ガンギエイってどんな生き物?
ガンギエイはその名からわかる通りエイの仲間で、水族館に行くとひらひらと優雅に泳いでいる姿が見られるエイの殆どは、このガンギエイとと言われるほどにポピュラーな生き物です。一見区別がつかずどれも同じに見えるエイですが、よく見ると細部が異なり、判別方法を知っていると物知り気分になれる生き物です。
ガンギエイの仲間と違い
「ガンギエイ」は特定のエイの種類の名前ではなく、4科32属285種を含む「ガンギエイ目」の総称とされています。ガンギエイの他にも「毒」があることで有名なアカエイや、発電器官を持ち触るとしびれる「シビレエイ」などがいますが、アカエイやシビレエイとは別グループなことに注意しましょう。
また、見た目からはとても想像がつきませんがエイそのものが「サメ」の仲間とされています。2種は共に無脊椎動物亜門、軟骨漁網、板鰓亜綱(ばんさいあこう)に分類され、硬い骨を持たず、全身が軟骨で構成されていると言う違いが存在します。その起源は四億年前にもさかのぼり、サメの仲間の一部が底生生活に順応し、形を変えていったのがエイとされています。
ガンギエイの特徴と生態
ガンギエイ最大の特徴は何といっても、その平べったい姿。エイと聞いて連想するもの通りの姿をしていると思って問題ありません。色は暗褐色で、背面に大小の淡い斑模様も持ち、体の中央部分の一対が最も大きいのが特徴です。完全な不規則と言う訳ではないので、ガンギエイを目にする機会があったら背中に注目してみましょう。
ひらひらと泳ぐ姿から、その表面はぬるぬるしているように見えますが、体表には細かいウロコがあり、尾には肥大化したトゲを持っています。アカエイの場合はトゲに猛毒を持っていますが、ガンギエイのトゲは触れても大丈夫ですよ。発電器官も持っていますが、これは主に雌雄の交信に使われるものとされ、ガンギエイに触れしびれたと言う報告はほとんど耳にしません。エイの仲間の中で最も無害と言ってもいいでしょう。
ガンギエイの生息地と分布
ガンギエイの生息地は幅広く、青森県以南の日本海から本州太平洋岸、東シナ海にまで分布し、沖合の20~80㎝ほどの区域に生息し、3~5月になると浅い場所に移動するため、春になると海辺で見かけることが出来るようになります。サイズの大きさと海底に生息することから、釣りで狙うのは難しく、漁獲の際は主に底曳網が用いられます。
ガンギエイの仲間、カスベとは
ガンギエイは「カスベ」と言う別名も持ち、地方によってはガンギエイよりカスベで通じることがあります。カスベは地方により意味が変わる言葉の一つで、ガンギエイの事をカスベと呼ぶのは北海道、福島、富山、石川、福井、京都、鳥取ほか一部地域のみ。さらに、北海道や青森ではエイ全般をカスベと呼ぶため「カスベ=ガンギエイ」と認識していると面食らう場合があります。
まるでエイリアン?干しガンギエイの顔
エイといえば平べったい姿以外にも特徴的なのが、笑顔を浮かべているような愛嬌のある顔。ですが、ガンギエイを干物にすると、エイリアンと間違えてしまいそうないかつい顔に早変わり。中々の迫力ですが、じっと見ていると愛嬌を感じてくるような、何ともキモ可愛い顔をしています。干しガンギエイは食べ方のみでなく、顔にも注目してみましょう。
ガンギエイの味、食べると美味しい!
