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ファーストエイドキットとは
登山などの環境に必須の応急処置の装備
ファーストエイドキットとは、不意の怪我や病気の際に応急処置をするために必要な救急医薬品やそれに付随するものを、携行できるバッグなどの入れ物に装備するキットのことで、エマージェンシーキットとも称されます。登山などのアウトドアの環境では、外傷や中毒などによりその後の行動を取ることが困難な状況に陥ることがあります。その際、とりあえず医療機関を受診できる場所まで移動できるよう処置をする必要があります。そんなときに必要な装備がファーストエイドキットです。そんなファーストエイドキットに必要な中身と基本的な作り方、道具の選び方や使い方を解説します。
ファーストエイドキットが必要になる状況とは
転倒や転落による外傷
登山などのアウトドアでは大小さまざまな外傷を負うリスクがあります。皮膚表面に関して言えば、切り傷や擦り傷などの軽微なものから、出血をともなう重篤なものにまで分けられます。骨や筋肉の外傷では、打撲や捻挫などから骨折にまで分類されます。外傷は多くの場合、疼痛をともなうことが多く、傷の処置だけでなく痛みに対する手当も必要となります。
虫刺されなどによるアレルギー反応
虫刺されといえば代表的なのが、痒みをともなう蚊によるものです。激しい掻痒感に対しては痒み止めなどで対応可能ですが、恐ろしいのは蚊が媒介するさまざまな感染症です。近年は生命に関わる重篤な感染症も多く、はじめから虫除けなどで刺されない対策をすることが必須です。また虫刺されで気をつけなくてはいけないのが、アレルギー反応です。特にアナフィラキシーショックと呼ばれる激しいアレルギー反応は、ショックと呼ばれる急激な血圧低下を引き起こすこともありますので、注意が必要です。
咬まれることによる感染症や中毒
蛇などに咬まれることによる咬傷や、それによる出血にも注意が必要です。そして登山の際などに恐ろしいのが、毒蛇に咬まれることによる中毒症状です。生命に関わるものもありますので、適切な応急処置を施した上で迅速に救急病院を受診することが必要です。
頭痛や腹痛などの身体症状
頭痛や腹痛などの激しい痛みも、登山ではその後の行動を取ることが困難になりますので注意が必要です。中には脳内出血や食中毒の症状である場合もあります。応急処置で症状が改善しない場合は、救急病院を受診して適切な医療処置を受けるようにしましょう。
ファーストエイドキットの中身に必要な道具①
ファーストエイドキットの装備①:ガーゼ
ガーゼとは、主に木綿糸を平織りにした柔らかい布を指します。吸湿性と通気性に富み、救急の際にはいろいろな用途に使用されます。
ガーゼの使い方
ガーゼは応急処置の現場では、実にさまざまな使い道があります。直接傷口に当てて圧迫止血に用いるだけでなく、細く折りたたんで傷よりも中枢側を縛って止血することも可能です。特に滅菌された清潔なものは、消毒に使用されます。また止血後には重ねて傷口の保護に使用したり、抗生物質をはじめとした軟膏の塗布にも使われます。
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ガーゼの選び方
創傷部位に直接当てる機会が多いものなので、滅菌処理されたものを選びましょう。大小さまざまなサイズがありますので、傷口に合わせて数種類を揃えると安心です。また滅菌ガーゼには使用期限があります。期限に気をつけ、過ぎてしまう前に定期的に取り替えるようにしましょう。
ファーストエイドキットの中身に必要な道具②
ファーストエイドキットの装備②:包帯
包帯とは、ガーゼ生地で作った帯状の長い布地を巻いたものです。主にガーゼやシーネを固定する道具として用いられます。包帯もガーゼと同様に、応急処置の現場では欠かせないアイテムの一つと言えます。
包帯の使い方
包帯の用途は非常に多岐に渡ります。長い帯状であることを利用した止血や、処置の終わった傷口に当てたガーゼの固定に使われます。また骨折や打撲部位を固定する目的で、シーネと呼ばれる当て木に巻きつきたり、外傷した部位を吊り下げたりするのにも使用されます。
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包帯の選び方
