アスクレピアスとはどんな花?
キョウチクトウ科トウワタ属の多年草
「アスクレピアス」とは、南北アメリカを中心に、アフリカやアジアまで幅広い地域に分布・自生が確認されている多年草です。キョウチクトウ科トウワタ属ですが、以前はガガイモ属に分類されていました。その種類は300以上と言われていますが、主に日本で栽培されているものは、アスクレピアス・ツベロサ種(北アメリカ原産)とアスクレピアス・クラサヴィカ種(メキシコや南アフリカ原産)の品種です。
アスクレピアスの花の特徴・季節
花の季節は種類によって多少前後しますが、春先の4月から10月頃です。茎の上部の葉の付け根付近から花序を出し、一つの花序に10~25個の花が集まった羽つきの羽を思わせるような独特な形の花をつけます。径の大きさは約1センチほどです。花の中心には雌しべと雄しべがくっついたずい柱があり、突き出したような形状の副花冠がその周りを囲んでいます。5枚の花びらは大きく反り、花冠を有しているのも他の花とは違う特徴です。高さは数十センチ程度で、高いものだと1メートルを超えるものもあります。
アスクレピアスの名前
名前の由来
一般的な呼び名である「アスクレピアス」という名前は、ギリシャ神話に登場する医神アスクレピオス(Aesculapius)の名前にちなんで付けられたという説が広く知られています。また、紀元前ローマの医師アスクレピアデスから来ているという説も有力です。どちらの説も医者と関係ありますが、これはアスクレピアスの薬草としての役割が関係しています。
ギリシャ神話の医神アスクレピオスとは?
ギリシャ神話に登場するアスクレピオスは、とても腕の良い医者でしたが、あるとき自然のおきてを破って死者を蘇らせたことがゼウスに知られ、へびつかい座になりました。神話には、アスクレピオスはある蛇がきっかけで熱心に薬草の効能を学んでいたことも記されています。薬草に精通していたから死者を蘇らせられたのではないかとの説もあり、薬草との関わりがとても深い人物だったからこそ、薬草でもあるこの植物に彼の名前にちなんだ名前がつけられたのでしょう。
アスクレピアスの和名&英語の呼び方とその由来
①白い液体が由来の呼び方(英語)
アスクレピアスは、茎や葉を傷付けると身を守るために白い液体を出すことから、英語では「Milkweed」の名前で親しまれています。日本語に直訳すると、“ミルクの雑草”です。この白い液体には毒性があり、触るとかぶれることがあるので扱いには注意してください。「Tropical milkweed」や「Bloodflower」と呼ばれるものもあります。
②綿毛が由来の呼び方(和名&英語)
アスクレピアスは「トウワタ(唐綿)」という和名で呼ばれることもありますが、これは長い綿状の毛を持つ種の姿からその呼び名が付けられました。唐は外国を表しており、「外国から来たワタ」という意味です。この綿毛は、海外では防寒着の断熱材や枕の詰め物に使われることがあります。種が持つ綿毛がふわふわと上質なシルクのような質感であることから、英語では「Silky milkweed」の名前がつけられました。
アスクレピアスの花言葉
花言葉①健康な体
「健康な体」はアスクレピアスの花言葉の中で一番有名です。この花言葉は、人間を治療するだけでなく薬草の研究に精を出したギリシャ神話の医神アスクレピオスにちなんだものだと言われています。また、アスクレピアスが世界中で薬草として健康な体を維持するために用いられていたことにも関係しているようです。
花言葉②私を行かせて
「私を行かせて」という花言葉は、“花の季節が終わり秋が訪れると、綿毛をつけた種がはじけてふわふわと風に飛ばされていく様子”から連想される花言葉です。また、ギリシャ神話の医神アスクレピオスによって蘇った死者の気持ちが由来になっている可能性もゼロではありません。この言葉だけ聞くと、少し意味深な言葉のように聞こえます。
花言葉③心変わり・移り気④小さな恋
「心変わり」「移り気」という花言葉は、”根や草に毒があるが、薬にもなる”ことが由来です。また、「小さな恋」という花言葉もあります。小さな花が集まって形をなすアスクレピアスのかわいらしい姿にぴったりです。誰かに恋をすることもあれば、その気持ちが突然心変わりしてしまうこともある人間の心情をよく表しています。
アスクレピアスと誕生花
3月6日の誕生花と花言葉
