいので皮ごとすりおろしてしまいましょう。梨のプロテアーゼ効果を十分に発揮するために数時間は冷蔵庫で漬け込むのがおすすめです。
おすすめの梨レシピ③梨と白きくらげの冷菓
材料
白きくらげ(乾燥):5g
梨:1個
水:350mL
氷砂糖:40g
レモン果汁:小さじ2
カットレモンやミント:適量
漢方として扱われることもある梨は薬膳料理も人気です。梨と白きくらげの冷菓は簡単に作れる薬膳料理。梨と白きくらげの食感の違いが楽しく暑い夏を忘れさせてくれる味わいです。体を冷やしたいときに試してみてくださいね。
ソルビトールの働きが期待できるので風邪をひいて喉を痛めている人に作ってあげるのもおすすめです。梨と白きくらげのスープを飲むだけでも違いますよ。
くわしい作り方はクックパッドで
薬膳料理「梨と白きくらげの冷菓」は夏に乱れがちな塩分バランスを優しく整えてくれる1品です。白きくらげは乾燥食材として売られているので長期保存も可能。優しく体に吸収されていく水分の心地よさを感じながら体をいたわりましょう。
栄養豊富な秋の果物「梨」
みずみずしくシャキシャキした食感がなんともいえず美味しい梨。水分補給や疲労回復効果など夏バテ時期にありがたい栄養成分から、糖やコレステロールの吸収を穏やかにしてくれるいつでも摂りたい栄養成分まで、梨にはさまざまな栄養成分があります。
食物繊維が豊富で食感が固いため何度も噛む必要がある梨は少量で満腹感が得られるためダイエット中の感触にもおすすめです。旬の果物の栄養を美味しくいただきましょう。
梨の栄養について気になった方はこちらもチェック
うれしい栄養成分がぎゅっと詰まった梨ですが、実は品種が非常に豊富。香水や二十世紀など定番品種から、その土地でしか取れない珍しい品種までさまざまあります。
梨の季節に旅行した際は、旅先で珍しい品種を探すのも楽しいですよ。梨の品種や特徴について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

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