クエとは?
日本国内で最も大型になるハタの仲間です。成魚の体長は1mを超えます。天然のクエは超高級魚として取引されます。家庭の食卓に上ることは少なく、そのほとんどが高級料亭で提供されています。
クエの分類
クエはスズキ目・スズキ亜目・ハタ科・ハタ亜科・マハタ属に分類される海水魚です。学名は「Epinephelus」です。英名は「Longtooth grouper」と呼ばれています。
クエの呼び名
和名のクエは漢字で「九絵」と表記されます。若魚の時に身体に不規則な紋があることから「九絵」となずけられたという説があります。地方ごとに異なる名で呼ばれており、九州では「アラ」、三重では「マス」、伊豆諸島では「モロコ」などと呼ばれています。その他にも、マグエ、サイゴ、ホングエ、キョウモドリ、クエマス、オオウオ、イギス、アオナなどがあります。
クエの基本情報
クエの特徴
ハタの仲間のため大きな頭と口が特徴的です。体色は茶褐色をしており、身体の側面には太い暗色の横縞が6本あります。小型の個体には斑紋があるが成長するにつれ消えていきます。
マハタとの見分け方
マハタの横縞は7本から8本であるのに対して、クエの横縞は6本です。大型になるとどちらも体の模様で判断しにくくなりますが、マハタに比べるとクエの体高の方が低いのが特徴です。マハタと違いクエの尾びれの先端が白くないのも見分けるポイントです、
クエの体長
最近では超大型が少なくなってきているという報告もありますが、最大で体長1.5m、体重は50㎏を超える個体も確認されています。平均的には60㎝~80㎝の個体が多く生息しています。成長スピードは遅く体長1mを超えるのに20年かかります。1年で15㎝、5年で50㎝、10年で70㎝、20年で100㎝を超えます。寿命は長く30年~40年生きるとされています。
クエの餌
クエの餌は魚、甲殻類、イカなどです。日中は岩陰などでおとなしくしているクエですが、夜になると餌を求めてゆうゆうと泳ぎ回ります。餌を探し回る時も住みかからそれほど離れないのが特徴です。
クエの生息地
クエの繁殖期は夏場で秋には卵から孵化した稚魚が岸辺の潮だまりで見られます。成長するにつれ深場に移動する魚です。沿岸の水深が50m前後の岩礁やサンゴ礁に生息します。砂地を好む性質があります。西日本から東シナ海、南シナ海にも分布しています。単独で生活し、群れをつくることはありません。
クエのおもしろい生態
クエは性転換する?
クエは雌性先塾(めすせいせんじゅく)というハタ科特有の性転換をする魚です。クエの稚魚は卵からかえったときはすべてメスです。メスとして繁殖を終えたのちオスへと性転換します。このことから大型のクエはそのほとんどがオスです。小型のクエはすべてメスということになります。
性転換のメリット
オスとしては弱く縄張り争いに負けてしまい子孫を残せない個体でも、小さいころにメスとして繁殖に貢献することができる特殊なシステムを持っています。他の魚よりも繁殖が効率的になされます。クエは自然界の不思議にあふれた魚なのです。
クエはきれい好き!
