SR400の生産終了に思う:はじめに
この連載にとりかかってちょうど1年が経ちました。連載第1話の配信日が私の誕生日でしたのでよく覚えています。私はとうとう51歳、月日ほど平等に流れるものはありません。おっさんになってまでバイクに乗っているなんて…いえいえ、私と同世代でバイクに乗っている人は多いですね。もっと若い世代にもバイクの楽しさを知ってほしいと思っています。どうも!暮らしーのでライターをしておりますhosokawa_takaです。
長年異彩を放ち続けたSR400
私がバイクに憧れ始めたのは中学生の頃です。当時はスズキのRG250ガンマやホンダのNS250Rといった2ストロークのレーサーレプリカに人気がありました。そんな中、バイク雑誌の片隅でひっそりと掲載されていたのがSR400です。
RZ250やXJ400と似ているのに27馬力しかないなんて…SR400はそんな印象でした。厳密にはRZ250やXJ400がSR400のデザインを踏襲していたのですが、それに気付いたのはもっと後のことです。
SR400ファイナルエディションの登場で思うこと
SR400は「ビッグシングルの強烈なトルク」とバイク雑誌に紹介されていましたが、当時の私にはその意味を理解できませんでした。そんなSR400も2021年の1月に生産終了がアナウンスされ、3月にはファイナルエディションの販売が開始されます。
では本題!ここではSR400の生産終了について思うことを書きます。画像ではSR400の最高速度を計算した表をつけますね。なお、この記事は2021年2月3日現在の私の心境をもとに作成しますことをご了承ください。
SR400の生産終了に思う:有機的なバイク
遅いバイクという印象を持ちながらも、私はSR400が好きでした。美しく潔いシルエットやクロームメッキの輝きなど、SR400には当時のレーサーレプリカにない有機的な雰囲気があったのです。
特に印象的だったのは1984年に販売が開始された発売7周年記念モデル。私がギターを弾き始めた頃で、ビンテージギターを思わせるレッドサンバースト塗装にしびれました。そういえば…初めて買ったギターはヤマハのSTH500Rというストラトタイプでした。
SR400は気になる存在だった
なぜSR400に乗れなかったのか?
SR400はバイクの買い替えで常に候補に挙がっていました。ジェベル200を購入したときは車検があることで断念し、ゼファー750RSを購入したときはSR500の中古のタマ数の少なさに断念しました。
SR400の1985から1995年までのモデルを物色していた頃もあります。フロントがドラムブレーキ、右ステップを折りたたまないとキックペダルを踏み下ろせないバックステップ、そんな年式で、不便さに魅力を感じたのです。
SR400乗りにはいい人がなぜか多い
SR400に乗っていた友人もいます。学生時代に所属していた軽音楽部の先輩、青年団活動のつながりで知り合った奈良市のバスケットボールクラブのキャプテン、ニセコの野営場で知り合ったバイク乗りさんもSR400に乗っていました。
彼らに共通しているのは調和を重んじる真面目な性格。自分のスタイルを持っているがゆえに、人のスタイルに対する寛容度も広いのです。また、SR400に乗っている人はフレンドリーな人が多い印象を受けます。
SR400の生産終了に思う:珍しいヤマハ車
SR400はキックスタートが魅力ともいわれています。私の世代からすると懐かしい感触ですが、若い世代からするとメカニカルな楽しみとなっているようです。確かに、セルスイッチを押すときに上死点を意識することはありません。
SR400はバッテリーを搭載していますし、燃料供給装置はFIです。現行モデルは始動性も良好とのこと。私が乗っていたXLR250R(MD22)はバッテリーレスのキャブ車でしたので、キックスタートに苦労しました。
ヤマハ車って乗ったことないけど…
ハンドリングのヤマハ?
