オオクワガタ飼育:はじめに
オオクワガタは誰でも飼える
あなたは夏の時期にクワガタやカブトムシを獲りに山へ行ったことはありますか?男の子にとっては夏休みの代表的な遊びです。クワガタ・カブトムシはペットでも人気が高く、中でもオオクワガタは驚くような高額で取引され、大ブームを巻き起こしました。とはいえ、すべてのオオクワガタが数万円もするわけではありません。飼育は数千円からも始められるのです。
虫取りからでもOK
この記事ではオオクワガタの飼育について解説していますが、どのクワガタでもカブトムシでも基本的な飼い方は変わりません。山で捕まえた別のクワガタも同じような飼い方ができます。子供が虫取りで持ってきた甲虫(成虫でも幼虫でも)を急に飼育するような場合にも、参考にしてください。
オオクワガタ飼育:基礎知識
オオクワガタの概要を説明します。
オオクワガタとは?
日本の山林に暮らすオオクワガタ。国内のクワガタの中では最大で、オスの大きな個体なら7cmにもなり、かなりの迫力です。全身が黒または黒褐色で、胸部の部分が大きく、やや短めの先が二又に分かれた大アゴ(角)を持ちます。メスは地味で、体長は3~5cm。上翅に筋模様が目立ち、他のクワガタのメスよりツヤがあります。
捕まえるのは大変
オオクワガタは全国的に生息していますが、見つけるのは大変。数も減っているので、見つけられればラッキーです。このレア度がオオクワガタの魅力のひとつでしょう。捕獲したものを飼育することは可能ですが、種そのものは絶滅危惧種で、捕獲が禁じられているエリアもあるので注意しましょう。
オオクワガタ飼育:飼育は難しい?
オオクワガタはなんとなく敷居が高そうですが、素人でも飼えるのでしょうか?
温厚で寿命は3年くらい
大きく、凶暴に見えるオオクワガタですが、性格は温和です。わざと興奮させない限り、角に挟まれて怪我をするなんてことはありません。よほど飼い方や環境が悪くなければ、成虫で3年くらいも生きてくれます。餌なども高価ではなく、基本的には丈夫ですから、まったくの初心者にもおすすめできるペットといえるでしょう。
かつて高騰、今は安値
時に9cmにもなる大物が現れるオオクワガタは、一時期値段が上がり、1.000万なんて値がついてニュースにもなりました。現在も生息地域によってブランド化されていたり、珍しい個体に高値がつくこともあります。そのイメージで飼育を躊躇する人もいます。でも、それらは熱心な愛好家の話で、ブリード技術も進んで安価でも手に入れられるのです。初心者でも飼育に問題はありません。
オオクワガタ飼育:一生と期間
飼い方の前にオオクワガタの一生を知りましょう。形態の変化やそれらの期間を知ると、飼うのも楽になります。
完全変態で形が変わる
オオクワガタは卵→幼虫→さなぎ→成虫となる完全変態の昆虫です。自然下では2年ほど幼虫で過ごし、さなぎを経て春から秋の時期に羽化。春に成虫が外に出て2年から3年生きて、その間に繁殖・産卵するというサイクルになります。こうした変化を見ることも飼育の面白さですね。
温度などで期間を操作できる
上に書いたサイクルは野生の話です。飼育の場合、環境や温度によって、人為的に幼虫の成長を早めて羽化させたり、成虫の時期を伸ばすことも可能です。飼い方がよければ、成虫で5~7年も生きてくれることがあります。もっとも初心者は無理をせず、オオクワガタが元気な飼育環境作りだけを心掛ければいいと思います。
オオクワガタ飼育:捕獲方法
夏の時期キャンプなどに行ったら、是非見つけてみたいオオクワガタ。でも、捕獲はなかなか困難のようで……。
オオクワガタが好む場所
野生個体が減っているオオクワガタは、あまり移動しないことでも知られ、生息場所も局地的です。つまり、いるところにはいるが、いないところにはまったくいない。運次第なのです。オオクワガタの捕獲は、好みそうな環境を狙うしかありません。オオクワガタが好むのはクヌギ、ナラの木で、山中よりは平地にいることが多いと覚えておきましょう。
活動時期と生態を利用する捕獲
オオクワガタは臆病なので、他のクワガタが活動する真夏よりも早い時期に活動し始めます。暖かくなってきた5月6月に、樹木に蜜をつけておくと誘いやすいでしょう。真夏はじっとしていることが多いので、光に寄ってくる生態を利用します。夜、白い布に光を当てておびき出したり、街灯や自動販売機の周囲を探してみると、成虫が見つけられることがあります。
幼虫のいそうな場所は?
