害虫に注意!日本は世界の縮図
日本には北海道から沖縄まで様々な気候があるため、多くの種類の植物が自生しています。作物も地域により様々ですよね。北海道ではハスカップや夕張メロン、沖縄ではバナナやドラゴンフルーツ、シャカトウやカニステルなどその地域でしか取れない種類のものも多いです。
様々な気候風土
それと同様にして日本には様々な地域に適応した様々な種類の害虫が存在するので注意が必要です。今回はそんな害虫の種類や生態、毒性や刺された場合の症状などをご紹介致します。もちろん治療法もまとめて記しますのでご活用下さい。
1.害虫代表!オオスズメバチ
恐ろしい日本の毒性を持つ害虫として真っ先に挙げられるのがこのオオスズメバチでしょう。オオスズメバチは毒性が強いだけではなく、一度刺したら毒針が抜けてしまうミツバチと異なり、何度も毒針を使って攻撃ができます。その毒針の仕組みも巧妙で、芯になる針の両側に肉を切り裂く可動式の刃がついています。
最強のハチ
そのため、敵対動物の体の奥深くまで毒を注入出来る上に、一度刺した針を引き抜く事ができるのです。毒性を持つ害虫は日本に多く存在しますが、オオスズメバチはその中でも特異な存在で、毒液を噴射して攻撃ができるなど、日本で最も毒の扱いに長けた害虫です。
最強の害虫オオスズメバチの毒性
オオスズメバチの毒性は非常に強力で、痛みやかゆみの元になるアミン系の成分を多く含み、有名なアナフィラキシーショックなどのアレルギーの原因や、赤血球の破壊作用を持つタンパク質系の毒などを持つほか、他の蜂が持たない神経毒のマンダラトキシンを唯一含有します。
その毒性だけで言えば西洋ミツバチよりも弱いのですが、保有する毒の量が圧倒的に多いので注意が必要です。
アナフィラキシーショック
スズメバチに刺された場合、痛みやかゆみ、そして患部が腫れあがりますが、他にも血圧の低下や立ちくらみなどの症状があります。スズメバチに刺された一の10%ほどがハチ毒の抗体ができ、2度目に刺されたのが例え1匹でもアナフィラキシーショックを起こしてしまいます。
オオスズメバチに刺されて亡くなった人のほとんどが、オオスズメバチの毒性よりもアナフィラキシーショックによるものなので、オオスズメバチとハチ合わせしてしまった際は十分注意が必要です。
オオスズメバチの生態や刺された場合の治療法
オオスズメバチは日本中に生息する害虫で主に山間部の生息数が多いのですが、実は都市部の公園や民家の軒下などにも生息しているため近年話題に上がることが増えています。春に冬眠から目覚めた女王は、樹皮と分泌液を混ぜ合わせて巣作りを行います。本格的な活動が始まるのは、働き蜂が羽化し始める5月頃になります
よく冷やして病院へ
つまりは5月から10月頃までの期間に活発になるため、その期間に被害が出やすいことになります。食性は雑食で、動物の屍肉から樹液まであらゆるものを餌に生きています。
成虫は幼虫が吐き出すアミノ酸液を好みますが、このアミノ酸液を元にしてスポーツ飲料のヴァームが生まれています。スズメバチに刺された場合は患部をつまみ毒を絞り出します、抗ヒスタミン軟膏を塗り、良く冷やして病院へ急ぎましょう。
2.害虫だけど薬にもなる?ムカデ
ムカデは古くから傷薬の原料になったり、国によっては食用にもされますが、見た目の気持ち悪さ毒の凶悪さでは日本の毒虫の中でもトップクラスです。ムカデには大きな牙があり、これで刺されると毒がまわります。
触るな危険
種類が多いのですが多くの種類が毒性を持っています。生息地は森林や山ですが、少し自然の多い公園であれば普通に生息する害虫です。
ただし害虫と言っても人を好んで狙うわけでもなく、偶然または故意に触れた人間への反撃として噛みつくだけなので、近づかなければほとんど刺されることはないでしょう。古い図鑑にはムカデを漬け込んだサラダ油が虫刺されに効くと書かれています。
衛生害虫ムカデの生態
ムカデは種類の多い生物で、陸上から海中にまで生息している可能性があります。海中に生息するムカデエビという生物は姿形がムカデに近く、ムカデと関係があるかもしれません、生態も似ており捕食の時に毒を使う事もわかっています。
毒性の強いムカデとして日本で知られているのはアオズムカデという種類で、10センチ程度の比較的小型な種類です。生態としては岩や朽ち木に潜り込む習性があるので、虫取りをしている子供が刺される場合が多くなり、衛生害虫として問題に上がります。
