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北鎌尾根から槍ヶ岳の登山ルート情報!単独での装備や注意点含めて解説!

バリエーションルートの北鎌尾根から槍ヶ岳を目指す。かなり経験を積んだ人だけが挑戦でき、高度な登山技術を必要とする岩稜地帯です。毎年単独行を含めて多くの登山者がこのルートに入ってきますが、遭難の可能性もある危険なルートです。そんな北鎌尾根ルートを紹介します。
2020年8月27日
mmkk9944
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北鎌尾根の魅力

鋸の歯のような尖った岩の尾根、山が好きな人が見れば、その岩稜の魅力に引き寄せられ、身体が身震いするほど強烈に登りたいという欲望が湧くでしょう。その厳しい尾根の頂に立ったときの感動は、山登りの醍醐味です。北鎌尾根はそんな難易度の高い岩稜地帯です。
但し、山登りが好きであっても誰でも挑戦できる山ではありません。自信をもって踏破できるだけの技量を身に着けてから目指すべきです。これだけは肝に銘じておいて欲しいです。何故なら毎年のように死亡にいたる遭難事故が発生しているからです。単独行もなるべく避けましょう。

山小屋に次のような警告看板が設置されています。
「北鎌尾根では、自分の実力を見誤った初級者や単独行者による重大事故が多発しています。実力、天候、ルート状況を考慮して無謀な挑戦はやめましょう。北ア北部・南部地区遭対協 長野県警察本部」
北鎌沢右俣上部登山道で滑落事故(死亡)、行動不能、時間切れピバーク、道迷いなど、昨年は死亡1件、重症1件、道迷い1件などの遭難事故が発生し、原因は慢心、技量不足、実力不足、装備不十分、などで、ソロ登山者(単独行)に事故が多いようです。

北鎌尾根はバリエーションルート

北鎌尾根は一般登山道ではなく、難易度が高いバリエーションルートです。登山者の誰もが歩く、整備された登山道ではありません。まずはルートファイディング能力(山を見て登れる場所を見極める)が必要です。決まったルートがありませんから自ら登るルートを見つけながら行動しなければなりません。一般登山道では道標や目印が必ずありますが、北鎌尾根ではそれがないのです。行くたびに新しいルートを見つけて登らなければならない為、遭難の危険性が高いです。

バリエーションルートとは

バリエーションルートとは、登山で一般の登山道とは違う、より困難な登山道、沢筋や岩壁などのことをいいます。バリエーションルートは踏跡のある登山道(アクセスルートなし)ではなく、ルートを自力で見つけながら登頂を目指すことになります。事前の登山計画、装備を十分考えて山に入り、登頂まで起こる困難を自信の肉体と知恵で乗り切ることで、一般登山道とは違い遭難の危険性がある難易度の高い登り方です。
バリエーションルートの装備は、登る山、ルートに応じた装備が必要です。特にコンパスと地図(地形図1/25,000)と非常時に対応できる装備は必携です。

バリエーション登山は、より山に溶け込みたい、自分の力で山に登りたい、と言う人にはおすすめです。しかし難易度が非常に高いですから遭難しないよう必要な知識、経験、技術、リスクなどを十分承知の上で挑戦してください。

北鎌尾根ルート詳細

槍ヶ岳に至る北鎌尾根ルート
上高地バスターミナル(1504m)起点ー河童橋ー小梨平ー明神(1530m)-徳本口ー徳沢ロッジ(1550m)-徳沢園ー新村橋ー横尾山荘(1615m)-桧見河原ー一ノ俣(1705m)-ニノ俣ー赤沢岩小屋(ババ平)(2001m)-桧沢大曲ー水俣乗越(2480m)(これより槍ヶ岳までバリエーションルート)-北鎌沢出合ー北鎌のコル(2470m)-北鎌独標(2899m)-槍ヶ岳頂上(3180m)-槍ヶ岳山荘(3080m)-飛騨乗越(3010m)-殺生ヒュッテ(2860m)-槍沢・天狗原分岐ー槍沢大曲ー赤沢岩小屋ー槍沢ロッジー二ノ俣ー一ノ俣ー桧見河原ー横尾山荘ー新村橋ー徳澤ロッジー徳本口ー明神ー小梨平ー上高地バスターミナル
上高地バスターミナルへのアクセスは下記します。

