ヤマハテネレ700ついに登場
ヤマハのアドベンチャーバイクの象徴的なアイコンとして君臨するテネレシリーズ待望の新型モデル、テネレ700がついに登場します。2018年のミラノショーで発表され、2019年中の日本投入が予定される新型テネレのスタイリングやエンジン、走破性などの最新情報と、これまでのテネレシリーズの人気車種の特徴をご紹介します。
ヤマハテネレ700のスタイリング
パリ・ダカールラリーで活躍したXT500の流れを汲むテネレ700も、本格オフロードバイクそのものといった車体を踏襲しており、240ミリと高く設定された最低地上高が、不整地での走破性の高さをうかがわせます。4つのプロジェクタータイプのヘッドライトが、テネレの特徴的な顔つきを作り出しています。アップライトなライディングポジションとスクリーンが、アドベンチャーとしての基本性能の高さを物語っています。
ヤマハテネレ700のエンジン
テネレ700のエンジンは、MT-07やXSR700に用いられる排気量689ccのバーチカルツインエンジンを、オフロードモデル向けにセッティングしたものを搭載しています。クロスプレーンコンセプトの270度クランクがもたらす不等間隔爆発の鼓動感と、ラリーレイドで求められるオフロードを走破可能なスペックを持った、トルクフルな走りが魅力です。
ヤマハテネレ700の走破性
テネレ700の車体は240ミリという高い最低地上高に加え、フロント21インチ、リヤ18インチと本格的なオフロード走行を想定したタイヤサイズで、不整地での走破性能を高めています。またライバルとも言えるホンダのアフリカツインなどと比べ小型の700ccという排気量のおかげで、車体重量を軽くすることができます。そのためオフロードでの取り回しもしやすく、砂地や岩場なども走破することが可能になっています。
ヤマハテネレ700の装備
テネレ700の足回りは、倒立フロントフォークやブレンボ製キャリパーを装備、ABSはオンとオフを切り替え可能な点など、本格オフローダーとしての本気度が見て取れます。ラリーコンピューターを思わせる液晶メーターや、ナビをマウントするバーが装備されるなど、ツーリングでの使い勝手も考慮されています。ハンドルガードやスクリーンなどが、アドベンチャーらいしいルックスに貢献しています。
ヤマハテネレ700のスペック
モデル名 | Tenere 700 |
エンジン形式 | 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒 |
排気量 | 689cc |
最高出力 | 54kW/9,000rpm |
最大トルク | 68N・m/6,500rpm |
全長×全高×全幅 | 2,365mm×1,455mm×915mm |
最低地上高 | 240mm |
シート高 | 880mm |
燃料タンク容量 | 16.0リットル |
タイヤ(フロント) | 90/90R21 |
タイヤ(リヤ) | 150/70R18 |
ヤマハのテネレシリーズとは
第1回、第2回パリ・ダカールラリーで優勝したヤマハが、ラリーで勝てるスペックと車体を持つモデルとして開発したのがテネレです。テネレの名前は、パリ・ダカールラリー最大の難所であるテネレ砂漠に由来します。その後、ラリー出場に限定されることなく、オフロードランが楽しめるアドベンチャーとして登場した2気筒の市販バイクがスーパーテネレの名を与えられ登場します。以降、ヤマハのアドベンチャースタイルの車体を持つエンデューロバイクには、テネレの名がペットネームとして冠されるようになりました。
ヤマハテネレの歴史
XT500でのパリ・ダカラリー参戦
1978年から始まった世界最高峰のラリーレイド、パリ・ダカールラリーに、フランスのソノートヤマハチームが市販車のオフロードバイクであるXT500で参戦します。シリル・ヌブーの駆るヤマハXT500は、第1回、第2回のパリ・ダカールラリーで二連覇を果たします。その後、ヤマハはこのパリ・ダカール・ラリーを舞台に、オフロードアドベンチャーバイクでの戦いを続けていくことになります。
XT600テネレの誕生
