チョウチョウウオとは?
チョウチョウウオはスズキ科の魚で、世界で100種類以上、日本で約50種類見られる海水魚です。英語ではバタフライフィッシュとよばれ、薄くて体高の高い身体をひらひらと揺らしながら泳ぐのが特徴です。食べられる部分が少なく、食用としては利用されていませんが、体色が鮮やかな種類が多いため、観賞魚としても人気です。
チョウチョウウオの生態
チョウチョウウオの仲間は、暖流の影響を受ける世界中の温帯から熱帯までの沿岸域に生息しています。水深数十cmから百数十mまでの幅広い深度に生息し、様々な環境に分布しながら、「薄い身体で尖った口」はチョウチョウウオの仲間全種に共通しています。薄い身体は、岩やサンゴの隙間に隠れるのに都合がよいと考えられています。
チョウチョウウオの食性
チョウチョウウオの仲間は、食性によって大きく3つのグループに分けることができます。1つ目は雑食性のグループで、サンゴのポリプ、小型の海中生物、コケなどさまざまな物を餌として食べます。2つめはサンゴのポリプ食性のグループで、サンゴのポリプをメインに食べています。3つめはプランクトン食性のグループで、海中を漂うプランクトンをメインに食べています。それぞれ食べるものが違うにもかかわらず、みな同様に尖った口をしているのが興味深いですね。
チョウチョウウオの産卵
チョウチョウウオの仲間は、海中でよく観察される魚ですが、繁殖については謎の多い魚です。どのような産卵行動をするのかほとんど分っていませんが、産卵後の卵や、稚魚は沖合の水面付近を漂います。その後、沿岸域に流れ着いた稚魚が幼魚へと成長していきます。初夏になると黒潮に乗って流れ着いた幼魚が関東地方のタイドプールなどでも見られます。ただし、南方から流れついた幼魚は冬の海水温の低下に耐えられず死んでしまうので、死滅回遊魚と呼ばれています。
チョウチョウウオの採集
初夏から秋にかけての関東地方の太平洋沿岸では、黒潮に乗って北上してきた、南方系のチョウチョウウオを観察することが出来ます。幼魚のうちはタイドプールや、岸壁沿いの水深数十cmの浅い所にいるため、初心者の方でも簡単に採集をする事が可能です。多く見られるのは、トゲチョウ、チョウハン、アケボノチョウなどですが、沖縄地方に生息している種類であれば流れ着いてくる可能性があります。タイドプールであれば、潮が引いた時に手網を使って簡単に採集できますし、岸壁沿いの個体も、柄の長い網を用意出来れば採集自体は難しくありません。ぜひチャレンジしてみて下さい。
幼魚の飼育
タイドプールなどで採集できるチョウチョウウオは、幼魚であることがほとんどです。せっかく採集したチョウチョウウオですので、自宅で飼育するのもおすすめです。後述しますが、チョウチョウウオの仲間は餌付けるのに苦労することが多いです。しかし、幼魚であれば成魚に比べて環境の変化にも早く慣れ、早く餌付いてくれることも多いです。自分で採集した個体であれば、愛着もひとしおになります。ぜひ、幼魚から飼育してみて下さい。
チョウチョウウオの飼育設備
水槽セット
チョウチョウウオの幼魚を飼育するためには、市販の60cm水槽の海水魚用セットを用意するのが手軽で良いでしょう。これより小さいサイズの水槽もありますが、チョウチョウの飼育には生のエサを使用することも多く水を汚しやすいため、なるべく水量が多い水槽が望ましいです。60cmの水槽であれば、ある程度のの大きさに成長するまで使用することが出来ます。ろ過槽はセットになっている上部フィルターや外部式フィルターで十分です。ライトとサーモスタット&ヒーターも標準のものを使用します。病気になりやすいため、底砂は敷かない方が安心です。また市販の人工海水を溶かして、海水を作ってあげましょう。
紫外線殺菌灯
チョウチョウウオは上記の水槽セットだけでも十分に飼育出来ますが、出来れば紫外線殺菌灯を使用するとより快適に飼育が出来ます。紫外線殺菌灯は、強力な殺菌作用を持つ紫外線を発する蛍光管の周囲に海水を循環させ、水中に漂う病原菌を殺してくれます。チョウチョウウオは白点病にかかりやすい魚で、1度発病すると、最悪水槽内の魚が全滅してしまうことも珍しくありません。紫外線殺菌灯を使用することで、完全に病原菌をなくすわけではないですが、発病のリスクをかなり抑えることが出来ます。最近は、安価で設定の簡単な商品も販売されていますので、ぜひ使用してみて下さい。
チョウチョウウオの飼育:餌付け
餌付けが難しい?
