北沢峠はどこにあるの?行き方は?
北沢峠は南アルプスにあります。北アルプス、中央アルプス、八ヶ岳などに比べて登山口までのアプローチが長い南アルプスにあって”歩かずに”到達できる数少ない登山口が今日紹介する北沢峠です。北沢峠はちょうど長野県と山梨県の県境にあたり両県から北沢峠に至る行き方があります。
北沢峠の標高は2000メートル超
北沢峠の標高は2020メートル。南アルプスの登山口としてはもっとも高い場所にあり、しかも交通機関でのアクセスが可能という登山者にとってはとてもありがたい存在です。
北沢峠は甲斐駒ヶ岳、仙丈ケ岳登山の拠点
北沢峠は仙丈ケ岳と甲斐駒ヶ岳の間の最低鞍部(一番低い所という意味)です。つまり甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳のどちらにも便利な登山の出発地点なのです。
北沢峠からは日本百名山に日帰りが可能
甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳はいずれも深田久弥の日本百名山にリストされている3000メートル級の名山ですが北沢峠を早朝出発すれば日帰り登山が十分可能です。山頂往復の標準的なコースタイムはルートにもよりますがどちらも約7時間(休憩時間含まず)です。
北沢峠の歴史:開いたのは竹沢長衛翁
北沢峠から山梨県側に1キロメートルほど下ると峠の名前のもととなった清流、北沢が流れていてそのほとりは古くから北部南アルプス登山のベースとしてごく一部の登山者にのみ知られた存在でした。ここに戸台の山岳ガイド竹沢長衛が小屋(長衛小屋)を建てたのが大正13年(1924年)のこと。それ以来この地の重要性が登山者の間に広まったものの北沢峠が奥深い地であることに変わりはありませんでした。
南アルプス林道の開通で一気にアクセスが便利に
それまで長野側の戸台から丸1日かけて歩いて入るしかなかった北沢峠に林道が開通したのは昭和54年(1979年)のことです。これにより甲斐駒ヶ岳・仙丈ヶ岳という3000メートル級の山が1泊2日で登れるようになったのです。環境保護の観点から反対運動もあった南アルプススーパー林道(南アルプス林道)ですが開通と同時に運航が始まった南アルプス林道バスによるアクセスの大幅な改善で登山者・ハイカーには大きな恩典をもたらしたといえるでしょう。
北沢峠周辺の山
北沢峠の周辺には甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、アサヨ峰、鋸岳などの南アルプスを代表する名峰がズラリ並んでいます。これらの山々の概要と北沢峠からの行き方を見ていきましょう。
登山に携行したい地図
今から紹介する山に登ろうという人は市販のガイド地図に加えて国土地理院の2万5千分の1地図(地形図)「甲斐駒ヶ岳」「仙丈ヶ岳」を携行したいところです。スマホの地図ソフト・地図アプリだけに頼るのはバッテリー切れや雨天時に難渋するのでやめましょう。
北沢峠周辺の山:甲斐駒ヶ岳
2967メートル。荒々しく男性的な山容の甲斐駒ヶ岳。伊那谷から見て東にある駒ヶ岳なので「東駒」と呼ばれたりもします。(西は中央アルプスの木曽駒ヶ岳) 山頂付近は花崗岩質のむき出しの岩稜がやや難解な登山ルートを構成しています。六方石より上部は転落の危険のある危険地帯となるので初心者は経験者と同行することが望まれます。北沢峠から甲斐駒ヶ岳には大きく分けて、①北沢峠から主稜線を登る行き方と②北沢沿いに仙水峠まで行きその後鳳凰三山から延びてきた稜線を甲斐駒ヶ岳方面に登る行き方 のふたつがあり、どちらのルート・行き方でも難易度とコースタイムは大差ありません。 (使用地図:「仙丈ヶ岳」「甲斐駒ヶ岳」)
信仰の対象でもある甲斐駒ヶ岳
甲斐駒ヶ岳は信仰の対象でもあります。ふもとの駒ヶ岳神社から黒戸尾根を登る道が古来から甲斐駒ヶ岳登山のメインルートとなっていました。
