ハイキングとは
英国発祥のハイキングは自然の中を歩く広い概念で、手や装備を使って上る登攀以外の山登りは、ハイキングに含まれます。近い単語としてウォーキング、ランブリング、ワンデリング、トラピング、トレッキング、バックパッキングなどがあり、解釈は国や地域で多少異なります。ただし、この記事で取り上げるハイキングは、「高齢の大人や子供も含め、和気あいあいと気軽にのんびり、自然を楽しみながら野外を歩く」と言う、国内での一般的な概念です。
ハイキングと混同しやすいものには、トレッキングや登山があります。まずはハイキング、トレッキング、登山の違いについてご紹介します。ハイキングは3つのアウトドアアクティビティの中では最も気軽に楽しめるアクティビティです。山を登ることを目的にしているのではなく、景色を楽しんだり、自然とふれあうのが目的です。高低差があまりなく、歩きやすい場所を選ぶため、子どもと一緒に挑戦してみるのもおすすめです。
ハイキングの発祥
18世紀に入って、産業革命で世の中が豊かになるに連れ、それまで貧しさや労働に結び付けられていた歩行が自然や景観を愛でながら散策するロマンチックな楽しみとして受けとめられる様になりました。英国のキリスト教カソリック司祭トーマス・ウェストが1778年に著作「湖水地方へのガイド」でその概念を広め、それが発祥と考えられています。アメリカ大陸では1819年にワシントン山へ13kmの道が開かれたのがハイキングコースの始まりです。その後、ロッキー山脈、アンデス山脈やアパラチア山脈など様々作られ、長いものでは3,000kmに及ぶグレーター・パタゴニア・トレイルがあります。
国内でのハイキングの発祥
日本でのハイキングは、1932年(昭和7年)に雑誌「ハイキング」を発刊し、その普及に尽力した小池利兵衛氏が発祥とされています。副題に「徒歩行雑誌」とあるように地図と磁石を使った山野歩きでした。その伝統は、第二次大戦後の1945年に再結成された「新ハイキング」クラブと新ハイキング社(東京都北区滝野川7-5-5 高橋ビル402)に引き継がれています。2020年現在も存続し、国内最大級の会員を擁するハイキング活動や「歩く人による、歩く人のための」出版が行なわれています。「徒歩行」の伝統と山地の多い日本の風土のためか、活動の中心は軽登山にあります。
国内での一般的なハイキングとは
三省堂日本山名事典の著者徳久球雄氏が小学館 日本大百科全書に次のように定義付けされています。前文がこの記事で述べているハイキングの概念であり、その後文の記述が上述した「新ハイキング」クラブが昭和7年から現在も実践している軽登山を含めたハイキングです。前述のJR東日本観光ガイド「びゅうとらべる」に紹介されたハイキングの定義が分かり易いので参照してください。
一般に徒歩旅行と訳される。イギリスでは18世紀ごろからウォーキングwalking(徒歩旅行)と同義に用いられたが、19世紀後半からはウォーキング・レース(競歩)が盛んになったため、ウォーキングとハイキングとは別義になり、日常生活から離れての郊外散歩から軽登山までの野外活動が、広くハイキングとよばれるようになった。日本では1930年(昭和5)ごろから軽登山の意味で多く用いられた。リラックスしたレクリエーションとしての効果を期待して行われるもので、とくにそのためにトレーニングなどを行わないものをよぶ。
ハイキングコーデで山ファッションを満喫
ハイキングの楽しみは、それぞれの季節に応じて、その時々の自然に溶け込むことです。そのためにも自然と調和するおしゃれを感じながらの歩きが大きな要素です。ハイキングの服装は、夏のラフな散歩程度の軽めのファッションから秋春から冬へと進むほど雨具・シューズ・ザックなどの装備を重視し、重ね着(レイヤリング)に留意するなど、初心者でも基本は山ファッションです。山登りのようには、自然が厳しくないのでデートなど、ペアーでたのしむ余地も十分にあります。自然の中をスタイリッシュに歩きながら山ファッションを満喫しましょう。
ハイキングの服装12選①手持ちコーデ
