「はやとうり」とは?
はやとうりってどんな野菜?
はやとうりは四国や九州、沖縄、などの温暖な地方でよく食べられている野菜です。キュウリやカボチャ、スイカなどのように全国のスーパーで見られるものではないので、関西以東では、その名前を聞いたことがないという人も多いのではないでしょうか。九州などのおもな産地では、漬け物や酢の物、煮物、炒め物など幅広い料理に使われ、日常的に食卓に上っています。
はやとうりの名前の由来
はやとうりは漢字では「隼人瓜」と書きます。1917年(大正6年)に原産地である熱帯アメリカから鹿児島に持ち込まれ、徐々にその栽培が広まっていったため、「薩摩隼人の瓜」という意味で「はやとうり」と呼ばれるようになりました。
一株で100個以上も収穫できる!?
はやとうりの特徴
はやとうりは西洋なしに似た形をしており、白い品種と薄緑の品種があります。白品種のほうがやや小ぶりで、薄緑品種と比べると青臭さが少ないことから、調理にも使いやすく、食材としてはより好まれます。はやとうりはウリ科のつる性植物で、その最大の特徴は、一株で、なんと50個から100個、多い時は200個近くもの実をつけること! そのため別名「千成瓜(せんなりうり)」とも呼ばれています。
はやとうりには、もう1つの面白い特徴があります。それは種が1つしかないということ。ウリ科の野菜には、キュウリやスイカ、カボチャ、メロンなどがありますが、いずれも小さな種がたくさんありますよね。でもはやとうりはアボカドやプラムのように、1つの果実につき、種が1つしかありません。栽培時に種まきをしないところも、ウリ科としては珍しい野菜といえます。
栽培に適した地域
はやとうりは関東でも栽培できますが、日本ではやはり、南方の温暖な気候のもとで育てるのが適しています。はやとうりは元々は多年草ですが、生育に適した温度は20度~25度となるため、冬の冷え込みが厳しい地域で栽培した場合、たいていは霜がついて枯れてしまいます。そのため、日本では一年草として栽培されることが多くなっています。
はやとうりの育て方
はやとうりは種や苗では流通していないため、種まきをするのではなく、種ウリとなる果実を入手し、植えつけるのが一般的です。その代わり、一度栽培すると、収穫した果実を種ウリとして使用できるため、毎年植えることができます(その場合は、収穫したはやとうりから芽が出ないよう、低温で貯蔵しておきます)。はやとうりは生命力旺盛な野菜なので、株間は十分に取って植えましょう。
地植えの方法
植えつけは、果実の頭(細くなっているほう)を下にして、種まきをするときと同じように、浅めに地植えします。発芽するのはお尻のほうからなので、お尻のほうは上向きにして、土から少し出しておくのがポイントです。植えつけ場所の土は深めに耕し、あらかじめ石灰をまいておくとよいでしょう。
プランターの植え付け方法
地植えできる場所がない場合は、土がたっぷり入る大きめのプランターに植えましょう。あまり浅いプランターだと、根っこが伸びるスペースがないので、大豊作は期待できません。いずれの植え方でも、果実自体に水分を多く含んでいるので、芽が5センチほどになるまで、水やりは控えたほうがいいでしょう。
植え付けの時期
植えつける時期は、4月下旬から5月ごろが適当です。また、果実は植えつけをせずに放置したままでも、じゃがいものように中の種が発芽してくるので、発芽してから植えることもできます。
発芽したあと、芽が伸びてきて葉っぱが5~6枚ほど出てきたら、親づるを摘芯して子づるを伸ばし、支柱を立てます。そして、わき芽から伸びてきた子づるが1メートルほどになったら、再び太めのつるを摘芯し、孫づるが出てくるようにします。この孫づるから、はやとうりのつぼみがたくさん出てきます。
つるはどこまで伸びる?
はやとうりの特徴の1つに、その生育力の旺盛さがあります。発芽したはやとうりは、あさがおのように上へ上へと、どんどんつるを伸ばしていきます。棚に渡らせると4メートルほども伸び、放置していると10メートルに達する場合もあります。どんどん実をつけるはやとうりでつる棚が重くなるので、丈夫な支柱などで適宜、網を支えてあげることが大切です。畑で育てる場合は、2メートルほどの支柱がよいでしょう。2階まで網を張り、ゴーヤのようにグリーンカーテンにすることもできます。網は麻などの丈夫なものを選びましょう。
育て方
栽培といっても、夏の時期は葉やつるがひたすら伸びるだけなので、地植えしたあとは特別なお世話は必要ありません。基本的には、朝晩しっかりと水やりをして、月に一度、株から離れたところに肥料をやり、重みを増してくるつる棚を支えてあげさえすれば大丈夫です。たまにアブラムシなどの害虫がつくこともありますが、生育に影響することはあまりありません。
秋になって気温が下がり始めると、はやとうりは小さくて可愛らしいクリーム色の花を咲かせます。花が咲く時期は、大体9月上旬から10月下旬ごろ。場所によっては8月下旬には咲きはじめます。
食べ方は?栄養はあるの?
収穫する時期は?
花が咲き、ハチなどにより受粉が終わった秋口には、はやとうりの実が生ってきます。大体20日くらいかけて実は大きくなり、300gほどの大きさまで育ったら収穫できます。放置しすぎると硬くなってしまうので、収穫のタイミングを逃さないようにしましょう。収穫できる時期は地域によっても違いますが、10月から12月くらいまで。つまり秋から冬の初めごろまで楽しめます。
おすすめの食べ方
はやとうりは味は淡泊ですが、シャキシャキとした歯ごたえが特徴です。千切りにしてハムやコーンなどとあえ、マヨネーズやゴマ、ドレッシングなどをかけて、サラダとしていただくのもおすすめ。残暑が厳しく食欲が落ちる時期の副菜としてもぴったりですね。
はやとうりの消費量が多い九州や四国では、はやとうりの定番レシピといえば漬け物。浅漬けにしてもコリコリとおいしく食べられますし、味噌漬けにするのも定番です。関西地方ではおなじみの奈良漬けにするのもおすすめ。味にクセがないぶん、お好みの味づけを楽しめるのがいいですね。漬け物には薄緑の品種が使われることが多いです。
味のしみ込みがよいので、お肉と合わせて炒め物にするのも一興です。写真は牛肉と合わせて炒めたものですが、お酒にも合いそうですね。その他、豚肉や鶏肉と一緒に煮込んだり、キュウリと同じような使い方で酢の物にしたり、ぬか漬けを作ったり、あらゆる料理に幅広く使うことができるのが、はやとうりのいいところです。
栄養価は高い?低い?
はやとうりはその9割以上が水分でできています。その他の成分は、多い順に葉酸、ビタミンC、ビタミンK、カリウム、食物繊維となっています。具体的な成分の割合はそれぞれ違うとはいえ、水分が多いという点では、やはりウリ科の野菜であるキュウリやスイカと同様ですね。しかし栄養価がそれほど高くはない分、カロリーも低いので、ダイエット食として取り入れることもできます。
まとめ
「はやとうり」を知らなかった人も、はやとうりが育てやすく使いやすい野菜ということがわかってきたのではないでしょうか? 種まきではなく果実を植えるというユニークな栽培方法や、うまくいけば1株で100個以上という大豊作が期待できるところも、興味をそそられますよね。
ぜひ栽培にチャレンジを
一度栽培して収穫すれば、毎年でも植えることができるはやとうり。その名になじみがなかった人も、誰かからいただいたり、旅先のスーパーで見かけたりなどして、運よく種ウリが手に入ったら、ぜひ栽培にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。