ナス
インドが原産といわれている、ナス科の1年草です。ナスの名前は(早く実が成る)という所から付けられました。ナスは、ハウス栽培の普及により1年中スーパーなどで見かけられますが、夏が旬の代表的夏野菜です。秋(晩夏~初秋)にも収穫されるナスもありますが、この、秋に収穫されるナスは、秋ナスといわれ、種が少なく美味しいものが多いです。一般的なナスの木や茎はナスと同じ様な濃い紫色をしており,とても綺麗な薄い紫色の花を咲かせます。和・洋・中いずれの料理にも向き、油との相性は抜群です。ぬか漬けやからし漬け、しば漬けとお漬物にも幅広く使われています。
ナスの品種
ナスの種類はとても多く、一般によく店頭に出回っている物には、卵型や少し長めの長卵型があります。大きな米ナス、賀茂ナス、長ナス、長ナスよりもっと長い大長ナス、色の白いナスなど国内産だけでも沢山の品種があります。また、近年はイタリア料理などの普及に伴いゼブラナスなど変わった品種も見られるようになりました。
丸ナス
大変丈夫で初心者の方にも栽培しやすく、4月上旬~6月に販売されます。味が濃く、緻密で柔らかな肉質で、炒め物には最適です。
米ナス
表皮が濃い紫で大型のナスです。米ナスと丸ナスの違いは、一般的なナスのヘタは黒や濃い紫色ですが、米ナスの方はヘタの部分が緑色です。基本的には、加熱調理に向いており、漬けものには向いていません。
中長ナス
早生で栽培初期からしっかり収穫できる定番のナスです。皮が軟らかく、大きくなっても硬くなりにくいです。ナスのあらゆるメニューに適する定番のナスです。初心者の方の栽培におすすめのナスです。
長ナス
皮が薄く細やかな肉質で、灰汁が無い真っ白な果肉です。ねっとりとした食感で、麻婆ナスやナスの煮物に最適です。実は沢山なります。
水ナス
皮が薄くみずみずしくて、灰汁も少なく生でも食べられる果物のようなナスです。このみずみずしさを作るためには、たくさんの水を与える必要があります。
白ナス
白ナスの果皮はやや硬いですが、果肉は柔らかく灰汁が少ないです。白ナスには丸ナスと長ナスがあります。
ゼブラナス
イタリアの代表的なナスの品種で。紫の縞模様が美しいナスです。この品種は皮がやや硬いですが、果肉に締まりがあり、加熱することで独特の食感が生まれ美味しいナスです。基本的には加熱調理がおすすめのナスです。肉質に締りがあり、生や漬けものには向いていません。
ナスの花の花言葉
高貴で美しい紫の花を咲かせるナスの花の花言葉は、【つつましい幸福】・【真実】・【希望】という花言葉があり、この花言葉は、花が咲けば必ず実が1つは成るというナスの実の結実性の高さから付けられたものです。また、【優美】という花言葉は、ナスの花の色が紫で美しいことからです。
ナスの花が落ちるのは?
もしナスの花が咲いたのに、結実すること無く落ちてしまったら、それは栄養不足による生育不良です。ナスは水と肥料を沢山必要とする野菜で、十分な水や肥料を与えて下さい。特にプランターで栽培している場合には注意が必要です。
ナスの育て方《植え付け》
ナスの種まき
ナスの植え方は、ナスは2月中旬に種まきをします。種まきは3㎝幅の蒔き溝を作り1㎝~2㎝間隔ですじ蒔きにして種まきをして下さい。(ナスの発芽温度は20℃~30℃で最低は10℃、最高で30℃までとされています。)夜の温度を20℃に保ち、発芽後あまり込んできたら1、2㎝間隔に間引いて下さい。本葉が2枚出てきたら1本ずつポリポットに植え、定植するまぜ暖かい環境で管理して下さい。種まきをして苗にするまでに80日くらいかかります。初心者の方や、スペースのない方は市販の苗を植え付けるところから挑戦される事をおすすめします。
ナスの植え方ポイント
★植え方として、日光に十分に当てる必要がありますが、あまり高温になり過ぎないように十分に注意が必要です。 ★夜に水を与えると徒長の原因になるので、水やりは朝にするのがコツの一つです。 ★種から育てると育苗の期間が長くなり管理が大変なので、苗を購入して植える植え方で育てるのも手軽でおすすめです。
苗作りのポイント
・種の植え方は、深さ1㎝くらいの溝を掘る。そこに種をスジまきで種まきをする。 ・5㎜くらいの厚さに覆土をします。ナスの種は嫌光性(けんこうせい)です。光が当たると発芽しませんので、土を多めにかけて下さい。 ・種まきから発芽までは、夜は25℃~昼30℃までの温度を保つことが必要です。 ・発芽後混み合ってくると1,2㎝、隙間があくように間引きます。 本葉が2枚になったら育苗用のポットに植え付けて下さい。(夜の温度は、15℃以上を保つのがコツです。)
ナスの種が発芽しない?
