デンドロビュームってどんな植物?
デンドロビュームは、亜熱帯地域を原産とするランの一種です。デンドロビュームの草丈はだいたい20~60センチくらいです。デンドロビュームの茎は多肉質でバルブという種類に分類されます。デンドロビュームは耐寒性があり、ランに分類されるもののなかでは育てやすい種類です。デンドロビュームの美しい花は、結婚式などお祝いの席のアレンジフラワーにも人気で、世界中で競うように品種改良がなされています。なかでも日本は、デンドロビュームの品種改良技術において世界トップを誇っています。
デンドロビュームはプレゼントや切り花で人気
デンドロビュームに分類される原種は、亜熱帯地域を中心に実に1,000種類以上存在するそうです。日本でも多くの品種が販売されていてお祝いなど贈り物のお花としても重宝されています。鉢植えのほか切り花としても人気があります。
デンドロビュームの分類
デンドロビュームにはノビル系やファレノプシス系といった分類があります。一般的にデンドロビュームと呼んでいるのは、ノビル系に分類される品種です。ノビル系は、ノビル(Dendrobium nobile)と呼ばれる原種から生み出された品種です。
デンドロビュームの花名の由来
「デンドロビウム(Dendrobium)」は、ギリシャ語の「dendron」と「bion」が合わさったものです。「dendron」は「樹木」、「bion」は「生活する」を意味します。デンドロビュームの原種は、自然のなかでほかの樹木に着生しながら育つことに由来するものです。
デンドロビュームの花の特徴
デンドロビュームは、多肉状の茎をまっすぐ伸ばし成長します。茎には節が存在し、その節ごとに花芽をつけます。デンドロビュームの花の開花時期は春です。ただしフラワーショップなどでは温室栽培により冬にも満開のデンドロビュームを見ることができます。デンドロビュームの花の色は、ピンクや白のほか、オレンジや黄色、黄緑色のものなど多彩です。
デンドロビュームの葉の特徴
デンドロビュームの葉っぱの色は明るいグリーン色です。デンドロビュームの葉っぱは長めの楕円形をしていて、やや厚みがあります。デンドロビュームを管理していると葉っぱが落ちて枯れたように見えることがありますが心配ありません。時期になるとまた新しい葉が出てきます。
デンドロビュームの基本データ
科名属名
ラン科セッコク属(デンドロビウム属)
学名
Dendrobium
和名
デンドロビューム
別名
なし
英名
Dendrobium
原産国
ネパール、インド東北部、ブータン、ミャンマー
デンドロビュームの花言葉
デンドロビュームの花言葉は2つあります。いずれの花言葉も、デンドロビュームの美しい花姿に由来するものです。
花言葉1「わがままな美人」
デンドロビュームはとても華やかなランに分類されるにふさわしい花を咲かせます。ですがデンドロビュームの花を咲かせるのにはコツが必要で、少しハードルが高いもの。そんな特徴から「わがままな美人」という花言葉がつけられました。わがままな植物ほど愛おしいもの。上手に管理して美しい花を愛でたいですね。
花言葉2「天性の華を持つ」
「天性の華を持つ」という花言葉は、デンドロビュームの可憐な花姿からイメージされたものです。鮮やかなピンクや黄色のデンドロビュームの花は、まさしくランらしい美しいもの。デンドロビュームが花を咲かせると、そこが一瞬にして華やかなものとなりほかを引き離して輝きます。そんな花姿からイメージされた花言葉でしょう。
デンドロビュームの育て方の3つのコツ
デンドロビュームは、耐寒性がありランに分類される植物のなかでは比較的育て方が簡単なものと分類されます。デンドロビュームの花をうまく咲かせるには3コツがあります。土づくり・肥料・水やりです。土は水苔やベラボンを使います。肥料や水やりは季節ごとに変化させます。では、育て方のコツをもう少し詳しく見ていきましょう。
デンドロビュームの手入れ【育て方1】「土づくり」
デンドロビュームは、土ではなく水苔、ベラボンなどを用いて鉢植えすることが、デンドロビュームを育てるコツのひとつめです。ベラボンとは天然のやしの実の繊維を加工して作られた園芸用資材です。どちらも園芸店などで販売されていて手軽に入手できます。なお、ベラボンには少しバークチップを混ぜて使うとよいでしょう。
デンドロビュームの手入れ【育て方2】「肥料」
デンドロビュームの育て方の2つめのコツは肥料の与え方。デンドロビュームは、肥料を与える時期と肥料を与えない時期があります。
4月~7月の肥料
デンドロビュームには、4~7月の時期には、月に1~2度の割合で、発酵油粕肥料やラン専用の固形肥料を施します。また2週間に1度の割合で、ラン専用の液体肥料などを施してもよいでしょう。
