花・実を楽しむヤブコウジ
ヤブコウジとは、歴史は古く江戸時代から庶民の定番の庭木として、広く暮らしに根付いていた植物です。育て方や増やし方が容易であることや、品種も多いということから今でも人気は衰えません。ヤブコウジは、花も実も楽しめる植物で、季節を感じさせてくれる野趣に富んだ植物なんですよ。今回は、そんなヤブコウジの花言葉や実の紹介はもちろん、詳しい育て方をまとめてご紹介していきます。
ヤブコウジの詳細情報
ヤブコウジというと、野暮ったいイメージを持っている人もいるかもしれません。しかし今では、苔玉ブームで一気にヤブコウジの人気が高まりました。ヤブコウジの育て方の前に、ヤブコウジの詳細情報についてご紹介していきたいと思います。
科名属名
ヤブコウジの科名属名は、サクラソウ科または、ヤブコウジ科のヤブコウジ属でした。
学名
ヤブコウジは、「Ardisia・japonica」が学名となっています。
別名
ヤブコウジは、漢字では「藪柑子」と書かれます。また、そのほかにも様々な呼び方がありまるようです。「紫金牛(シキンギュウ)」・「十両(ジュウリョウ)」・「山橘(ヤマタチバナ)」などと地域によって呼び方に違いがありますよ。
分類
ヤブコウジは、常緑の植物です。低木で、樹高は10cmから30cmにとどまります。
原産国
ヤブコウジの原産国は、日本です。本州や四国、東北地方など広く自生していた植物なんです。朝鮮半島や中国・台湾も原産国になっています。
ヤブコウジの特徴
ヤブコウジは、常緑の低木で季節感を表現してくれる日本庭園にはもってこいの植物です。ヤブコウジは、地面の中で地下茎を増やし、春になると新しい芽を途中から出します。生育旺盛で、年月と共にどんどん広がっりを見せてくれます。ヤブコウジの葉っぱは、ギザギザしているのが特徴的で、寒冷地ではほんのりと紅葉します。このギザギザした葉っぱは、厄をよけ不穏・不浄なものを家に入れないという意味で、縁起を担いでいたようです。このため、日本家屋の玄関周りにヤブコウジが良く植えられるようになったそうですよ。
ヤブコウジの歴史
ヤブコウジという植物は、実は万葉集にも書かれていました。ヤブコウジの別名を「山橘(ヤマタチバナ)」と呼ばれているとお伝えしました。この万葉集の中では、ヤマタチバナとしてヤブコウジを詠んだ1節があるんです。ヤブコウジが庶民に広がっていったのは、斑入りのヤブコウジが火付け役でした。このころにヤブコウジが日本中に広まり、たくさんのヤブコウジが交配されるようになったんですね。耐寒性にも優れ、小型で扱いやすい植物として、育てやすかったのも人気の一つでした。
ヤブコウジの花・実
ヤブコウジは、品種によって葉の色合いや実の色に特徴があり、たくさんの愛好家がいます。そんな中でも、花・実について詳しくまとめていきたいと思います。品種によって様々な特徴がありますが、ヤブコウジ全体位の特徴から見ていきましょう。
開花時期
ヤブコウジの花が咲く季節は、7月から8月です。この後に結実していきます。
花の色
品種によって花の色は変わります。一般的なヤブコウジの花の色は白色をしていますが、赤やピンク・クリーム色の花を咲かせる品種もありますよ。大きな常緑の葉っぱに隠れて、開花の季節には控えめな花を咲かせます。
花の大きさ
花は金平糖のように小さく、下を向いたように咲いているのが特徴です。そのため、葉っぱを上にあげないとよく見えないといったところが、趣を感じさせてくれますね。
結実時期
ヤブコウジの花の季節が終ると、結実し始めます。ヤブコウジの実が赤く色づき始めるのが10月ごろです。結実した実は、翌年の2月ごろまで鑑賞することができます。季節をまたいで楽しむことができるんですね。風や雪が降っても、実が落ちずに残っていることが多く、雪のかかったヤブコウジは美しいですね。
ヤブコウジの効能
ヤブコウジは、その実も花も葉も茎も、すべてが薬になる植物です。乾燥させたヤブコウジは、漢方薬では「紫金牛」と呼ばれていたそうです。効能は、解毒効果がメインで気管支炎などの病気にも処方されていたといいいます。今ではむやみに自宅で煎じて飲むことはなくなりましたが、江戸時代からは、「漢方薬になる植物」といった意味でも、栽培されていたのではないでしょうか?
