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メガネモチノウオとは?絶命危惧種指定の幻の魚の生態や寿命に迫る!

メガネモチノウオという魚をご存知でしょうか?「知らない」という人でも、ナポレオンフィッシュといえばピンとくるでしょう。水族館でも人気の大型魚ですが、絶滅危惧種にも指定されています。意外と知らないメガネモチノウオはどんな魚なのか詳しく解説します。
2020年8月27日
蛙屋
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メガネモチノウオ:基礎知識

メガネモチノウオについて、まずは概要をつかんでおきましょう。

知名度抜群の水族館の人気者

メガネモチノウオはベラ科モチノウオ属の魚です。成魚のオスは黄色がかった青緑色。色の鮮やかなベラの仲間の中でもっとも大きく、サンゴ礁などを漂う大型の魚として、水族館にもよくいますし、ダイバーの間でも人気があります。有名なのは「ナポレオンフィッシュ」という別名。そこから「海の皇帝」というニックネームも持っています。

名前の由来

ナポレオンフィッシュというのは、フランスの英雄ナポレオンの被っている帽子に似た、張り出した頭部が理由です。和名のメガネモチノウオは、目の後方に二本の模様があり、それが江戸時代のメガネの耳にかける「つる」のようだというのが名前の由来です。漢字にすると「眼鏡持之魚」。この模様は寿命の近い老魚ではほとんどなくなってしまいます。

コブはオスの成魚だけ

この帽子に似たコブですが、すべてのメガネモチノウオが持っているわけではありません。メガネモチノウオ自身は頭部は張り出しているものの、帽子に似たトレードマークのような大きなコブを持つのは成長したオスだけなのです。コブが大きく目立つ個体は、何年もの寿命を生きたオスの証しといえるかもしれません。

メガネモチノウオ:どこで見られる?

大人気のメガネモチノウオ。一度は見てみたいですよね。どこに行けば見られるのでしょうか?

水族館でもよく見られる

マスコミも頻繁に取り上げるメガネモチノウオは、大変人気があるため、規模の大きな水族館であればほとんど展覧されています。メガネモチノウオは大型魚で、生息しているサンゴ礁のボスといった風情があり、どこの水族館でもその生態や、悠々とサンゴの周囲を泳ぐ姿を見られるよう、工夫を凝らしていますよ。

熱帯のサンゴ礁に生息

野生のメガネモチノウオの生息域は南洋です。インド洋から太平洋のサンゴ礁、岩礁を住処にしており、日本でも和歌山県串本、南西諸島で見ること、釣ることができます。とはいえ、メガネモチノウオは絶滅危惧種にもなっており、積極的に釣られることはまずありません。ダイビングの目玉の観賞魚としての価値のほうが大きいです。

ダイバー憧れの魚

生息域ではダイビングで生のメガネモチノウオを見られるスポットも多いです。沖縄地方はもちろんですが、外国のダイビングスポットでも、メガネモチノウオが見られることを売りにしていることがよくあります。大型で怖いイメージのメガネモチノウオですが、餌付けされるとおとなしくて人懐こくなるので、ダイバーも憧れなのです。

メガネモチノウオ:生態

メガネモチノウオはどんな生活をしているのか、その生態を知れば観賞も楽しくなるはずです。


昼に動き、夜は休む

昼行性のメガネモチノウオは、水族館でも昼間からよく動いているのが観察できる生態です。肉食で、生息地であるサンゴ礁をうろつきながらタコ、イカ、エビなどを大きな口で吸いこむように食べます。逆に夜はほとんど動かず、岩陰で休んでいます。基本の生態は単独行動ですが、繁殖期だけは数匹の群れを作って繁殖するのです。

大きなメスがオスに変身

ベラ科の特徴で、メガネモチノウオも性転換する生態が知られています。メガネモチノウオはすべてがメスで生まれますが、繁殖では群れで一番大型の個体がオスに転換して交配し、そのオスがいなくなれば次に大きな個体がオスになるという生態なのです。卵を産んだお母さんが、翌年はお父さんになるということもありますよ。

成魚になるまで時間がかかる

メガネモチノウオの繁殖期は暖かい時期。6月から9月の頃です。産卵は夕方から行われ、一度に産む卵の数は数万~数十万個。それが数日で孵化します。幼魚は成魚とは似ても似つかず、色も地味な面白みのない魚です。それが成魚になるまでは5年~7年かかり、大きくなればナポレオンの帽子に似た頭部になって、繁殖もできるようになります。

メガネモチノウオ:大きさと寿命

大型魚のメガネモチノウオは、寿命も長いようです。

最大2m以上の大型魚

メガネモチノウオはテレビで観るとダイバーよりも巨大で、とにかく大型のイメージがあります。実際、オスになった成魚は2m近くになり、これまで見つかった個体の最高は229cmで、体重も191kgと記録されています。ただし、2mというのは大型個体で、一般的には1mくらいのものがほとんどになります。

ウロコは疑似餌にもなる

やや余談ですが、大型になったメガネモチノウオはウロコも大きいのです。2m級であれば、ウロコ一枚が10cmほどにもなります。生息地の沖縄では、そのキラキラ光るウロコを疑似餌にして、カツオなどを釣る漁法もあるようです。昔からいろいろと利用されてきたのですね。

寿命は30年くらいか?

