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わずか5台限定?!伝説のスポーツバイク「KATANA1135R」の秘話を解説!

世界のYOSHIMURAのコンプリートモデルに「KATANA 1135r」というバイクがあります。世に出回った台数わずか5台という伝説級の「KATANA 1135r」ですが、その仰天のスペック、エピソードをまとめて紹介しましょう。
更新: 2021年2月24日
松山 優輝
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KATANA 1135rとは?

YOSHIMURA伝説のコンプリートマシンの一台

かの有名なチューニングメーカー「ヨシムラ」はご存知でしょうか?「ヨシムラ」の刻印のあるマフラ―であれば、よくマフラーをカスタムされているバイクには見ることができるでしょう。

このヨシムラは、バイクのカスタム、チューニングに関して古くから携わっているメーカーであり、レース活動にも活発行っているメーカーです。これから紹介する「KATANA 1135r」はそのヨシムラが生んだコンプリートマシンの一台です。

コンプリートマシンとは??

「コンプリート」とは、直訳すると「完成」という意味です。「完成されたマシン」と訳すると少し分かりにくくなってしまいますが、主にコンプリートマシンとは車でもバイクでもメーカーによってカスタム、チューニングが施されて販売されたマシンのことを指して使われるようですね。

このヨシムラも数々のコンプリートマシンを作って販売をしてきました。

KATANA 1135rのベース、GSX1100 KATANAとは?

スズキの看板的バイク?

「KATANA」と聞くとバイク乗りでもそうでなくとも知っている人が多いバイクなのではないでしょうか?

スズキのバイクは??というと、「GSX」とか「ガンマ」とか、色々とキーワードが出てくる中で「カタナ」というワードが出てくることは必至です。「KATANA 1135r」も伝説の中のバイクですが、この「GSX1100 KATANA」も数々の伝説を作ったバイクだったのです。

GSX1100 KATANA エピソード

このバイクはかつて、ハンス・ムートと呼ばれるあるデザイナーとスズキとのコラボによってモーターショーにコンセプトモデルとしてKATANAの原型ともいえるバイクが発表されたのがきっかけで生まれました。

これまではバイクのフェアリングというものは風よけのための機能的なパーツという位置づけが当たり前な時代でしたが、このハンス・ムートというデザイナーはデザインの一部としてのフェアリングをこのバイクで表現し、バイク業界に一大旋風を巻き起こしました。

KATANAの誕生

それからというもの、その既存の常識をあざ笑うかのようなスタイルは、さまざまな賛否両論を生みつつもついにスズキというメーカーを腰を動かすまでに話題を大きくしました。

コンセプトモデルのスタイルをそのままについに市販化に踏み切ってしまったのです。相変わらず賛否分かれるバイクではありましたが、ファンの心をしっかりつかみ、いつしかスズキのロングセラーバイクと相成りました。

KATANA 1135rの仰天購入方法

さてさて、ヨシムラの1135rに話を戻しますとこのバイクもさまざまな仰天エピソードがあるようです。その一つに、購入に至るまでの方法が有名です。バイク乗りの間では広く知られるアニメ「ばくおん」にその購入方法にまつわるエピソードがあります。

「ばくおん」の鈴乃木凛


GSX1100カタナに乗る父親を持つ鈴乃木凛。ある日不慮の事故により父親が大けがを負ってしまった父親に「一度でいいからヨシムラの1135rに乗ってみたかった」と吐露されます。

大好きな父から送られた「キリンさんは泣かない」の金言の通り、(これは東本昌平原作の「キリン」が元ネタとなっている。)不屈の精神でカタナに対する思いを作文に綴り、1135rの購入選考に挑みます。

1135rの購入方法は作文!

鈴乃木凛の作文は見事購入選考を合格し、晴れて1135rの購入の権利を得ることが出来ます。父親の体も回復し、晴れて1135rのオーナーとなることになったのです...。

と、ここまでが「ばくおん」の中でのエピソードですが、この話は単なる漫画の中でのオマージュではなく、実際の1135rの購入権の選考方法としてとられた方法なのです。選考に合格した者だけが358万円というびっくり価格の1135rを購入することが出来るのです。

KATANA 1135rのスペックを紹介!