黒戸尾根はバカ登り
黒戸尾根ルートは日本三大バカ登りに必ず名前が挙がるほどの急登の難路で登山口から山頂までの標高差はなんと2,200メートル。北沢峠と甲斐駒ヶ岳の標高差は950メートルですからいかにアクセスが良くなったかがわかります。
北沢峠周辺の山:仙丈ヶ岳
3033メートル。甲斐駒ヶ岳とは対照的に包み込むような女性的な流麗な姿が美しい大きな山です。大仙丈、小仙丈、薮沢の3つのカールを抱いて高山植物にも恵まれた名峰です。北沢峠からは険しい岩稜やクサリ場なしで山頂に到達できるルート・行き方が複数あり甲斐駒ヶ岳よりも技術的な難易度は低いといえるかもしれません。ただし北沢峠から仙丈ケ岳山頂までちょうど1000メートルの高低差があることを考えると峠からの日帰りピストンはそれなりに健脚むきと考えてください。 (使用地図:「仙丈ヶ岳」)
仙丈ヶ岳は有名な撮影ポイント
視界の良い時、仙丈ケ岳山頂からは本邦1位の富士山と2位の北岳の2ショットがカメラに収められます。
北沢峠周辺の山:アサヨ峰・栗沢山
日程に余裕があれば仙水峠からルートを甲斐駒ヶ岳の反対側にとって栗沢山(栗沢の頭)とアサヨ峰にも足を延ばしたいところです。栗沢山からは摩利支天峰を従えた甲斐駒ヶ岳が間近に迫ってくるのが見られます。 (使用地図:「仙丈ヶ岳」「甲斐駒ヶ岳」)
北沢峠周辺の山:鋸岳
甲斐駒ヶ岳から北西に延びる稜線上にある鋸(のこぎり)岳。尖った岩峰群がノコギリの歯を想起させることからこの名がつけられたほどの岩山です。北沢峠からの行き方は甲斐駒ヶ岳からの縦走になりますが一般向けの登山道ではなく上級者向けです。 (使用地図:「仙丈ヶ岳」「甲斐駒ヶ岳」)
ここで紹介した山に登ろうという人は市販のガイド地図に加えて国土地理院の2万5千分の1地図(地形図)「甲斐駒ヶ岳」「仙丈ヶ岳」を携行したいところです。スマホの地図ソフト・地図アプリだけに頼るのはバッテリー切れや雨天時に難渋するのでやめましょう。
北沢峠は甲斐駒・仙丈登山に最適なベースキャンプ地
北沢峠を訪れる人の目的で一番多いのは甲斐駒ヶ岳・仙丈ヶ岳登山のベースキャンプ地としてでしょう。また北沢峠を起点・終点にした鳳凰三山や白根三山方面、さらに南部へのスケールの大きな縦走も人気です。
いろいろな楽しみがある北沢峠
北沢峠周辺の自然はバラエティーに富んでいます。山頂を目指す登山以外の楽しみもいろいろあるのが北沢峠なのです。
キャンプ(長衛小屋キャンプ場)
バス停のある北沢峠から1キロメートルほど南に下った長衛小屋前にはよく整備された広いキャンプ場がありシーズン中を通して毎日多くのテントでにぎわいます。特筆したいのは豊富な水量の水場がキャンプ場内にあること。この恵まれた条件が北沢峠をベースキャンプとして最適な場所にしてきました。バス停から林道を歩いて10-15分なので重い荷物で山道を歩きたくない、歩荷が苦手な人でも大丈夫。北沢峠はキャンプ目的で訪問する価値も十分ありそうです。ただしテントを設営しているのは大半がまじめな登山目的のパーティーですから夜は静粛にして早めの就寝を心がけましょう。
散策(北沢峠付近の原生林)
北沢峠の周りには南アルプス林道が開通する前と変わらぬシラビソ、シラカバなどの原生林が広がります。夏でも涼しい高地にある北沢峠の散策はすがすがしい気持ちにさせてくれます。特に暮れ時の北沢峠は昼間の喧騒が嘘のようにしんとしてとても神秘的です。
尾根歩き(仙丈ケ岳)
爽快な尾根歩きを存分に楽しみたい人は仙丈ケ岳を主稜線通しで登るのがおすすめです。小仙丈の手前で樹林限界を抜けた後、気持ちの良い縦走路が山頂まで続きます。振り返れば甲斐駒ヶ岳の雄姿が遮るものなくいつでも観賞できる眺望抜群の稜線歩き。
高山植物(仙丈ケ岳)
仙丈ヶ岳は南アルプスではキタダケソウで名高い北岳と並ぶ花の山でもあります。イワギキョウ、シコタンソウなどの可憐な花々に会いたい人は大滝の頭から薮沢方面のルートがおすすめです。