行動距離(歩行距離):41.95km
最高点の標高:3180m
最低点の標高:1512m
累積標高:上り4212m、下り4224m
行動時間:初日11時間30分、2日目12時間20分
*水俣乗越より先はバリエーションルート

北鎌尾根ルートの概要説明

〇水俣乗越ー北鎌沢出合:上高地から水俣乗越までは一般登山道です。(アクセス分かり易い)、ここからは遭難の危険性がある難易度の高いバリエーションルートとなり、道標なし、エスケープルートなしのガレた急斜面を下りる危険な道のりが始まります。残置ロープが一応あり、一部雪渓を下るがアイゼンは不要です。北鎌沢出合は天井沢側と倉の沢側に小さいケルンがあります。

〇北鎌沢右俣ー北鎌のコル:ホイホイ入口の×印あり、沢の水量は多いです。途中大きな倒木があります。
〇北鎌のコルー独標基部:樹林帯や岩場の上り下りを繰り返す。登山道踏跡明瞭、巻き道は緑色ナイロンロープが目印。ここから槍ヶ岳まではルートファンディングが必要になります。

〇独標ー北鎌平:ザレ場、ガレ場、ハイマツ帯の上り下り。
〇北鎌平ー槍ヶ岳山頂:落石、滑落のリスクは多少減ります。残置スリングが2つ並んでいる個所は右側(白スリング)が正解。祠の右側から這い上がると槍ヶ岳頂上です。


槍ヶ岳北鎌尾根ルートの難易度

槍ヶ岳北鎌尾根登山難易度
技術レベル、体力レベルともに最高レベルの5です。上級者でないと登頂は難しいです。
〇技術難易度レベル5/5:登攀具やアイゼン、ピッケルなどの装備が必要となり、クライミング、沢登り、バリエーションルートなど、もしくはそれ以上の技術が必要となるルート。
〇体力難易度レベル5/5:テント泊の荷物を背負っての行動が必須のとなるルートもしくはそれ以上の体力が必要なルート。

〇技術難易度レベルは1~5まで5段階評価で5はその最高位。三点支持、岩場、鎖場などの登攀技術を持ち、山岳地図を読む力、ピバークができる技術なども必要です。
〇体力難易度レベルは1~5までの段階評価で5はその最高位。体力レベル1は行動時間1~3時間、体力レベル2は半日(4~5時間)、体力レベル3は日帰り1日登山、行動時間8時間まで、体力レベル4は途中山小屋泊ができる程度、体力レベル5は上記。単独行はおすすめしません。

槍ヶ岳北鎌尾根ルートの遭難事故と注意点

北鎌尾根の山岳事故、遭難は毎年のように発生しています。登山道からの転落、滑落、転倒が事故の上位を占め、直接的な原因は浮石、スリップ、踏み外しなどですが、間接的な原因としては、疲労の蓄積による筋力不足、加齢によるバランス感覚の低下などがあります。行動中は、ここで転んだらどうなるか、想像力を働かせることも重要です。特に60才以上の年配者の事故率が突出しています。単独行も多いですから、要注意です。単独行はできるだけ避けたいです。なお装備不良の人もいるようです。

事故例

昨年の8月北鎌尾根で発生した遭難例です。
槍ヶ岳北鎌尾根を登山中の64才の男性(単独行)が落石により右手を負傷。現場が携帯電話の通話圏外(アクセス不能)だったため、通りがかりの登山者に救助を依頼し110番通報されました。しかし天候不良のため、すぐに救助が行えず、その間遭難者の安否を確認する連絡手段はありません。2日目、地上から救助に向かった救助隊員により無事確認され、ヘリで救助されました。

北鎌尾根登山の装備

シーズン中の装備です。通常の登山装備以外に次のものが必要となります。
雨具上下、防寒具、ヘッドランプ、ヘルメット、ハーネス、120㎝スリング1本、安全環付カラナビ2個、エイト環かATCなどの確保、下降器、行動食(2日分)、水筒(2L)、手袋、着替え、健康保険証コピー、
ピバーク用品など