8月~翌春の肥料
8月をすぎた時期から春までは、デンドロビュームには肥料を与えません。8月以降の時期に肥料成分が多すぎると、デンドロビュームの花芽がつきづらくなります。そして、デンドロビュームに花芽がつきはじめたら、再び肥料を与えはじめましょう。
デンドロビュームの手入れ【育て方3】「水やり」
デンドロビュームの育て方の3つめのコツは水やりです。春から秋のデンドロビュームの成長時期と、冬の休眠時期で少し水やりの頻度を変えることがデンドロビュームの水やりのポイントです。
春から秋の水やり
春から秋のデンドロビュームが成長する時期には、鉢植えしているデンドロビュームの水苔やベラボンが乾燥したら水やりしましょう。ただし水やりしすぎるのはよくありません。デンドロビュームは、少し乾燥気味に育てると根をぐんぐん伸ばす特徴があるからです。
冬の水やり
10月を過ぎてデンドロビュームが休眠の時期に向かいはじめたら、水やりの頻度を少なくします。目安としては茎が少ししなびたようにやせてくるくらいまで待って水やりします。そしてデンドロビュームに花芽がついてきたら、また水やりを多めに戻します。
デンドロビュームの手入れ【育て方4】「場所」
デンドロビュームは、日当たりのよい風通しのよい環境を好む植物です。ただし真夏の直射日光が鉢植えにがんがん当たる場所は避けて管理しましょう。デンドロビュームはランに分類される植物のなかでは耐寒性がありますが、霜が当たるなど極端に寒いところは避けて管理するとよいでしょう。デンドロビュームの鉢植えを春夏秋冬の季節ごとに快適な場所に移動させてあげましょう。
デンドロビュームの手入れ【育て方5】「植え付け」
デンドロビュームの植え付けに適した時期は、3~5月ごろです。デンドロビュームは、水苔もしくはベラボンやバークチップを混ぜたものを使って鉢植えします。ベラボンやバークチップは水苔に比べると乾燥しやすいのでデンドロビュームが根腐れを起こしにくくおすすめです。ベラボンやバークチップを使えばプラスチック鉢にデンドロビュームを鉢植えすることもできます。
水苔に植え付ける場合
デンドロビュームの植え付けは、空気のとおりのよい素焼きの鉢植えがおすすめです。鉢の底にネットを敷いて、だいたい4分の1の高さまで、細かくした発泡スチロールを入れます。デンドロビュームの根っこに水苔を巻き付けて鉢の直径と同じかやや大きいくらいにします。水苔を巻いたデンドロビュームを鉢にすぽんと入れます。デンドロビュームの茎がまっすぐに立ちデンドロビュームの株が安定するように、ヘラなどで水苔を整えます。植え替えから10日くらいは直射日光の当たらない日陰で管理して株を安定させましょう。
ベラボンとバークチップに植え付ける場合
ベラボンは使う前に水につけてあく抜きします。だいたい1週間くらい毎日水を交換しながら水にベラボンをつけておきます。あく抜きしたベラボンとバークチップを1対1の割合で混ぜましょう。鉢にデンドロビュームの株を入れて、ベラボンとバークチップを混ぜたものを足していきます。割りばしなどを使ってベラボンとバークチップをつつきながら、隙間ができないようにするのが、デンドロビュームの株をグラグラさせずに鉢植えするコツです。10日くらい直射日光の当たらない風通しのよいところで管理しながら、水やりを続けましょう。
デンドロビュームの手入れ【育て方6】「植え替え」
デンドロビュームの植え替えに適した時期は、3~5月ごろです。デンドロビュームは、2~3年に一度の割合で定期的に植え替えをしましょう。また、水やりのしすぎや肥料の与えすぎによってデンドロビュームが弱ってきたのを感じた場合は、2年を待たずに植え替えして環境を新しくしましょう。
花が終わったら植え替えのチャンス
デンドロビュームの花が終わったら植え替えをします。ただし花の咲き始めが遅かった場合は少し残念ですが早めに花を切ってから植え替えをおこないます。切った花は花瓶に生けておくとまだまだ楽しむことができます。デンドロビュームの茎を持って、植え替えたい株を鉢から取り出します。これまでより少し大きめの鉢を準備します。デンドロビュームの根っこに巻いていた水苔をはずし、根っこの傷んだところを取り除きます。ただしあまり長く根っこを切りすぎないように注意しましょう。デンドロビュームの根っこに新しい水苔を巻き付けて鉢に植え替えます。植え替えたデンドロビュームが安定するまで、直射日光の当たらない風通しのよいところで管理しながら、水やりを続けましょう。
デンドロビュームの手入れ【育て方7】「剪定」
茎を切り取る時期
