Klymit LiteWaterディンギーPackraft
パックラフト/とは?
パックラフトとは激流もある河川、大海に臨む湾やフィヨルド等の奥深い湾および内海等を含むすべての水域で使用できます。長距離を持ち運びが出来るよう軽量に設計され、簡便で折りたたみも可能です。パックラフトとはその様な小型ゴムボートのメーカーによる日常的な呼称で、トレイルボートとも呼ばれています。このゴムボートは付属装備の空気袋を膨らませると水面では舟底を厚く囲むので優れた安定性が得られます。
パックラフトの発祥
アラスカでは道路がない原野を旅する為に湖沼、河川や時には海の横断を可能にする持ち運び可能な小型のボートが必要でした。このためにパックラフトの発祥の地と考えられ、英国海軍中尉だったピーター・ハケット (1820–1885)が設計したゴムボートが始まりだとされています。その有用性はディク・グリフィスがメキシコのカッパー・キャニオン下降に成功した体験で証明されました。
アラスカでパックラフトの発展に貢献した人物
ディク・グリフィスの他に「パックラフトの紹介と使い方ガイド」の著者ローマン・ダイアル、主要メーカーであるアルパカ・ラフト社の創始者シェリー・ティンゲイや「長靴、ラフト及びスキーでの4000マイルの長い家路への旅」を著述したエリン・マッキトリックとその夫ブレトウッド・ヒグマンが挙げられます。
その他の地でのパックラフトの発展
米国本土
米国本土ではワイオミング州、モンタナ州、ワシントン州、ユタ州、アリゾナ州などの未開の原野で湖沼、河川や時には海の横断するためにフォレスト・マッカーシー、ネイサン・シャウティス、ライアン・ジョーダンなどがパドルで漕ぐパッククラフトを体験してその発展に寄与しました。
北アメリカ以外の地
ユーロッパでは北欧諸国が中心です。また、メキシコ、東南アジア、オーストラリア(フランクリン川を含む)、ニュージーランド、パタゴニア、南米熱帯地域でも購入され使用されています。
(写真は東欧モンテネグロでのパックラフト旅で人気の大渓谷タラリバー)
現代的パックラフトの使用
ヒグマンとマッキトリックの旅
ヒグマンとマッキトリックはシアトルからアリューシャン諸島への太平洋岸に沿った4,000マイルを越える遠征で広い海を渡るために持ち運び可能なパックラフト利用を体験しました。近年には価格の手頃感もあり、週末に列車などで移動して河川、運河や湖で楽しむ短期間の旅行で利用するために購入されていました。
(写真はアラスカ半島)
激流下り
激流
その多くはクラス2(ホワイトウォーターとも呼ばれる激流の難易度は1から6までのクラスで示される)以下の穏やかな水面でした。現在ではパドルの技術に加え、各メーカーがスプレーデッキや大腿ストラップなどを追加して制御性を高め、耐久性も向上させました。クラス5の激流も体験できるので、さらに頻繁に購入されるようになりました。
エスキモーローリング
また、エスキモーローリングも日常的に行われています。
パックラフトの六つの魅力①
パックラフトの軽さ
可能な限りの軽量化
未開の原野を徒歩で旅を体験する時に湖沼、河川や時には海の横断は避けられないのでテント、食料、装備品やその他の資機材と共に携帯されます。このためパックラフトは付属装備、操舟用具、服装などを含めて可能な限り軽量とすることがおすすめです。
耐久性と十分な浮力
殆どのメーカーはパックラフト本体を2.5kg未満でパドルなどの関連用品を含めても4~7kg未満に抑えています。それでいてプールなどで使うために購入される価格が安く、玩具的なゴムボートや筏と違い、開水域で使われるための耐久性を備え、荷物や自転車を含めて人1人を運ぶための十分な浮力を持っています。
パックラフトの六つの魅力②
パックラフトのコンパクトさ
手軽に運べるコンパクトさ
着替えシャツの大きさ程度にたためるので、収納に場所を取りません。丸めれば魔法ビンサイズとなり、折りたたみ式パドルなど付属装備と共にバックパック(ザック)に入れて簡単に湖沼、河川や時には海などの水辺まで手軽に運べます。