ハタ科の魚の体には寄生虫が付きやすく、病気や衰弱を引き起こすものもあります。そこで、クエは小型の魚やエビに身体の掃除をしてもらう習性があります。代表的なのはホンソメワケベラで皮膚の寄生虫の除去から口の中の食べかすの掃除まで行います。魚を餌にしているクエですが、共生関係があるこれらの生き物が口の中に入ってもそれを間違って食べることはありません。
クエは幻の高級魚
クエが幻の高級魚といわれるのは、天然物のクエがほとんど市場に出回ることがなかったからです。天然物のクエは漁獲量が少なく、ハタ科の中でも際立って美味なことから希少価値が高い魚でした。高級料亭で振舞われることが多く庶民の生活にはほとんど姿を見せない魚という位置づけでした。
クエの市場評価
天然物のクエは九州などから市場に入ってくることもありますが極めて稀です。ときに1㎏あたり1万円を超える値段で取引されることもあります。最近では養殖物のクエが安定した価格で市場に出回るようになりました。養殖物は1㎏あたり3000円前後で取引されています。
養殖の課題
クエがあまり餌を食べない性質の魚であり、成長が遅いことが課題でした。一般的なサイズである70㎝~80㎝になるまで、10年もかかるため養殖には向いていない魚とされてきました。近年では養殖技術が向上し、ハタ科の魚との掛け合わせの結果、早く成長するクエが誕生しました。味も天然のクエに劣らないと言われています。
クエの産地
クエのおもな産地は和歌山県、三重県、長崎県です。定置網や釣りといった方法で水揚げされます。養殖がおこなわれているのは和歌山県、三重県、静岡県などです。天然物のクエを食すならこれらの産地の高級料亭に赴く必要があります。
クエのエサ釣り
エサ釣りの基本は生きた魚を使った泳がせ釣りです。サバ、アジ、ムロアジ、イカなどを使用します。ゆっくり泳ぎながらエサを捕食するクエは生き餌が弱っているほうが喰いがよくなることもあります。生き餌の管理に神経を使わない釣りができます。
船釣り
船釣りタックル
モロコ竿というクエ専用の竿が用意されています。2.5m前後の長さが船での取り回しに便利です。モロコ竿はクエ専用のため強度に優れ、手元は太く竿先が細く活き餌の敏感な動きを感じられる設計になっています。リールは大型の両軸電動リールを使用します。
船釣り仕掛け
ラインはPE8号以上、ナイロン素材の場合は100号をセットすると安心です。船釣りの場合は100号の中通しオモリにサルカン、80号のナイロンハリスを1.5mとるのが一般的です。針は50号のクエ針を使用します。ハリスにワイヤーハリスを使用することもできます。
磯釣り
磯釣りタックル
磯釣りでもクエ釣りタックルに求められるのは強度です。5m前後の竿がクエを磯から狙う場合は取り回しがしやすい竿となります。ダイワの幻覇王シリーズがおすすめです。リールには強度のほか太いラインを巻くためのスプールの容量が要求されます。マグロ用、大型の青物用の両軸リールが適しています。
磯釣り仕掛け
磯釣りの場合は捨てオモリ仕掛けというシステムを使用します。道糸にPEラインの6号、ナイロン素材であれば80号を装着します。クレンサルカンを取り付け、ワイヤーハリスを結びその先端に親子サルカンを結びます。
親子サルカンにはワイヤーハリスと一直線上に細い糸とオモリを結び根掛かりした際にオモリを切り離せるようにします。親子サルカンのもう一方にワイヤーハリスを1m結び、クエ針の40号を使用します。
クエのルアー釣り
タックル
クエをルアーで狙う場合はメタルジグを使うのが一般的です。磯から遠投したり、船からも狙うことができます。ジギングロッドは対応ジグ重量が150g~250gのものを選択します。磯では大型のスピニングリール、船からは大型の両軸リールを使用します。
ルアー
クエ釣りで使用するメタルジグは250g前後のものです。ジグの重さがあってもゆっくりフォールさせることが効果的なため、比重が軽いメタルジグをチョイスしましょう。クエが潜む根回りを重点的に探る釣りをするため、シングルフックのアシストフックだけを使用する釣り人もいます。