・ナスの種は嫌光性種子ですので、植え方として、種まきの後の覆土が不十分な場合、発芽しなかったり発芽が遅れる場合があります。 ・発芽に適切な温度は、20℃~30℃ですので、ナスの種の栽培には昼と夜との温度差が10℃の場合、そろった良い発芽が見られます。その温度を保つための電熱線を通した育苗ハウスやヒーターがあります。初心者の方にはおすすめです。 ・ナスの種の植え方は、種にとって良い環境で無いと休眠しますので、 これを無くすために、種まきの前に冷蔵庫に入れて低温に当てておく、または、1日くらい水に漬けておいてから種まきをします。 ・種まきの後の水やりが不十分な場合、水分が吸収できないので種が発芽しません。しかし、水を与えすぎても土の空気が水で押し出され、酸素が不足してしまいますすので、発芽しなくなります。 ・ナスの種は5年以上発芽が可能といわれていますが、2,3年以内に種まきをした方が発芽しやすいです。
ナスの育て方《苗の選び方》
初心者の方の苗選びは、徒長していない、出来るだけ節の太いしっかりした物を選んで下さい。また、苗は健康な双葉が付いていて、虫食いや病気の痕が無いか良く見て選んで下さい。 家庭菜園などで省スペースで連作せざるを得ない場合には、連作被害による土壌病害を予防する接ぎ木苗がおすすめです。
ナスの育て方《畑作り》
定植して栽培する植え方として、2週間以上前までに、栽培場所全面に苦土灰を散布して耕しておくのがコツです。そして、1週間くらい前に堆肥や元肥を施して再び耕します。 用土は、赤玉土6:腐葉土3;バーミキュライト1+炭酸苦土石灰(粒)用土10ℓに対して10g+化学肥料用土10ℓに対して10g~30g混ぜ合わせた物を使って下さい。植え付けの1週間から10日くらい前に混ぜておきましょう。 畝作りは定植する2,3日前におこなって下さい。そして、黒のポリマルチをして地温を上げて下さい。
ナスの育て方《植え付け(定植)》
ナスの苗の植え方は、苗と苗の株間は60㎝くらいあけるのが、収穫量を増やすコツです。プランターに植える場合の植え方は、やはり30㎝~40㎝は確保して下さい。苗は植える前に苗鉢にたっぷりと水を含ませから植え付けて下さい。苗の定植が終ったら、ナスの茎は弱くて風邪で折れるといけませんので、支柱を立てて紐で8の字に結んで支えて下さい。ナスは霜に弱いので、晩霜の心配が無くなってから植え付けて下さい。
プランターに植え付ける(定植)場合
プランターは深型菜園用プランター、容量30ℓがおすすめです。用意したプランターに、定植する植え方は、鉢底石を入れ、用土をプランターの縁から2,3㎝位下まで入れ、植え付ける穴に水を入れ、染み込んだら苗をポットから抜いて植え付けるのがコツです。植え付けた後は、底から滴るくらいに水を与えて下さい。用土は市販の野菜用培養土が初心者の方には便利です。
ナスの育て方《苗をマルチング》
土の乾燥を防ぎ、病気を予防するために、株元に稲藁や刈り草などを敷いてマルチングして下さい。
ナスの育て方《支柱を立てる》
ナスの実が付いた時、支柱で枝を誘引しておかないと、実の重さで枝が下がり、実が付きにくくなったり、病気になったりします。支柱には長さ1m50㎝、太さ2㎝くらいのものがベストです。苗がしっかり根付いて、一番花が咲いて実が出来たら、その後に伸ばす枝のために支柱が必要です。風が強い場所では特にしっかりと支柱を組んで下さい。真ん中に1本立てて、側枝用に2本を斜めに交差させて支柱を立てて下さい。そして主枝や側枝を支柱に誘引しひもで固定して下さい。
ナスの育て方《水やり》
ナスは暑さに強いですが、乾燥には弱いです。水やりは土の表面が乾燥してきたらたっぷりと水を与えて下さい。夏の時期は、早朝の土の温度がまだ低い時間帯に水やりをして下さい。 ナスは水やりの頻度が多いので、用土が減って来ます、根が出ないように新しい土を根に被せるのがコツです。