アスクレピアスの花の季節とは少しずれていますが、「私を行かせて」という花言葉を持つアスクレピアスは、門出の意味を持っているので、新生活がスタートするこの時期の誕生花にぴったりです。また、よいスタートを切るためには「健康な体」も必要不可欠なものでしょう。「心変わり」を心機一転ととらえてみるのもよさそうです。
7月18日の誕生花と花言葉
夏まっさかりの時期に太陽のように明るい花を咲かせるアスクレピアスは、花の季節である7月18日の誕生花です。夏バテや夏かぜに負けないように、ギリシア神話の医神と関係がある花言葉「健康な体」を願う気持ちが込められているのでしょう。また、日本のこの時期は梅雨が終わって夏本番へと変わるときでもあるので、鬱々とした気分からアクティブな気持ちに変わる状況は「心変わり」という花言葉も合いそうです。
9月11日の誕生花と花言葉
暑い季節の花のイメージがあるアスクレピアスは、残暑が厳しい9月11日の誕生花でもあります。徐々に季節が変わり始めるこの時期には、「心変わり」という心情の変化を表す花言葉がよく合います。また、不安的な気候で体調を崩さないように「健康な体」という花言葉もぴったりです。地域によっては、この時期にはもう花が終わり始め、種が飛び立つ姿が見られます。その場合は「私を行かせて」という花言葉もプラスできるでしょう。
11月10日の誕生花と花言葉
11月だと平均的な花の季節はもう終わっていますが、空模様が移り変わりやすい時期なので、「心変わり」という花言葉がとても合っています。これからやってくる冬の寒さに負けないように「健康な体」をセットで使ってもよいでしょう。また、どことなく寂しさが増す季節なので、「私を行かせて」という花言葉は少し切なく聞こえます。
アスクレピアスの種類
アスクレピアスの種類①クラサヴィカ(英語名:Asklepias curassavica)
和名でトウワタとも呼ばれるこの花は西インド諸島のクラサオ島が原産地で、「クラサオ島の」を意味するこの名前が付けられました。一年中温暖な気候で生まれたこの種は寒さに弱く、気温が7℃以下まで下がると耐えられずに枯れてしまいます。日本の気候では屋外でそのまま冬を越すことが難しいため、一年草として扱われていますが本来は多年草です。赤色やオレンジ色、黄色のツートンカラーが特徴ですが、改良品種にはオレンジ色や黄色の単色のものも存在しています。
アスクレピアスの種類②ツベロサ(英語名:Asclepias tuberosa)
北アメリカが原産地の種類です。日本には大正時代末期に伝わりました。ツベロサとはラテン語で「塊茎状の」を意味しており、その名前の通り塊茎状の独特な根の張り方が特徴です。葉がまるでヤナギをほうふつとさせるような長い形をしていることから「ヤナギトウワタ」の和名が名付けられました。
ヤナギの葉・パンノキ
また、果実がパンノキ(クワ科パンノキ属)に似た形をしていることや、宿根をしやすいことから「宿根パンヤ」とも呼ばれています。寒さにはとても強く-15℃まで耐えることができるので、一般的な扱いは多年草です。花の色はオレンジ色や黄色の単色で、高さは50~80センチ程度に成長します。
アスクレピアスの種類③インカルナタ(英語名:Asclepias incarnata)
原産地である北アメリカ以外にもアメリカ北東部から南西部とかなりの広範囲にわたって自生している種です。湿地を好むことから、英語では「Swamp milkweed」と呼ばれています。寒さにも暑さにも耐性があり、ラテン語で「肉色の」を意味するインカルナタの名前のとおり、ピンク色の花を咲かせますが、真っ白なミルクメイドやアイスバレットは、とても人気が高いです。英語では「Rose Milkweed」と呼ばれることもあります。高さはおよそ100センチ前後まで成長する種です。
アスクレピアスの種類④シリアカ(英語名:Asklepias Syriaca)
北アメリカ原産の多年草です。植物学者であるリンネの誤認により「シリア産の」を意味するシリアカの名前が付けられました。名前が表しているように大きなトウワタで、高さは50~150センチまで成長します。花の色は控えめな印象のものが多く、少しくすんだ紫色や白色、淡いピンク色などです。日本には薬用として明治時代中期に伝わりオオトウワタという名で呼ばれています。