抱卵する
日本最大種はオオムカデ科のトビズムカデという種類で20センチはどになります。北海道から沖縄まで広く生息しており、生息地ごとに色彩変異が多くコレクターも存在するようです。母親が卵を抱え世話をしないと孵化しないと言われており、孵化後もしばらく子供を守る習性があります。食性は肉食でゴキブリやダニ、クモなどを補食します。
ムカデ毒の症状や治療法
ムカデ毒はヒスタミン、セロトニンなど痛みやかゆみを引き起こすアミン系や、赤血球の破壊作用を起こすペプチド系の毒が含まれるなど、症状はハチの毒に似ています。よく聞く症状は激痛、そして腫れですが、ハチ毒同様にアナフィラキシーショックの原因にもなるようなので注意が必要です。
ムカデ毒はタンパク毒
治療法としては抗ヒスタミン軟膏を塗る事になりますが、ハチ毒と違いほとんどがタンパク質系の毒なので、45度くらいのお湯で熱する事により毒の活性が弱まります。温めて毒の活性を奪った後に抗ヒスタミン剤を塗り治療すると良いでしょう。しかし1週間くらいは症状が続くのでなかなかやっかいなものです。
3.世界最強の害虫の一つ、カバキコマチグモ
世界でも最強クラスの毒性を持つクモが日本に存在します。それが、カバキコマチグモです。カバキコマチグモは意外とTVなどにも出演する機会が多い種類なので、聞き覚えのある人もいるかもしれません。海外ではカバキコマチグモに刺されて亡くなった人もいるようですが、日本では「毒性が強いが量が少ないから大丈夫」と認識されています。
ベッコウバチ
クモの多くの種類はオスがメスの数分の1程度であったりするのですが、カバキコマチグモはほとんど同じサイズだと言われています。
天敵にベッコウバチという寄生バチがおり、カバキコマチグモに卵を産み付け、幼虫はカバキコマチグモを食べ尽くしたらカバキコマチグモの巣でサナギになります。TVに出る場合もベッコウバチとカバキコマチグモはセットで出演する場合が多いですね。
咬害害虫カバキコマチグモの生態
カバキコマチグモは他のクモとは生態が異なり、イネ科の植物の葉を丸めその中に巣を作るという特殊な生態があります。そのため米が主食である日本では比較的多く見られ、生息地も幅広いものです。カバキコマチグモの特殊な生態としてメディアに取り上げられるものがも一つあります、それが子供の親殺しです。
子供番組でも取り上げられるため、見覚えのある人も多いでしょう。孵化した幼体はすぐに1度脱皮をするのですが、脱皮が終わった幼体たちは母親にとりつき、みんなで母親を食べ始めます。
古代日本はクモの天国
食べられている間も母親は外敵から子供たちを守ろうとするので、自分を食べている子グモのことをきちんと自分の子供だと認識していることがわかります。古代の日本は葦の生い茂る土地が多かったためにカバキコマチグモが住みやすい土地だったことでしょう。
害虫カバキコマチグモの毒性と治療法
カバキコマチグモは毒性が非常に強い毒グモですが、基本的には捕食対象に麻痺症状を起こすための神経毒なので、滅多に人が咬まれることはありません。
しかし、ムカデやハチと同様にアナフィラキシーショック症状を引き起こす可能性があるので、咬まれたら注意が必要です。神経毒以外にもヒスタミンなどのアミン系の毒を持つので、激痛や腫れなどの症状があります。
長い症状
症状は半月程度続き、熱が出たり吐きけを催すこともあるので、治療には早めに病院に行くことが大事です。一時的な治療法としては患部から毒を絞り出し、水で流した後に抗ヒスタミン軟膏を塗るなどハチと同様の治療法が取られます。
4.文字通りの害虫、ドクガ
文字通り毒性を持つ蛾、ドクガです。日本全国に広く生息する害虫で、北海道から九州にまで生息しています。生息地をこれほどまでに広げられた理由は、幅広い食性で、多くの種類の植物を食べて成虫にまで成長が可能なことが大きいのだと思います。
他に一般的な蛾は幼虫の時には毒性を持っていても、成虫になると毒性を持たなくなる場合が多いのですが、ドクガの仲間は卵から幼虫、そして成虫になっても毒性を持ち続けます
布も貫通する毒針
より南方系の種類にチャドクガが見られますが、ドクガの仲間でも多く見られる種類なので注意が必要です。幼虫には毒針毛があり、これに刺される事によって症状が現れますが、風で飛んだ毒針毛に刺されても同様なので、発生すると問題になります。服の上からでも刺されることがあるので非常にやっかいですね。