ハイキングは長めの散歩の延長で、初心者でも子どものころから親しんできています。歩きやすいシューズとファッション(服装)と帽子があれば、取りあえずは参加できます。軽めの荷物も手に持つよりナップサック(ザック)に入れて背負う方が楽なのは言うまでもありません。また、折り畳み傘でも良いので雨具も用意しましょう。春夏秋冬のいずれでも基本的な装備はとりあえず手持ちのもので出来るだけ間に合わせます。服装は重ね着を念頭に揃え、手袋(夏は軍手でも可)と靴下も用意しましょう。
ハイキングの重ね着(レイヤリング)
昔から野外を歩く時、寒くなれば服を重ね、暑くなれば外着から順に脱いでゆくというやり方が取られてきました。これが重ね着の考え方です。その服装は、肌着・下着(インナー)、中衣(ミドル)と外衣(アウター)で構成されています。直接肌に触れているのが肌着で、その上に着るのが長袖や長裾の下着(インナー)です。普段は一番上に着ているシャツやズボンやチョッキ類などが中衣(ミドル)で、その上に被る雨具や防寒衣(カッパ、アノラックやオバーズボン)が外衣アウターです。一般的には夏からハイキングを始めますので最初から全て揃える必要はなく、少しずつ買い足して、冬に向けて徐々に揃えて行きましょう。
ハイキングの装備
山ファッションと基本は同じですが、ハイキングは車道のある人里とあまり離れていない場所を歩くので、軽めに考えて問題ありません。装備は、「三種の神器」と呼ばれることもあるシューズ、ザックと雨具の三つが最低限必要になります。シューズは歩きやすいもの、ザックはナップサックでも間に合います。雨具は折り畳み傘や簡易レインコートや自転車用ポンチョなどが流用できます。ビニール製は農業用では零下でも使えるものも出ていますが、温度が低くなると注意が必要です。
ハイキングの服装12選②歩きやすいコーデ
初心者がハイキングを始めたばかりであれば、仮にトレッキングを含むとしても山歩きは軽めの低山に限られます。ファション、シューズや装備も春夏秋冬にかかわらず、歩きやすく暑くも寒くも無い服装であれば、綿製品やジーンズを取り入れても問題ありません。登山とは異なり、急な雨や風あるいは雪に見舞われたとしても、人里までそれほど遠くは無いので、体力を消耗する前に避難できます。それよりは初心者ハイキングではどうすれば、楽しく歩き、行動できるかを先ずは考えましょう。
ハイキングの服装12選③汗対策コーデ
山のファッションには春夏秋冬とも基本的に、肌触りの良さでは綿下着が秀逸です。勿論、化繊の発達は目覚ましいものがありますが、静電気や肌荒れなど行動中に問題が起きてからでは遅いので、普段から着慣れて肌に馴染ませておく必要があります。また、厚い綿のシャツやズボンやシューズのファッションは、濡れない限り寒さや風も防いでくれます。初心者向きハイキングは基本軽めなので下着が汗だくになるような歩きはあまり無いでしょう。それでも、真夏などで肌着が汗まみれに成ることもあり得ます。その様な時には脱いで体を拭いて乾いたものと交換する方が、汗をかいたまま着続けるより清潔で快適です。その為の装備として簡易ポンチョが役立ちます。
肌着について
綿は5,000年以上前にインドから欧州に伝わり、服地として使われて来ました。日本にも1,000年以上前に中国から伝えられました。安価で肌触りや通気性が良く清涼感がある上に静電気が起き難く、洗濯・漂白・アイロンが容易なことから下着や衛生用布などに広く使われてきました。また、断面が中空でリボン状の扁平な成っているのでパイル立てをして空気を含ませると冬に暖かくも着られます。ただ、沢歩きで泳いだ場合などで、びっしょりと濡れると、乾きにくく、泳ぐ度に着替える必要があるのでおすすめできません。この場合はウール地などを使いましょう。
ハイキングの服装12選④買い足しコーデ
春夏秋冬の全ての季節となると、ファッションやシューズさらに装備の中で、手持ちでは間に合わない物も出てきます。山専用のものを揃えれば良いのですが、経験と知識がすくない初心者に取って基本に沿った選択は難しいものです。ここは、値段があまり高くない代替え品をユニクロ、無印良品、しまむら、ワークマンやホームセンターなどで軽めに買い揃えます。その後、使い方も分かり、行動もハイキングから登山へとグレードアップした時点で、本格的な装備やファッションを整えることをおすすめします。
ハイキングの服装12選⑤小物利用コーデ
