ホンダの隠し玉ワルキューレルーン
コンセプトモデルからのデザインをそのまま製品化したようなデザインが特徴で、ネオレトロなデザインと迫力あるワイド&ロー&ロングな美しくもワイルドな車体が目を引きます。
当時の車両本体価格が27,000ドルでした。日本国内での正規販売はありませんでしたが、日本での登録台数は2~300台ほどあるようです。
大型バイクホンダワルキューレルーンの生産
1995年の東京モーターショーで発表された「ZODIA」を当時のアメリカホンダ副社長レイ・ブランクが意欲的に市販化を推し進め、GL1800の開発陣が製品化したのがワルキューレルーンとなります。
一日の生産数は20台。2年間での総生産台数が1,200台以下という低生産モデルとなりました。なかでもその特徴的なオプションのメッキホイールなのですが、アメリカでの生産はできないとして日本にわざわざホイールを送り、熟練職人による手作業の生産を行い、アメリカに返送するといった手間がかかり、その価格は1セット1,500ドルでした。
大型バイクホンダワルキューレルーンのスペック
ワルキューレルーンの基本スペックは次のようになります。
車体形式 | SC53 |
全長×全幅×全高 | 2560㎜×920㎜×1090㎜ |
ホイールベース | 1750㎜ |
シート高 | 68.6㎝ |
車両重量 | 400㎏ |
排気量 | 1832cc |
エンジン | SOHC水冷水平対向6気筒 |
内径×行程/圧縮比 | 74㎜×71㎜/9.8:1 |
最高出力 | 120ps/5250rpm |
燃料供給装置 | PGM-FI |
駆動方式 | シャフトドライブ |
変速機 | 常時噛合式5段リターン |
Fサスペンション | トレーリング・ボトムリンク |
Rサスペンション | ユニットプロリンク |
前ブレーキ | 3ポッド330㎜ダブルディスク |
後ブレーキ | 2ポッド336㎜シングルディスク |
Fタイヤ | 150/60R-18 |
Rタイヤ | 180/55R-17 |
乗車定員 | 1名 |
燃料タンク容量 | 23ℓ |
製造国 | アメリカ |
GoldWingとのスペック上の違い
ベースになっているゴールドウィングSC47とのスペックの違いが気になりますが、エンジンユニットが同一となり、基本的なエンジンのスペックの違いは見受けられないように考えてしまいます。しかし味付けも異なり全く違うスペックと考えた方が良いでしょう。
大型バイクホンダワルキューレルーンの燃費
400kgにもなる車体は5250rpmで最大出力に到達してしまい、4000rpmで最大トルクを発生するワルキューレルーンにおいて実燃費が一体どれくらいなのかは気になるところです。1800ccのエンジンですから燃費に関してはあまり期待はできません。実燃費はおおよそ13㎞~18㎞程に落ち着きます。この燃費性能は低回転から発生する馬力・トルクなどのスペックを考えれば優秀といえるでしょう。
現行車両のようにライディングモードを変更して燃費性能を上げるような機構が付いていれば、燃費の向上も期待できるのですが、そもそもが燃費を気にして走るようなバイクでもないような気もします。
大型バイクホンダワルキューレルーンのインプレ
シート高がうれしい高さ
車格に圧倒されつつサドルに跨ります。一人乗りのためタンデムシートがない分、シートはいくらか前後長が長いようです。しかし極端なプルバックのハンドルとかなり後方にセットされたステップのおかげで運転しにくい印象は意外に受けません。このステップの位置は体重を程よく乗せることができ、操縦のしやすさにつながっています。
美しいメーターまわり
メインキーはまたがった左ひざのあたりにあり、セキュリティ付きのキーをONにするとステアリングロックが自動的に解除されます。タンク上には液晶の速度計と燃料計があり、通常のメーターがあるハンドルポスト部には警告灯類が並びます。
走り出しの感覚
