大野山とはどんな山?
大野山は標高723.1mと低山ながら丹沢山塊の南西部を代表する山(地理院地図で確認しましょう)。山の上が牧場にされたために標高600m以上には樹木が無く、なだらかな草原状態に成っています。展望が開け、西は富士山や箱根山、北と東は丹沢湖と丹沢山塊、南は足柄平野から相模湾までの広い眺め。「関東富士見100景」や「ダイヤモンド富士の展望台」として名があります。
山頂の広い草原
牧場の中にある山頂は広い草原。祠があり、山頂を示す道標の下には大野山のシンボルともいえる木彫りの動物(小鹿)が置かれています。東屋もあるので自炊をしたり、ねそべったりしながら富士山を見たりと、ゆったりした時間を過ごせる場所。トイレも完備しているので女性や家族連れも安心です。かたわらに牛がのんびりと草を食んでいるので、しばし「アルプスのハイジ」の世界。
そんな大野山でも注意すること
丹沢の西のはずれにあり箱根に近い場所(地理院地図)なので冬に積雪があり、アイゼンなど雪山装備が必要。
丹沢山塊は鹿やサルが多いので野生動物との遭遇は多いですが、特にクマには鈴などを付ける等、警戒しましょう。また、地図(地理院地図)でも示されているように緩やかな南面と異なり、北面は鎖場や梯子もある険しさ。丹沢に多いザレ場での山崩れにも気を付けてください。
大野山の登山(ハイキング)コース
道標と一緒に置かれている木彫りの動物たち
単独で置かれている木彫りの動物たちがまとめて置かれているのも道標になります。
大野山の登山(ハイキング)コースガイド①!
大野山乳牛育成牧場
大野山には1968年に神奈川県立の乳牛を育成するため、山頂を中心として牧場が設けられました。放牧地面積59ヘクタール、採草兼用地8ヘクタール、野草放牧地21ヘクタール、その他6ヘクタールと、94ヘクタール(1平方キロ弱)にも及ぶ牧場総面積。この牧場では県内の酪農農家からメスの子牛を預かり、広い放牧地でのびのびと乳牛を育ててきました。残念ですが県の財政的理由から2015年11月末に最後まで残った2頭が下牧。2016年3月で県営牧場としては閉鎖されました。
大野山の登山(ハイキング)コースガイド②!
大野山かどやファーム
閉鎖した牧場は「大野山かどやファーム」が借り受け、地元ブランドの足柄牛生産を始めました。群馬県館林市等から生後10ヵ月の子牛を毎月8~10頭を調達して、肥育。足柄牛の特徴は、子牛に足柄茶の粉末を混ぜた牧草を与え、カテキンの効果で骨格のしっかりした牛を育てていることです。大野山産の足柄牛はすでに関東肉牛枝肉共進会で最優秀賞に次ぐ評価を受賞。「大野山かどやファーム」では肥育体制を現在の100頭から500頭までに増やして足柄牛の安定供給体制を確立する計画です。
大野山の登山(ハイキング)コースガイド③!
谷峨駅からの登頂
谷峨駅と山頂の間は富士山望める素晴らしい景色を眺めながらの登山(ハイキング)なのでおすすめ。
谷峨駅から嵐へ
谷峨駅は無人で自動販売機以外に商店などもありません。改札を出てポスト脇の階段を上がると、線路と国道246号線を渡る橋(地理院地図)。そこから少し歩いて「大野山近道」と書かれた看板の矢印に従って階段を下ります。田んぼと畑の中を進むと前方に酒匂川を渡る青い吊り橋。吊り橋を渡って左にまがり、前方の二股で右の坂道を上ります。車道の坂道のくねくねの先に民家と左へ登る大野山ハイキングコースの看板。ルートは少し複雑ですが、「嵐」までの所要時間は25分足らずです。
「都夫良野の頼朝桜」
きれいに咲いた花を愛でながらの細い登山道。5分程登って車道に出たところが「都夫良野の頼朝桜」です。源頼朝が杖を刺し、それが根付いたと伝えられる桜の大木(樹高11.6m、根回り2.4mで樹齢80年)。その先に10分位のところにバイオトイレの小屋があり、そこから再び登山道を進みます。
木彫りの雉がおかれた東屋
樹木が深く成り、20分位で再び道路(深沢三叉路から湯触経由用沢への道で484m地点)に出ると、東屋(地理院地図)。東屋には木彫りの雉が置かれています。「柚子ジャム」、「梅ジャム」、「ブルベリージャム」や「いちじくジャム」さらに梅干しや柚子胡椒をトレイに入れて無人で販売していることもあります。
害獣除けの柵
しばらく、木製の階段を登ると、登山道を遮る害獣除けの柵。扉を開けて中に入りますが、閉める事を忘れないでください。この柵の先に一気に開ける素晴らしい景観。再び柵があり、ここも開閉して通過します。
標高634mの看板を持つ木彫のウサギ
木製の階段の周りはススキが群生していて、秋には一面のススキ原。スカイツリーと同じ標高634mの看板を持つ木彫りのウサギが立っています。
草原の休憩用東屋
東屋から25分で山頂が近づき傾斜はなだらかに。草原には日除けが並び、休憩用の別の東屋があります。
祠と木彫りの小鹿の置かれた山頂
さらに傾斜が緩く成り、アンテナのある観測小屋が現われ、道はアスファルト舗装の道路に(地理院地図)。二番目の東屋から15分で祠と木彫りの小鹿の置かれた道標のある山頂に到着します(コースタイムは1時間40分)。
大野山の登山(ハイキング)コースガイド④!