ナスの育て方《肥料》
ナスは、栽培期間の間は肥料切れにならないようにたっぷりと元肥料を入れます。ナスは肥料を沢山必要とし、肥料切れを起こしやすい野菜ですので、果実がなり始めたら、株を疲れさせないためにも定期的に追肥料が必要になります。追肥料は、1番花の果実が膨らみ始めたころ、株の周りに与えて下さい。リン酸が効いた肥料を与えると、実付が良くなります。
ナスの育て方《病気》
ナスの栽培でナスが罹りやすい病気に灰色かび病や褐色腐敗病、すすかび病などが発生する場合があります。発生を防ぐためには通風や採光をよくするのはもちろんですが、早期発見と防除を心掛けるのが一番です。特に梅雨時は気を付けて下さい。また、土壌病害の青枯病や半身萎凋病が出たら直せませんので諦めて抜き取って廃棄して下さい。この病気を防ぐためのコツは、初心者の方は接ぎ木苗を植えるようにするのがお薦めです。
ナスの育て方《コンパニオンプランツ》
ナスは連作障害が出やすい植物ですので、栽培する間隔を6,7年は明けて下さい。心配がある方や初心者は、接ぎ木苗を使って植え付けて下さい。 ナスのコンパニオンプランツ(良い結果が出る植物、共生植物)には、パセリやネギなどがあります。 せり科のパセリはナスと一緒に植えると、パセリの持つせり科独特のにおいが、ナスに付く害虫を忌避し、パセリは余分な水分を吸収しナスの株元を覆いマルチの代わりになり、水分の吸収を安定させます。ネギはネギ植物の根に共生する拮抗菌が【青枯病】【立枯病】の原因菌を抑えます。
ナスの育て方《害虫》
ナスに付く害虫は、テントウムシダマシ・アブラムシ・エトウガ・ダニ類・ミナミキイロアザミウマなどの害虫ですが、害虫は早期に発見し薬剤を散布します。害虫被害が激しく手に負えなくなってしまった場合は、害虫が付いた主枝の株元の1芽まで切り戻し、新しく主枝を立て直せば秋には再度収穫が出来ます。しかし剪定(切り戻し)は8月上旬までに行こなわないと秋の実りは期待できません。
アブラムシ
害虫の代表的存在のアブラムシですが、葉裏や新芽、茎など、植物のあらゆる所に集団でつき、植物の汁を吸って、生育を妨げます。また、すす病などを誘発する事もある害虫です。対処法は見つけたらすぐに潰してしまうのが確実ですが、天然物由来の殺虫剤【アーリ-セーフ】を薄めて散布するのも効果があるようです。
テントウムシダマシ
益虫のテントウ虫と違い、テントウ虫にそっくりですが、害虫のテントウムシダマシは、黒い斑点が28個と多く、葉を食害します。害虫を見つけたら手で捕まえて駆除します。また天然成分で害虫に効く有機農産物栽培にも使える殺虫剤【バイベニカVスプレー】も有効です。
ナスの育て方《剪定のコツ》
真夏の時期に株を休ませ、リフレッシュさせるために更新剪定(切り戻し剪定)を行い、一緒に根切りと追肥をします。ナスは更新剪定(切り戻し剪定)することによって長く収穫をすることが出来ます。更新剪定の適期は7月下旬~8月上旬くらいです。7月下旬以降に株の状態が良ければ、葉を1~2枚残して生育の良い芽の上で切り戻して剪定して下さい。秋の収穫をもう一度楽しむことが出来ます。
剪定手順
★伸びている枝の1/3から1/2くらいの長さと、葉を1,2枚残して剪定します。(元気なわき芽が出始めている少し先で切るのがコツです。) ★株元から30㎝くらい離れたところにシャベルを垂直に入れて根を切ります。株の周囲の2ヵ所を根切りします。 ★シャベルで切った根の隙間から、500倍に薄めた液肥を蒔いて土と軽く混ぜます。 ★食害された葉や傷んでいる葉も、剪定時に一緒に切って剪定しておきましょう。
わき芽かきのコツ
ナスは葉の付け根から脇芽が出てきます。このわき芽を放っておくと花は良く育ちますが、果実に十分な養分が回らなくなるので、摘むのが良いわき芽と、残すのが良いわき芽を選んで、摘むのが良いわき芽を摘んで下さい。これを【わき芽かき】と言います。