前述した229cmの大型メガネモチノウオは、32年生きたと記録に残っています。正確な寿命はなかなか算出しにくいのですが、記録などから寿命は20年~30年くらいといわれています。水族館などで飼育されているものも、寿命は15~20年です。魚類の中では寿命の長い魚で、時間をかけて大型化するというわけですね。

メガネモチノウオ:似た魚

軍帽に似た頭のコブが特徴的なメガネモチノウオ。コブ持ちの似た別の魚と間違わないようにしましょう。

コブダイは生態も似た大魚

よく間違われるのがやはり頭に大きなコブを持つコブダイです。鯛ではなく、メガネモチノウオと同じベラの仲間で、日本近海にもよく生息していて、間違われることが多いのです。昼行性で、肉食。性転換するという生態も一緒。1mにもなる大型魚ということで、メガネモチノウオにとにかく似た魚といえるでしょう。

毒に注意!アオブダイ


アオブダイもメガネモチノウオと似た魚です。コブダイ同様、頭の形が似た魚なのですが、90cmの大きさや、サンゴ礁に生息する生態がそっくり。色も青で間違われやすいのです。ただし、アオブダイには毒があり、食べると最悪死亡します。噛む力も強いので、もしダイビングで出会っても不用意に手を出してはいけません。

メガネモチノウオ:絶滅危惧種

よく見られるメガネモチノウオですが、実は絶滅危惧種に指定されています。

現在は保護の対象

メガネモチノウオは見た目の面白さや、味がよいという理由から、かつて乱獲されていました。生息するサンゴ礁の減少もあり、ここ30年ほどの間に数が半減しました。それで2004年には絶滅危惧種に加えられたのです。現在は捕獲も制限されていますが、密漁も後を絶たず、各地で生態調査や保護活動が強化されています。

養殖技術の発展に期待

絶滅危惧種といっても、メガネモチノウオは『きちんと保護されれば、個体数は回復する』というレベルに留まっています。これまでメガネモチノウオの養殖は不可能でしたが、生態などがわかってきて、沖縄県では卵から成長させる技術もできつつあります。これらが成功すれば絶滅危惧種から抜ける可能性もないとはいえません。

メガネモチノウオ:食べられる?

意外かもしれませんが、メガネモチノウオは食用として一部では売られています。

沖縄で食べられることも

メガネモチノウオが生息する沖縄地方では、方言で「ヒロサー」などという名前で、海人たちが普通に銛でついて獲り、メガネモチノウオが食べられていました。しかし、絶滅危惧種に指定されたこともあり、最近では食卓に上がるというよりは、市場に出ている少数のメガネモチノウオをたまに食べたり、観光客向けに提供する程度になっています。

香港では超高級で縁起がいい魚

香港ではメガネモチノウオは「蘇眉(そうめい)」と呼ばれる高級食材です。食べると寿命が延びると言い伝えられていて、そのせいで台湾から東南アジアにかけて乱獲、密漁に拍車をかけることになったのです。現在はやはり絶滅危惧種指定が響いて、それほどは食べられていませんが、高級料理店では今も珍重されています。

メガネモチノウオ:味と料理

なんと食べられるメガネモチノウオ。気になる味と、食べ方を紹介します。

甘く、歯応えある白身

メガネモチノウオはきれいな白身で、ベラ科の中では一番美味いという人も少なくありません。身は甘く、しっかりとした弾力があり、骨に近い身ほど歯ごたえがあります。火を通すとゼラチン質となり、適度な締まりのある美味です。ウロコは硬く、骨が太いため、素人が捌くのは大変。

刺身はそのままでも美味い!


よく食べられるのは刺身です。メガネモチノウオの刺身は白く、さらに白い脂が筋のように混じっています。普通に醤油とワサビ、塩つけ、レモン汁をかけても美味しくいただけますが、おすすめしたいのは「そのまま食べる」こと。癖のない淡白な身の甘みの中に、トロリとした脂がストレートに味わえる絶品ですよ。

出典: https://hatoma.co.jp/archives/2430

食べ方はとても多い

沖縄ではメガネモチノウオの唐揚げ、フリットも馴染みの料理です。切り身に衣をつけて揚げるだけですから、簡単ですね。また、メガネモチノウオの身は、煮てもあまり固くなりません。煮つけ・煮込み料理にも適しています。完全に煮てしまわず、あっさり酒蒸しなどにすると、ゼラチンがたまらない料理になるでしょう。

メガネモチノウオ:飼育

絶滅危惧種のメガネモチノウオは家で飼うことも可能です。

流通は多くない

一般の海水魚を飼育するように、メガネモチノウオも飼うことができます。あのナポレオンフィッシュを家で見られるわけですね。でも、絶滅危惧種ですから入荷も少なく、お金もかかり、飼育は容易ではありません。売っているのは10~20cmの幼魚で、1匹1万円弱から数万円は覚悟しないとなりません。

飼うのは手間とお金が必要

メガネモチノウオは大型魚。飼育するなら幅180cm以上の水槽でないと間に合いません。単独で飼育するのが基本で、他の魚との混泳はできません。もちろん、幼魚から1m超えの成魚にするのに数年かかり、途中で死んでしまうことも多いです。初心者では無理な、かなりの上級者&資産家向けの観賞魚といえるでしょうね。

小さな水槽でも飼えるが…

大きな水槽が必要といいましたが、幼魚の頃は小さな水槽でも飼えないことはありません。10~20cmほどの大きさなら、60~90cm水槽でもよく、成長の遅いメガネモチノウオですから、その大きさに合わせて水槽も大きくしてゆく方法でもいいです。しかし、魚は小さい水槽に合わせて成長しないこともあるので、あまりおすすめできない飼育法です。

メガネモチノウオ:まとめ

人気者の意外な事実

メガネモチノウオ(ナポレオンフィッシュ)について書いてきました。きっとメガネモチノウオという和名も初めて知ったという人もいるでしょう。絶滅危惧種なのに食べたり飼えたりするのも驚きでした。水族館でナポレオンフィッシュを見たとき、この記事に書いてあることを思い出していただければ、より親しみを感じられるのではないでしょうか。