山北駅からの登頂(地蔵岩コース)
JR御殿場線山北駅から国道246号線を西へ徒歩15分あるいは小田急線新松田から富士急湘南バス乗車25分で東名高速道路をくぐると、大野山入口バス停に着きます。ここから北への集落の細い車道を歩くと30分で大野山登山口(地理院地図)。
地蔵岩ルートの登り口
右の道を鍛冶屋敷方面へと辿ります。20分位で旧共和小学校。大野山・山頂と富士山が見え、トイレも使えます。そこから500m程で地蔵岩ルートの登り口。山道の入り口付近に地蔵が安置されています。
イヌクビリを通って山頂へ
雑木林の樹林の道を70分登ると牧草地の草尾根。20分草尾根を丸太の長い階段で登ると、イヌクビリで駐車場とトイレがあります。イヌクビリから15分車道を登ると標高723mの広い山頂(地理院地図)。(コースタイム:2時間50分)
大野山の登山(ハイキング)コースガイド⑤!
山北駅からの登頂(深沢コース)
大野山登山口から左へ深沢に沿って車道を歩いて登ります。深沢からの枝沢にはいると車道は山稜をほぼ直登(地理院地図)。少し左にトラバースし始めると深沢の三叉路に到着。登山口から50分程です。実際にはすでに三叉路では無くなり、少し離れた場所で西へは湯触で東へは皆瀬川方面の登山道が分岐します。
深沢三叉路から山頂へ
樹林帯をうねうねと車道を登ると、標高600m付近から牧草地となり眺望が開けます。ミニ鹿牧場跡、まきば館や牛舎の脇を通ってイヌクビリまで50分の車道登り(地理院地図)。その後は地蔵岩コースと同じ。車道だけの歩きなのでこのコースを登りに選ぶ登山客はあまりいないようです(コースタイム:2時間40分)。
大野山の登山(ハイキング)コースガイド⑥!
山北駅への下山(深沢コース)
車道ばかりのコースですが、のんびり下るにはおすすめ。広い山頂から車道をイヌクビリへ10分程で下ると、駐車場とトイレがあります(地理院地図)。イヌクビリの十字路を右に南へ下ると「大野山かどやファーム」の牛舎。牧場出入り口のゲートは夕方には閉まるので注意しましょう。その下のまきば館は、「大野山かどやファーム」が管理を引き継いでおり、見学も出来ます。ここにもトイレ。その下にはミニ鹿牧場がありましたが、ポニーがいたとの記録もあり、転用されているのかもしれません。
旧ミニ鹿牧場から山北駅へ
曲がりくねる車道を40分程下ると深沢三叉路。西へは湯触を経由して用沢方面、東へは皆瀬川方面へと通じる道が交差しています。尾根を下って深沢に沿ってさらに40分歩くと鍛冶屋敷下の大野山登山口(地理院地図)。そこから少し下ったところに「延命水」の標識のある湧水と地蔵像。25分で集落を抜けて国道246号線を東に15分歩くと温泉施設もある山北駅に戻ります。(コースタイム:2時間10分)
大野山の登山(ハイキング)コースガイド⑦!
山北駅への下山(地蔵岩コース)
標高723mの広い山頂からイヌクビリまでは10分程度。十字路をまっすぐに草尾根の丸太の長い階段に向かいます(地理院地図)。
雑木林の樹林を抜けて地蔵の安置された登り口を通り、500m下の旧共和小学校まで1時間。
旧共和小学校から山北壁へ
そこから20分位歩くと鍛冶屋敷を通り大野山登山口にでます(地理院地図)。25分で集落を抜けて国道246号線。東に向かうとトンネルをくぐって桶口橋交差点です。そこを左に向かい15分。温泉施設もある山北駅に下山します(コースタイム:2時間10分)。
大野山の登山(ハイキング)コースガイド⑧!