包帯には伸縮性のあるものと、ないものがあります。登山などのアウトドアで多く起こる骨折や捻挫、創傷などの際に行う圧迫止血や関節の固定などには、伸縮性のあるものがおすすめです。またファーストエイドキットの入れ物に制限がある場合、粘着性のある包帯を選択すれば、テープを携帯しなくても済むので便利です。
ファーストエイドキットの中身に必要な道具③
ファーストエイドキットの装備③:絆創膏
粘着性のあるテープの中央に不織布などのパッドを貼り付けたものが、みなさんご存知の絆創膏です。小さな切り傷などに手軽に使え、細菌による感染から傷口を守る手軽な救急用品として、アウトドアだけでなく家庭の救急箱にも必ずと言っていいほど見られるアイテムと言えます。
絆創膏の使い方
ガーゼや包帯を使用するほどではない軽微で小さな傷口に使用します。サイズ的な問題から止血効果はほとんど期待できないため、出血をともなわない傷口か、すでに止血が確認できた傷口に貼り付けます。
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絆創膏の選び方
登山などのアウトドアでは、傷口が濡れることも想定する必要があります。そのため、できるだけ濡れても剥がれにくい絆創膏を選びましょう。また傷口のサイズに合わせて、大小2つのサイズを携行することをおすすめします。
ファーストエイドキットの中身に必要な道具
ファーストエイドキットの装備④:テーピング
テーピングとは、粘着力のある幅広の布製テープです。怪我の予防や、怪我をした際の患部の固定を行うものです。スポーツ選手が利用する機会が多く、正しい技術を習得すれば、捻挫をしていても健康な状態に迫るパフォーマンスを発揮することも可能です。
テーピングの使い方
テーピングの基本的な使い方は、関節部位の固定にあります。特に救急の現場では、打撲や捻挫などの際にその後の行動を可能にして、医療機関を受診できる場所まで移動することを目的とします。そのため、普段から正しいテーピングの技術を習得しておく必要があります。
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テーピングの選び方
包帯と同様に伸縮と非伸縮のものがあります。目的が関節の固定にあるので、応急処置用のテーピングは非伸縮性のものを選びます。また太さも各種ありますが、汎用性の高い50ミリ程度の細いものを選ぶことをおすすめします。
ファーストエイドキットの中身に必要な道具⑤
ファーストエイドキットの装備⑤:三角巾
上肢、すなわち腕や肩を怪我したときなど、腕を固定して動かしたくないときに活躍するのが三角巾です。また頭にバンダナのように巻いて、頭部の外傷の際のガーゼ固定や保護にも利用できます。
三角巾の使い方
腕を固定するには、まず二等辺三角形のかたちをした三角巾の底辺とその対角の頂点を結んだ線上で怪我をした腕を包みます。次に、底辺の両端の角を首の後ろで結びます。
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三角巾の作り方
三角巾の作り方は簡単です。ドラッグストアなどに行けば専用のものが売っていますが、救急の場合には大きな風呂敷などを三角形に折るといった作り方で代用可能です。サイズとしては大人が腕や脚を固定するためには、一辺が900ミリ程度の正方形の布を使用するとよいでしょう。
ファーストエイドキットの中身に必要な道具⑥
ファーストエイドキットの装備⑥:プラスチックグローブ
ファーストエイドキットは自分の手当てだけに使うとは限りません。登山などでは他人の応急処置を行う必要性も出てきます。そんなとき血液などの体液による感染のリスクを減らしたり、不潔なものを扱うのに便利なのが使い捨ての手袋である、プラスチックグローブです。
プラスチックグローブの使い方
ウィルスや細菌などは血液などを介して体内に侵入してきます。他人の体液を触る際に自分の手に傷があると、そこから感染のリスクは高まりますので、救急の際にも手袋は必ず着用します。また止血などに使ったガーゼなどはグローブをした手で握ったままグローブを脱ぐことで、不潔物の入れ物として使うこともできます。
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プラスチックグローブの選び方
応急処置の際には作業性の高さが要求されますので、自分の手に合ったサイズのものを選びます。中にパウダーが塗ってあるものは、救急の際など急いでいるときの着脱は楽ですが、パウダーにアレルギーがある人などは使えませんので注意が必要です。
ファーストエイドキットの中身に必要な道具⑦