春夏秋冬に応じて初心者でもファッションやシューズやザックなどの基本装備の他に軽めでもバンダナ又はネックウォーマー又はマフラー、アームカバー、レッグウォーマー、レッグーカバーまたはスパッツ、ベスト、手袋、サングラス、帽子、ウェストポーチ、ストックまたは杖、腕時計、磁石、雨具(傘・雨合羽上下)、防水用ザックカバー、水筒またはテルモス、携帯トイレとポンチョ、ヘッドライト、地図帳などの装備が必要になります。全部を揃える必要は無く、また代用品も有効です。例えば防水用ザックカバーは大きめのレジ袋で、ヘッドライトは懐中電灯で代用できます。
ハイキングの服装12選⑥春のコーデ
春は、朝晩と日中の気温差が大きく、日蔭や山中では残雪、霜や氷も残っていることもあります。山ファッションだと春のコーデは、夏のコーデにインナーやアウターを加える秋のコーデの意識では無く、冬のコーデから何を割愛して行くかと言う意識です。ハイキング初心者のファッションもシューズや装備も含めて基本は同じで、冬のコーデをどう軽めにするかで、長袖シャツに薄手のジャケットを持っておくとか、スカート、ラップスカート、ショートパンツ・キュロットとレギンズ、スパッツやロングパンツを組み合わせるのも素敵です。ただ、薄手でもアウターの上下やウールの帽子と手袋を携帯しましょう。
ハイキングの服装12選⑦夏のコーデ
春夏秋冬の中でも初心者が特にハイキングに出かけたくなる季節はゴールデンウィークなどの初夏です。服装もデニムの半袖、半ズボン、スニカーシューズなど軽めでラフなファッションで基本的に問題ありません。しかし、日焼け対策と森や山の中での虫刺されから腕や足を保護する為に長袖、長ズボンまたはアームカバーやレッグーカバーに手袋(軍手)などの装備を持ちましょう。日射病対策のために小型で軽めの麦藁帽などおすすめです。装備として雨具に簡易レインウェアか折り畳み傘くらいは持ったとしても雨や風が強くなりそうであれば早めに引き返しましょう。
ハイキングの服装12選⑧秋のコーデ
初心者の基本のファションは、夏のコーデと同じです。春夏秋冬の中でも秋は、日中が暑ても朝晩は急に冷え込むので、体温調節ができる防寒用にマウンテンパーカーやヤッケなどの軽めのアウター上下を備え、ミッドレイヤーにはシャツやズボンに加えてメリノウールのセーターなどを携帯しましょう。インナーは肌着に加えてメリノウールなどの袖や裾の長い下着上下を予備として携帯しましょう。湿地帯を歩くことがあれば、シューズは長靴も良いでしょう。手袋は装備としてウールの予備を持てば軍手でも間に合います。
ハイキングの服装12選⑨冬のコーデ
冬は空気が澄んでいるうえに落葉樹では葉が落ちているので春夏秋冬の中で一番見通しも良く快適です。その上、ハイカーも少ないので自分歩きが楽しめます。他の季節に比べて初心者でも軽登山的なファッションになります。雨具、シューズ、ザックの装備を軽めでも山仕様にしましょう。ファッションとして綿の肌着以外はインナーの下着とミッドレイヤーのズボンとシャツに手袋や靴下を含めウール地がおすすめです。アウターは一般的にはマウンテンパーカーやヤッケの上下で間に合いますが、歩く場所の緯度や標高によって寒さ対策のダウンも取り入れましょう。
化繊のウェア
一方、化繊の製品は日進月歩で進歩しており、肌着でも購入時に化繊製品が勧められることが多いでしょう。また、メリノウールの製品では耐候性などを補う為に化繊と組み合わせたハイブリッドの製品も少なくありません。肌着の場合、肌触り、静電気防止、思わぬ皮膚のかぶれやダメージを考えると、びしょびしょやずぶ濡れの状況以外では、綿が優れています。化繊の場合は肌への刺激に個人差がありますので、初心者の場合は化繊の肌着製品をいきなり野外で使わず、先ず普段の生活で使い均して、肌に馴染ませて下さい。
ハイキングの服装12選⑩おしゃれなコーデ
春夏秋冬それぞれに自分の個性と好みに合うファッションの系統を決めます。例えばシューズや装備も含めて、すらりと見せる、男らしくあるいは可愛く見せる、スポーティに見せる、カジュアルに見せる、などです。出来るだけ軽めで簡素な服装や装備でまとめます。初心者も自分の個性を出せる小物や装備、例えば帽子、ベストとショートパンツあるいはシューズとザックとバンダナなどを基本三点程度、多少贅沢でも品質の良い気に入ったものでアクセントを決めます。組み合わせる色は、まとまりが無く成らない様に基本3色以内にしましょう。最後に仕上げとして体形とファッションを合わせたシルエット(輪郭)を意識します。