クエの旬
クエの旬は冬場の寒い時期から初夏にかけてです。活き締めのものがよく、目が澄んでおり、鰓が新鮮な紅色をしているものが鮮度がよいクエです。
旬のクエの味わい
旬のクエは新鮮であれば刺身にすると美味で淡白な白身の甘みと血合いのうまみを堪能できます。産地の九州では旬を迎えたクエを真冬に鍋にする「アラちゃんこ鍋」が振舞われます。熱を通しても硬くならずふっくらした旬の白身の旨味とゼラチン質で弾力のある皮がとろける食感は絶品です。
クエの食べ方
一般的な食べ方
刺身、寿司、お鍋、みそ汁、潮汁、煮つけ、唐揚げ、ムニエルなどが一般的な食べ方です。クエの透明な白身の食感と血合いの旨味を味わうなら刺身がおすすめです。白身の豊かな旨味と皮面のゼラチン質のとろける食感を楽しむなら火を通した食べ方がおすすめです。
伝統的な食べ方
九州の長崎、熊本、福岡などで食べられる「アラちゃんこ」はクエ料理で有名な郷土料理です。その地方では「クエの湯引き」という食べ方もされます。クエの刺身を皮ごと少しゆでて冷水に落とします。中まで火が通らない半生の状態がベストです。
刺身の旨味と火を通すことによって出てくる旨味の両方を味わえる贅沢な食べ方です。10月29日にが県で行われる唐津くんちでは大型のクエをそのまま煮つけにした「アラの煮つけ」が振舞われます。
クエの料理レシピ①
クエの刺身
刺身の調理レシピ
【材料】
クエ
万能ねぎ 適量
大根 適量
ポン酢 適量
【料理手順】
①クエの頭を取り除きます。②背中側から包丁を入れて三枚におろします。③大きい場合は腹側と背側で切り離します。④皮面を下にして皮を包丁で削ぎます。⑤ふぐ刺しのようにして薄造りにすると食感と旨味を楽しめます。⑥薬味となる万能ねぎを刻み、大根おろしを擦ります。⑦刺身をポン酢と薬味に絡ませていただきます。
調理の注意
クエの内臓にはアニサキスという食べると腹痛を起こす寄生虫がいることがあります。アニサキスはクエが死んでから内臓がすぐに取り除かれない場合、内臓から身の方に移ることがあります。活き締めしてすぐに内臓が取り除かれたもの、活魚を購入してすぐに捌いた場合はほとんど心配いりません。
クエの料理レシピ②
クエ鍋
お鍋の調理レシピ
【材料】(4人分)
クエの身 800g
クエのアラ 適量
昆布 2枚
水 1ℓ
白菜 1/4
長ネギ 3本
ニンジン 1本
水菜 1/2束
豆腐 1丁
ポン酢
【料理手順】
①お鍋に水と昆布を入れ火にかけます。②野菜を好きな大きさにカットします。人参はスライサーかピーラーで薄くスライスします。③クエの鱗をそいで湯通し、適当な大きさに身を切り分けます。④アラはきれいに洗います。⑤お鍋の水が煮立つ直前に昆布を取り出します。⑥煮立った鍋にアラを投入し、灰汁をしっかりとります。⑦クエの身、豆腐、野菜を入れて蓋をします。⑧火が通ったらポン酢でいただきます。
調理のコツ
調理のコツはレシピ手順の⑥です。煮立った鍋にアラだけを一度入れて、そこでアラから出た灰汁をしっかり取ることです。火を通したクエの皮面が美味しいため、しっかり鱗を削ぎ落とし皮ごと調理しましょう。
クエの料理レシピ③
クエの唐揚げ
唐揚げの調理レシピ
【材料】
クエ
しし唐
片栗粉
油
ポン酢
大根
【料理手順】
①クエの鱗を削ぎ落とします。②三枚におろして皮ごと適当な大きさに切り分けます。③水気を取とり塩コショウします。④片栗粉にまぶし、180℃の油で揚げます。⑤大根おろしとポン酢を用意し完成です。
調理のコツ
クエの皮は揚げることによって旨味が引き出されるので、必ず皮ごと調理しましょう。
まとめ
不思議な生態を持ち、ビッグファイトで釣り人を魅了するクエですが、その一番の魅力は何といっても美味しさです。クエの産地である九州に赴く際にはぜひ高級料亭でクエを探してみてください。クエの旬である冬にアラちゃんこを食べれば旅の素敵な思い出になること間違いなしです。幻の高級魚である天然のクエの美味しさを是非一度味わってみてください。