チョウチョウウオ飼育の第一関門は餌付けです。チョウチョウウオの飼育の難易度は、餌付けの難易度でもあります。雑食性の種類であれば人工餌料えの餌付けも早いですが、ポリプ食性の種類には餌付けに時間がかかるかもしれません。
餌付け①冷凍アサリ
まず最初に、殻付きの冷凍アサリを使用します。どこのスーパーでも販売されているので、誰でも手軽に入手することが出来ます。殻を開いて水槽内に投入し、様子を見てみましょう。おそらく、数日の内に冷凍アサリを食べてくれる個体がほとんどでしょう。万が一食べない個体は、生のアサリを与えます。1度生のアサリに餌付いてしまえば、その後は冷凍アサリを食べてくれることがほとんどです。また、水質悪化の原因いなりますので、1時間程度経って残ったアサリは速やかに回収しましょう。
餌付け②自家製配合餌料
冷凍アサリへの餌付けができたら、その後、自家製の配合餌料を作ります。まず、アサリの身をミンチにし、同量の人工餌料と混ぜ合わせます。それを再びアサリの貝殻に塗りつけ冷凍し、与える際に解凍します。冷凍アサリに餌付いていれば、貝殻には餌が付いてると認識し、すぐに突きだすはずです。これで少しずつ人工餌料の味と匂いを覚えさせましょう。難易度が高い種類の場合、人工餌料の配合の割合を、少しずつ増やしていくと上手くいきやすいです。
餌付け③人工餌料
上記の配合餌料をよく食べるようになったら、ごく少量の人工餌料を与えてみます。匂いに反応したり、突いたりすれば、餌付くのも時間の問題でしょう。しばらくは配合餌料と合わせて与えれば、次第に人工餌料も食べてくれるようになるはずです。
チョウチョウウオの飼育:混泳
チョウチョウウオ同士
チョウチョウオ同士の混泳は十分に可能です。ただし、お互いの大きさがある程度同じで、十分な隠れ家があることが前提となります。チョウチョウウオは一部の種類を除いて、群れで行動することがなく、多少の小競り合いは避けられません。そのため、小競り合いに負けてしまった個体が隠れられる場所が必要となります。また、あまり飼育難易度が高い種類を混泳させてしまうと、ケアが行き届かなくなってしまうので注意しましょう。
チョウチョウウオ以外の種類
温和な海水魚であれば、チョウチョウウオと混泳することが可能です。スズメダイやヤッコ、ベラ、クマノミなど気に入った種類の魚と混泳させてみましょう。あまり小さい魚は、チョウチョウウオにイジメられてしまう恐れがあるので注意が必要です。チョウチョウウオを飼育する際、先に人工餌料に餌付いている海水魚が水槽にいると、チョウチョウウオも釣られて人工餌料を食べてくれることも多いです。そう言った意味でも、チョウチョウウオと他の海水魚との混泳はおすすめです。
サンゴとは一緒に飼えない?
チョウチョウウオはポリプ食性の種類を含めて、どの種類でも多少なりともサンゴのポリプを食べてしまいます。そのため、サンゴとは一緒に飼えないと思った方が良いでしょう。もし、サンゴのレイアウトの中で飼育をしたいのであれば、飾りサンゴがおすすめです。飾りサンゴは死んでしまったサンゴの骨格ですので、形はサンゴそのものです。熱帯魚ショップで販売されているので、試してみて下さい。
おすすめのチョウチョウウオ:トゲチョウ
トゲチョウは、白と黄色のコントラストが美しく、その見た目から、「海水の熱帯魚」と聞いて思い浮かべる人も多いかと思います。非常に流通量が多く、幼魚はタイドプールで採集することも可能です。餌付きも早く、丈夫なため、飼育難易度も低い種類です。ただし、トゲチョウはやや気性が荒く、同種や、一部のチョウチョウウオの仲間と混泳すると、ケンカをしてしまいます。そのため、チョウチョウオ以外の魚と混泳するのが望ましいでしょう。
おすすめのチョウチョウウオ:ミゾレチョウ
飼育難易度が低く、初心者におすすめのチョウチョウウオです。ミゾレチョウは餌付きが非常に早く、最初から人工餌料を食べてくれる個体がほとんどです。丈夫で白点病にかかりにくく、非常に飼育しやすいでしょう。派手さはありませんが、混泳も容易な入門種です。幼魚から成魚まで各サイズの個体が販売されていますので、購入しやすいのもいいですね。
おすすめのチョウチョウウオ カスミチョウ
1つのチョウチョウウオを群れで飼育したい方におすすめです。もともと海の中で群れで生活しているため、水槽内でも複数飼育しても問題ありません。プランクトンを食べているため、最初から冷凍のブラインシュリンプなどを食べてくれるでしょう。慣れてきたら細かくした人工餌料を一緒に水流に乗せてあげると、割と簡単に餌付いてくれます。全体的な飼育難易度も高くなく、おすすめ出来る種類です。
おすすめのチョウチョウウオ:トノサマダイ
トノサマダイは、全身が派手な黄色で、身体の後半い黒い斑点があります。タイドプールでよく見られる種類で、採集も簡単な種類です。サンゴのポリプ食性のため、飼育難易度のやや高い部類に入りますが、幼魚を採集することが出来れば、餌付きもスムーズで飼育しやすいでしょう。黄色の面積が大きく、水槽内で一際目立つ存在となるでしょう。サンゴ食性のチョウチョウウオの入門種としておすすめです。
おすすめのチョウチョウウオ:ユウゼン
日本固有のチョウチョウウオで、日本はもちろん、世界中のアクアリストが憧れるチョウチョウウオがユウゼンです。ユウゼンは小笠原諸島、伊豆諸島の一部、大東諸島と日本のごく限られた場所にしか生息しておりません。生息地が離島と言うこともあり、採集手段もほとんどなく、流通も限られるため憧れの存在となっています。飼育自体はそれほど難しくなく、雑食性のため餌付けも早いでしょう。可能であれば、冷却装置を使用した方が安心です。チャンスがあれば、ぜひ飼育してみて下さい。
まとめ
いかがでしたでしょうか?チョウチョウオの仲間は南の海にしかいないと思いがちですが、実は関東地方でも見ることが出来ます。飼育するには難易度が高い種類も多いですが、幼魚からなら割と簡単です。自分で採集した個体なら愛着もわきますし、ぜひご自身で採集して飼育までしてみて下さい。