ジャガイモってどんな野菜?
ジャガイモは、アンデス地方を原産とするナス科に属する野菜です。古くは天保の大飢饉で人々を飢餓から救い、多収が期待できる野菜です。栽培期間が短めで、種芋を植え付けてから収穫するまでの期間が早いので、家庭菜園での人気も高いです。
ジャガイモは春植えのほか夏植えできる品種もあります。またポテトフライやポテトサラダ、コロッケなど大人から子供まで美味しくいただけるレシピも嬉しいところ。
ジャガイモには種芋の植え方や芽かきなどジャガイモ特有の栽培のコツがあります。成長過程に応じたお手入れを施してよりたくさんジャガイモ収穫しましょう。
ジャガイモの名前の由来
ジャガイモは、日本へは1600年頃、ジャカルタ港を出た船からもたらされたそうです。ジャカルタから来た芋がなまって、ジャガイモになったという説が濃厚です。
ジャガイモの花の特徴
ジャガイモの花は、種芋を植え付けてから1カ月半くらいの期間で開花します。春に植えたジャガイモの開花時期はだいたい5月末から6月はじめです。ジャガイモはナス科に属する植物で、ジャガイモの花はナスの花にとても良く似ています。
ジャガイモの花びらは5枚で先が少しとんがっています。ジャガイモの花の色は、品種によって異なり薄い紫色や白いものがあります。花の中心には鮮やかな黄色のおしべ、めしべがついています。
ジャガイモの実の特徴
ジャガイモの葉っぱは、鮮やかなグリーン色をしています。ジャガイモの葉っぱの形は楕円形で先が少しとんがっています。葉茎に何枚もの葉っぱがついています。
ジャガイモの基本データ
科名属名
ナス科ナス属
学名
Solanum tuberosum L.
和名
ジャガイモ
別名
馬鈴薯(ばれいしょ)
英名
potato
原産国
南米アンデス地方
ジャガイモ栽培の前に・連作障害について
ジャガイモには連作障害があります。連作障害というのは、同じ畑で同じ野菜を育て続けると起こる障害で、病害虫の発生が増加したり、肥料成分がアンバランスになり作物が育ちにくくなるといった現象があらわれます。
ジャガイモは連作障害の出やすいナス科の野菜
ジャガイモは、ナス科に属する野菜なのですが、このナス科というのは野菜のなかでも栽培の際に連作障害が出やすい部類に挙げられます。同じ土地で同じ野菜を育て続けると起こる連作障害。
同じ野菜というのは、ジャガイモならジャガイモだけを指すのではなく、同じナス科に属する野菜すべてを指します。たとえばジャガイモの場合は、同じナス科に属する、ナスやピーマン、ししとう、トマトなどの夏野菜が同じ仲間です。
連作障害1
連作障害のなかで最もやっかいなのが病害虫が発生しやすくなることです。同じ仲間の野菜を同じ畑で育て続けると、その畑にはその野菜を好む病害虫が集まりやすくなり、とどまりやすくなります。とくにジャガイモはそうか病など次々と感染してしまう病気があり、発生すると被害が拡大する傾向があります。
連作障害2
同じ仲間の野菜を同じ畑で育て続けていると、どうしても畑に同じタイプの肥料を施し続けることになります。同じ成分ばかりが畑の土中に蓄積され、畑の土中の成分バランスが偏ってしまいがちに。すると土はいわゆるバランスを崩した不健康な状態となり、畑で育てている野菜がうまく生育しないといった症状があらわれます。
連作障害の対策
ジャガイモの連作障害を防ぐためには、一度ジャガイモやその仲間であるナス科の野菜を育てた畑をある程度の期間寝かせる、ナス科の野菜を育てた畑ではある程度の期間ナス科以外の野菜を育てるという方法が一番です。
だいたい2年くらいの期間をあけるとよいとされています。ただ畑のスペースの関係などどうしても期間をあけられない場合は、こまめに観察して病害虫の発生を抑制する、与える肥料の種類や割合を少し変える、といった工夫をしましょう。
ジャガイモの栽培方法1「種芋の準備」
よい種芋の選び方
ジャガイモの植え付けには、栽培用のジャガイモの種芋を使います。スーパーマーケットで販売されている食用のジャガイモは、芽が出ないような細工がなされているので、畑に植え付けても育ちません。