ピバークの必需品装備

ピバーク用品:救急箱、非常食、ヘッドランプ、ウールの下着、合羽、ツエルト、レスキューシート(又はシュラフカバー)、リペアテープ、細引き(10~15m)

初心者向け槍ヶ岳登山ルート

槍ヶ岳登山ルートの中で上記の北鎌尾根ルートは特別なルートで一般的なルートではありません。北鎌尾根ルートは魅力的な岩峰が連なる、登山者なら憧れの山ですが、上級者専用でベテラン登山家でないと登れない山です。(単独行は危険です。)一般的には北鎌尾根ルート以外に6ルートあり、上高地を起点とする槍沢ルートが最も人気があり、初心者でも大丈夫です。
・東鎌尾根ルート(表銀座)
・西鎌尾根ルート(裏銀座縦走ルート)
・槍沢ルート
・飛騨沢ルート
・喜作新道ルート
・天狗池ルート
東鎌尾根ルートと西鎌尾根ルートを紹介します。

槍ヶ岳登山ルート東鎌尾根ルート(表銀座)

槍ヶ岳登山ルートの中で最も人気高い縦走ルート、中房温泉を起点として、燕岳、赤石岳、西岳を経て槍ヶ岳を登頂し、水俣乗越を経て上高地に至るロングトレイルです。単独行(ソロ登山)も多く、アクセスも分かり易いです。

コース詳細

中房温泉登山口(1462m)起点ー第一ベンチー第二ベンチー第三ベンチー富士見ベンチー合戦小屋(2370m)-合戦山ー燕山荘ー燕岳(2763m)-燕山荘(2712m)-蛙石ー小林喜作レリーフ(2680m)-槍ヶ岳・大天井岳・常念岳分岐ー大天荘(2875m)-大天井ヒュッテ(2650m)-赤石岳(2768m)-ヒュッテ西岳(2680m)-水俣乗越(2480m)-ヒュッテ大槍(2884m)-槍ヶ岳山頂(3180m)-槍ヶ岳山荘(3080m)-水俣乗越ー槍沢大曲ー赤沢岩小屋ー槍沢ロッジ(1820m)-二ノ俣ー一ノ俣ー横尾ー新村橋ー徳沢園ー明神ー河童橋ー上高地バスターミナル


コース概要

合計距離:44.06km
最高点標高:3169m
最低点標高:1389m
累積標高上り3086m、下り2860m
行動時間:約24時間

槍ヶ岳登山ルート西鎌尾根ルート(裏銀座)

新穂高温泉を起点とし、鏡平山荘、双六小屋、左俣岳を経て槍ヶ岳に至るルートです。
新穂高温泉(1105m)起点ーわさび平小屋ー小池新道入口(1420m)-秩父沢出合ーチボ岩ーイタドリヶ原ーシンウドヶ原ー鏡平山荘(2281m)-弓折乗越(2557m)-花見平(2600m)-くろゆりベンチー双六小屋(2548m)-縦沢岳(2755m)-左俣岳(2674m)-千丈乗越(2734m)-槍ヶ岳山荘(3060m)ー槍ヶ岳山頂(3180m)

コース概要

歩行距離:18.9km
最大標高差:2107m
行動時間:上り11時間10分、下り9時間

〇西鎌尾根、裏銀座縦走コース
高瀬ダムのブナ立尾根を登山口として、双六小屋で新穂高温泉からのルートと合流します。烏帽子岳ー野口五郎岳ー鷲羽岳ー双六岳を経て槍ヶ岳に至ります。

北鎌尾根ルート上の山小屋

北鎌尾根ルート上には次の4つの山小屋があります。
 

大天井ヒュッテ

槍ヶ岳北鎌尾根の前泊地、そして表銀座縦走コースの中継地です。
住所:長野県大町市大字平
電話:090-1401-7884
収容人員:150名

殺生ヒュッテ

槍ヶ岳直下(8合目)にある山荘、槍ヶ岳山頂まで40分の位置。
住所:長野県安曇郡穂高有明7226
電話:0263-77-1488
営業期間:6月中旬ー10月中旬
収容人員:100名

