唐辛子とは
「とうがらし」は中南米が原産の植物で、唐辛子(唐から伝わった辛子)と書きますが、中国から伝わってきたわけではなく、伝来した当時は「唐」に「外来の」という意味もありこの意味で使われたようです。一方、唐辛子は英語では「red pepper, chili pepper, capsicum pepper」などが充てられます。pepper(ペパー/ペッパー)は胡椒のことです。唐辛子なのにペパーをつけて呼ばれるのは不思議な感じがしますね。
コロンブスが胡椒の一種と勘違いした
胡椒はインドで紀元前から栽培され、大航海時代には世界的に有名なスパイスになっていました。その当時にコロンブスがインドと勘違いしてアメリカ大陸に上陸し、唐辛子を見てインドで栽培されていた胡椒の一種と思ってred pepper(赤い胡椒)と名前を付けたためだと言われています。
胡椒(ペッパー/ペパー)について
胡椒は蔓性の植物の果実でナス科の果実である唐辛子とは全く違います。インドが原産地で世界的に非常によく使用されているスパイスの一つで、スパイスの王様と呼ばれています。胡椒の種類としては、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、ピンクペッパー、グリーンペッパーなどがあります。最も有名なのがブラックペッパーで肉料理全般によく使われます。なお、レッドペッパーだけは胡椒ではなく、唐辛子のスパイスですのでご注意ください。
植物としての唐辛子
唐辛子は中南米原産で紀元前のはるか昔から栽培されていたナス科トウガラシ属の植物です。唐辛子は気候対応性が良好で現在では熱帯から温帯の世界の広い範囲で作られています。一般的な唐辛子(レッドペッパー)のほかに、小型品種の「鷹の爪」もあります。ほかにも、辛みがなくて野菜として利用されているピーマン、ししとう(シシトウトウガラシ)、パプリカなどもあります。更に、果実を鑑賞するための唐辛子の品種もあります。
青唐辛子と赤唐辛子
唐辛子の若い果実は緑のままで食べることが出来ます。未熟の緑色の実を青唐辛子、熟した赤いものを赤唐辛子と呼びます。青唐辛子は見ただけでは辛さの強い品種のものか、ししとうのような甘味種なのか違いを見分けるのがむつかしいです。青い唐辛子を買う時には使い方の説明を良く見てから買いましょう。
唐辛子の辛さについて
唐辛子の辛さの成分はカプサイシンという物質です。唐辛子を砕いて粉末にしても辛さが減ることはありません。また、カプサイシンは加熱しても壊れにくく、調理した後でも辛さの成分は残りますので料理の調味料として適した成分といえます。唐辛子などのカプサイシンによる辛さを表わす方法はいくつかありますが、現在では「スコヴィル値」が使われることが一般的です。この辛さの測定法を考案したスコヴィル氏の名前からとられています。
スコヴィル値
この測定法が考えられた当初は、辛さを感じなくなるまで砂糖水で薄めて、その倍率を測定して辛さの値としていました。現在では、カプサイシンを高速液体クロマトグラフィーという分析機器を利用してスコヴィル値を出しています。実際にスコヴィル値の例を挙げてみますと、ピーマンやシシトウはスコヴィル値が0とされています。タバスコソースは2.5千から5千スコヴィル、鷹の爪は4万から5万と言われています。
唐辛子/カプサイシンについての注意事項
過剰に唐辛子(カプサイシン)を摂取すると体内の粘膜が傷つきやすくなり、胃が荒れたり、咳が出たり、息切れがしたりします。 また、トウガラシに触れた手で眼や口をこすったりすると痛みを生じることがあります。激辛ムードに乗って必要以上に唐辛子成分を摂取しない様、使い方に気を付けましょう。また唐辛子やその加工品はふたの付いた容器に入れ、子どもの手が届かない場所に保管するようにしましょう。
唐辛子系の粉末調味料について
料理に使われる唐辛子系の粉末調味料はいろいろあります。名前を列挙すると、チリパウダー、チリペッパー、レッドペッパー、カイエンペッパー、カイエンパウダー、一味唐辛子、七味唐辛子、などがあります。次の大見出しで、筆者の理解に基づいてこれらの各調味料の定義をご紹介していきます。
その前に、この記事にこれまでに登場した「香辛料、スパイス、調味料」などの言葉の違いを整理しておきたいと思います。