XT500でのヤマハのパリ・ダカ制覇以来、ライバルメーカーはVツインエンジンやボクサーツインエンジンを投入、パリ・ダカは高速化の時代を迎え、しだいにヤマハはスペック的に苦戦を強いられるようになります。そこでヤマハが投入したのが、排気量をアップし、走破性も高めたXT600テネレです。テネレのペットネームを持つバイクの誕生です。このXT600テネレは、その後10年にわたって、パリ・ダカのプライベーターに使用されるなど、アドベンチャーバイク市場で大活躍しました。
市販車XTZ750スーパーテネレ登場
単気筒エンジンを搭載し続けたヤマハのオフロードアドベンチャーにも、ついに変革が訪れます。1988年、ダブルクレードルフレームの車体に360度クランクの並列2気筒エンジンを搭載した、XTZ750スーパーテネレの登場です。パリ・ダカにはこの市販車の車体をベースに、排気量を802.5ccに拡大し、エンジンスペックと走破性を向上させたファクトリーマシンYZE750Tスーパーテネレで参戦し、1991年にチャンピオンを奪還します。
アドベンチャーモデルのスーパーテネレ
ヤマハは長年にわたって参戦を続けてきたパリ・ダカから、1998年に撤退します。その後しばらく、スーパーテネレの名を冠されたバイクはラインナップから姿を消します。そして2010年、ついにXT1200Zスーパーテネレが誕生します。大柄になった車体に、排気量を1200ccにアップした並列2気筒のハイスペックなエンジンを搭載し、オン・オフ問わず走破できる走行性能、そしてロングライドもこなすアドベンチャーツアラーとしてのスーパーテネレが復活したのです。
テネレ700デビュー
ヤマハ伝統の単気筒モデルとしてのテネレは、XT660Zテネレとして熟成され、2015年モデルまで市販され続けましたが、その後はヤマハのオフロードバイクのラインナップから姿を消すこととなります。しかしXT500の流れをくむテネレを待望する声は高く、2016年のミラノショーで、コンセプトモデルの「T7 Tenere Concept」として発表され、ついに2019年に並列2気筒エンジンを搭載したテネレ700として復活を遂げました。
ヤマハテネレシリーズのバイク①
XT600テネレ
草創期のパリ・ダカで無敵を誇ったXT500のヤマハ勢も、多気筒のハイスペックマシンを投入するライバルメーカーに苦戦を強いられるようになります。そんな状況を打破するべく投入されたXT600は、単気筒ながらYDISという独自の吸排気システムを採用した車体で、新たなアドベンチャーカテゴリーを開拓、多くのライダーの人気を博し、その後、5バルブを採用し排気量を660としたXTZ660へと進化しながら、10年にわたって製造されるロングセラーとなりました。
スペック
モデル名 | XT600 Tenere |
エンジン形式 | 空冷4ストロークOHC4バルブ単気筒 |
最高出力 | 40ps |
燃料タンク容量 | 30.0リットル |
発売年 | 1983年 |
ヤマハテネレシリーズのバイク②
XTZ750スーパーテネレ
ファクトリーマシンのパリ・ダカでの活躍を受け、ヤマハが次世代のアドベンチャーバイクとして開発したのが、XTZ750スーパーテネレです。ファクトリーマシンOW93のノウハウが注入されたダブルクレードルの車体には、新開発の並列2気筒5バルブエンジンが搭載され、スーパーテネレをベースに改造されたマシンは、その後のラリーレイドを走破して優勝を重ねました。
スペック
モデル名 | XTZ750 Super Tenere |
エンジン形式 | 水冷4ストロークDOHC5バルブ並列2気筒 |
排気量 | 749cc |
最高出力 | 70ps/7,500rpm |
最大トルク | 6.8kgf-m/6,750rpm |
全長×全高×全幅 | 2,285mm×1,355mm×815mm |
最低地上高 | 240mm |
シート高 | 865mm |
タイヤ(フロント) | 90/90-21 |
タイヤ(リヤ) | 140/80-17 |
発売年 | 1989年 |
ヤマハテネレシリーズのバイク③
XT1200Zスーパーテネレ