ファーストエイドキットの装備⑦:はさみ
応急処置の際にはさみを使うシチュエーションは数多くあります。アウトドアの他の装備にもはさみを持っていく場合がありますが、衛生材料のカットなどのためには清潔さが求められます。救急専用のはさみを1本、ファーストエイドキットの入れ物に入れておくことをおすすめします。
はさみの使い方
はさみの用途は多岐に渡ります。ガーゼをちょうどいいサイズにカットしたり、包帯の余りやテープを切ることにも使います。また外傷の処置の際に、創部を迅速に露出させたい場合などには、着ている衣服を切ったりするのにも使用します。
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はさみの選び方
安全のためには、刃先が丸くなっているものがおすすめです。またいざという時に錆びてしまっていては使えませんので、ステンレス製やフッ素加工されたものなど、錆に強い素材のものを選びましょう。
ファーストエイドキットの中身に必要な道具⑧
ファーストエイドキットの装備⑧:安全ピン
安全ピン、いわゆるカンバッチなどの裏についていて、布地を留める役割をするものです。この安全ピンが、救急セットの中に入れておくと、いざという時に何かと活躍してくれるのです。
安全ピンの使い方
応急処置の場面での安全ピンの使い方で代表的なのが、包帯の固定です。包帯を留めるテープがない場合には、この安全ピンによって包帯を留めておくことができます。また三角巾などの布を使って怪我の部位が動かないように固定する場合にも、安全ピンがあればテープよりもしっかりと布地を固定しておくことが可能になります。また手にトゲが刺さったとき、トゲ抜きがない場合には安全ピンを使って抜くこともできます。
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安全ピンの選び方
安全ピンには大小さまざまなサイズのものがあります。用途に合わせて使い分けられるよう、複数のサイズを持っておくことをおすすめします。
ファーストエイドキットの中身に必要な道具⑨
ファーストエイドキットの装備⑨:トゲ抜き
登山などアウトドアでは、トゲが刺さるということはよく起こります。激痛がともなうものではないものの、小さなトゲがひとつ刺さっているだけでも、そのこと自体が気になってその後の行動に影響を及ぼしてしまいます。そんなときに小さなトゲを引き抜くことができるトゲ抜きは、ファーストエイドキットの必須装備のひとつと言えます。
トゲ抜きの使い方
細菌感染を防ぐため、トゲ抜きの先端は常に清潔を保っておく必要があります。トゲを抜く処置を行う前には、トゲ抜きの先端をアルコール綿などで消毒しましょう。トゲを引き抜く際には、刺さった時と同じ角度で抜くようにします。
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トゲ抜きの選び方
あまりに安いトゲ抜きの場合、先端の精度が悪くて小さなトゲをうまく捉えられない場合があります。多少値段が高くても、先端の工作精度の高いものを選ぶことをおすすめします。
ファーストエイドキットの中身に必要な道具⑩
ファーストエイドキットの装備⑩:ポイズンリムーバー
蜂をはじめとした毒を持つ生き物に刺された際、すぐに毒を吸い出すことが必要になります。処置が遅れると、場合によっては命に関わったりもします。登山の際など、虫に刺されることが多い状況で、すぐにその場で毒を吸い出すことができる道具がポイズンリムーバーです。決して大きいものではないので、ファーストエイドキットの入れ物には必ず入れておきたいアイテムです。
ポイズンリムーバーの使い方
虫に刺されたら、できるだけ早く毒を吸い出す必要があります。救急用品の入れ物の中でも、取り出しやすいポケットなどに入れておくようにします。刺された部位の大きさに合わせてカップを付け替え、中のポンプを引っ張って毒を吸引します。毒を吸い出した後は、流水でよく傷口を洗います。その後、すみやかに医療機関を受診することも大切です。
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ポイズンリムーバーの選び方
ポイズンリムーバーの選び方のポイントは、片手で扱えるものであるかという点です。一人で登山などをしていて刺された際に、自分で毒を吸い出すことができなければ話になりません。また吸引力のできるだけ強いものや、カップの種類が多いものがおすすめです。