調味料、香辛料、スパイスの意味は
調味料とは
調味料とは、食べ物に好みに合った味をつけたりおいしくするための材料のことです。料理を作るときの副材料としての使い方と、食べる時に振りかける使い方があります。砂糖、味噌、醤油、塩、酢などが基本的なものですが、ほかにも,うまみ料や香辛料などがあります。
香辛料とは
香辛料は調味料の一部であることは前項で説明しましたが、香辛料とは何のことでしょうか。香辛料は、まず植物由来(植物の一部から出来ている)であることが前提になりますが、食べ物に香りを付けたり、辛みを付けたり、色を付けたりして、食べ物に風味や美観を与える使い方をします。
スパイスとは
スパイスとは香辛料の一部です。香辛料の原料は植物ですが、その利用される部分が、茎と葉と花を含まないものをスパイスというのです。香辛料=スパイスと思っている人も多いとおもいますが、香辛料の中で、植物の茎葉花の部分を利用したものはハーブと呼ばれ、スパイスとは言いません。スパイスの例をあげますと、唐辛子、胡椒、ショウガ、ニンニク、シナモンなどなどです。参考にハーブの例はローズマリー、サフラン、しそ、パセリなどなどです。
唐辛子系の粉末スパイスのいろいろ
前項でスパイスの種類をいろいろと挙げましたが、ここではいろいろな唐辛子系の粉末スパイスについて違いが判るように、簡単に説明していきます。なお、よく使われるチリペッパー、レッドペッパー、チリパウダーについては別途項を改めて詳しくご紹介します。
チリペッパー
赤唐辛子を乾燥させてパウダー状に挽いたスパイスです。中にはパウダーといいながら粗挽き状のものもあります。
レッドペッパー
焙煎した赤唐辛子を粗挽きしたスパイスです。唐辛子系のスパイスをいろいろご紹介していますが、その中で焙煎しているのはレッドペッパーだけです。焙煎することにより辛みが増し、香味が付きます。
チリパウダー
チリペッパーをベースにして、パプリカ、オレガノ、クミン、デイル、ガーリック、オニオン、塩をブレンドしたものです。国やメーカーが違うとブレンドする内容が若干異なる場合があります。日本では洋風七味唐辛子とも呼ばれます。
カイエンペッパー
カイエンペッパーは赤くて辛い微粉の唐辛子です。粉末の粒が細かくスコヴィル値が40,00程度と強い辛味があります。なお、カイエンペッパーの定義としては別に2つの説があります。一つは、「チリペッパーと全く同じものである」、もう一つは「カイエン種という種類の唐辛子を乾燥粉末化したもの」です。なお、英語の「Cayenne pepper(カイエンペパー)」は、赤い唐辛子すべてを指し、カイエンという種類はないそうです。
カイエンパウダー
チリパウダーのようにカイエンペッパーにほかの粉末スパイス(シナモン・ガーリック・オレガノなどの)を混ぜたミックススパイスです。この言葉は別の意味でも使われていて、ミックススパイスではなく単にカイエンペッパー(赤唐辛子)の粉末の意味で使われることも多いのです。なお、「カイエン」の由来は南米ギアナのカイエンといういう町で作られていたことからきています。
一味唐辛子
赤唐辛子を乾燥させて粉末にしたもの。チリペッパーと基本的に同じ使い方でよいのですが粉末の粒がチリペッパーより粗いものが多いです。
七味唐辛子
一味唐辛子をベースにして、ごま,山椒、ケシの実、アオサ、菜種等々を組み合わせたミックススパイスです。混ぜ合わせる種類はブランドごとに異なるようですが、唐辛子を含めて7種類がブレンドされています。
チリペッパーについて
チリペッパーは赤唐辛子を焙煎せずに乾燥して粉末にしたもので、カイエンペッパーや一味唐辛子とほぼ同じものです。タンドリーチキン、カレー、チリソース、テキサスチリ、タコス、キムチなどによく使われます。英語の「chili pepper」は単に唐辛子を意味しますが、日本語の「チリペッパー」は赤唐辛子の粉末スパイスを意味します。なお、唐辛子を栽培して手作りする事も出来ますので作り方を下に記します。
チリペッパーの作り方
チリペッパーの作り方の手順は簡単です。下に示します。
*赤唐辛子を収穫して完全に天日で乾燥させる。
*ヘタの部分と種を取り除く。
*石臼やすり鉢で細かくなるまで挽く。
*器に移す。
レッドペッパーについて