オオクワガタは産卵も腐りかけたクヌギにします。キノコ菌が幼虫の餌となるため、成虫も産卵のために集まりやすいのです。オオクワガタの繁殖場というわけですね。この採集は冬でも可能で、朽木を割ると、幼虫を見つけられる可能性があります。ただし、腐っていない木を切ったり、他家が集めている木材に手を出すことはいけません。
オオクワガタ飼育:値段はどう決まっている?
一時は「1mm1万円」が冗談ではないほど高騰したオオクワガタ。それには理由があります。
オオクワガタ高額の理由
オオクワガタを飼育するのに、気になるのは値段でしょう。高額のイメージは根強く残っています。オオクワガタは元々がレアで、近年まで繁殖もさせにくい昆虫でした。そこで昆虫愛好家の間で高値で取引されるようになり、さらに大きな個体、角の幅が理想的な個体などとマニアックな嗜好が加わって、値段が青天井になってしまったのです。
オオクワガタの血統
オオクワガタの値段を決めているものに、血統があります。生息地が局地的なオオクワガタは、産地によって差異が大きく、どこどこのクワガタが大きくなるというように、血統で値段が跳ね上がることがあるのです。久留米血統とか、能勢血統とかいくつかあり、この産地のオオクワガタは大きく美しいのだそうです。この辺はマニアになってから考えることでしょうね。
オオクワガタ飼育:購入と値段
「オオクワガタは高価」というイメージがあります。でも、それは過去のものです。
成虫の値段は数千円
オオクワガタは捕獲しにくいですから、ペットショップで飼うのが一般的です。現代はオオクワガタバブルも弾けて、値段は手頃です。大物や血統のいいものは高額ですが、普通のサイズなら一頭2.000円くらいでしょう。ちなみにクワガタやカブトムシは一頭、二頭と数えます (匹でも問題ないですが) 。オスメスのセットで3.000~4.000円となります。
幼虫も売っています
オオクワガタは幼虫でも販売されています。幼虫は成虫より安く、一頭500円ほどですね。その分、育てて羽化させる手間がかかることになります。飼育も幼虫は面倒なことが多く、初心者は成虫から始めたほうがいいですね。幼虫にも血統があり、ブランドは少しお高めになります。
オオクワガタ飼育:飼育セット
初心者にありがたいのは飼育セットです。ケースや付属品が揃っていて、すぐにスタートできます。
最初は飼育セットで始めよう
昆虫飼育は子供でも簡単で、最低限の飼育環境を整えるのに必要なものが揃った飼育セットが売られています。オオクワガタ専用のセットならケースと土や木、餌などが入って5.000円以下でしょう。オオクワガタの生体がセットになった商品もあります。生体の値段が上乗せされ、6.000~8.000円くらいです。
幼虫のセットもあります
オオクワガタの幼虫飼育のためのセットもあります。幼虫から育てて、羽化させたいという人向けのセットですね。オオクワガタが成長する様子を観察でき、子供の知育にもなるでしょう。幼虫は一頭ずつ錦糸入りのカップやビンに入っており、その中で大きくなります。羽化した後は、成虫用の環境を作ることになり、成虫用セットの準備も要ります。
オオクワガタ成虫飼育:必要なもの
ここからはオオクワガタの住処作りです。いい飼い方はいい環境を作ることが重要ですよ。
ケースで個別飼育が理想
まず用意するのは飼育ケースです。プラスチック製の安価なものは扱いやすく、オオクワガタにピッタリです。コバエ侵入防止ケースが助かります。ケースの大きさは飼うクワガタの数で決まるのですが、複数飼育はケンカをすることもあり、小さいケースで一頭ずつ入れて飼うのが理想です。せいぜいオスとメス二頭を、中型のケースで飼うくらいにしてください。
飼育ケースに入れるものは?