ヤブコウジの花言葉
ヤブコウジの実は真っ赤で、万両や千両とともに「十両」とも呼ばれていた、縁起物を担いだ植物なんですね。そんなヤブコウジの花言葉についても、調べてみました。
ヤブコウジの花言葉「明日への幸福」
ヤブコウジというと、玄関の軒下などに植え付けられているのを見かけます。玄関へ不浄なものを入れないという意味や、十両とも呼ばれていたことからこの花言葉が付けられたようです。特にお正月などは、このヤブコウジの葉と実をつけたまま飾っているのが今でも定番となっていますね。こういった縁起の良いとされるヤブコウジは、時折一大ブームを起こし高額な取引も行われる植物なんです。金運・浄化・幸福・縁起物のヤブコウジには、ぴったりの花言葉ですね。
ヤブコウジ育て方①植え付け方法
それでは、ヤブコウジの育て方についてみていきましょう。耐寒性もある植物なので、日本全土で栽培可能です。
土作り
ヤブコウジは、水はけがよければあまり土質は選ばすに育てることができます。梅雨の時期に大量の雨に当たると、根腐れして枯れこんでしまうことがあります。そのため、粘土質の場合は、土を掘り返して土壌改良しましょう。赤玉土や腐葉土をすき込み、鹿沼土などで水はけをよくするようにしましょう。
植え付けの季節
ヤブコウジを植え付ける季節は、2月から4月か秋の9月から11月が適しています。特に、花芽がつく時期に植え付けてしまうと、株が弱ってしまうので春に植え付ける場合は雪が溶けだした2月ごろに行うようにしましょう。夏と冬の季節が近づく前に植え付けを終わらせて、しっかり根付かせておくようにしましょう。
植え付け方法
ヤブコウジの植え付けは、苗の土をよく落として根鉢を崩しておきます。地下茎で増える植物のため、根が回った状態だと植え付けてから大株に成長するまで時間がかかってしまいます。細い根や弱っている部分をカットして、一回り大きな穴を掘って植え付けましょう。よく水を遣って支柱を立て支えておきます。
ヤブコウジ育て方②季節の手入れ
ヤブコウジは、あまり手をかけなくても育てられる植物です。高温多湿には弱いといった特徴もあるので、日本の梅雨の季節は枯れこんでしまうこともあります。ここでは、夏と秋の季節に合ったヤブコウジのお手れについてみていきたいと思います。
夏の季節のお手入れ
ヤブコウジは、もともと森林や林の中に自生していた植物です。そのため、夏の西日や梅雨の雨には弱いという特徴があるんです。そのため、梅雨の季節には軒下などの雨が直接当たらない場所に鉢植えを移動させましょう。庭植えの場合は、水はけのよい軽い石などで土壌改良します。西日の当たらない、半日陰や日陰で栽培しましょう。水やりも、直接葉にかけてしまうのではなく、株もとに向かって水やりをするとよいでしょう。
紅葉の季節
ヤブコウジの開花後、結実した赤い実を育てるためには肥料を与えます。肥料の時期は、5月から10月の間、月に一度緩効性化成肥料を株もとに与えるとよいでしょう。夏バテしている場合は、即効性のある液体肥料を薄めて水やりの代わりに与えるようにしてくださいね。
ヤブコウジ育て方③剪定
低木でローメンテナンスのヤブコウジですが、適時剪定を行うと生育が旺盛になります。剪定をすると、生理現象で株が若返り、新たな新芽を地中の中で育てて地下茎をグングン伸ばすことができるんですよ。また、風害なので弱ってしまった葉っぱは、見た目も悪いだけでなくヤブコウジの健康にもよくありません。ここからはヤブコウジの剪定についてまとめていきます。
剪定の時期
ヤブコウジの剪定は、3月から4月に行います。夏の暑さに弱く、梅雨に入ってしまうと切り口から細菌が侵入してしまうこともあります。
剪定方法
ヤブコウジは、低木なので高さを剪定する必要はありません。弱剪定で、自然なヤブコウジの樹形を整えたり、弱っている枝を剪定することで株を活性化します。間延びしてしまった枝や、黄色くなってている枝を剪定します。深く剪定したとしても、株もとから5cm以内にするとよいでしょう。深く剪定しすぎてしまうと、枯れてしまう原因にもなります。
ヤブコウジ育て方④増やし方
ヤブコウジは、とっても縁起を担いでいて野趣に富んだ魅力的な植物です。そんなヤブコウジは、種まきでの増やし方と、挿し木での増やし方があります。地下茎を頬り起こして株分けする増やし方は、あまり現実的ではありませんね。挿し木なら、剪定の時に切り取った枝を使うことが出来そうです。
種まきでの増やし方
ヤブコウジの中で、種まきでの増やし方ができるのは原種や野生種です。品種改良によって、今ではたくさんの品種がありますが、実生苗には向きません。種まきでの増やし方は、完熟したヤブコウジの実から種尾w取り出しましょう。種は指でかんたんにつぶせるものが理想です。取り出した種をよく洗って、種まき用培養土に植え付けます。湿らせた新聞紙を敷いて日陰で管理しましょう。
挿し木の増やし方
品種改良された品種のヤブコウジや、斑入り品種のヤブコウジは挿しでの増やし方が適しています。剪定の季節に、なるべく若く葉の青い枝を切り落として挿し木にしましょう。挿し木の枝は3cmづつにカットして、そのうちの真ん中の枝を挿し木にします。水につけて置き、水揚げしたら濡らして置いた赤玉土に挿し木しましょう。挿し木したら日陰で管理し、水切れしないようにします。発根できたら、挿し木の苗を地植えしていきましょう。
ヤブコウジの品種
ヤブコウジは、時にブームとなりとんでもない高値で取引されるほどの人気があります。江戸時代から品種改良を重ね、美しさに磨きがかかったたくさんの品種が生まれています。
辻が花
今ブームになっている苔玉。この苔玉にぴったりな小さいサイズのヤブコウジの品種です。新潟県でうまれ、さらに耐寒性がよくなりました。特徴は、葉の色合いです。まだらのように不規則に白斑が入っています。鑑賞性が高いのが人気です。
オオミヤブコウジ
みずみずしい緑葉が特徴的なヤブコウジですね。大ぶりな葉のヤブコウジで、耐寒性・耐暑性も優れています。花はクリームイエローで星形の小さな花がかわいらしいヤブコウジの品種です。
ヤブコウジで季節を楽しもう
ヤブコウジの育て方や、季節のお手入れ方法のまとめはいかがでしたか?その他にも、ヤブコウジの品種や花言葉なども詳しくまとめてみました。花も花言葉も美しいだけでなく、季節に寄り添うように赤い実が実っていく時間の流れまで、大切にしていけそうですね。ぜひ、お庭にお迎えしてみてはいかがでしょうか?
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