レッドペッパーは焙煎しているためチリペッパーにくらべて辛味が強く、香ばしさも加わります。メキシコ・韓国・インド・東南アジア料理等によく使用されています。ヱスビー食品の商品「レッドペッパー」では、日本食のうどん、そば、焼鳥、きんぴらごぼう、漬物などへの使い方を推奨しています。なお、英語の「red pepper」は単に赤唐辛子を意味します。このスパイスも手作り可能です。作り方は下に記します。
レッドペッパーの作り方
レッドペッパーの作り方の手順はチリペッパーの手順に焙煎工程がプラスされただけです。
*唐辛子を収穫し、完全に天日乾燥させる。
*ヘタの部分と種を取り除く。
*フライパンで焦がさない様に乾煎(からいり)する。
*石臼やすり鉢で細かくなるまで挽く。
*器に移す。
チリパウダーについて
チリパウダーとは、赤唐辛子をベースに、クミン、オレガノ、パプリカなどを加えたミックススパイスです。単一スパイスに比べ、香りや風味が高くなります。羊やヤギなどの肉を煮込む時、魚を煮込む時に加えて臭みを消す効果もあります。使い方としては主にスペイン料理、メキシコ料理、アメリカ料理などに使われます。アメリカの国民食の一つである「チリコンカン」には欠かせないスパイスです。手作りはミックスするスパイスの入手が問題です。
チリパウダーの作り方
チリパウダーの作り方の手順
*唐辛子を収穫し、完全に乾燥させる。
*ヘタ部分と種を取り除く。
*石臼やすり鉢で細かくなるまで挽く。
*次にあげるスパイスと混ぜる。混ぜる量はそれぞれ、唐辛子粉と同量。
パプリカ、オレガノ、クミン、ディル、ガーリック、オニオン、塩
*器に移す。
唐辛子系スパイスの代用
唐辛子系のスパイスは沢山ありますがそれ程頻繁には使いません。家庭で使う場合は、何か一種類のスパイスで唐辛子系スパイス全部の代用に使いたいと思うでしょう。そんな場合に用意すべきスパイスは? ずばりチリパウダーです。チリパウダーはミックススパイスですから、辛みのほかに香味や風味が付きますが単一スパイスのチリペッパー、レッドペッパーなどの代用は出来ますね。具体的に使う場合の注意点などを紹介しましょう。
チリパウダーを単一スパイスの代用に
チリペッパー、レッドペッパー、カイエンペッパー、一味唐辛子の代用としてチリパウダーを使う場合は、辛みの程度が若干少なくなりますが、香味や風味が加わるためいつも食べている料理がより深みのある、新鮮な味に感じられることでしょう。但し、チリパウダーが多すぎると料理の味がおかしくなる場合があります。最初は少なめに加えて、味を確認しながら少しづつ加える量を増やすように心がけてください。
ミックススパイスの代用は?
チリパウダーをミックススパイスのカイエンパウダーの代りに使用するのは構わないですが、七味唐辛子の代用はお勧めしません。ミックスされている内容が大きく異なりますので、料理の雰囲気を壊してしまう恐れがあります。
チリソースの代用にも
スパイスではありませんが、フライドポテトなどの揚げ物に相性の良いチリソースの代用にも利用できます。ケチャップ大匙1に対してチリパウダー小匙1/2の割合で混ぜれば本格的なチリソースが出来上がります。ピザトーストにも使えますよ。
おわりに
ここまでお読みいただき有り難うございました。いかがでしたか?
唐辛子のスパイスは一味と七味を別にすれば1,2種類かと思いきや、実はカタカナ名のスパイスがたくさんあります。主なものはこの記事で全て紹介しましたが、それぞれの名前の付いたスパイスの中味はメーカーによって若干異なることがあります。日本製でカタカナ名の唐辛子スパイスを購入する場合には内容を確認してから購入してくださいね。
唐辛子系スパイスの英語の意味は?
ここで取り上げたスパイスの名前は、その英字スペル(一味、七味唐辛子を除いて)を辞書で調べるとすべて(chili pepper, red pepper, red powder, Cayenne pepper, Cayenne powder)が、「唐辛子、赤唐辛子、その粉末」のいずれかになっていて、全部が「唐辛子」を意味し、「スパイス」が全く入っていません。おもしろいですね。
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