より戦闘的にチューンされたエンジン

ベースはGSX1100 KATANAの純正の1074ccから1135ccにまで排気量を上げ、さらにヨシムラ製の74Φピストンにて圧縮比11.6:1というハイコンプ仕様となっています。最大出力は純正の111psに対してこの1135rは150psとなっています。

最高速は公表されていませんが、この最大出力から推測するに優に300km/h手前くらいまでは出るものではないかと予想されます。

ハイパワーエンジンを生かすための足回り、車体

300km/hほどの最高速を出せる車体であれば、その車体も純正のKATANAの車体ではスポーツ走行において少し心細いものがあるでしょう。そこも天下のYOSHIMURAによるスペシャルチューンが施されています。

フレームはピボットシャフト(スイングアームの車体側の付け根)の少し後ろ位から一回切断され、ヨシムラ推奨のディメンジョンにて再溶接されています。

その他各場所に補強が施され、さらに足回りは17インチに改造されています。車重はその結果232kgから198kgにまで軽量化されスポーツ走行をより爽快なものにします。

KATANA 1135rのカスタム内容とは ~エンジン編~

ヨシムラチューンのスペシャルエンジン

先ほども紹介しましたように排気量は1074ccから1135ccにまでボアアップされています。さらに同社製のハイコンプピストンにヨシムラST-1カムシャフトを装着し、300km/h近い最高速を出せるようチューニングが施されています。

吸排気はキャブレターをヨシムラミクニ「TMR-MJN40Φ」、エキゾーストはヨシムラサイクロンの手曲げのチタンマフラーを装備します。驚きの車体価格も納得のカスタム内容となっています。

エンジンチューンは細部にまで!

カタナのスポーツ性能を限界まで引き出すために引き上げられたエンジン出力を受け止めるクラッチも強化タイプに、そしてエンジンカバー、シリンダーヘッドカバーは軽量なマグネシウムのものに変更されています。

マグはそれ自体が高価なパーツ。車体の価格を引き上げてしまいがちな素材ですが、世界で5台の1135rには関係ありません。少しでも車体を軽量化するために、最高速を引き上げるために高価格な素材でも惜しげもなく使われています。

KATANA 1135rのカスタム内容 ~車体編~


随所に施されたフレーム補強

かつてヨシムラはカタナをベースにレース活動を行ってきた歴史があり、そのノウハウがこの1135rにも生貸されています。1135rもエンジンチューンで最高速は純正の比になりませんが、その分フレームの補強も必要になってきます。

随所に施されているフレーム加工はその時の経験が生かされており、シートレールをいったん切断してのディメンジョン調整や計14か所に及ぶフレームの補強で、スポーツ性能を限界まで引き出したカタナにふさわしいフレームとなっています。

高価格なパーツをふんだんに使った豪華足回り

ホイールは最高峰のマグ鍛を装着しばね下の軽量化によりスポーツ性能を高めます。リアショックはオーリンズ、しかもこちらにはショックの作動性をよくするFFVSと呼ばれるヨシムラ独自のパーツが組み込まれています。

フロントフォークはGSX-R600用を小加工し流用。こちらにもヨシムラのFFVSを装備しホイールをマグ鍛とします。スイングアームはこの1135r専用のスペシャルパーツで、価格に関しては明記されていませんがかなりの高価格であることが予想されます。

KATANA 1135rを生んだYOSHIMURAとは??