膨らせたままでも持ち運び可能
また、軽くて膨らせたままでも持ち運びできるので、激しい流れ避けての移動や舟の使えない分水嶺越えも手軽です。現代の都会人にとってその軽さとコンパクトさで保有し易く、価格が手ごろなので川下りを含め、湖沼、河川や時には海辺で水に親むための格好の魅力ある道具として購入することがおすすめです。
パックラフトの六つの魅力③
パクラフトの簡単に組み立て
空気袋からパックラフトに空気をおくっているアルパカ・ラフト社の創始者シェリー・ティンゲイ
パックラフトを膨らます為には各メーカーはポンプでは無く付属装備として空気袋を用意しています。空気袋の開いた口から空気を貯めて閉じた後、反対側の給気孔から空気袋を包み込みように空気を押し出してパックラフトの空気袋に空気を送ります。最後はパックラフトの空気袋に口から空気を送って十分に膨らますことがおすすめです。5~10分位の間で簡単膨らませて手早く組み立てられます。
パックラフトの六つの魅力④
パッククラフトの安定した舟体
パックラフトは大きな浮袋(アウターチューブ)持つために大きな浮力を持っています。一般的には湖沼や穏やかな流れの河川や波風に余り晒されない内海など穏やかな水域で使用するための購入がおすすめです。また、持ち運びが簡便なので深い山中の湖や河川上流域のゴルジュでの使用のための購入もおすすめです。激流でもクラス2までは一般的に使えます。
パックラフトの六つの魅力⑤
パッククラフトは操舟が簡単
操舟が簡単で手軽に漕げるます。櫂としては数個に分解でき、価格も手ごろなカヤックパドルの購入がおすすめです。軽量で喫水が浅く、舟床(底面)が平なので加速、制動や回転性能は高くてパドルでの操舟が簡単です。多くのメーカーは座った姿勢でパドルを漕ぐことを想定していますが、状況によっては膝まづいたり、立ったりしてパドルが漕がれることもあります。
膝まづいてのパドリング
静水域であれば膝まづいてのパドリングは可能です。安定性が高いので波乗りは果敢に体験できます。
立ってのパドリング
同じく静水域ではSUP(立漕ぎ)も出来ます。
パックラフの操舟に必要な技量
操舟技術
パックラフティング(操舟)の主なものはフェリーグライド(横方向への舟の滑らせ方)、エディキャッチ(流れが留まる渦の捕ら方)とストリームイン(渦からの流れへの乗り方)の3つです。初心者はそれらが出来るようなパドルでの漕ぎ方を先ず体験して習得することがおすすめです。
ジェスチャーやスカウティング
その中で流れに対する知識も培われます。河川内では声が消えてしまうので身振りによる国際的に共通な信号の習得も必要です。また、岩や瀬だけでなく船着き場や釣り人を含めてスカウティングと呼ばれる操舟のための航行コースの下見も重要です。
パッククラフト操舟上の注意
操舟が簡単な反面、浮力が大きい割に長さが短いので直進性能は良くありません。このため、各メーカーは湖沼などの静水域でまっすぐ進むパドル技術の鍛錬を積む体験をおすすめしています。同じ理由で波を越す時の動きが大きく、流れのはやい渓流下りには激流用カヤックパドルでの操舟技術が必要になります。また、風に流され易いので強風下では開水面での使用はおすすめできません。
パックラフトの六つの魅力⑥
パッククラフトの大きな浮力
「浮力があり荷物も積める」などの特性を持ち、野外活動に最も適するために購入されるゴムボートです。積載能力も高く、水上を携帯する荷物の他に自転車や愛犬も載せたままでパドルを使って移動できます。このため、湖沼、河川や時には海を含む原野での行動範囲を一段と高めてくれます。この十分な積載重量を支えられる点が愛好家には特に魅力的です。価格の値ごろ感もあって広く購入されています。
スラックラフティング
プール用ビニール製ボート