ジャガイモの栽培用の種芋には、農林水産省が管轄する検査機関がきちんと検査をして、品質保証がなされているものを使いましょう。
春になるとホームセンターや農業資材店にはいろいろなジャガイモの種芋が出回ります。売られている種芋にはたいてい品質保証マークがついています。
また、ひとつひとつの種芋のサイズはやや小さめのものを選ぶのがベスト。切り分けずに植えることができるので、余計な心配がなく初心者にもおすすめです。
種芋の芽出し
ジャガイモの種芋を植え付ける2~3週間前の期間に、種芋の芽出しをおこないましょう。種芋の芽出しは必ずおこなわなければならないわけではありません。
ですが、種芋の芽出しをすることで、発芽率がアップし、植え付けたあとのジャガイモの生育がよくなるでしょう。毎日、朝から夕方までジャガイモの種芋を日のあたるところに並べます。
夜は寒さにあてないよう室内に取り込みましょう。だいたい2週間くらいの期間続けていると、ジャガイモの種芋から小さな芽が出てきます。
種芋のカット
ジャガイモの種芋を観察して、1個の種芋がだいたい50グラムくらいまでのものは、そのまま切らずに植え付けるとよいでしょう。そして1個の種芋の重さが50グラム以上になる大きいものに関しては、芽出しを終えたあとで適度な大きさに切り分けます。
清潔なカッターなどを使って、だいたい50グラム前後になるように切り分けましょう。芽がでているところが均等に分かれるようにします。
切り口に草木灰をまぶす
切り分けた種芋の切り口には、草木灰をまぶして、切り口が腐るのを防ぎます。草木灰のほか「ハイフレッシュ」と呼ばれる専用の資材が販売されていますので、利用してもよいでしょう。切り分けた種芋は、直射日光で一日天日干ししましょう。
あまり長い期間干したままにするとしなびてしまうので注意しましょう。また急な雨など天候にも注意が必要です。
ジャガイモの栽培方法2「土作り」
ジャガイモは、水はけのよい土壌を好む植物です。あまりじめじめした環境に植えると、種芋やつきはじめた芋が腐ってしまうことがあります。
畑に植える場合は、畝を高めにするなどできるだけ水はけのよい環境づくりをすることがジャガイモの植え方のポイント、とくに春植えるジャガイモは収穫時期が梅雨と重なることもあり、たくさん雨が降っても大丈夫なようにしておく必要があります。
なお、ジャガイモを鉢に植える場合は、水や風を通しやすい素焼きのプランターや鉢を用いるとよいでしょう。
ジャガイモには石灰は必要ない
野菜の栽培には一般的に、苦土石灰などを用いて土壌の酸性度をややアルカリ性にしてから植えることが多いのですが、ジャガイモは別です。ジャガイモは、酸性の土壌が好きな野菜なので、苦土石灰などをほどこさずに植えることができます。これがジャガイモは植え方の簡単な野菜と言われる所以のひとつです。
ジャガイモは根菜なので土をやわらかくしておく
ジャガイモは、根菜であり根っこがよく育つことで収穫量のアップを見込める野菜です。育てている期間、ジャガイモの根っこがすくすくと育ちやすいように、土をしっかり耕してふかふかとやわらかく深さのある状態にすることが上手なジャガイモの植え方です。
また、種芋を植え付ける2~3週間前に、堆肥などを施して肥沃な環境を作ってから植えるとよいでしょう。
ジャガイモの栽培方法3「肥料」
ジャガイモには、成長過程に合わせて肥料を施します。肥料の与え方がピンポイントならジャガイモはすくすくと根っこを肥大させるので、たくさんの収穫が見込めます。ジャガイモにははじめの植え付けの際の元肥のほか、2度もしくはそれ以上の追肥を与えます。
元肥
ジャガイモには、種芋の植える際に元肥を施します。種芋を植え付けて土をかぶせたあと穏効性の固形肥料などをほどこしましょう。
追肥1回目・芽かきのあと
ジャガイモの追肥の一回目は、ジャガイモの芽かきをおこなった直後におこないます。元肥と同様の穏効性の固形肥料などを追肥としてほどこします。ただし、ジャガイモの葉っぱが黄色っぽく薄い色になっている場合は、肥料切れのサインです。固形肥料より即効性のある液体肥料を追肥として与えましょう。
追肥2回目・つぼみがついたころ