ナスの育て方《受粉》
ナスは同じ花の中に雌しべと雄しべがあり、雌しべが雄しべよりも長く出ているので、風でゆれるだけでもナスは受粉しやすいですが、受粉不良になる原因としては、肥料切れや温度が35℃以上の日や20℃以下の日が続いたり、水切れを起こしたや日照不足などが考えられます。
ナスの栄養素
ナスにはビタミンやミネラルという栄養素はほとんど含まれていませんが、ナスの紫紺色にはナスニンと呼ばれるポリフェノールの一種の色素アントシアニンで強い抗酸化作用があり、活性酸素を抑える力が強く、コレステロールの吸収を抑える作用もあります。また、ナスには体を冷やす作用もあり、《秋ナスは嫁に食わすな》という言葉は、お嫁さんの身体を気遣った言葉にようです。
ナスの保存法
★張りがあって、表面につやがあるものを選んで下さい。 ★ヘタのトゲトゲがしっかりとしていて触ると痛いものが新鮮で良い物です。 ★持ってみて軽いものは、中がスカスカで美味しくありませんので、持った時にずっしり感のある物を選んで下さい。 ★なすを保存するには、暖かい時期に採れる野菜なので、冷蔵庫に保管すると低温障害を起こす場合があります。硬くなって傷みやすいので、保存は袋に入れて冷暗所に保存して下さい。なるべく早く食べることをおすすめします。
ナスの収穫
ナスは開花してから20日前後で収穫できるようになります。一般的なナスは、12㎝~15㎝くらいの大きさが収穫適期です。収穫が遅れると皮が硬くなり中の種も熟して、味が悪くなります。ナスは昼間に光合成で作った養分を夜間実に蓄えるので、早朝に収穫するのがおすすめです。収穫の際には果実を傷つけないように、ハサミで丁寧に収穫して下さい。特に1番果は株を成長させるために小さなうちに収穫して下さい。果実を切り取る場合、実がなったわき芽の根元の葉1枚とわき芽を残して切って、残したわき芽を成長させて実を付けさせるようにします。
ナスを美味しく
ナスは水ナスを除いてあくがあります、あくは切ってすぐに真水または塩水に漬ける、または、ナスを半分に切り、切り口に塩を刷り込んでしばらくたってから水で洗い流して水分を絞ります。お料理に合わせて選んで下さい。 ナスは、油との相性が良いので、煮物や炒め物などにする場合も高温の油でさっと揚げてから利用する方が旨みが出ますし、色の変化やナスニンの流失も防ぐことが出来ますが、油の吸いすぎに注意が必要です。
ナスの色と釘
茄子紺というナスの色は、アントシアニンの一種であるナスニンとヒアシンという色素ですが、この色素はアルカリ性だと青ですが、酸性になると赤に変わってしまいます。お漬物は乳酸菌を使った食品になりますので、漬けていくうちに酸性度が上がり、青から赤茶に変わってしまいます。そこで、古釘などを中に入れると、色素が金属イオンと結びついて安定しますので酸性になっても色が変わらずに済むのです。しかし、食べ物に釘を入れるのはチョットと思われる方は、ぬかずけ用の鉄ナスなどが販売されていますのでそれを使われるのもおすすめです。
ナスの簡単塩もみ
ナスは縦半分に切り、端から薄切りにします。それをボールに入れ塩を振り手でもみ込みます。ナスがしんなりしたら出来上がりです。1度さっと水洗いして硬く絞り器へ、薬味に生姜のすりおろしをかけて、食べる時に醤油をかけて食べるととてもさっぱりして美味しい初夏の味です。
まとめ
収穫期間が長いナスは、肥料を切らさない、こまめな水やり、最盛期の更新剪定を行うなどの気を付ければ、初心者の方にも十分育てる事が出来る野菜です。種から植えるのも、色々な種類のナスが植えられ良いのですが、初心者の方にはやはり苗を買って植える植え方をおすすめします。是非、無農薬で採りたてのナスを味わってみて下さい。