谷峨駅への下山
山頂から西へアンテナのある観測所の様な建物方向にアスファルト舗装を辿ります(地理院地図)。休息用の東屋の建って居る辺りから南に下る草尾根の登山道。標高634mの看板を持つ木彫りのウサギ立つ木製の階段を過ぎ、害獣除けの柵の扉を2度開閉します。山頂から25分下ると、木彫りの雉が置かれた東屋のある舗装道路との交差します。
木彫の雉が置かれた東屋から谷峨駅へ
樹木が深く成った登山道を更に下るとバイオトイレの小屋と頼朝桜のある車道にでます。少し下った嵐の登山口まで東屋からさらに25分(地理院地図)。嵐から酒匂川を吊り橋で渡り、国道246号線と御殿場線を橋で越えて谷峨駅前のポストまで20分位です(コースタイム1時間10分)。
大野山の登山(ハイキング)コースガイド⑨!
丹沢湖方面からの大野山登頂
このルートを上り下りする登山者(ハイカー)はあまりいないので、道標もところどころにしか設けられていません。地図(地理院地図)を見ながら慎重に歩きましょう。丹沢湖バス停近くの階段から登山道。鉄塔までは15分ですが、迷いやすいので気を付けましょう。鉄塔から神縄トンネルまでは25分。秦野峠分岐点までは60分かかります。
尾根道を辿って山頂へ
ここから尾根を辿ると、途中に鎖場やロープが張られた個所もあるので注意。ただ、尾根道からは登り下りとも丹沢湖が身近に望めます。60分の尾根道登りで湯本平分岐。湯本平分岐からは15分で駐車場とトイレのあるイヌクビリに着きます(地理院地図)。平らな山の上の舗装道路を西へ15分歩くと祠との木彫りの小鹿の置かれた山頂の道標に到達(コースタイム3時間10分)。
大野山の登山(ハイキング)コースガイド⑩!
丹沢湖方面への下りと一部通行止め
下りも同じ道を逆に辿ります。イヌクビリまで10分、湯本平分岐まで15分、秦野峠分岐まで50分、神縄トンネルまで40分、鉄塔まで25分で丹沢湖バス停まで10分と、コースタイムは2時間30分です(地理院地図)。上り下り全体では距離13km強で、コースタイム5時間40分です。
一部通行止め
2010年9月8日に西丹沢は台風9号により被害に遭いました。大野山北面でも土砂災害が発生。この為、現在でも湯本平分岐から湯本平方面の傾斜の急な登山道は閉鎖されていて上り下りできません(地理院地図)。丹沢湖方面からの登山道にも途中、被害個所もありますので十分な注意が必要。
大野山の登山(ハイキング)コースガイド⑪!
花の大野山
大野山は眺望が開け、景色の良さで名が知られていますが、シャガ群生やススキ群生等の花の山として名もあります。
ススキの群生は特に山頂草原一帯の秋に美しく銀色を広くたなびかせますし、シャガの群生は地蔵岩上の樹林地帯で初夏に見られます。
牧草地や麓集落の花
山頂付近の牧草地で目立つのはゲンノショウコやハキダメギク、ツリフネソウ、ツルニンジンやミズヒキ等。
麓の集落などでみられる花にはツツジ、水仙、アザミ、ススキ、蝋梅(ろうばい)等があります。
大野山の登山(ハイキング)コースガイド⑫!
山北駅前に温泉施設(「さくらの湯」)
谷峨駅から登頂して山北駅への下山がおすすめのもう一つの理由に温泉施設「さくらの湯」があります。駅の隣には山北町健康福祉センターがあり、その中に設けられている温泉「さくらの湯」は料金400円で入浴可能。天然の温泉ではありませんが、北海道長万部の温泉の名湯二股ラジウム温泉の石灰華原石を使用した炭酸カルシウムの人工温泉です。
「さくらの湯」の効能
この温泉は保温効果が高く、温泉施設は大浴場の他、露天風呂、うたせ湯、圧注浴、高温サウナ、冷水浴等の温泉を整備。この温泉施設には駐車場もあります。定休日や年末年始と夏休みの休業もあるので前もって電話等で確かめましょう。
大野山の登山(ハイキング)コースガイド⑬!
