チダイの基本情報
チダイは夏からが旬。この旬期にはよく安値で出回り、料理もされるのですが、マダイが有名過ぎて目立つことがありません。最初にチダイがどんな魚なのか説明しましょう。
チダイはマダイのまがい物?
チダイはスズキ目タイ科ですが、マダイ亜科チダイ属と分類されています。なんとなくマダイから枝分かれした偽物扱いですね。あのシーボルトがヨーロッパに標本を持ち帰り、違いが確認されたのだそうです。
成魚になるとおでこの部分が張り出してくるのが特徴で、日本では「デコ」「小鯛」などと呼ばれ、大衆的には区別されていたようです。
赤々としたエラが目立ちます
チダイは「血鯛」と書きます。エラの縁が血が滲んでいるように赤く目立つことから、こんな名前になったようです。鯛のおめでたい印象とはかけ離れたネーミングですね。
ただ、後述するように料理にはよく利用されます。マダイが産卵期を終え、あの鮮やかな桜色がくすんでしまう夏の時期からは、旬の終わったマダイの代用品として昔から祝いの席で饗されていました。
チダイとマダイ。違いと見分け方は?
区別のつきにくいチダイとマダイ。違いはどこなのでしょうか。見分け方は意外と簡単です。その見分け方を覚え、違いがすぐわかるようになれば、釣りや料理でもワンランクアップといえるかもしれません。
顔の違いと見分け方
もっともわかりやすい見分け方は顔を見ることです。張り出して角ばったようなおでこと、真っ赤なえら蓋こそチダイの特徴で、マダイとの決定的な違いです。ただし、チダイは小さい魚体が出回ることも多く、張り出したおでこが目立たない場合もあります。そんなときは下記の別な見分け方も覚えておくと便利ですよ。
背びれの違いと見分け方
マダイは美しい形状が好まれ、背びれも広げると棘の長さが揃い、きれいなカーブを描いています。一方のチダイの背びれは不揃いです。特に前から2番目と3番目の棘が長すぎ、ちょっといびつです。わずかな違いではありますが、この見分け方ができれば目が利いている証しとなるでしょう。
尾びれの違いと見分け方
尾びれにも違いがあります。尾びれの端、V字になっている部分が黒くなっていれば、それはマダイです。チダイは黒くなっていません。かなりはっきりした見分け方なのですが、欠点は焼いてしまったものはわかりにくくなることでしょうか。姿焼きなどはおでこと背びれで判断するしかありません。
チダイのさばき方1:ウロコ取り
チダイを味わう前に、さばき方を学んでおきましょう。これができないと食べられませんからね。チダイを含む鯛全般さばき方は変わりません。まずはウロコ取りです。
上手なウロコ取りとは?
さばき方の第一歩はチダイのウロコを取ります。包丁やウロコ落とし器などを使うのが普通ですが、スプーンやペットボトルのふたなどを使う人もいるようです。
尾のほうから頭のほうに向けてウロコを削ぎ取ってゆきます。柔らかい腹部はそっと、硬い背部は強めにやるのがコツです。水を流しながらウロコを取ると、飛び散るのを防げるでしょう。
ウロコ取りの注意点
ウロコ取りの際、見逃しがちなのがヒレのつけ根部分です。チダイのウロコは硬く、わずかでも残っていると食事で不快感が湧きます。おろす前の仕事といい加減にせず、丁寧に行いたいものです。
もうひとつ注意してほしいのはチダイの背びれです。鯛の背びれは鋭いですから、たまに刺さってひどく痛いときもあります。じゅうぶんに気をつけてください。
チダイのさばき方2:三枚おろし
いよいよチダイをさばいていきます。食べ方によってさばき方はいろいろですが、基本的な三枚おろしを解説します。チダイは大きさも扱いやすく、さばき方は楽なほうかもしれません。
頭を落とす