雪渓(仙丈ケ岳薮沢ルート)
仙丈ヶ岳 薮沢には初夏まで雪渓が残り条件が良ければ本格的な雪渓歩きが味わえます。雪とルートの状況は年と時期より異なるので入山前に登山口の大平小屋でよく確認しましょう。
運が良ければライチョウに出会えるかも
仙丈ヶ岳でライチョウの目撃情報が報告されています。運が良ければ出会えるかもしれません。
カモシカも多い
岩稜歩き
花崗岩質の甲斐駒ヶ岳は白っぽくあかるい岩稜歩きがエンジョイできます。水はけのよいザクザクの登山道は遠めに見るより歩きやすく夏場はルートもはっきりしていますが「コケたら終わり」というポイントも少なからずあるので天候が悪かったり自信がないときは無理せず引き返す判断をしたいものです。
北沢峠への行き方・アクセス
長野、山梨両県からアクセス可能
北沢峠には長野県伊那市と山梨県南アルプス市(旧芦安村)のどちらからもアクセスが可能です。
一般車両の乗り入れは禁止
南アルプス林道は北沢峠を含む全区間でマイカー乗り入れ禁止です。マイカー登山派にはやや不満が残るのかもしれませんが環境保護と北沢峠の過度な混雑、俗化を防ぐ意味で必要な措置だと登山者にも概ね好意的に受け入れられているようです。
南アルプス林道バスでアクセスが可能
その代わりに夏季のシーズン中(6月から11月まで)は長野側、山梨側いずれからもバスが運営されており歩くことなしに林道最高点である北沢峠まで入ることができます。
長野県側:戸台の仙流荘前から南アルプス林道バスが直接乗り入れ
長野県側からアプローチする場合には伊那市戸台から南アルプス林道バスで一気に北沢峠まで入ることができます。バスの停留所は伊那市営の仙流荘という温浴施設前にあります。(仙流荘については後述)
山梨県側:南アルプス市芦安から広河原を越えて南アルプス林道バスで
山梨県側は甲府方面からバスまたはマイカーで芦安まで入り、広河原を越えて北沢峠に向かう行き方が一般的です。広河原までのアクセスだけで相当な時間がかかる上にさらに南アルプス林道バスへの乗り継ぎとなるので首都圏から行く場合、鉄道利用の場合でもマイカー利用の場合でも長野県側から入る人が多いようです。
芦安には「市営芦安駐車場」が点在整備
芦安には南アルプス市の「市営芦安駐車場」がバス停の周辺に整備されています。したがいマイカーの人はマイカー規制のゲートがある夜叉神ではなく手前の芦安で車を駐車場に止めて広河原行きのバスまたは乗り合いタクシーに乗り換えることになります。
車で行くなら駐車場のある長野側・仙流荘からがおすすめ
一方、長野側の伊那市戸台には南アルプス林道バス利用者のための駐車場(無料!)が整備されているので車で行く場合には長野側からの方が便利な行き方になります。駐車場は仙流荘駐車場のほかバス停の先の河原にそれぞれ駐車場が整備されています。またバス停前に登山相談所とトイレがあります。 <駐車場への行き方> 中央道の伊那インターチェンジ→国道153号線・伊那市街・高遠方面へ→国道を右折→入船の交差点で国道361号線の高遠方面へ左折→国道152号線を長谷方面へ右折→南アルプス林道・戸台の道標に従い左折→仙流荘駐車場
北沢峠周辺の山小屋
北沢峠周辺には4軒の山小屋(山荘)があり、どれも個性的です。営業期間は小屋によって異なるのと宿泊には予約が必要なのでご注意を。
北沢峠周辺の山小屋:こもれび山荘(旧長衛荘)
便利さと快適さで選ぶなら
北沢峠バス停が目の前にあり、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳への直登ルートの登山道入り口がすぐそこに。ロケーションは抜群です。2015年に改装された内部は文句なくキレイで食事・軽食も充実しています。山小屋泊りに慣れていない人はこもれび山荘に宿泊することをおすすめします。
北沢峠周辺の山小屋:長衛小屋(旧北沢駒仙小屋)
開放的な雰囲気を楽しむなら
