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黒百合
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黒百合とはどんな花!?
その花のエキゾチックな風情からいろいろな伝説の主役を担っています。神秘的な雰囲気を醸しだす「黒百合」は、石川県の郷土の花に選ばれていたり、北海道帯広市の市の花にもされています。分類としてユリ科フリチラリア科バイモ属ですが、ユリとは別属の種類です。原産地は日本、アジア東北部。黒百合は和名で英名は”ブラックサレナ””カムチャッカリリー”です。種類としては球根植物で山野草の部類に属し花の季節は4~5月です。
黒百合の特徴
黒百合の草丈は10~50㎝程、花は直径が2~3㎝で広鐘状にうつむき加減につき紫褐色の網目がつきます。種類によって多少異なりますが、春に芽出しして開花し、夏前には地上から出ている葉茎は枯れてしまいます。そのまま夏季の間球根は地中で休眠し、秋に養分などを吸収する活動を始めます。開花時は独特の香りを持つことが特徴です。その香りとは香りとは云い難く、大変な悪臭を放つ為に、英語では”スカンクユリ(skunk lily)”や”トイレの外のユリ(outhouse lily)”など意味としてはあまり有り難くない呼び名がつけられている位です。
黒百合の種類
本州や北海道の草原に自生する「エゾクロユリ」と、本州や北海道の高山に生息する「ミヤマクロユリ」の2種類があります。エゾクロユリは草丈も比較的高く花数も多く、黒色に近いほどの濃い暗紫色をしています。一般に切花などで出回るのはこの種類で、地植え、鉢植え共に育て方は難しく有りません。ミヤマクロユリの草丈はやや小ぶりで、花付きも2~3輪程度で多く付きません。花色も緑がかった色をしています。八重咲きのものと変異種のキバナクロユリもあります。
黒百合は食用にもなる
百合根いわゆる百合の球根(写真)は食べられる事は良く知られていますね。黒百合の鱗茎も食用としても利用されていました。アイヌの人達は根の部分を茹でて油をつけ、ご飯に炊き込んだり、野イチゴや魚と混ぜ合わせて食したということです。また、乾燥させて保存食としても利用していました。樺太では食用の珪藻土を溶かした水で乾燥させた鱗茎を煮て食したといいます。
黒百合は伝統工芸にも利用
北海道厚岸地方では、繊維などを染める材料として使われていました。石川県白山市では伝統的な織物「牛首紬」の「クロユリ染め」の技術が伝承されているのですが、黒百合の花を乾燥させて色素を抽出し、触媒の種類によってピンク、紫、茶、黄、灰色、緑などに染めることが出来ます。
黒百合を題材にした文学・小説
黒百合
そのミステリアスな名前から、推理小説やコミックなどの題名であるとかストーリのなかの重要な位置づけとして使われたりしています。明治時代の文学者「泉鏡花」が北陸富山を舞台に花売りの少女が幻の黒百合を求めるという物語の「黒百合」が有名です。また、川端康成の小説「山の音」の一節に”いやな女の、生臭い匂いだな”と黒百合の匂いを形容した件りがあります。他に「黒百合」を書名にした「多島斗志之」氏の著作もあります。
黒百合の花言葉「恋」
黒百合には花言葉として「恋」と「呪い」の二つがあります。ひとつの花に相反する意味の花言葉があることは大変珍しいことです。「恋」の由来の意味としては、アイヌの美しい伝説として、好きな人の側に想いを込めた黒百合の花を置きます。その相手が黒百合の花を手に取ると、やがて二人は必ず結ばれるという意味が由来とされています。映画「君の名は」の挿入歌で織井茂子さんが歌った”黒百合の花”の歌詞にも使われています。
黒百合の花言葉「呪い」
花言葉としてはインパクトの強い「呪い」の花言葉の由来の意味は、戦国時代の武将で冬の立山越えで有名な佐々成政の側室であった早百合が謂れのない噂によって成政の不興を買い殺されてしまうのですが、その死に際に”立山に黒い百合が咲いた時に佐々家は滅びるでしょう”と残した言葉通り、後に豊臣秀吉によって切腹を命じられて断絶してしまったという伝説によるものです。ちなみに同属のバイモの花言葉は”人を喜ばせる”です。
八ヶ岳黒百合平の伝説
伝説によると、その昔、浅間山に「でぇらん坊」という巨人が住んでいたのですが、次第にその勢力を八ヶ岳に伸ばしてきました。八ヶ岳の守り神であった「磐長姫(いわながひめ)」が妹の富士山の「木花開耶姫(このはなさくやひめ)」の助けを借りて中山峠で激烈な戦いの結果、「でぇらん坊」はその勢いに押されて退却をしてしまいましたが、磐長姫も深手を負ってしまい、地面に落ちた鮮血が黒百合の花なったという伝説が残されています。その由来の通り八ヶ岳の中山峠の近くには黒百合平という地名が残されていて、黒百合も自生しています。
黒百合の花の匂い
黒百合の花は開花すると独特の香りを発します。多くの種類の植物がそうである様に子孫を残すために受粉を仲介する昆虫を呼び寄せるためですね。黒百合の花の香りは強烈です。黒百合の花粉を運ぶのはケブカクロバエという蝿(ハエ)が大部分で、この匂いがこの蝿を呼び寄せているのです。悪臭と云われても仕方がないこの匂いのために鑑賞花として今ひとつ敬遠される原因かなとも考えられます。
黒百合の育て方のポイント!