パックラフトはメーカーから数万円の価格から10万円を超す価格で売られていますので、同じように楽しめる代替え品として数千円程度の価格で買え、プール用等に売られているビニール(PVC)製のゴムボートを購入する人達もいます。この様なボートでも海岸、湖沼や穏やかな河川などの静水域で、かつ泳げる範囲であれば、それなりに楽しむことができます。
エアーマット(Lioing)
ビニール(PVC)製のゴムボートでは簡単にパンクしますし、高圧で膨らすことが出来ないのでスラックラフティング(安定性のないボート遊び)と呼ばれています。それでもクラス2以下の渓流下りで良く利用されるエアーマット(Lioing)よりはおすすめできます。
パックラフトの艤装
様々な艤装
パックラフトのメーカーは浮袋(アウターチューブ)に多室構造も用意している他、スプレースカート(浸水防止シート)、セルフベイラー(自動排水)、Dリング(グラブループ)(輪やD型で運搬や救助などに使う)、安全索、大腿ストラップ、シート(座席)、コンプレッションストラップ(座席固定締め付け紐)を用意しています。
加算される重量や価格も考えて
それらを艤装して安全性や操舟性を高めることをおすすめしています。しかし、その分は重く成って価格も高くなるので使用目的に合わせて購入時には良く検討しましょう。
パックラフトの付属装備
付属装備一式
付属装備としては必ずしも全てが同じメーカーの製品ではありませんが、インフレーションバッグ(空気袋)、櫂(パドル、オールなど)、パドリングジャケット、ドライスーツ又はウェットスーツ、救命胴衣、ヘルメット、メガネバンド、簡易修理セット、格納用防水袋、着替えなどが含まれます。
装備は7kg以下に
一番重い冷水域用パックラフト一式でも全体で7kg以下に抑えらるように付属装備を選択しましょう。
パックラフトの保守
使用後に付属装備を含めて真水で洗って乾燥させるだけで十分です。紫外線から船体を保護する為に半年毎位にUVテックを塗布することもおすすめです。軽量なので強度や耐久力は劣るので、底をこすったり、岩や枝に当たったりすると破損するので、破れなどは修理キットで確実に補修を行ってください。メーカーでは経年劣化を防ぐために紫外線に当たらず、常温で乾燥した場所での保管をおすすめしています。
パックラフトのメーカーと主要モデル
メーカー |
モデル |
重量kg |
床材 |
空気袋材質 |
積載重量kg |
多室式 空気袋 |
自動排水装置 |
価格(円) |
アドバンスド・エレメント |
パックライト・カヤックAE3021 |
1.8
|
ポリウレタン塗布ポリエステル |
ポリウレタン塗布ポリエステル |
113 |
〇 |
|
65,800
|
アルパカ |
スカウト |
1.6 |
800D ナイロン |
200D ナイロン |
|
☓ |
|
83,700 |
ココペリ |
ホーネット・ライト |
2.2 |
210D ナイロン |
70D ナイロン |
125 |
☓
|
|
95,040 |
MRS |
テュロ |
2.3 |
420D ナイロン |
210D ナイロン |
150 |
☓ |
|
81,000 |
クライミット |
ライトウォーターデンギー |
0.7 |
210D ポリエステル |
210D ポリエステル |
|
|
|
24,411 |
注:D(デニール)とは浮袋(アウターチューブ)を補強している繊維の太さを示す為の単位で、繊維9,000メートル分の質量をグラムで表示しています。
これ等のメーカーはフェザークラフト、フライウェイト・デザイン、NRS パックラフト、スパイ、ノルディック、エアー、アンフィビオなどの他のメーカーと共に様々なモデルを製造販売しています。
アドバンスド・エレメント
重さ1.8kgで特に軽量コンパクトなカヤック形式で、比較的安価なゴムボートです。安全確保のために3つの空気室、大きな空気袋が付属しており、簡単に膨張させて組み立てられます。 網目の収納袋は水上では小物入れ兼ねています。 これらの特徴が今までは難しかった遠隔の地でのパックラフト使用を可能にしました。耐久性もありますが、主に静水域で使うことがおすすめです。
