「ニベ」とは
ニベは「スズキ目スズキ亜目ニベ科」に分類される魚で、ニベの他にも「ホンニベ」と呼ばれる事があります。ニベ科はこの「ニベ」の他にも、シログチなども含まれ、日本に限らず世界のあちこちで見ることが出来る魚の仲間です。特に大陸周辺の沿岸部に生息しているとされ、多くのニベ科は海水魚ですが、中には完全な淡水魚もいるようで、ニベの他にイシモチ、グチとも呼ばれます。
「ニベ」の特徴と、名の由来
ニベは成魚になると50センチ程度の、中ほどの大きさで、口の先は短く、側線上に背ビレに向かって斜めに規則正しく走る褐色の斑紋が目を引きます。また、他にもニベに限らずニベ科の魚は頭骨の中に大きな耳意思を持っていると言う特徴があります。耳石とは、炭酸カルシウムで出来た白い小石の事で、魚が水中でも平衡感覚を失わず、水流に沿って泳げるのも耳石がある為と言われています。大体の魚に備わっている耳石ですが、ニベの耳石は特に大きいため「イシモチ(石持ち)」と呼ばれるようになったそうです。
ニベの名の由来
ニベは古くより食材として料理されていた魚で、古くは腫れものを「へ」といい、魚が持つ浮き袋の事も「へ」と呼びました。そして「ニ」は煮る、という意味があり、ニベの浮き袋を煮て「にかわ」を作ったことから「ニヘ」と呼ばれ、更になまって「ニベ」に変化した、という説が有力です。ニベの文献は古く、その頃より美味な魚として知られていたようです。
グチの名の由来
浮き袋から「にかわ」を作れるほかにも、ニベは威嚇するさい「グーグー」と声を出すため、釣り上げるとグウグウと鳴く姿が愚痴を言っているようだ、という事から「グチ」と呼ばれるようになったそうです。よく愚痴を言う事を「ぶうぶう言う」と言うので、中々納得いくネーミングですね。魚が鳴き声をあげるなんて聞いたことないと言う方もいそうですが「鳴く魚」は意外と多く、ニベの他にも、ギギやドンコ、カサゴやイシダイなどが「鳴く」ことで知られています。
「ニベ」と「イシモチ」の違い
ニベと検索すると必ず目にすることになるのがイシモチ。ニベはイシモチの別名であり、イシモチもまたニベの別名と言えると、こう書くと全く同じ魚のように思えますが、2種はハッキリと違いが存在し、違いを知っておけば更に釣りで狙うのが楽しくなることでしょう。
「イシモチ」の正体と、その違い
ここで言う「ニベとは違うイシモチ」とは、同じくニベ科の魚として知られる「シログチ」の事です。シログチはその名の通り、体表が白っぽいと言う違いがあり、イシモチは銀白色の体色をしており、ニベはこれに対し規則正しく斑紋があると言う違いがあります。斑紋のないニベはイシモチ、全体が黒い「つぶ」に覆われている魚はニベ、これだけを覚えておけば、イシモチとニベ、2つの違いに手間取る事はありません。
「ニベ」を釣りで狙う、釣り情報
なんだかややこしいイシモチとニベですが、どっちも味が良く、釣りで狙える魚であることに変わりはありません。ニベ科の魚は仲間によって生息圏や水深が異なりますが、どれも大陸周辺の沿岸部に生息するため、船釣りの他にも、堤防釣りを始めとする「おかっぱり」でも狙える魚です。
投げ釣りの定番、梅雨にはルアー釣りも
ニベは投げ釣りのターゲットとして知られていますが、梅雨の時期にはルアーでも狙える魚となります。ニベは潮通しのいい場所を群れて回遊している為、釣りの前に水面を観察し、潮の流れが速い場所を狙いましょう。ただ、ニベの回遊している場所はルアーで届く範囲ではないため、河川が増水する梅雨の時期以外では、ルアーで狙うのは厳しい魚です。ルアー釣り師の方は6月~7月が狙い目。旬のニベを味わう場合は、夏がおすすめとされています。
