コンベックスとは?
コンベックスは、長さを測定するための道具である「巻き尺」の1種で、測定目盛りのテープ部分が薄い金属でできたものを言います。主に建築や工作などの場面で使われる道具です。
英語で「Convex」という単語は「凸凹の”凸”」を意味するため、英語圏でのコンベックスは「Steel Tape(金属テープ)」や「Tape Rule(テープ状ものさし)」と呼ばれています。
測定目盛りが印字されている金属テープ部分が湾曲していることから、日本では「コンベックス」という呼ばれ方をするようになりました。
近年DIYや工作のはやりから、「コンベックス?メジャーみたいなやつでしょ、普段から使ってるもんね!」という方も少なくないかと思います。今回はそんなコンベックスについて改めて、特徴や使い方、購入するときの選び方をご紹介します。
コンベックスの特徴
コンベックスは長さを測るための道具だということ以外に、どのような特徴を持っているのでしょうか?コンベックスの特徴について具体的にまとめました。
柔軟性と安定性を両立
コンベックスは、測定時にテープがぴたっと自立してくれる利便性をもった道具です。これにより、寸法の長い物や高さのある物のサイズをより正確に測ることができます。
同時に、テープが金属製でありながら巻き取れる柔軟性も持ち合わせており、長く伸ばしたテープもさっと収容することが可能です。
コンベックスは正に、手際よく寸法を測るのにもってこいの道具ですね。
ツメによるゼロ基点の確立
測定目盛りの先端部分には金属のツメがついていて、測定する対象物に引っ掛けたり、角を合わせたりしてゼロ基点をしっかりと確立できることも、コンベックスの特徴です。
メーカーによってはこのツメ部分にマグネットを搭載したコンベックスも販売しています。測定対象物が金属の場合、このマグネットでゼロ基点をしっかりと支えられる仕組みです。
その他、焼き入れ加工をしてツメが曲がったり折れたりしにくくしているコンベックスもあります。ゼロ基点の確立は作業においてとても大切です。ツメに様々な工夫が施されているコンベックスを度々見かけることがありますが、全てはゼロ基点を守るためなのですね。
ゼンマイバネ機構の内蔵
コンベックスのテープが巻き戻る仕組みは、その内部にあるゼンマイバネです。巻き取り部に組み込まれたバネ機構によって、長く伸ばしていた金属テープも楽々戻すことができます。
この機構に関しては構造上修理は困難ですので、コンベックスをバラしたりするのはやめましょう。
また、落としてバラバラになってしまった、巻き取りが上手くいかず壊れてしまったという場合も、修理は難しいため新しいものを購入するのがおすすめです。
測定テープを保持するロック機能
コンベックスにはテープが出た状態を保持するロック機能があります。テープのロックはロックボタンをスライド操作するだけなので簡単です。
コンベックスは金属製テープなだけあってそれなりの重さがあり、巻き戻ろうとするバネのテンションもあります。ずっと指だけで保持するのは少々骨が折れるという場面で、このロック機能は大変役に立つ便利機能です。
ものによってはオートストップ機能が付いたコンベックスもあります。ボタンで更に強力にロックを掛けることもできるというダブルロック機能付きコンベックスなど、機能面でのバリエーションも見られます。
コンベックスの目盛り
日本で販売されているコンベックスはメートル単位が用いられているものの他、建築現場での利便性から尺貫法目盛りが併用されている(1寸相当である1/33m刻みの目盛りが記されている)もの、建築上よく使われる寸法が記されているものなどがあります。
海外ではヤード・ポンド法(インチやフィートの表記)のコンベックスも販売されています。
コンベックスとメジャーの違い
建築や工作に深く関わっていない方からすると、「コンベックスとメジャーって何が違うの?どっちも長さを測るものでしょ?」という疑問を抱くかと思います。
確かに、コンベックスもメジャーも長さの測定のための道具ですが、その違いは製品の材料や使用用途にあるのです。
メジャーとは?