無差別害虫ドクガの生態
ドクガの生態は一般的な蛾と大差ありませんが、卵に成虫の毒針毛を付着させる点や成虫にも毒針毛がある点が異なります。他の特徴的な生態としては、ヤママユガの様にブナ科とバラ科の植物を餌にできる点で、クリや桃などの畑に発生すると大惨事ですね。
バラ科もブナ科もどんな山にも必ず存在する植物なので、山があるところであれば生息が可能な害虫です。さらにツツジ科やツバキ科なども食べる模様。
風に舞う毒針
年に1回発生して幼虫で冬を越すらしいのですが、卵の状態でも越冬が可能だという話しもあります。風が吹けば周囲に無差別に被害を及ぼす可能性が大きいので、出来るだけ駆除したいものです。
初令幼虫であれば、1枚の葉に群集しているため駆除しやすいですが、成虫は飛びながら毒針毛をまき散らすため近付かないようにしましょう。
毒針毛を持つ害虫に刺された場合の治療法
毒針毛を持つ害虫と言えばいわゆる毛虫ですが、その毒針毛からヒスタミン、カリクレイン、ホスホリパーゼA2などを放出するため、その毒針を抜いてしまうのが一番大事です。治療法は、まずガムテープなどの粘着力の強いもので張り取ったあと、水で洗うと良いでしょう。
ヒスタミン軟膏でかゆみ止め
水で洗った後は抗ヒスタミン軟膏を塗り、心配であれば早めに病院に行くことをオススメします。カリクレインやホスホリパーゼA2などはアナフィラキシーショックの原因にもなるので注意が必要です。
5.海外から来た害虫ヒアリ
ヒアリは南アメリカ原産で、小さいですが非常に強い毒性を持ちます。フタフシアリの仲間なので、胸部と腹部の間にコブが二つあることが特徴です。国内にもフタフシアリの仲間のトフシアリが存在しますが、非常に小型なため見間違えることはないでしょう。
2017年に兵庫、大阪、愛知、東京で発見されたためニュースで話題に上がり、ご承知の方は多いと思いますが、そもそもスズメバチとアリは近い種類なので、毒針を持つアリはスズメバチ同様の危険性があります。
アナフィラキシーショックの危険性
刺されると火傷の様に水膨れになるのでヒアリの名がついたそうです。TVでは殺人アリとも呼ばれましたが、スズメバチ同様にアナフィラキシーショックの危険性があります。
非常に強いヒアリの毒性と治療法
生態的には雑食性で時にはその毒針で仔ウシを仕留めるそうです。国内のアリと異なり大きな蟻塚を作るため識別はしやすいかもしれません。毒の95%はアルカロイド系の毒で、そのほかタンパク質系の毒素を保有しています。
早めに病院へ
そのヒペリジンアルカロイド(ソレノプシン)が細胞を破壊し、水膨れ症状を起こしいるのでしょう。治療法としては患部を洗い流し、抗ヒスタミン軟膏を塗っておきましょう、アナフィラキシーショックの可能性がある人は早めに病院に行くことが大事です。
海外からきた他の害虫
他にも話題になった害虫はいくつかあります。例えば西洋ミツバチとアフリカミツバチの交雑種であるキラービー(アフリカナイズドミツバチ)がアメリカで猛威を振るっていましたが、日本にも海外からツマアカスズメバチがやってきています。
インドネシアでは死者を出すほどのスズメバチなので注意が必要です。ミツバチを襲うことも多く、養蜂場のミツバチ脱走に関与していると考えられています。しかし、日本のオオスズメバチには敵わないようで、オオスズメバチに捕食されることが多いそうです。
ハイイロゴケグモ
他には有名なセアカゴケグモがありますが、セアカゴケグモ以外にもクロゴケグモやハイイロゴケグモなどが日本で確認されています。この仲間はどれも毒性が強く、進行性の筋肉の破壊作用を持つため死亡例も少なくありません。しかし、日本にはクモを食べるクモが多く、そういった種類のクモには敵わないようです。
まとめ
日本には様々な毒虫が存在しますが、それでも他の国と比べればまだ少ない方です。スズメバチでよく聞くアナフィラキシーショックですが、実はこんなにも多くの虫が原因になることがわかり驚いた人もいるでしょう。
そう考え、今回はアナフィラキシーショックを起こす可能性がある害虫をまとめてみました。海外からの害虫としてはサソリなども逃亡個体が確認されているので気をつけてください。抗ヒスタミン軟膏には痛みやかゆみを抑える効果があるので常備すると良いですね。