創業者「POP吉村」

昭和二十九年、終戦後間もないころの日本は、GHQによる支配を受けていました。当時の米兵たちにとってバイクとは娯楽のツールであったこともあり、当時オートバイの修理屋だった創業者、吉村秀雄のバイク屋には様々な米兵たちが訪れ、いつしか兵士たちの心休まる場となっていました。

米兵たちは吉村のことを親しみを込めて「POP」と呼び、(POPとは親父の意味)これが今でも呼ばれる創業者吉村秀雄の愛称になりました。

吉村の名をとどろかせた1978年の鈴鹿8耐

当時の鈴鹿8耐は、ワークスホンダの圧倒的な強さがレースを支配していました。そんな中POP吉村はスズキ「GS1000」で、その牙城を崩さんと鈴鹿に参戦、見事ホンダのRCB軍団を打ち崩し、鈴鹿8耐を制します。

この時からヨシムラの名前は広く知られるようになり、パーツの開発、レース参戦と積極的に活動し、バイクのチューニング業界をけん引してきました。

YOSHIMURAとスズキのつながり

鈴鹿8耐を制したその絆

かつてホンダのワークスが無敵艦隊と称され、鈴鹿八耐を支配していました。そんな無敵艦隊に挑もうと、スズキは「GS1000」をヨシムラに提供するわけですが、その当時そのGS1000はまだ開発段階であり、ヨシムラにアプローチを図った横内悦男はプロトタイプだったGS1000を社内の反対を振り切ってヨシムラに提供しました。

スズキのヨシムラへの大きな信頼がうかがえますね。ついにホンダの無敵艦隊を見事打ち破り、ヨシムラ、スズキの絆をより深いものにします。

その後も続く快進撃

鈴鹿八耐を制したその後も勢いはとどまることを知らず、F-1レースの三年連続優勝や1980年の鈴鹿八耐も制すなど、レース氏において輝かしい戦績を残してきました。

そのレーサーは赤と黒のカラーリングを施され、さまざまなレースの表彰台を上りました。今では鈴木=ヨシムラといえるほどに深い関係となっています。


その他のYOSHIMURAコンプリートマシン

トルネード1200ボンネビル

出典: http://psd-moto.blogspot.jp/2011/03/yoshimura-tornado-bonneville-ii.html

1987年に発売されたヨシムラ初のコンプリートマシンです。製造台数はわずか3台で、初期型GSX-R1100をベースに、500万円という1135r以上に破格なプライスで発売されました。

この時代のバイクで馬力が160馬力、車重が179kgと、20年くらい先のバイクに匹敵するスポーツ性能を誇っていました。最高速は291km/hと、その中身はヨシムラのTT-F1レーサーそのものです。

トルネードS1

出典: https://www.carbon-garage.com/shop/superbikesforsale/Sold/Suzuki/2002+Yoshimura+Tornado+S1.html

2001年に発売された1200ボンネビルに次ぐトルネードです。ベースとなったのは2002年式のGSX-R1000で、ベースとなったGSX-Rよりも早く発売されたようです。

台数は50台と1135rなどと比べると台数が作られたようですが、価格は378万円とやはり高価です。最高出力はベースとなったGSX-Rが164psのところ、170psまで高められ、おそらく最高速は300km/hを超えているものと推測されます。

トルネード3 零50

出典: http://psd-moto.blogspot.jp/2011/03/yoshimura-tornado-iii-zero-50.html

ヨシムラ最高峰のスポーツバイクで、創立50周年を記念して造られたのがこのトルネード3 零50です。

記念モデルということもあってこれまでのヨシムラがレースで培ったすべてのノウハウをつぎ込まれた最高峰のバイクであり、生産台数は5台、価格も最高峰の800万円です。ベースとなったのは2003年式のGSX-R1000で、細かいスペック、最高速などは不明ですが、ヨシムラ選びすぐりのパーツでカスタムされています。

KATANA 1135rのまとめ

スズキを愛する者へのヨシムラの贈り物

スズキのカタナとは、発売当時はその先鋭的なフォルムと性能で高い注目を浴びたバイクでしたが、今の時代となると立派な旧車のカテゴリのバイクです。

ですが時代を超えて根強いファンがいて、そんなファンたちの為に用意したヨシムラからの贈り物がこの1135rだったのです。

本当にそのバイクを愛してほしいがゆえにヨシムラは書類選考という奇想天外な方法をとってまでこのバイクを世に出したのでしょう。実写をもし見る機会があるのであれば、それは一生に一度の出来事となりえること間違いなしです。