スターターボタンを押すと、水平対向6気筒のエンジンが文字通りうなりを上げます。片側3気筒ずつの点火になり、重低音のサウンドが小気味よいリズムでアイドリングを奏でます。スロットルをほんのわずかにブリッピングすると、スムーズで素早い応答が得られます。比較的軽めのクラッチを握り、アイドリングのままクラッチをつなぐと、いとも簡単にワルキューレルーンは走り出します。
トルクフルなエンジン特性
スロットルを開ければ1832ccのエンジンはストレスなく滑らかに吹き上がり、加速してゆきます。ためしにトップギアで30㎞の低速低回転からワイドオープンを試してみましたが、ノッキングすることなく見事に加速をしてくれます。ホンダはこのコンセプトモデルの実現にVツインではなくGL系のフラット6を選びましたが、多くのシーンにおいてこの選択は正しかったものだと信じています。シフトチェンジはスムーズで扱いやすいものです。
超重量級ワルキューレルーンのUターン
超重量級のワルキューレルーンですが、気になる取り回しのインプレです。やはりUターンは不得意といえます。この様な場面ではGoldWingのようにバックギアがあったらよかったなと思えてきます。しかし低いシート高と、アイドリングでもクラッチミートが楽なエンジン特性がかなり助けになっています。
高速道路のレーンチェンジなど
その車格からどんな走りなのだろうかとインプレが楽しみでした。実際には10kmも走ればその重量には慣れてきます。ロングホイールベースの感覚はまだ違和感として残っているかもしれませんが、すぐに扱いにくさは消えてしまいます。ステアリングは軽く精密な動作をしており、スピードに乗った状態でスムーズに方向を変えることができます。高速道路での車線変更時もはるかに小さなバイクに乗っているような感覚で行うことができます。
コーナリング性能
今回このコーナリングのインプレは驚きに満ちたものになりました。低重心のため非常に安定しており、適度なトルクを与え、わずかにリアブレーキを使ってやればワルキューレルーンはきれいにコーナーをトレースしてくれます。一般的なクルーザータイプのバイクよりもコーナリングは得意といってもいいでしょう。
サスペンション性能
ホンダが作った独特なスプリンガーフォークであるフロントサスペンションからのフィードバックがどのような感じなのか、今回のインプレで非常に気なっていました。このサスペンションは快適性に優れたサスペンションで、多少の荒れた路面でも問題なく仕事をしてくれます。
ブレーキ性能
ホンダのコンバインド・ブレーキ・システムを搭載された前後のブレーキは、ワルキューレルーンのパワーと重量に十分に見合ったフィーリングのものがセットされます。その重量とパフォーマンスを見事に止めてくれます。
大型バイクホンダワルキューレルーンのカスタム
「仮面ライダー響鬼」においても、ほとんどノーマルで出演していたワルキューレルーンですが、カスタムとしてはおそらくはこの1車種しかないでしょう。埼玉県のメーカー「ホワイトハウス」の手掛けたカスタム「Ryujin(龍神)」です。エンジン性能はそのままにコーナリング性能の見直しをされて、新たに造形されたカウリング、6本出しのマフラー、倒立サスペンション、アッパーカウルが迫力です。
大型バイクホンダワルキューレルーンのパーツ
そもそもがカスタムライクな仕上がりとして完成の域に上り詰めているワルキューレルーンなので、サードパーティーメーカーとしても商品開発がやりにくいのかもしれません。極端にカスタムパーツは少ないのです。
国内で注文可能なパーツとしては、ミラー、グリップ、マフラーあたりでしょう。国外の販売サイトを見てみると、シート、シールドスクリーン、ハイウェイペグ、オイルフィルターケース、などなど更にメッキのパーツが増えてしまいそうです。
大型バイクホンダワルキューレルーンのタンデム性能
シングルシートのみの装備なのですが、やはりワルキューレルーンを使いタンデムでツーリングをしたくなる時もあるでしょう。アメリカの複数のカスタムパーツメーカーからワルキューレルーン用のタンデムシートキットが発売されており、これに換装してタンデムステップを新たに追加することでタンデムが可能となります。難点は購入ルートの確保になります。