ケースが決まったら、底に5cmくらい土を敷きます。これは園芸用の土でもいいのですが、農薬が含まれているとオオクワガタの害になるため、昆虫飼育用のマットが安心でしょう。他に、餌皿、足場となる木、枯葉、小枝などが必要です。オオクワガタがひっくり返ってしまったとき、つかまって起き上がれるものがあるといいのです。
細かな必需品
オオクワガタは乾燥を嫌います。飼育には霧吹きが欠かせません。水がミスト状にでればなんでも構いません。100円ショップで買えるものでじゅうぶんです。産卵させたり、幼虫を育てる場合には、産卵用の菌つきの朽木、幼虫をすくうスプーンなども用意することになります。
オオクワガタ成虫飼育: 温度
飼育の準備がセットできたら、いよいよオオクワガタを迎えるのですが、その前に温度管理についても学びましょう。
温度は低めにしよう
夏に見かけるオオクワガタなどの甲虫は、温度が高いほうが好きに思えます。これは間違いで、昆虫は高温を避け、日陰で過ごすことがほとんど。温度が30℃を超えると、むしろ弱ってしまうのです。逆に低い温度は問題ありません。北海道にもいるくらいなので、暑すぎるのが悪い環境になるのですね。
ヒーターがあれば冬眠しない
オオクワガタが好む温度は22℃くらいです。15℃以下になると冬眠します。真冬でもオオクワガタが活発に動くようにしたいなら、パネルヒーターなどを使って温度調節してください。夏も温度が上がり過ぎないよう、クーラーを使う、日陰で風通しの良い場所にケースを置くなど、考えてあげましょう。
オオクワガタ成虫飼育:餌
オオクワガタの元気の元は餌。毎日のことですから、上手な飼い方の基本ですよ。
便利で経済的な昆虫ゼリー
オオクワガタの餌は昆虫ゼリーを使います。飼育用に作られた人工飼料で、栄養も豊富な優れものです。50個くらいセットになったものが売られており、それで値段は500円以下。ゼリーひとつで、一頭が一週間くらい食べる感覚ですから経済的ですね。時期によってオオクワガタの食欲は変わるので、様子を見て与えてください。
野菜・果物はほどほどに
昆虫飼育といえば、キュウリやスイカなどを餌にすることがありますね。オオクワガタも果物が大好きです。しかし、それらを主食にするのはおすすめできません。果物や野菜は水分が多すぎて、オオクワガタが下痢を起こすことがあるからです。また、腐敗して、環境悪化の原因にもなります。
繁殖期のメスの餌
オオクワガタのメスは、産卵前の時期に肉食になることがあります。体力をつけるために、時にはオスや幼虫を襲うこともあります。あまり見たくない光景ですね。無事な繁殖のためにはやむを得ないのでしょう。産卵前後のメスにミルワーム、魚肉ソーセージなど動物性の餌を与えておけば、共食いは防げるでしょう。
オオクワガタ飼育:幼虫の飼い方
成虫飼育をしていれば、幼虫から羽化させてみたいと思うこともあるでしょう。
菌糸ビンで飼育
オオクワガタの幼虫も販売されています。もちろん、クヌギなどにいる幼虫を捕まえてもいいです。幼虫を飼育する際、よく使われるのが「菌糸ビン」。餌となるキノコの菌糸が入った容器で、幼虫を入れるだけで育ってくれるというものです。3ヶ月を目安に幼虫をスプーンなどですくって新しいビンに移します。
幼虫は温度管理が大事
幼虫を飼う場合も、温度は20℃くらい。冬20℃、夏でも25℃前後の環境が理想です。幼虫も温度が低いと冬眠しますが、その期間は成長も止まるため、羽化が遅れてしまいます。幼虫は成虫より温度に敏感で、夏にクーラーで温度を下げ過ぎても混乱して、羽化できないこともあります。外気温に合わせつつ、適した温度にしてやるのです。
オオクワガタ飼育:繁殖
繁殖も飼育の楽しみです。羽化まで長い道のりですが、是非挑戦してみてください。
繁殖のための環境
産卵させるには産卵木が必要です。産卵セットというのもありますから、それを使うと楽ですね。ケースに5cmの厚さにマットを敷き、水に漬けて干した産卵木を複数横向きに置きます。さらに木の半分が隠れるくらいまで、幼虫の餌になる菌糸付きの専用マットを加え、昆虫ゼリーを設置して、繁殖の準備は完成です。
交配させる
繁殖は20℃くらいの時期です。この時期に羽化して半年以上経ったオオクワガタのオスとメスを一緒のケースに入れておくと交配します。それより若い個体は繁殖に適しません。1~2週間観察して交配が済んだと思われたら、オスは取り出したほうがいいでしょう。
産卵を確認する
交配していれば、メスは木に穴を開けて産卵します。2週間くらいでその様子が見られなければ、失敗です。最初からやり直すことになります。産卵しているようならメスも取り出し、孵化を待ちます。
オオクワガタ飼育:注意
オオクワガタ飼育では気をつけたいことも
冬眠させたほうがいい?
年中、動いているオオクワガタを見ていたいのは飼い主の人情でしょう。でも、あえて冬の時期は冬眠させるというのも大事です。それが自然の活動ですし、冬眠させたほうが寿命も長くなる傾向があります。飼い方は飼い主の自由ですが、オオクワガタの暮らしに合わせてあげることも必要かもしれません。
保護したいオオクワガタ
オオクワガタを守る目的で、飼育しているものを屋外に放たないことが奨励されています。これは野生個体がブリードに駆逐されたり、交雑するのを防ぐためのもので、法律や条約にはなっていませんが、飼育する者のタブーとなっているものです。飼育は責任を持って行ってほしいですね。
オオクワガタ飼育:まとめ
感動的な羽化を見てほしい
オオクワガタの成虫・幼虫の飼い方、繁殖などを解説してきました。飼い方や楽しみ方はさまざまで、別なやり方も当然あります。ご自身でも調べてみるといいでしょう。成虫もいいですが、おすすめしたいのは幼虫飼育です。育てて、立派に羽化してくれると感動もひとしおです。