ウロコを落とし、水洗いして、タオルで拭き取ったら、次は本格的なさばき方です。尾頭付きの姿焼きにするのでなければ、頭を落とします。
チダイの特徴の血色のエラの辺りに、45度くらいの角度で包丁を入れ、次に下の胸びれ辺り、そして逆側のエラとやっていくと頭がはずれます。
それから腹部を裂き、はらわたを取ってゆきます。そしてまたしっかりと水洗いしましょう。頭は捨てずに、吸い物や煮つけに利用するといいですね。
三枚おろしのさばき方
三枚おろしのさばき方は難しくありません。チダイの中骨に沿って包丁を滑らせるように右側の身と左側の身を切り分けていくだけです。
腹部、背部の順番に切り込んで、尾のほうから包丁をスーッと持ってくれば身が取れます。裏返して背部、腹部の順に逆の身も切り離します。最後に腹骨を取って、完成です。
湯引きのやり方
湯引きする場合のさばき方を説明します。湯引きは必ずしなければならないものではないのですが、チダイを霜降りにして、いっそう美味しく頂く手間です。
三枚におろしたチダイ(三枚おろし前のチダイの場合は背と腹に切り込みを入れた状態でも可)に熱湯をかけ、すぐに氷水で冷やすのです。身がしまり、臭味も抑えられます。
チダイの美味しい食べ方1:刺身
新鮮なチダイなら、やはり刺身でいただきたいものです。チダイの旬は夏から秋。この旬の時期に、刺身こそおすすめの食べ方です。
刺身の作り方
チダイを刺身にするなら、さばき方は三枚おろしで構いません。身の中央にある血合いと小骨を切り取って、柵を作ります。おろしたチダイの身を腹部と背部に分割し、湯引きしていないのなら皮を引き剥がします。あとはお好きな大きさに切り分けて、刺身をお皿に盛りつけましょう。
塩で水分を抑える
チダイの刺身は、マダイの刺身より水っぽいという人もいるようです。実際にチダイのほうがマダイより少し水分が多いのです。気になる場合は、チダイに軽く塩を振り、30分ほど置いておくと水気が抜けてちょうどよくなるそうです。コブ〆なんかにしても美味しい食べ方になりそうですね。
チダイの美味しい食べ方2:塩焼き
チダイなら尾頭付きの塩焼きも外せません。レシピも簡単だし、旬期の祝い事の際は是非挑戦してみたい!
魚料理の王道・塩焼き
ウロコや内臓を取ったチダイの身に、早く火を通すため切り込みを入れます(下の動画参照)。それから全体に塩を振り、グリルあるいはフライパンで焼きます。
片面4、5分を目安に、お好みの焦げ具合に仕上げましょう。レシピってほどのものはありません。焼くときに尾の部分にアルミホイルを巻いておくと、尾がきれいに残って見た目も美しく仕上がります。
チダイはソテーもいけます!
チダイの切り身であれば、ソテーなどでも手軽に美味しく召し上がれます。これも塩・コショウを振ったチダイをバターで炒めるだけの簡単レシピです。お好きなお野菜を添え、レモン汁をちょっとかけていただきます。ご飯のおかずでも、ワインのお供でもバッチリの一品になりますよ。
チダイの美味しい食べ方3:煮つけ
チダイは小さいものも多く、煮つけにもしやすい魚です。これも魚のポピュラーな食べ方ですね。白身がホクホクと柔らかくなり、チダイの味を楽しめます。
チダイの煮つけのレシピ
下処理を済ませたチダイ1~2尾の身に×印の切り込みを入れます。やや大雑把なレシピですが、だし汁50ccに対して醤油大さじ2、酒・みりんを大さじ1を目安にし、加減を調整するといいでしょう。
落としブタをして、中火で8分程度煮て、その後は弱火で煮詰めながら、スプーンなどで煮汁をかけて仕上げます。一緒にショウガと煮ると、臭味も抑えられていいかもしれません。
チダイの美味しい食べ方4:鯛めし
チダイの鯛めしも美味しそうですね。鯛めしは炊飯器でも作れるのですが、今回は雰囲気のいい鍋で作る鯛めしを紹介しましょう!