ファーストエイドキットの中身に必要な道具⑪
ファーストエイドキットの装備⑪:シリンジ
切り傷やすり傷などの怪我を負ったとき、何よりも怖いのは細菌に感染することによる化膿や破傷風です。そのため怪我をしたら速やかに傷口を洗い流す必要があります。ファーストエイドキットの中に小さなシリンジを用意しておけば、怪我をした場合にすぐに洗浄ができるので安心です。
シリンジの使い方
怪我をした場合、あくまで流水などで傷口をよく洗浄するのが基本です。でもアウトドアでは十分な水を用意できないこともあります。そんなときシリンジに吸い取った水を傷口の内部に当て、ピンポイントで洗浄を行うことは化膿などを防ぐ上で有効な手段です。
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シリンジの選び方
シリンジにはいくつかの大きさのものがあります。あまりに小さいものは洗浄には使えません。5mlか10mlのものを選べばよいでしょう。
ファーストエイドキットの中身に必要な道具⑫
ファーストエイドキットの装備⑫:内服薬
登山などのアウトドアで遭遇する健康問題は、なにも外傷ばかりとは限りません。頭痛や腹痛などの身体症状によっても、その後の行動が制限されてしまいます。医療機関を受診できる場所まで移動するためにも、痛みの除去などの対処療法のための内服薬を準備しておくことは重要です。
そろえておきたい内服薬の種類
痛み止め…消炎鎮痛を目的とした薬で、頭痛や歯痛のほか外傷の際の痛みを緩和するためにも使用できます 胃薬…キャンプの夜に食べすぎてしまったときや、二日酔いにも効果があります 整腸薬…下痢の時などには水なしで症状をやわらげる止瀉薬などが便利です 風邪薬…頭痛や鼻水、咽頭痛など風邪の諸症状を緩和してくれます
ファーストエイドキットの作り方
市販のキットはあくまで基本的な装備品しか入っていません。でもファーストエイドキットを自作すれば、自分の必要な道具を網羅したキットにアレンジが可能です。ここではファーストエイドキットを自作する場合の、簡単な作り方について解説します。
作り方①:用途に合わせた装備をリストアップ
ファーストエイドキットを自作する利点は、装備を用途に合わせてチョイスできる点にあります。登山などの場合は、転倒や転落による外傷に備えた装備に加え、毒を持った生物に咬まれたり刺されたりした場合を想定した装備が必要です。またトレランやバックカントリースキーなどスポーツをメインにした活動では、捻挫や打撲、骨折などの外傷を手当てする装備が中心となります。
作り方②:入れ物を用意する
ファーストエイドキットを自作する場合、装備を収納する入れ物にもこだわりたいものです。家庭にある救急箱のような箱型は頑丈な反面、携帯性はどうしても悪くなります。軽さやパッキングなどの携帯性を考えるなら、やはりポーチ型の入れ物がおすすめです。またアウトドアで使用する場合には、入れ物の防水性も重要です。いざ使おうとするときに、中の包帯が塗れていたりしては話になりません。また多くの装備を効率よく仕分けし、緊急の場合にすぐ取り出せるようにするためには、小さなポケットがたくさんある入れ物がおすすめです。
作り方③:装備を購入する
自分の使いたい用途に合わせてリストアップした装備を購入していきます。ファーストエイドキットの中に入れる道具のほとんどは、ドラッグストアなどで入手可能です。低予算での作り方のコツとして、100均の利用もおすすめです。特にガーゼや絆創膏といった使い捨ての衛生材料など、ファーストエイドキットの中に入れる装備は、かなりの確率で100均で入手可能です。
作り方④:装備を入れ物にセットする
購入した装備をセットしていくわけですが、やみくもにつっこめばいいというものではありません。いざというときに何がどこに入っているのかわからないのでは、緊急の場合に使えません。用途別に分類するのはもちろんですが、使用頻度や緊急度に合わせて整理することも大切です。ポイズンリムーバーなどのように、受傷後すぐに使う必要のあるものは、取り出しやすい場所に入れるなどの工夫をしましょう。
まとめ
ファーストエイドキットに必要な道具や、自作する場合の作り方について解説してきました。ここでご紹介したものはあくまで一例にすぎません。アウトドアでの楽しみ方もさまざまなように、応急処置に必要な装備もまたさまざまです。みなさんもここでご紹介した装備を参考に、自分のスタイルに合ったファーストエイドキットを作ってみることをおすすめします。