「ニベ」の釣り方、その流れ
投げ釣りで狙える!ニベ釣りの流れ
ニベの魅力は、豊富なレシピや味の良さの他にも、釣り対象としての手軽さもあります。ニベは産卵を控えた夏が釣りシーズンと言われ、ドウヅキ仕掛け、あるいはテンビン仕掛けの投げ釣りで狙うことが出来ます。仕掛けのシンプルさもですが、群れで回遊しているため一度かかれば大量釣果のチャンスが到来し、オオニベともなれば夢の「2メートル越え」を釣り上げるのも夢ではありません。
ニベ釣り推奨タックルと、気を付ける事
ニベの中でも特に大物である「オオニベ」を狙う、と言う場合は、やはり何といってもオオニベの重さやパワーにも耐えられる、頑丈且つしなやかなロッドを用意し、メインラインやリールもある程度余裕を持たせておきましょう。PEラインは噛み切られる場合があるため、使用するのはフロロカーボンラインがおすすめです。基本的な流れはオオニベもニベも変わらないため、潮通しがいいポイントに仕掛けを投げ込みましょう。
「オオニベ」を狙うなら砂浜で
更に、オオニベは堤防から投げ釣りを行うほかにも、砂浜で釣る事も出来ます。オオニベ釣りに最も適した場所は砂浜と言われ、産卵期が近づくと浅瀬に近づく習性があるため、それを狙って釣り上げることが出来ます。オオニベは「砂浜で釣れる魚」とは思えないような大物も少なくないため、手っ取り早く大物を狙いたいと言う方は、梅雨~夏に、砂浜で投げ釣りを行って見るとよいでしょう。
「ニベ」を釣ったら美味しく調理
釣りの後の楽しみ、ニベを調理
ニベを釣り上げたら早速調理してみましょう。ニベの味はまさに「白身魚」と言う様な、よく身がしまったクセのない味わいで、どんな料理にも合う淡白な味わいです。ニベは皮目に独特の風味があるため、お刺身やムニエルにする場合は皮も残し、皮ごと味わってみましょう。
ニベのさばき方、動画も参考に
①・ますはウロコ落としや包丁で、表面のウロコを落とす→②・ウロコを落としたら胸ビレの下と腹ビレの下に沿い、頭を落とす→③・頭を落としたらそのまま腹を開き内臓を取り出す、さらに流水で血を洗い落とす→④・背ビレの上下から中骨に沿って切り込みを入れる→⑤・次に向きを変え、尻ビレの上下にも切り込みを入れる→⑥・尾の付け根から包丁を入れ、そのまま中骨に沿って半身を切り取り、3枚に切り分ける。
「ニベ」おすすめレシピ①・刺身
夏のニベを釣り上げたらまず最初に試したいのがお刺身。ニベの刺身は癖がなく食べやすい刺身で、刺身特有のクセが苦手と言う方でも食べられるような上品な味わいです。刺身にする際はアニサキス対策として冷蔵庫で一日冷やすほかにも、調理の前に血抜きをしっかりしておきましょう。血抜きを怠ると生魚特有の臭みが出てしまい、せっかくの刺身を味わえなくなります。
ニベの刺身は焼き霜づくりもおすすめ
ニベの刺身はそのまま食べるのも美味ですが、皮に独特の風味があるため、ほんのすこし皮目を炙り「焼き霜づくり」にすることで更に美味しくなります。お酒との相性もとてもいいため、晩酌の友にも最適。主張し過ぎず、ワサビ醤油との相性も抜群。もちもちした食感が癖になる刺身です。
「ニベ」おすすめレシピ②・塩焼き
続いて紹介する食べ方が魚料理の定番である「塩焼き」です。調理法も非常にシンプルで、刺身の様に包丁の入れ方により味が大幅に変わるなんて心配もないため、時期や調理法を問わず、安定して美味しさが味わえます。ニベの塩焼きの特徴は他にも、出来立てアツアツのものより、少しおいて熱を冷ましたものの方が味が良いと言う特徴があります、猫舌の方にも嬉しい食べ方ですね。