ハイキングの服装12選⑪組み合わせコーデ
夏ならダブダブなTシャツとスリムなボトムズ(細身のジーパン、スキニーやレギンズ)のコーデ、短めのスカートやショートパンツにレギンズやフットカバーなどの軽めコーデ、秋には冷え込みに備えた長袖のパーカーとそのすそやえりから少しはみだし気味のオーバーサイズのTシャツ、冬には装備に合わせボルーム感のある長袖のウールのシャツとスリムなボトムズ、春には冷えに備えた長袖シャツに着脱しやすいベストと太めのボトムズなど初心者でも基本を守りながらファッションにザックやシューズのコーデを工夫して、さまざまに楽しめます。
ハイキングの服装12選⑫エチケット用小物
ハイキングは人里近くでの行動なので、春夏秋冬に関わらず、行動する地域や環境に出来るだけ迷惑をかけない、又、ハイキングする者同士がお互いに気持ちよく楽しめるためのエチケットが登山以上に求められます。さらに今の時世では衛生面での配慮した小物を含めたファッションも必要です。環境保全や地域美化の為のごみの持ち帰りは勿論ですが、初心者には少し大変ですが、排泄物処理は特に大切な事項です。このためには携帯トイレと携帯トイレ用のポンチョや軽めでもそれを配慮したシューズなどの装備を整えます。
飛沫(咳)エチケット
ハイキングでは社会的距離については容易に避けられますが、咳を含む飛沫エチケットには春夏秋冬それぞれマスクを付けたり、防寒布で代用したり出来ても、特に初心者には息苦しさが問題です。この解決には人とすれ違ったり、向き合ったりするときだけ口と鼻を覆う方法はありますが、相手に対するエチケットとしては疑問が残ります。これに代わる装備としては軽めフェイスシールドや雨用サンバイザーが使えますが、熱中症などへの注意が必要です。飛沫対策兼用サンバイザーも山行用の飛沫(咳)エチケットファッションとして既に売られ始めています。
携帯トイレと携帯トイレ用ポンチョ
昔は雉撃ちとか、お花摘みなどが一般的でしたが、環境保護と衛生上の問題でハイキングコースに随分トイレが整備されて来てはいます。しかし、混んでいたり、急に行きたくなったりするので、自前の携帯トイレは必需の装備です。持ち帰らなければならないのでサイズだけでは無く臭いも含めて漏れがないなど、密封性の良いこと、また嵩張らないことが必要です。目隠し用のポンチョについては携帯トイレに付属したものもあります。特に女性の場合は、汗拭きや着替え用にも使えます。シューズと共に選べば雨具にもなるので軽めで良いので少ししっかりしたものを用意しましょう。
まとめ
初心者がハイキングを始めるのは春夏秋冬のどの季節でもかまいません。ただ、多くの初心者ハイカーは風薫る初夏のゴールデンウィーク頃の野外からハイキングを始めています。この記事では初夏から初めて、秋、冬そして春へと服装や装備を整えて行く、山ファッションの基本に倣いました。また、ハイキングを初めて次第に軽登山、そして本格的な山登りへと行動が移るのは、豊かな山野に恵まれた日本では自然の流れです。ハイキングは軽登山よりさらに軽めの山ファッションで間に合いますので、自由におしゃれに服装や装備を選んで経験を積みながらファッションを整えて行ってください。ただ、初心者が冬場からハイキングを始めるような場合は、予め経験者の助言を得てください。
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この記事の対象のハイキングは、「高齢の大人や子供も含め、和気あいあいと気軽にのんびり、自然を楽しみながら野外を歩く」こととしました。一方で標高2,000m位までの登山もハイキングとしている多くの記事があることも事実です。ハイキングの服装も山ファッションと称していますように、基本は変わりません。また、ハイキング初心者がやがて軽登山から登山へと自らの行動をグレードアップして場合にもたいへん役立つ記事なので参考にしてください。
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