ヒュッテ大槍

東鎌尾根ルート上、標高2884mにある山小屋、槍ヶ岳から900mの位置。
住所:長野県松本市上高地国有林槍ヶ岳東鎌尾根雷鳥平
電話:090-1402-1660
営業期間:6月下旬ー10月初旬
収容人員:96名

槍沢ロッジ

上高地槍沢コースの途中にあり、槍ヶ岳登山基地として大正6年創業で樹林帯の中にある山小屋です。
住所:長野県松本市埋橋1-7-2
電話:0263-95-2626
営業期間:4月下旬ー11月上旬
収容人員:150名

北鎌尾根ルート槍ヶ岳山荘


槍ヶ岳山荘へのアクセスは上高地から約10時間もかかります。それでも大人気の山小屋です。槍ヶ岳の南側山頂直下にあり、創業は大正15年(1926年)という歴史を持つ老舗の山小屋で、その後増築を重ね、現在では収容人員650名という大型の宿泊施設となっています。標高3080mと高所にあることから、その大展望は素晴らしく、この山小屋だけを目標に上ってくる登山者も多いです。ハイシーズンの7月から9月にかけては宿泊客の混雑もピークとなり、客室は早く受付をした人から順に良い場所が割り当てられます。混雑は半端ではないため覚悟が必要です。しかし、食事はとてもおいしく、トイレも清潔です。

名称:槍ヶ岳山荘
住所:岐阜県高山市奥飛騨温泉郷神坂槍ヶ岳
電話:090-2641-1911
営業期間:4/下旬ー11/上旬
宿泊料金:朝夕2食付9,800円
テント幕営所:1000円/泊
夏期診療所:東京慈恵会医科大学槍ヶ岳診療所(7/20-8/20)

北鎌尾根登山口へのアクセス

北鎌尾根ルートの登山口へのアクセスは上高地バスターミナルです。
上高地へのアクセスは、釜トンネルからその先はマイカー規制がされ入れません。関東地方からのアクセスは沢渡地区内の5個所の駐車場からそれぞれバス停留所があり、シャトルバスにて上高地バスターミナルに行きます。シャトルバス往復2,000円。駐車場1日600円。
関西方面からのアクセスは、平湯バスセンターから上高地まで30分刻みでシャトルバス、上高地バスターミナル行きがあります。平湯温泉にはあかんだな第一、第二、第三駐車場があり、ここから平湯バスセンター経由で上高地に入ります。運賃は往復2,000円、駐車場1日600円。
その他多数のアクセスルートがあります。
 

北鎌尾根の絶景

絶景①モルゲンロート

北鎌尾根ルートのモルゲンロート。大自然のパノラマアートです。苦労してここまで登ってきた人にだけ与えられるプレゼントです。

絶景②小槍

童謡で「アルプス1万尺」がありますが、アルプスは北アルプスのこと、1万尺は標高のこと(3030m)で、小槍とは槍ヶ岳のことです。槍ヶ岳の頂上では狭くて実際には踊れません。

1番 アルプス1万尺 小槍のうえで アルペン踊りをさア踊りましょ
ラン ララララララ ラララララララ ララララララララララララ
2番 昨日見た夢 でっかいちいさい夢だよのみが リュックしょって 富士山
29番まであります。

絶景③雷鳥

標高2800mで生息する雷鳥、すごい生命力です。かなり人馴れしていて、近くまで寄っていってもなかなか逃げません。写真に夢中になっていて、断崖から滑落しかねません、要注意です。

北鎌尾根ルートのまとめ

北アルプスで圧倒的な存在感を示す槍ヶ岳、初心者でも登れる槍沢ルートや、表銀座ルート、そして中級者レベル以上の西鎌尾根ルートや飛騨沢ルート、上級者には当然難易度の高い北鎌尾根ルートのバリエーションルートです。
これまで多くの死亡にいたる遭難者を出している極めて危険な尾根ですが、その山の魅力は命がけでも余りあると思うのでしょう。この登山道ルートには標識もルートを示す矢印も何もありません。従ってルートファインディング技術はどうしても必要です。単独行も無理です。道に迷ったりガスで巻かれた時、自分の知識や感覚、地図やコンパスなどの情報を下に正しいルートを見つけ出す技術のことです。