ALPACKA RAFT スカウト / Scout
一番オーソドックともいえるパックラフトです。無駄な艤装は全て取り除いた、静水からクラス2の激流、湖など専用の最小最軽量のパックラフトです。収納袋は必要な付属品を入れて持ち歩けるサイズです。但し、グラブループなどの偽装は、必要に応じて追加することが出来ます。厳しい「アラスカでのテスト」に合格し、頑丈、軽力、コンパクトで高い安全性を持っています。
Kokopelli ホーネット・ライト
ALPACKA RAFT スカウトと並ぶオーソドックスなパックラフトです。背もたれなども省き、空気室を1つに抑える等の機能的な設計をして、軽量化とコンパクト化を図ることで重量はシートを含めて2.2kgに抑えてあります。 この為、遠隔地や高地の河川や湖沼など広い穏やかな水域を渡るのに理想的です。本体を安全に保管するためにパック前面に2つのDリング取り付けてあります。 膨張式シートクッションを使って居り、濡れずに高い位置からパドル漕ぎが可能です。
KLYMIT ライトウォーターデンギー
Klymit LiteWaterディンギーPackraft
もっとも簡便で安価なパックラフトの1つです。1.5リットルのペットボトルと同じ大きさで、重さは1kgです。それでいて櫂漕ぎや操舟性が容易なように設計されています。 上部と底部に張られた破れ防止繊維(耐摩耗性210Dポリエステル)は、本体が引きちぎられたり、パンクしたりすることを防ぎます。収納袋は空気袋と一体化されていています。タイオフゾーンは6ヵ所あり、もやい用や荷物の個縛用に使えます。
パックラフトの体験ツアー
初心者は「パックラフトの体験ツアー」でパックラフトの魅力を知り、必要な技量と装備へ経験を積み、注意点を知ってから道具を揃えることがおすすめです。いずれも体験費用は5,000~10,000円くらいです。
入門コースの紹介 |
|
主催者 |
ツアー名 |
アムスハウス長瀞 |
長瀞パックラフトツアー |
冒険小屋(群馬の水上エリア) |
みなかみのパックラフトツアー |
キャンプノース・アウトドアサポート |
清里 パックラフトツアー |
キャンプノース・アウトドアサポート |
南佐久 パックラフトツアー |
フォレストキャニオン |
四万十川パックラフティングツアー |
サニーエモーション(アルパカラフト輸入代理店) |
トレーニング&ダウンリバー (安曇野地方) |
エバーグリーン |
奈良吉野川でのパックラフティング |
購入時の気になる選び方
どんな目的に使うのか
パックラフトを選ぶにあたってもっとも気にしなければ成らないのは、「どんな目的に使うのか」です。静水域使うのであれば数千円で買えるスラックラフトでも間に合う場合も少なくはありません。激流域に挑戦するのであれば、丈夫な構造でさまざまに艤装のオプションを追加して安全性や操舟性を高める必要があります。一般的にはクラス2程度の激流までに耐える数万円から10万円程度のモデルで十分だと思われます。
購入前の試乗体験
同時に付属装備も最小限、救命胴衣と櫂(パドル)は必要です。構造、艤装や付属装備もどこまで揃えるかで重量も価格も増してきます。体験コースに参加して幾つかのモデルに試乗体験した後にパックラフト本体、その構造、艤装や付属装備を選び、購入する事をおすすめします。
まとめ
ここでは「パッククラフトとは」と「パッククラフトの六つ魅力」を紹介しました。操舟技術や漕ぎ方(パドリング)、艤装、付属装備や保守についても説明しました。また、価格の安いスラックラフティングにも触れました。自分にあったモデルが選定出来るように、パッククラフトを知り、体験するためのツアーも紹介しました。掲載しました「パックラフトのメーカーと主要モデルの比較」などもご参考に自分にあったメーカー、モデル、艤装、付属装備などを選定し、安全にスリルあるパッククラフティングを楽しみましょう。
ピーター・ハケットが設計したゴムボート