パリ・ダカマシンのXT500をルーツに持ち、1200の排気量がもたらす圧倒的なパワーと、オン・オフ問わず軽快に走る走破性、ロングツーリングもこなすツアラーとしての性能を持ち合わせたエンデューロモデルが、XT1200Zスーパーテネレです。270度クランクを持つトルクフルなエンジンやABS、トラクションコントロールを装備した車体など、最上級のアドベンチャーにふさわしいバイクに仕上がっています。
スペック
モデル名 | XT1200Z Super Tenere |
エンジン形式 | 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒 |
排気量 | 1,199cc |
最高出力 | 112ps(84kW)/7,250rpm |
最大トルク | 11.9kgf-m(117N・m)/6,000rpm |
全長×全高×全幅 | 2,250mm×1,470mm×980mm |
最低地上高 | 190mm |
シート高 | 845mm |
タイヤ(フロント) | 110/80R19 |
タイヤ(リヤ) | 150/70R17 |
発売年 | 2010年 |
ヤマハテネレシリーズのバイク④
XT660Zテネレ
1991年に発売され、ラリーマシンとして高い人気を誇ったXT660Zのリバイバル版として登場したのが、2010年発売のXT660Zテネレです。5バルブだった前モデルのエンジンは4バルブとなりましたが、扱いやすさは向上、トリプルディスクの採用や、縦長のスクリーンなどを装備した、ミドルクラスアドベンチャーとして復活しました。
スペック
モデル名 | XT660Z Tenere |
エンジン形式 | 水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒 |
排気量 | 660cc |
全長×全高×全幅 | 2,246mm×1,477mm×896mm |
最低地上高 | 260mm |
シート高 | 896mm |
タイヤ(フロント) | 90/90-21 |
タイヤ(リヤ) | 130/80-17 |
発売年 | 2010年 |
ヤマハテネレシリーズのバイク⑤
XTZ250Zテネレ
2010年にブラジルヤマハから発売された、テネレシリーズの末弟ともいえるオフロードバイクがXTZ250Zテネレです。セローやトリッカーと同じエンジンを持つ小柄な車体ながら、アップライトなライディングポジションや、16リットルの容量をもつ燃料タンク、大型スクリーンがアドベンチャーであることを主張しています。
スペック
モデル名 | XTZ250Z Tenere |
エンジン形式 | 空冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒 |
排気量 | 249cc |
最高出力 | 15.2kW |
最大トルク | 20.5N・m |
全長×全高×全幅 | 2,135mm×1,375mm×830mm |
最低地上高 | 265mm |
シート高 | 865mm |
タイヤ(フロント) | 80/90-21 |
タイヤ(リヤ) | 120/80-18 |
発売年 | 2010年 |
ヤマハテネレのライバル
ヤマハテネレのライバルバイクとして有名なのが、本格オフロードモデルであるホンダのアフリカツインです。ともにパリ・ダカを走破したエンデューロモデルをイメージさせるアドベンチャーとして、人気を二分しています。また最近では、スズキのVストロームやカワサキのヴェルシスなど、国産他メーカーも新型のアドベンチャーバイクを各排気量でラインナップしており、テネレのライバル市場は群雄割拠の様相を呈していると言えます。
テネレ伝説はこれからも続く
ヤマハのエンデューロバイクであるテネレシリーズについて、ご紹介してきました。パリ・ダカールラリーで活躍したXT500をルーツに持つテネレは、常に高い走破性を誇るヤマハのアドベンチャーに与えられる称号として、君臨してきました。2019年に発売されるテネレ700をはじめ、これからも続くヤマハテネレの伝説から目が離せません。