コルビン(Corbin)やサドルマン(SADDLEMAN)、マスタング(MUSTANG)といったメーカーから、まだ販売はされているようです。
大型バイクホンダワルキューレルーン発売当時の注目されたポイント
2004年に発売された車両です。当時画期的といわれたメカニズムは現在の目から見てどう映るでしょう。
Pro-Linkリアサスペンション
当時多くの車両で取り入れられつつあったPro-Link式のリアサスペンションですが、現在ではかなり普及されています。むしろ片持ちといった形式が最近は少なくなりつつあります。
トレーリングリンクフロントサスペンション
ホンダでもスクーターを除けば過去スティードで装備車両がありましたが、このワルキューレルーンにおいては一風変わったものになっており、右側にはメインスプリングのみが入っており、左側にダンパーユニットとサブスプリングが収められています。
リモートステアリングロックシステム
車体左側の小さなレバーを引くことにより、ロックが作動します。イグニッションキーがOFFの位置にあり、ハンドルバーが左側フルロックの位置にある場合、ピストンがステアリングシステムに挿入されロックがかかります。キーをONの位置にすることにより、システムは自動的にロック解除されます。
特徴的なヘッドライトユニット
ホンダオリジナルのデザインとなっており、これも非常に美しいパーツになっています。上がロービーム、上下同時点灯がハイビームの配置です。
リアフェンダーにフラッシュマウントされたLEDテールライト
現在においても、ここまできれいにフィットしたテールランプをわたしは知りません。その大きなリアフェンダーに非常にマッチしたデザインになっています。
ラジエターの造形が見事
正しくはラジエターカバーの造形ですが、非常に美しい曲線で造形され、ここも美しいメッキが施されています。聞くところによると、このラジエター形状にするためにフロントフェンダーの形状が見直され、また様々なパーツの移動を余儀なくされたようです。こうした美しく見せるための変更がワルキューレルーンの各所で行われているという事です。
ホンダワルキューレルーンは走る芸術品
多くのバイクファンにとってワルキューレルーンの最大の魅力はその外観になります。カスタムの基準を満たしていないと判断されるような仕上がりはないといえるでしょう。塗装パーツはすべて2重クリアコートが施され、ハイエンドカスタム車両のような深みと滑らかさを実現しています。
ブレーキホースやスロットルケーブルなど主要なケーブル類はステンレスメッシュとなり、そしてあのクロームメッキの輝きです。
ワルキューレルーンは子供のころの夢
今回は細部ディテールのインプレが一番楽しみでした。1995年発表の「ZODIA」というコンセプトバイクが現実のものになったというその一点が要因です。通常デザイナーの意向最優先のコンセプトモデルにテクニックが融合される場合、そのほとんどは技術優先のものとなり、デザインは二の次にされるからです。
ワルキューレルーンは多少値段が張りますが、コンセプトモデルに非常に近い形で発売され、そういったバイクを所有して、普段ライディングすることができる。まるで子供のころからの憧れであるスーパーヒーローの乗り物に乗ることができるという夢がかなうイメージに近いのではないでしょうか。
オリジナルのままが一番きれい
全体のデザインはシングルシートが一番似合うデザインとなっています。ここにあえてタンデムシートとタンデムペダルを追加してデザインをスポイルしてしまうのが正しいのかどうかは各々の判断でしょう。いずれにしてもこのワルキューレルーンよりも美しいメーカーオリジナルのバイクはなかなか無いと言い切ることができます。
実はただひとつ問題があります。この誰の目から見ても、類まれな美しい車両を入手するには、全国に数多くある中古店の中から、全国に20台足らずしかない中古車両を探し出さなくてはいけない点です。