2013年に建て替えられたまだ新しい山小屋は1階が共有スペース(食堂、談話室)、2階がカイコ棚2段の寝室になっています。小屋の前の河原がテント場になっているので小屋泊まりの人もキャンプの開放的なムードが味わえます。長衛こやから甲斐駒ヶ岳に登るには北沢峠に戻るルートもありますが峠への登り返しを嫌って北沢添いに仙水峠へ向かう人が多いようです。
北沢峠周辺の山小屋:大平山荘
しみじみと味わい深い山旅なら
北沢峠から林道を長野側に10分ほどショートカットした薮沢ルート登山口にある山小屋です。こもれび山荘、長衛小屋にくらべて地味な印象ですがその分静か今では少なくなったランプの灯りが味わい深い山旅を演出してくれます。
北沢峠周辺の山小屋:仙水小屋
甲斐駒ヶ岳+アサヨ峰の日帰りに便利
仙水小屋は長衛小屋から仙水峠方面に約30分のところにあります。北沢峠・長衛小屋周りの喧騒が苦手という人は足を延ばして仙水小屋を利用するとよいでしょう。また1日で甲斐駒ヶ岳とアサヨ峰を踏みたい人は行動時間の節約のため前泊を仙水小屋とすることで行程が少し楽になります。
そもそも甲斐駒ヶ岳は上部に山小屋がない
山頂近くに小屋がある仙丈ケ岳と異なり、甲斐駒ヶ岳方面は仙水小屋より上部には山小屋はひとつもありませんからトイレなど注意が必要です。
北沢峠のオフシーズン
北沢峠がハイカーでにぎわうのは10月の連休が最後。翌年6月まではバスも運休し峠は深い雪の中、静寂を取り戻します。
冬季、オフシーズンに北沢峠から甲斐駒・仙丈に登ろうとする人はだれでも戸台から長い河原歩きを経て1日がかりで北沢峠に入ることになります。年末年始と5月の大型連休を除くと入山する人は少なく降雪後はラッセルを強いられることになります。日頃から鍛錬を積んだ上級者以外は近づくことは許されない厳しい世界です。
冬季の晴天率は高い
冬の南アルプス登山のメリットは晴天率の高さにあります。北西の季節風が吹き付けるいわゆる冬型の季節配置において日本海側に位置する北アルプスは吹雪の悪天に見舞われますが南アルプスは逆に晴れる日が多く明るい日差しの中で雪山登山を楽しむことができます。ただしひとたび荒天に見舞われれば中央山岳の過酷な自然が待っていますが。
北沢峠周辺の温泉情報
キャンプ・山歩きで汗をかいた後はゆっくり温泉に浸かってほっこりしたいもの。下山口が長野側でも山梨側でも下山後、気軽に利用できる温泉・温浴設備があります。
山梨側は芦安温泉群
駐車場のある芦安温泉には日帰り入浴ができる温泉宿が何軒もあり帰路に着く前に温泉入浴と食事を摂ることができます。
長野側はやっぱり仙流荘がおすすめ
長野側に下山したら迷わず南アルプス林道バス始発地の仙流荘でひと風呂浴びましょう。
まずは風呂(温泉)
仙流荘のお風呂は厳密に言うと温泉ではないようですが、豊富な南アルプスの地下水に泉質を整えるため特別な石が加えられています。温泉ではないけれど温泉と似た効能があるというところでしょうか。館内には内湯には大浴場、孔雀名王水と呼ばれる浴槽、サウナのほか夏季は露天風呂があります。 (2018年の期間とサービスは施設に確認ください)
宿泊・食事も
仙流荘は「山と渓流の宿」なので宿泊や食事での利用も可能です。チェックインは21時までなので週末登山の前泊にも利用可能です) (プランと料金は施設に確認ください)
まとめ
北沢峠への行き方・アクセスは主に ① 長野県伊那市の仙流荘から南アルプス林道バスで入る行き方 ② 山梨県甲府方面から芦安経由で広河原。広河原から南アルプス林道バスで入る行き方 の二つがありますが特にマイカー利用の場合は無料の駐車場が整備されている①が便利です。
北沢峠とその周辺の山岳には手つかずの自然と清潔で個性的な山小屋があります。ぜひ一度は訪れてみることをおすすめします。
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写真:筆者