ジャガイモが成長し、つぼみがつきはじめた時期に2度目の追肥をおこないます。葉っぱの色を観察しながら、色が悪く発育がよくないな、と感じたら即効性のある液体肥料を1週間に1度の割合で追肥として施します。
葉っぱが美しいグリーンですくすく成長していたら、穏効性の固形肥料を与えましょう。ただしあまり追肥の頻度をあげすぎる、肥料を与えすぎるのもよくありません。
葉っぱばかりが成長して肝心の根っこがよくふくらまないことがあります。また、ジャガイモの花が咲いたあとは、自然と葉っぱの色が薄く悪くなっていきます。
ジャガイモの栽培方法4「水やり」
ジャガイモは、種芋を植え付けた直後こそしっかりと水やりしますが、そのあとはあまり水やりは必要ありません。畑など地植えにしている場合は、自然の雨だけで充分です。プランターなど鉢植えにしている場合には、ジャガイモを植えている土の表面が乾いてから数日たったあとで水やりしましょう。
水を多くやりすぎると、種芋が腐るといった現象が起こります。水を与えすぎないこともジャガイモの植え方のポイントです。
ジャガイモの栽培方法5「場所」
ジャガイモは、日当たりのよい風通しのよい環境を好む植物です。とくにじめじめと湿気の多い場所は苦手です。よく日のあたるところに植えることが大切です。
ジャガイモの栽培方法6「種芋の植え付け」
ジャガイモは、春植えと夏植えができます。ただし、品種によっては春植えしかできないものもありますので、種芋を購入する際によく確認しましょう。また、夏植えは地域によっては難しいところもあるようです。さらに、夏植えは真夏の時期の気候などから注意も必要で、春植えと比べると植え方の難易度がアップします。
種芋を植え付ける深さ
ジャガイモの生育には、はじめの種芋を植え付ける深さが大切です。深さ10センチくらいの植え溝を掘りましょう。深さがあまり深すぎるところに植えると、ジャガイモの芽が地表に出にくく生育の妨げになります。
また深さが浅すぎるのもよくありません。種芋からすくすくと芽が出ないことにはその後の成長はありません。種芋の深さはジャガイモの植え方の最大のポイントでしょう。
春植えの種芋の植え付け
ジャガイモの春植えの種芋の植え付けに適した時期は、3~4月ごろです。
夏植えの種芋の植え付け
夏植えの種芋の植え付けに適した時期は、8月の下旬から9月ごろです。ジャガイモは、冬の寒い時期を苦手とする植物なので、あまり遅くに植え付けると収穫に間に合いません。また、夏の暑さのなかでは種芋が腐りやすいので、できるかぎり水はけをよくするなど植え方に工夫が必要です。
ジャガイモの栽培方法7「芽かき」
ジャガイモの種芋を植え付けて、芽が5センチくらいまで成長したら、しっかりと硬さのあるよい芽だけを数本残して、あとの芽を手で引き抜きます。
土の中にある種芋がぐらぐらと動かないように片方の手でしっかり押さえながら、もう片方の手で引き抜くとうまく間引きできます。芽かきをおこなうことで、葉っぱに栄養分がいきすぎずに、根っこの肥大つまり芋の生育に栄養分がまわります。
ジャガイモの栽培方法8「土寄せ」
ジャガイモには、成長過程に応じて土寄せをおこないます。土寄せをおこなうことで深さの足りない畑でもジャガイモの収穫量がアップしますので、丁寧におこないましょう。
一度目の土寄せ
一度目の土寄せの時期は、芽かきが終わったあとすぐです。芽かきが終わったあとは、一度目の追肥をおこなう時期でもあります。一度目の追肥と土寄せを同時におこなうとよいでしょう。
ジャガイモの株元とその周りに土をこんもりと盛ります。深さの浅いところにできている成長途中のジャガイモがこのお手入れで大きくなります。
二度目の土寄せ
ジャガイモの草丈が30センチくらいに成長した時期が、二度目の土寄せの時期です。二度目の土寄せの際に、必要に応じて追肥もおこなうとよいでしょう。
ジャガイモは、土のなかの芋が大きく肥大するにしたがって、土の外に出てきてしまうことがあります。とくに深さの浅いところにある芋はかなり飛び出してしまうことも。地表に出たジャガイモには日光があたり、ソラニンが発生します。
ソラニンとは?