デンドロビュームの茎は一度花が終わったらもう花はつきません。ですが花が終わったらすぐに茎を剪定してしまうのはよくありません。デンドロビュームは茎の内部に成長に必要な栄養を蓄えているので、花が終わったら一年くらい管理したあとで切り取ります。2年目の花が終わったら1年目の古い茎を切り取るというサイクルがよいでしょう。
花がら摘み
デンドロビュームの花が終わったら、枯れた順に手で摘み取って花がら摘みをしましょう。しおれたり枯れたりした花をそのままにしておくと不要な養分が消費され、株全体が弱まってしまいます。また蒸れの原因ともなり病害虫を呼び寄せることがあります。
高芽処理
高芽とは、茎につく新しい株となる芽のことです。高芽に余分な栄養が必要となり親株の成長のさまたげになるので不要な高芽は取り除きます。ただし、高芽でデンドロビュームを増やすことができるので、可能であれば増やす時期である4~6月ごろまで待って、高芽を切り取った際に増やすのがベストです。
デンドロビュームの手入れ【育て方8】「病気」
灰色かび病
デンドロビュームには灰色かび病が発生することがあります。名前のとおり灰色のかびがおもに花に発生する病気で、見栄えが悪いだけでなく株を枯らすこともあります。灰色かび病はじめじめした環境下に発生しやすいので、花が終わったらすぐに花がら摘みするなど、できるだけデンドロビュームを風通しよく管理して病気の発生を予防しましょう。
葉枯病
デンドロビュームには葉枯病が発生することがあります。デンドロビュームの葉っぱに白や褐色の病斑部があらわれ、次第に大きくなります。放置していると株全体が枯れてしまうことも。葉枯病はカビを原因とする病気でじめじめした環境を好みます。花が終わったらすぐに摘み取って風通しよくすることで、病気の発生を抑止できます。
デンドロビュームの手入れ【育て方9】「害虫」
カイガラムシ
デンドロビュームにはカイガラムシが発生することがあります。カイガラムシはデンドロビュームの葉や茎に寄生して栄養分を吸い取る害虫です。カイガラムシは多湿の環境を好むので、デンドロビュームの花が終わったらこまめに取り除くなどの手入れでカイガラムシの発生を予防しましょう。カイガラムシを見つけたらすぐに駆除しましょう。カイガラムシの成虫はとても硬い殻で覆われているので、殺虫剤をスプレーしてもあまり効果がありません。ブラシなどでカイガラムシをこそぎ落しましょう。
ナメクジ
デンドロビュームにはナメクジが発生することがあります。ナメクジはじめじめした梅雨時期などに発生しやすく、デンドロビュームの花芽や葉芽を食べてしまいます。花が終わったらすぐに取り除くなどナメクジが発生しにくい環境づくりを目指しましょう。
デンドロビュームの手入れ【増やし方1】「株分け」
デンドロビュームの増やし方のひとつめは株分けです。株分けに増やし方はデンドロビュームの増やし方のなかでは比較的簡単です。デンドロビュームの株分けによる増やし方に適した時期は、3~5月ごろです。デンドロビュームの植え替えをおこなうときに一緒に株分けするのがおすすめです。鉢植えのデンドロビュームの株をすぽんと取り出します。清潔なハサミなどで根っこを切り分けましょう。株分けした株をそれぞれの鉢に植え付けましょう。
デンドロビュームの手入れ【増やし方2】「高芽取り」
デンドロビュームの増やし方の2つめは、高芽取りです。高芽取りの増やし方に適した時期は、4~6月ごろです。デンドロビュームを育てていると、茎に高芽と呼ばれる新しい株が生まれてきます。高芽に根が出てくるまで待ち、親株から切り取ります。水苔などを準備して新しい鉢に植え付けましょう。鉢植えした高芽が安定するまで、直射日光の当たらない風通しのよいところで管理しながら、水やりを続けましょう。デンドロビュームの親株から高芽がたくさんでてきたら高芽取りのチャンス。高芽取りによる増やし方は、株のタイミング次第とも言えるでしょう。
デンドロビュームの手入れ【増やし方3】「茎伏せ」
デンドロビュームの増やし方の3つめは、茎伏せです。デンドロビュームの茎伏せによる増やし方に適した時期は、春から秋です。デンドロビュームの茎を切り取ります。水苔を入れた小さめの鉢に茎を刺します。鉢植えした茎から発根して安定するまで、直射日光の当たらない風通しのよいところで管理しながら水やりを続けましょう。数カ月すると発根し新しい芽も出てきます。
デンドロビュームはハードルが高いが美しい花
デンドロビュームはランの一種で、育て方にはいくつかコツがあります。デンドロビュームの花を上手に咲かせるためには水やりや肥料を時期ごとに変化させるのが最大のポイントです。季節ごとに管理方法を変えるなどこまめな観察が必要で育てるには少し難しい側面もありますが、花が咲いたときには感慨深いものです。デンドロビュームの栽培にトライしてみませんか。