見た目とキモ可愛い顔からイロモノのイメージが抜けないガンギエイですが、実は食べ方次第で美味しく食べることが出来、居酒屋のメニューで出される「エイヒレ」もガンギエイが材料となっていると言う、日頃意識しないだけで身近な美味しい生き物なのです。市場にはヒレだけが出回る事も多く、コラーゲンたっぷりなので女性にもおすすめです。
おすすめは煮付け、ガンギエイの美味しい食べ方
ガンギエイは韓国でもよく食べられている食材のひとつですが、日本流の食べ方でおすすめなのは、醤油や酒で「煮付け」にしたり、食べやすい大きさにカットし片栗粉をまぶしカラッと揚げ「唐揚げ」にし頂く事。ここでは北海道では定番の家庭の味である「煮付け」を紹介していきます。骨まで食べられるため、コリコリした食感が癖になる食材です。
①・醤油と酒と砂糖を鍋にかけ、ひたひたになるくらいの水を混ぜ沸騰させる ↓ ②・沸騰したらガンギエイを入れ、落し蓋をして煮込む ↓ ③・煮汁がしみこみ切らないうちにガンギエイを取り出し、皿の上に乗せる ↓ ④・残った煮汁を煮詰め、皿の上のガンギエイに回しかけ出来上がり
ガンギエイと韓国料理
ガンギエイはお隣韓国では「ホンオ」と言う名称で親しまれており、冷麺の具材にされたり、サンチュに載せキムチと一緒に食べたりと食べ方も韓国流。キムチと焼肉とサンチュのイメージが強い韓国ですが、エイ料理の本場でもあり、ホンオ料理で探せば他にも色んなメニューが出てきます。
辛みと臭いがクセになる、ホンオサマッ
ホンオ料理の代表の一つが、発酵させたガンギエイと茹でた豚肉とキムチの3つを、これまた韓国料理の定番であるサンチュに載せて食べるホンオサマッです。何とも不思議な料理名ですが、ホンオサマッのサマッは漢字では「三合」と書き「ホンオ含む3つを合わせ食べる料理」と読むことが出来ます。
このホンオサマッは元々は地方料理だったとされていますが、その美味しさからメジャーな食べ方として出回るようになったとされ、発酵したガンギエイの放つ独特の臭いとキムチの酸っぱさと辛さ、豚肉のジューシーさとサンチュのほろ苦さが絶妙にマッチし、お酒との相性も抜群。食べるときは是非マッコリと一緒に頂きましょう。
激臭!ホンオフェ
韓国では、このホンオことガンギエイを刺身として食べ、「ホンオフェ」と言う名で、主に冠婚葬祭で食される縁起物として親しまれています。それ以外にもこの「ホンオフェ」は味のみでなく別の意味で有名です。それはすさまじい臭いがすること。その臭いは、なんとあのシュールストレミングに匹敵すると言われ、同じく臭い事で有名な「くさや」も凌駕するとされています。
何故こんなに臭いのかと言うと、それはガンギエイの肉がアンモニアの元を含み、約10日間の発酵により臭いが凝縮されるため。ホンオフェは強烈なアンモニアの臭いが鼻を刺激しますが、肉自体はあっさりとした味わいで、豚肉やキムチと合わせると絶品。日本の「くさや」を更に強烈にしたような癖になる味わいです。
ホンオフェ韓国流の食べ方、キムチとキャベツがミソ
そんな臭い事で有名なホンオフェですが、日本と同じ感覚で食べると臭いが気になると言うだけで、韓国流の食べ方をすれば十分に美味しく頂ける食べ物と変わります。韓国流のガンギエイ刺身の食べ方で大事なのは食感と辛味、まずは千切り生キャベツの上に刺身を乗せ、ふたつを混ぜ合わせましょう。
しっかりと混ぜ込んだらキムチを混ぜ、更に混ぜていきます。ソースが均等に馴染み、刺身全体がほのかに赤っぽくなったらキャベツと一緒につまみ口の中へ、こうする事でキャベツのしゃりしゃりした食感とエイのコリコリした食感とキムチの辛味がマッチし、ものすごく臭い刺身から美味しい韓国流刺身と早変わりします。キムチの他にもうひとつ、豚肉と一緒に食べることもおすすめですね。
ホンオフェはすぐ呑み込む、噛み過ぎ注意
ホンオフェは世界で二番目に臭い食べ物とされ、その臭いの強烈さからシュールストレミングに並んで罰ゲームとして食べさせられることも多い料理です。食べ方に工夫すれば美味しいと言ってもよいのですが、ホンオフェを食べるときは長時間口に入れず、すぐに呑み込むようにしましょう。特に発酵が進み柔らかくなったものは注意が必要で、口の中がホンオフェの成分でただれてしまうばあいがあります。
ガンギエイの魅力、イロモノと思うなかれ
ひらひらと泳ぐ不思議な姿に笑っているような顔、更に身から臭いがするなど、イロモノのイメージが抜けないガンギエイですが、調理や食べ方次第でいくらでも美味しい料理が作ることが出来、ガンギエイ料理が好きと言う方も少なくはありません。エイヒレが気になると言う方は東北に、刺激的な体験がしてみたい!と言う方は韓国へ向かう事をおすすめします。