こんな食べ方もおススメ、塩焼き以外の調理法
ニベは塩焼きにするとおいしいという事は、むろんムニエルや焼き魚にしても美味しいと言う証拠でもあります。塩焼きに飽きたらバター焼きにしてみたり、ゴマ油やオリーブオイルで炒めてみたりと、食べ方にも工夫してみましょう。ムニエルにする時はしっかり血抜きし、最初は油でカリッとなるまでソテーするのがポイント。バターで炒めるのではなく、仕上げに溶かし入れる程度にすることで更に美味しくなります。
「ニベ」おすすめレシピ③・煮付け
ニベは煮つけにしても美味しく、身がしまっていて煮崩れしにくく、身離れがいいため調理の前に骨をしっかり取り除く事で、食べ応えのある煮つけを堪能できます。身は甘味があり、しょうゆの風味にも負けず、しょうゆ味の中にニベ特有の味わいを楽しむことが出来ます。魚の食べ方と言ったら煮込み料理だ!と言う方におすすめ、一緒にネギなどの野菜を煮込めば、栄養バランスも良くなり、臭み消しにもなるのでおすすめです。
「ニベ」おすすめレシピ④・干物
大量のニベを釣り上げ、煮つけや塩焼きでは食べきれない!と言う場合は一夜干しにしてみましょう。他の魚料理にはない濃厚な味と、ほんの少し火で炙るだけで上質な酒の肴になることで有名な魚の干物ですが、ニベの干物の味も他の干物に負けてはいません。作り方も非常にシンプルで、下処理をしたニベを漬け汁に浸け込み、水分をよく取ったら干物網で一日しっかり乾かすだけ、これだけで激ウマ干物の出来上がりです。
ニベの干物づくりで気を付けるポイント
ニベに限らず、魚の干物を美味しい料理に仕上げるために重要なのは鮮度と塩分濃度、漬け汁の塩分を濃くし過ぎてもダメで、勿論生のニベを干すことになるため可能な限り新鮮なものではなくてはいけません。ニベは海水魚のため、海水と同じくらいの塩分濃度、ちょうど3.5%くらいの塩分濃度を心がけましょう。干物網が家にないと言う場合は、ラップをかけずザルに並べ、冷蔵庫でニベを乾燥させるとよいでしょう。
「ニベ」の雑学
「にべもない」の由来はニベ
よく不愛想な人や冷たい人の事を「にべもない」と言いますが、そのにべとは魚の「ニベ」の事です。ここでいう「にべ」とはニベの浮袋からとった「にかわ」の粘着力が強いことから来ていると言われています。にべのように強くくっつく事を「愛嬌」になぞらえ、愛嬌がない人の事を「にべのようにくっつかない」という意味を籠め「にべもない」と呼んだのが、始まりと言われています。
韓国でも大人気、ニベ料理
ニベ料理は日本国内に限らず、お隣韓国でも親しまれており、韓国流の食べ方やレシピで食べられています。韓国料理におけるニベは主に軽く干したものがレシピに用いられ「チョグ」或いは「チョギ」と呼ばれる、庶民的な食材として親しまれています。値段のランクにより扱いが変わり、高価なものは高級レシピに使われる事あるそうです。韓国流の食べ方をしたい場合は、ニベを軽く天日干しにし、ゴマ油でカリッとなるまで焼いてみましょう。
「ニベ」の魅力を再発見
「イシモチ」とも呼ばれるニベは、よく使われる言葉「にべもない」の語源だったり、世界中で知られる魚だったり、実はイシモチと異なる魚だったりと、探れば探るほど色んな魅力が見えてくる味わい深い魚です。群れを作り回遊する習性があるため、気になる方は堤防で投げ釣りをしてみるのはいかがでしょうか?