チダイの鯛めしのレシピ
まず塩を振ったチダイを焼きます。ウロコ、内臓、えらを取ったものです。焦げ目をつけるのが目的なので、身に火が通っていなくても大丈夫です。米は2合、研いで水を切っておきます。
炊き汁のレシピは好みですが、昆布だし600㏄に、醤油・酒大さじ1くらいにしておくと、チダイの風味を削がないでしょうか。チダイと米を入れた鍋を火にかけ中火で5分、弱火で10分ほどで炊き上がります。
さらに7~8分蒸らしておき、鯛をほぐして混ぜ合わせれば完成です。
チダイの美味しい食べ方5:酒蒸し
チダイの酒蒸しも洒落た食べ方ですね。レシピも意外と簡単ですし、日本酒のアテにするなら、酒蒸しほど合う食べ方はありません。
簡単酒蒸しの作り方は?
ここではフライパンを使って作ります。材料は×切り込みを入れたチダイ1尾、酒適量と昆布です。下処理したチダイに塩を振り、放置すること10分。チダイを包むアルミホイルの上にクッキングペーパーと適当な大きさの昆布を乗せ、その上にチダイ、そしてこぼれないように縁を上げてから酒を入れます。
アルミホイルですっぽりとチダイを包み、水を入れて沸騰させたフライパンに投入。蓋をして20分ほど中火にかけて出来上がりです。お好みで塩やポン酢をかけていただきましょう。
電子レンジで作る酒蒸し
チダイの酒蒸しをレンジで作ることも可能です。耐熱皿にチダイと酒を入れます。臭みが残らないよう刻んだ青ネギやショウガを全体にまぶす感じで乗せます。それにラップをかけて600wで4~5分といったところでしょう。酒蒸しには多くのレシピがあるので、サイトでも探してみましょう。
チダイの美味しい食べ方6:潮汁
チダイの落としたアラの処理に困ったら、潮汁がおすすめ。アラは買っても安いですよ。チダイのうま味をあますことなく抽出する食べ方です。レシピは霜降り作業と煮込みの二段階!
潮汁:まずは霜降り
潮汁を作る前に、霜降りをしましょう。適当な大きさに切ったチダイのアラに塩を振り、30分ほどおきます。アラは臭いがきついですからね。それを沸騰したお湯に30~60秒。アラの大きさを目安に漬けます。
あげたアラを冷水でよく洗うのです。ウロコ、血合いなどは味を損ねますから、この霜降り作業が潮汁は重要なのです。
潮汁は豪快に作ろう!
きれいに洗ったチダイのアラを、出汁の昆布と一緒に沸騰した鍋に入れます。そしてすぐ弱火にします。アクを取りながら、好みの野菜を加えてもいいでしょう。
汁が透明になってきたところで、塩・醤油などで味つけします。潮汁はレシピにこだわる必要はありません。旬の時期に豪快に作って、好きなように味わう食べ方が最高というわけですね。
チダイの美味しい食べ方7:アクアパッツァ
イタリア料理のアクアパッツァにもチダイは使えます。レシピは面倒そうですが、基本は難しくありません。パーティーなんかでは盛り上がる食べ方ですから、是非挑戦してみたいものです。
アクアパッツァの材料と下ごしらえ
ここでは簡単にチダイの切り身を使います。他の材料はプチトマト(普通のトマトでもOK。1cm程度に適量刻んでおく)、アサリ・ハマグリ・ムール貝などの貝類適量、ニンニク1片(みじん切り)、白ワインとオリーブオイル、塩・コショウです。
チダイに塩を振って5分ほどおき、水気を拭いておきましょう。下ごしらえはこれで終了です。
アクアパッツァの作り方
フライパンにオリーブオイルを引き、チダイを皮から中火で両面焼きます。ニンニクを入れて香りが立ったら、トマト、貝、適量の水、そして白ワインを30㏄ほど入れて煮ます。
泡が立ってきたらフライパンに蓋をして、弱火で5分蒸すのです。あとは塩・コショウで味を調えます。普段の鯛料理とは違いが出る一品ですよ。
チダイのまとめ
チダイはマダイに負けていない!
チダイとマダイの違い、料理法や食べ方を説明してきました。旬の違いでマダイの代用とされるチダイですが、決してマダイに劣るものではありません。
マダイよりも安く手に入り、料理はチダイでも問題ないというお得な魚なのです。ブランド力が低いだけで、かなりチダイは有能な魚といえそうですね。