「洒水(しゃすい)の滝」
国道246号線の大野山入り口から山北駅方面にトンネルを抜けた桶口橋交差点。ここを右へと700m程度南に下ると酒匂川支流の滝沢川が分岐します。洒水(しゃすい)の滝はここから西へ800m入ったところにあるので、時間があれば立ち寄ってみましょう。
「日本の滝百選」
「日本の滝百選」に挙げられている雄大な滝は三段からなり、落差はそれぞれ69m、16mおよび29m。流れ落ちる迫力で、昔から相模の国第一の滝とされ、「蛇水の滝」の名があります。滝の近くの滝不動尊(不動明王「穴不動」)は鎌倉時代の名僧文覚上人が100日に及ぶ荒行を積んだ際に安置したと、伝えられています。
日本の名水百選
洒水(しゃすい)の滝は「全国名水百選」にも挙げられ、名水を求める水汲みの人が絶えません。
大野山の登山(ハイキング)コースガイド⑭!
山北駅前の鉄道公園
山北駅には箱根峠の厳しい勾配を越える為の補助機関車を連結する為に1889年開業した東海道本線の重要な機関区がありました。1934年の丹那トンネル開通によって箱根峠越えの区間が御殿場線として東海道本線から分離。峠越えの補助機関車として活躍した大型蒸気機関車(D52 70号機)は山北駅内に静態保存され、鉄道公園になりました。
鉄道公園の桜並木
この公園から谷峨駅に向かって御殿場線の両側500mに渡って植樹されたソメイヨシノが130本。今では「かながわのまちなみ100選」の一つで、桜の名所となっています。
駐車場・アクセス情報①!
電車でのアクセス
JRでのアクセスは、東京駅からJR東日本の東海道本線の国府津駅で、JR東海の御殿場線に乗り換えて6番目の山北駅か8番目の駅谷峨駅で下車します。
もう1つアクセスは小田急電鉄新宿駅から小田急線新松田駅でJR東海の御殿場線に乗り換えと、2番目の駅と3番目の駅になります。乗り換えを考慮するとアクセス所要時間は2時間弱。大野山登山(ハイキング)は丹沢では珍しく、駅から登って駅に下れるルートが一般的です。
駐車場・アクセス情報②!
富士急湘南バスでのアクセス
富士急湘南バス株式会社は富士急行の子会社で、御殿場線沿線と小田原駅周辺に主に路線バスを運行しています。西丹沢方面路線に新松田駅より乗車すると大野山入り口まで所要時間20~25分で、谷峨駅までは所要時間28分〜35分。本数が多くないので予め、時刻表を調べる必要があります。乗り換えを考慮するとアクセス所要時間はやはり2時間弱。このバスは丹沢湖バス停にも運行しています(所要時間は1時間弱)。
駐車場・アクセス情報③!
高速道路からのアクセス
東京都世田谷区の東京インターチェンジ(IC)から東名高速道路に乗り、神奈川県足柄上郡大井町にある大井松田インターチェンジ(IC)で降ります(東京ICから58km)。
大井松田インターチェンジ(IC)から各登山口へ
足柄平野を南北に結ぶ国道255号線に一旦は入り、直ぐに乗り換えて東京都千代田区から静岡県沼津市に至る国道246号線へ。宮路の立体交差を北側(右側)に降り、直進するとまもなく山北町役場(大井松田ICから8km)があります。役場の駐車場に駐車して山北駅までの歩きは300m余り。東京ICからのアクセス所要時間は1時間半ほどです。なお、イヌクビリにある大野山駐車場までは大井松田ICから15km。国道246号線から県道76号線を通って丹沢湖無料駐車場までは大井松田ICから20kmです。
駐車場・アクセス情報も!④
大野山登山(ハイキング)には頂上近くのイヌクビリ駐車場の他に山北町役場駐車場、山北駅前の鉄道公園・健康福祉センター(さくらの湯)駐車場、共和小学校駐車場、都夫良野の頼朝桜脇の駐車場、丹沢湖駐車場等が登山(ハイキング)ルートに合わせて利用できます。いずれも無料でトイレ完備。但し、土日や桜祭り、大野山開き等催し物のある時には満車で入れないこともあります。
まとめ
大野山は山頂一帯が1平方キロにも及ぶ牧場となっているため、樹木がなく展望がひらけて富士山、箱根、丹沢から駿河湾まで眺められる素晴らしい景観。山頂まで車道が設けられていますが、登山・ハイキングコースは整備され変化のある様々なルートを楽しめます。ススキの草原やシャガの群生に代表される花々も豊富。道標と共に置かれているいろいろな動物や鳥の木彫りが楽しみを添えてくれます。駐車場、東屋、トイレなども整備。人工温泉もあるなど、女性や家族連れの登山やハイキングには最適のコースの一つです。
丹沢山塊南西部で丹沢湖の南岸