ジャガイモというのは、太陽の光に当たるとグリーン色に変色し、ソラニンという有害物質が発生します。しっかり土寄せして、深さの浅いジャガイモを土のなかに埋めることで、ソラニンの発生を防ぎます。
ソラニンは、食べると嘔吐や下痢、頭痛など食中毒を引き起こします。かつて、原産地であるアンデス地方からヨーロッパにジャガイモが渡った際、船のなかで発芽したジャガイモを食べた乗組員が食中毒に見舞われたことから、「悪魔の植物」と呼ばれていた時代もあるそうです。
ジャガイモの栽培方法9「花の摘み取り」
ジャガイモには、植え付けから1カ月半から2カ月すると花が咲きます。花が終わったあとは小さなトマトのような実がなります。花や実の成長には栄養分が必要で、せっかくのジャガイモのなかの栄養分が花や実にいってしまいます。
根っこをしっかり肥大させて収穫量をアップさせるために、できれば咲いた花は取り除きましょう。
ジャガイモの栽培方法10「病気」
そうか病
そうか病は、ジャガイモに発生しやすい病気です。そうか病にかかったジャガイモの表面には、ちょうど人間のけがのあとのかさぶたのような、病斑ができます。
厚めに皮をむいて取り除けば食べるのには支障ありませんが、見た目がよくありませんし食べる部分がかなり減ってしまいます。そうか病は、アルカリ性の強い土壌やナス科を連作している畑に発生しやすい病気です。
疫病
疫病は、ジャガイモの葉っぱが黒く変色する病気です。疫病は葉っぱに発生する病気なので、疫病が発生してもジャガイモを収穫できることもあります。ただし、雨などにより葉っぱの病原菌が土のなかにもぐりこむと収穫にも影響がでることがあります。
ジャガイモの収穫
春植えのジャガイモの収穫の時期は、だいたい6月ごろです。また夏植えのジャガイモの収穫時期は、だいたい11月ごろです。ただし、ジャガイモの品種やその年の天候、植えている地域によって収穫時期はかなり変動します。
だいたいジャガイモの葉っぱが黄色く変色し、枯れてきたころが収穫の目安と覚えておくとよいでしょう。
収穫時の注意点
ジャガイモは、雨が続いたあとのまだ土が湿っているときや雨の日に収穫すると、腐りやすく保存がききません。春植えのジャガイモの収穫時期は、梅雨時期とも重なるので少し難しいのですが、晴れの日が何日か続いて土がよく乾いているときが収穫のチャンスです。
ソラニンが発生しないところで保存する
収穫したジャガイモは、日の当たらない風通しのよいところで少し乾かします。あまり乾燥させすぎるのではなく、だいたい皮についている土がさらりと落ちる程度です。
なお、ジャガイモは日光にあたるとグリーンに変色し有害物質であるソラニンを発生させますので、お日様の光の当たらないところで管理することがとても重要です。
ジャガイモを栽培してみよう
ジャガイモは野菜のなかでも育てやすく家庭菜園初心者にもおすすめです。植え方は簡単。種芋をルールに従って植えていくだけです。芽かきや追肥などジャガイモ独特の栽培方法もありますが植え方のコツさえつかめば、はじめてさんでも多収を見込めます。
自分で育てたジャガイモの味は格別です。フライドポテトやコロッケなどでホクホクのジャガイモを味わってみませんか。