メジャーは布製やビニール製の柔らかい巻き尺のことを言います。柔らかく自由に曲がり、測定したい対象物のラインに沿わせて長さを測れることから、身体測定や被服の寸法取りなど、主に身体のサイズを測る場面で使われます。
メジャーの測定目盛りはメートル単位の他、和裁に用いられる「鯨尺」という長さの1寸相当である1/26.4m刻みの目盛りが記されたものもあります。
コンベックスとメジャーの違いはここ!
コンベックスとメジャーの違いは「測定テープの素材」と「使用用途」にあります。簡単にまとめると、コンベックスは「金属製、建築・工作用」で、メジャーは「ビニール製、身体や被服の採寸用」というわけですね。
コンベックスの使い方
ゼロ基点の確立
物の寸法を測るとき、まずはゼロの位置を決めることが大事です。コンベックスを使ってサイズを測る場合、ツメを測定対象物に引っ掛けて測るのか、突き当てて測るのかでゼロの位置は変わるのでしょうか?
ゼロの位置をより正確に決めるため、コンベックスのツメの先端は動くようになっています。ツメを引っ掛けた時と突き当てた時とでゼロの位置は変わりますが、その厚み分だけコンベックスのツメ先端が動いてくれるため、測り方によってゼロの位置や見方が変わることはありません。
なので、引っ掛けても突き当てても、常にゼロ基点は同じと考えてください。
ツメの活用
ツメに空いているこの穴ですが、実は大いに役立つ便利穴なのです。この穴にネジ山などを引っ掛けることで、長い距離や寸法も1人で測ることができます。
更に、コンベックスのツメは先端がギザギザになっているものもあります。このギザギザは木材などにぐっと押し付けることで印をつけるのに利用できます。
このように、ツメの役割は多岐に渡るので、コンベックスを使う際はぜひツメを活用してみましょう。
コンベックスの選び方
コンベックスの特徴や使い方が分かったところで、続いては選び方を説明します。コンベックスと一口に言っても、使用状況や環境に合わせて選び方が少しずつ変わってくるのです。
コンベックスの選び方①使用用途で選ぶ
コンベックスの金属テープは、表面加工の仕様違いでいくつかの種類があります。この表面加工はメーカーによって呼び名や仕様が多少異なりますが、こんなにも種類があるのはなぜでしょうか?
上記の理由として、コンベックスを使用する場所が関わってきます。同じコンベックスでも、屋外で使うのか、屋内で使うのかによって使用環境は違ってきます。
また、オフィスで単純に物の長さを測るためだけに使用するのか、土木や電気、水道にまつわる作業環境で使用するのかによっても、金属テープの摩耗具合は変わってきますね。
それぞれのシチュエーションに合わせて適切な仕様のコンベックスが選べるよう、メーカー側も工夫して耐水性や耐摩耗性、防錆効果などを備えたコンベックスを作ってくれているのです。
コンベックスを選ぶときは、使用する環境や状況、用途を踏まえてそれに適したものを購入しましょう。
コンベックスの選び方②測定する長さで選ぶ
コンベックスを使っているとき、長いものを測ろうとして途中で金属テープが腰折れしてしまい測るのに手間取った、などという経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか?
上の図は、コンベックスのテープ幅と測れる長さ(距離)との関係を表したものです。同じテープ幅でも、水平方向に伸ばして使うのか、垂直方向に伸ばして使うのかによって、テープがぴしっと腰折れせずに伸びる長さに差があります。
長い距離を測りたい(高さのあるものを測りたい)のであれば、テープ幅の太いコンベックスの方が断然使い勝手が良いです。そのため、測る長さに応じて対応できるテープ幅のものを選ぶという選び方も覚えておくと便利です。
まとめ
今回は、普段使いからDIYまで幅広く活躍する道具、コンベックスのご紹介をしました。便利で使い勝手の良い道具ですが、使い方や選び方について深く掘り下げて考える機会はそうないかと思います。
この記事がコンベックスについての理解を深めるお手伝いになれたら幸いです。