アスクレピアスの毒性
カルデラノイド(英語名の由来もご紹介)
葉には「カルデラノイド」という有毒成分を含んでおり、オオカバマダラという蝶がこの葉を餌にすることで有名です。オオカバマダラは北アメリカからメキシコまで大移動する蝶ですが、体内に毒を取り入れることで外敵から身を守っています。クラサヴィカ種よりもオオカバマダラの主食であるツベロサ種の方がカルデラノイドの濃度が高いです。それゆえ、ツベロサ種は英語で「Butterfly milkweed」の名前で呼ばれるようになりました。
強心配糖体
全草や白い液に心臓毒である強心配糖体「アスクレピアジン」を含んでおり、間違えて食べてしまうと中毒症状として嘔吐、けいれん、不整脈を引き起こします。牛や山羊などの家畜が食べた場合も中毒を起こすので、注意が必要です。口に入れるだけでなく触れた場合は肌にも影響があるので、さし芽をするときや、切り花にするときに直接手で触れないように手袋を着用するなど工夫してください。
薬としての役割
中国の生薬
中国では、全草から蓮生桂子花(れんせいけいしか)、根から蓮生桂子草根(れんせいけいしそうこん)という生薬が作られています。蓮生桂子花は消炎目的や扁桃炎・肺炎・感冒の治療薬として、蓮生桂子草根は止血剤・催吐剤として用いられることが多いです。現在でも、根をトコン(吐根)の代用で催吐剤として用いることがありますが、ほとんど使われていません。
ネイティブ・アメリカンの民間薬
ネイティブ・アメリカンはアスクレピアスの根を呼吸器疾患や気管支炎の治療薬として使用していました。そのため、ヤナギトウワタの根は「Pleurisy root」という名前で呼ばれることもあるようです。Pleurisyは日本語だと胸膜炎を意味します。また外用薬としては、蛇に噛まれたときにも根を使用していたことが有名です。
アスクレピアスの育て方(クラサヴィカ種・ツベロサ種)
種まき
クラサヴィカ種の種まきは、暖かくなってくる4月から5月頃を目安に実施します。寒さに弱いため一年草として扱われますが、室内など暖かい場所に移動させると冬を越えられます。その際は室温が7℃以下にならないように注意しましょう。ツベロサ種の種まきは、暑さが少しやわらぐ9月から10月頃に実施します。ツベロサ種は多年草なので何年も花を楽しめますが、株が混みあうと花つきが悪くなってしまうので、2~3年に一度は植え替えが必要です。
病気・害虫など気を付けること
アスクレピアスは、どの品種でもアブラムシが寄ってきやすいです。定期的に駆除剤を散布するなど気にかけてあげる必要があります。インカルナタ種は白絹病という植物の周りに絹糸のような白いカビが生える病気に感染しやすいですが、天地返しや土壌殺菌剤の散布で予防が可能です。
アスクレピアスのある生活を楽しむ
育てても良し、贈っても良し
寒さに気を付けるなど注意点はいくつかありますが、栽培の難易度は低めの花です。種類によって一年で枯れてしまうものもありますが、果実が裂けて種子が飛び出す前に収穫しておけば、その種子を翌年にまいて新たにアスクレピオスを栽培できます。茎を切ってさし芽で増やすことも可能なので、一度種を買って栽培すると、長い期間に渡って楽しめるところが魅力です。
茎がまっすぐなアスクレピアスは切り花としても楽しめます。「健康な体」「私を行かせて」「心変わり」「小さな恋」というすてきな意味の込められた花言葉を持つ花なので、ぜひ意味を調べて合いそうな花言葉とともに大切な誰かに贈ってみてはいかがでしょうか。そのときは、誤解をまねかないように、贈りたい花言葉と込めた想いを手紙でそえるとよいでしょう。ギリシャ神話の医神アスクレピオスとも深い関わりのある花なので、神話が好きな方への贈りものにもおすすめです。
詳しい育て方や特徴が気になる方はこちらもチェック!
アスクレピアスのことがもともと気になっていた方や、興味がわいた方は、育て方や特徴などアスクレピアスに関するもっと詳しい情報をこちらの記事でチェックしてみてください。アスクレピアスの花は、お庭を彩るだけでなく、見る人の心の中まで明るく照らしてくれます。育て方のポイントやアスクレピアスの持つ個性の活かし方を学んで、おうちで楽しくアスクレピアスを育ててみましょう。

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