私はRZ250Rに憧れてバイク乗りになったにもかかわらず、いまだにヤマハ車に乗ったことがありません。ヤマハ車のハンドリングってどんなの?と思い、YZF-R25やセロー250のユーザーレビューを確認しても、詳しく伝えている人は少ないですね。
北海道の静内温泉キャンプ場で知り合ったカブ氏曰く「ヤマハ車のハンドリングは癖がある」とのこと。ヤマハ車にはユーザーでさえ言葉にできない魅力があり、ミステリアスな部分が多いのです。
SR400でカスタムにハマる理由
SR400に乗っていた人がよく口にするのはリヤサスペンションへの苦言です。乗り心地はいいものの、コーナリング中にフワフワして車体を安定させにくいと聞きます。ここが沼の入り口。リヤサスペンションをカスタムパーツに換装すると、驚くほど旋回性が高まるとのこと。
「ハンドリングのヤマハ」といわれますが、それはSR400に当てはまらないかもです。そういえば、妻の原付ビーノ(SA37J)も乗り心地はソフト。また、着座位置でハンドリングが変わります。
SR400の生産終了に思う:最高速度
ここでSR400の年式の違いを確認します。SR400は大まかにキャブ車とFI車に分けられます。キャブ車時代は目立った変更がされていないものの、FI車は2010年以降モデルと2019年以降モデルで大きな違いがあるのです。
2010年以降モデルはキャブ車の出力特性に似せたスペックですが、2021年ファイナルエディションを含む2019年以降モデルは一般道でトルク感を得られる出力特性になっています。
SR400ファイナルエディションの最高速度
最大トルクを発生させるエンジン回転数が低い
SR400の理論上の最高速度は400ccのバイクとは思えないほど低いですね。しかし、最大トルクを発生させる速度と最高出力を発生させる速度の差が広く、SOHC2バルブ単気筒エンジンのトルク感を楽しめる設定です。
最大トルクを発生させるエンジン回転数を低くする設定は、ホンダのシャドウクラシック400でも採用されました。某米国製クルーザーも同様です。最高速度って意味ある?SR400からはそんなメッセージを感じます。
SR400キャブ車の最高速度
しかし、このエンジンスペックの変更にフィーリングの大幅な違いはなさそうです。元のエンジン特性をベースに、SR400らしさを強調するための変更だと考えられます。エンジン特性は最高出力や最大トルクよりもボア×ストロークによるところが大きいからです。
SR400のボア×ストロークは43年間変わらず87×67.2mm。SR500をベースにショートストローク化して、普通二輪免許(当時の中型限定)でも乗れるようにされました。
SR400の生産終了に思う:まとめ
SR400の魅力はトラディショナルな雰囲気?空冷シングルのメカノイズ?それともキックスタート?しかし、それはホンダのGB400TTやCB400SSにもあります。しかも、ハンドリングの評価はGB400TTやCB400SSのほうが高いですね。
ではなぜ今までSR400が多くのバイク乗りから愛されてきたのか?それは、SR400は不完全なバイクだからでは?と私は思っています。逆にいえば、最新のバイクは完璧すぎるのです。
SR400ファイナルエディションの行方
後継モデルのSR400は?
SR400は惜しまれつつも生産終了となりました。後継モデルの発表を待つファンは多いことでしょう。しかし、私はヤマハにSR400の後継モデルを開発してほしくありません。進化したSR400ってどうですか?カスタム意欲が湧きますか?あなたは完璧なSR400を愛せますか?
かといって、不完全なバイクを開発するのは難しいのが現状。ましてや、海外のヤマハの公式HPを見ると、電動バイクに注力している印象を受けます。
ツーリング先でファイナルエディションに出会いたい!
なぜSR400が生産終了になったのか?ヤマハはSR400に延命措置を施してきましたが、ユーロ4には対応できたものの、後継モデルにユーロ5をクリアさせるのは無理だったのです。
ファイナルエディションはコレクターに買い漁られるといううわさも聞きます。プレミア価格になったら売って儲けよう…そんな人もいるかもです。経済活動としては正当でしょうが、ツーリングへ連れて行ってもらえないSR400ファイナルエディションがあると思うと、私はかわいそうでなりません。
SR400の最高速度(キャブ車最終型)
※最高出力を発生させるエンジン回転数での理論上の速度