比較的育て安いのは「エゾクロユリ」です。山野草で比較的涼しい場所で自生していますので北海道や東北地方など関東以北の涼しい地方意外は地植えには向きませんので、鉢植えで育成させる方が良いでしょう。地植え、鉢植え共水捌けの良い土に植えて、乾燥させない様に注意して休眠期間中の水遣りに十分気を配ることが育て方のポイントです。
生育させる場所
鉢植え、地植え共育て方としては、春の芽出しから開花、花が終って葉茎が枯れるまで日光に良く当てる場所で育成します。夏の間は風通しの良い涼しい場所に置き、休眠中は春芽を出すまで日陰に置いておき、乾燥を防ぐ意味でも水のやり過ぎによる根腐れに注意する程度に灌水します。
水のやり方
育て方の基本はまず水遣りです。春の芽出し時期から葉茎が枯れるまでの生育期間中は土の表面が乾いていたらたっぷりと灌水します。夏の季節は休眠していますので水は控えめで良いのですが、高温が続いている様でしたら乾燥が心配ですので水掛けを適宜行って下さい。秋の季節から冬の間は球根の活動が始まりますので、土の表面が乾き気味でしたら水を与えて下さい。季節によって水遣りの方法が異なりますので注意が必要です。
花後の管理
花後の管理は、次の年に花芽をつかせるために意味があります。咲いた花がそろそろ終り頃だな、と感じたら花殻を摘み取っておきましょう。そのままにしておくと種子を作ってしまい、養分が種子の方に分散してしまい球根に養分が行きにくくなって肥らなくなってしまう意味があるからです。
黒百合の植替え
黒百合は球根植物ですので、ずっと植えっ放しにしておくと鱗片が剥がれやすくなって痛んでしまいますから、2年に1度は球根を堀りあげて植替えをしましょう。植替えの時期としては秋に球根が活動を始めるまでの7~10月初旬頃までの休眠期に行います。球根は小さい鱗片が重なり合う様な状態になっていて、非常に剥がれ易くなっていますから丁寧に扱います。古い球根ほど剥がれやすいので気をつけましょう。初心者の方は鉢植えを、育て方に慣れている方は地植えでも良いでしょう。
黒百合の鉢植え
関東以北以外の地域の方及び始めて育成してみようという方は鉢植えをおすすめします。黒百合の球根は小さいので、素焼きの5号深鉢に3球程度が目安となります。3~4㎝の深さに植え付け、芽を出す頃まで用土を乾かせない様に水遣りをします。土が乾いてしまうと球根は乾燥に弱いので枯れてしまいますから注意が必要です。
黒百合の地植え
年間を通して涼しい気候の場所であれば地植えでも良いでしょう。植え付けの場所は、水捌けの良い風通しが良く西日などが当らない所を選びましょう。植え付ける10日ほど前に鹿沼土、軽石、腐葉土などを良く鋤きこんでおきます。深さ約4~5㎝、球根同士10~15cmの間隔で植え付け、たっぷりと水を掛けて下さい。鱗片が剥がれるのを防ぐために球根を毛土(ケド)に包んで植えると良いでしょう。
用土
植える際の用土は水捌けの良いものを使用します。鹿沼土だけでも良いのですが、水遣りの際に球根が浮き出てしまう恐れがありますので、小粒赤玉土2:鹿沼土3:小粒軽石3:腐葉土2(参考)位の用土に植えると良いでしょう。市販の山野草用培養土は密度が細かい難点があるのであまり水捌けが良い土とは言えません。もし使用するのであれば鹿沼土や軽石を混ぜて使用した方が良いでしょう。
黒百合の増やし方は!
球根の鱗片を剥がして増やすことが出来ます。育苗箱などに用土を入れ、剥がした鱗片を重ならない様に並べて置き2~3㎝ほど土を掛けておき、有機質肥料を施肥します。毎年植替えが必要ですが、花が付くのに3年~4年ほどかかります。
黒百合への肥料施肥のポイント!
植え付けの際にはマグアンプの様な緩効性化成肥料を施肥しておきます。芽出しから地上に出ている葉茎が枯れるまでは花が咲いている期間を除き1週間に1度液肥を与えます。夏場の季節は休眠中ですので肥料は与えず、球根が活動し始める10月頃から12月初旬頃まで1週間間隔で液肥を与えます。
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黒百合の病害虫対策!
アブラムシやヨトウムシの様な害虫が発生することがあります。アブラムシは春先に発生する事が多く、折角芽出しした新芽や茎に貼り付いて養分を吸い取り弱らせてしまいます。ヨトウムシは葉の部分を食害してしまいます。また、排泄物はすす病を誘発します。茎の部分が伸びてきたら注意深く観察し、見つけ次第殺虫剤などで駆除して下さい。ナメクジやカタツムリにも要注意です。見つけたら捕殺して下さい。
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黒百合のまとめ
黒百合は山野草として、その一見神秘的な花姿に魅了されたり、伝説やその由来にまつわる花言葉などから興味をもった人達に育成されています。育て方には少々難しいともされていますが、地植えや鉢植えともに生育のサイクルや、一番大切な水遣りと施肥の仕方を良く把握することが栽培するコツです。ちなみに、JR札幌駅から程近い北海道大学のキャンパス内に5月~6月上旬の季節の花時に黒百合の群生している場所がありその見事な風景を鑑賞できます。