エビネとは
球根のようなバルブを持つラン科の多年草
エビネとはラン科エビネ属の多年草です。 山野草のエビネは日本全国に自生し、朝鮮半島や中国にも分布します。茎は30〜40cmにも伸び、複数の花を咲かせ、園芸としても人気のある植物です。 「エビネ」という日本名は、球根のような偽鱗茎(バルブ)というものが地下に10個ほど連なっており、その球根がエビの背に見えることが由来です。この球根は年々増えますので、株の増やし方を知っていればいずれ多くのエビネを楽しめますよ。
「美しい花」と呼ばれるエビネ
エビネは海外だと「カランセ」と呼ばれており、これは「美しい花」という意味があります。 ラン科の中でもエビネほど色とりどりの可憐な花を咲かせるものはなかなかありません。 花言葉は「華やかに美しい人」「あなたらしく」などがあり、多彩なエビネらしいものですね。
エビネの種類
山野草のエビネと園芸用のエビネ
エビネは、主に山野草のエビネと、園芸用に改良されたエビネが知られています。 山野草のエビネは、園芸用のものほど華やかさはないですが、わび・さび的な日本らしい美しさから、東洋ランとしての人気を高く集めています。 園芸用に改良されたエビネは花の色も種類によって多岐にわたり、そのカラフルな色合いと美しさから海外でも人気があります。これからエビネを育てるのを検討している方は、どんな鑑賞をしたいかによって種類を選んでくださいね。
エビネの原種と雑種
エビネは世界で約200種類弱の原種があります。 その中で日本では約20種類ほどの原種が存在し、全国に分布しています。主に国内で栽培用とされている原種はジエビネ・キエビネ・サルメンエビネ・ニオイエビネ・キリシマエビネの5種類です。 自生しているエビネは複数の原種が隣り合って生えていることがあり、そこから違う種類同士が交配して、さまざまな雑種が生まれています。また園芸用として原種を掛け合わせた雑種も多く生まれており、色とりどりの花を楽しむことができます。
エビネの開花時期
主に春が開花時期
日本で園芸用とされているものは主に春咲きのエビネで、4〜5月が開花時期となります。 これはエビネの中でもジエビネという種類のものが多く、かつては日本の標高の低い山に自生していたものです。 春になり開花時期になると10〜30輪ほど花がつきます。他にもエビネには夏に開花するものがあり、こちらは熱帯性の種です。アジアの熱帯雨林に主に自生します。
エビネの育て方
楽しみ方により合った育て方を選ぼう
エビネは、先ほどもご紹介したように山野草の種類と園芸用に改良されたエビネでイメージが異なります。 和風で自然な原種本来の花を楽しみたいなら山野草の株を選び、カラフルで洋風な花を楽しみたいのであれば園芸用に改良されたエビネを選びましょう。どちらも美しい花を楽しめる植物ですので、ご自分のお好みの方を育ててくださいね。
エビネの育て方 1.栽培に適した用土の種類
さまざまな種類の用土
エビネは、水はけがよく程よく乾燥しにくいものであれば、さまざまな用土で育てることができます。 園芸で一般的な赤玉土や軽石などの用土から、シガラチップ、水苔、鹿沼土など、ブレンドでも単体の用土でも使用可能です。園芸初心者の方は、軽石に腐葉土(荒めのもの)を混ぜた用土がおすすめです。
肥料
エビネにあたえる肥料は土や環境にもよりますが、すぐに溶け出さないタイプの固形肥料をあたえると良いでしょう。置き肥料であれば年間通して与えても大丈夫ですが、夏に暑さや冬の寒さのために与えすぎないようにしましょう。 また肥料を与え始める時期としては、開花時期が過ぎ根や茎が再び育ち始める、6月前後にすると効果的です。エビネは万一秋に葉が害虫などに食べられても、夏前に根や茎がしっかりと育っていれば、また花を咲かせることができます。
エビネの育て方 2.日当り
直射日光が控えめの明るい場所
エビネは地植えの場合は、暗くなりすぎない明るい場所で、かつ真夏の直射日光はあたりにくい場所が適しています。 真夏以外の季節であれば、陰で日光が少し差す木陰のような場所が合います。こうすることで用土内で根がしっかりと育ち、開花時期には多くの花を咲かせます。また鉢植えで育てる場合は、気温が土に与える影響が大きいため、地植えより日光があたりにくい場所にしましょう。
エビネの育て方 3.鉢植え・地植え
鉢植えの育て方
エビネは、ビニールポット・プラスチック鉢・プランターなど、様々な鉢植えでも育てることができます。 鉢は育てるエビネに合ったサイズのものにしましょう。通常であれば3.5〜7号がよく利用され、大株だと30cmほどの大きな鉢が必要になります。 またエビネはもともと群生する植物ですので、プランターなどで何株が寄せ植えしてもよく育ちます。株で植える場合は、根に大して大きすぎない鉢を選ぶようにしましょう。水を余分に摂取して根腐されを起こすのを予防するためです。
地植えの育て方
エビネは地下に球根のようなバルブがありますが、これは球根ではないため、種で植え付けを行います。真夏や真冬を除けば、いつでも植え付けることができます。初心者の方は株分けされた苗から植え付けるのがおすすめです。 まず20cmほど庭土を耕し植えましょう。鉢での栽培に比べて根の成長も進みやすく、大株にすることができます。
地植えの育て方の注意点
エビネを地植えする際、根はほぐさないように注意しましょう。 また地植えで雨のあたる環境であれば、極端に乾燥していなければあまり水やりの必要はありません。逆に水をあげすぎると病気の原因にもなりますので気をつけてください。
エビネの育て方 4.株分けと植え替え
エビネを元気に成長させたり、株の増やし方として一般的に株分けや植え替えを行います。 株分けや植え替えをした後は、寒風があたりにくく、かつ明るめの凍らない場所へ置いてくださいね。株分けや植え替えが初めての方は、ぜひこちらの記事をご参考ください。
株分け・植え替えするタイミング
エビネは毎年成長に合わせて、根付近の球根が3cmほど移動します。 鉢栽培や地植えをした最初の位置から移動してしまったり、鉢が球根でいっぱいになったら株分けや植え替えを行います。これはエビネの増やし方としても最適です。 そのほか、地植えの栽培環境を変えたかったり、鉢植えで用土を別の物に変更したい時も植え替えをします。時期は冬の間に行うのがおすすめです。初心者の方も、根や茎を痛める心配が少なくなります。また、エビネの増やし方として株分けするのか、一つのエビネをより大きく育てたいのかにもより、方法が異なります。
株分け(増やし方)の方法
株分けは、エビネの増やし方として特に一般的な方法です。 すでにエビネを育てていて、増やし方を検討している方は増えた球根部分から株分けしてあげましょう。 具体的な手順は以下です。 (1)鉢から株を抜き、土を落としながら優しく根をほぐす (2)株を分ける。この際、新芽に対して球根が2個以上ついているようにする ※新芽を傷つけないように注意しましょう。 (3)鉢に分けた株を入れる (4)用土を周りから入れ、肥料をあたえる また、新芽の無い球根はミズゴケにつつみ、植えてあげましょう。
植え替えの方法
株分けはエビネの増やし方としてご紹介しましたが、植え替えは小さすぎる鉢で株が弱ってしまっていたり、買ったままのビニールポットに入れている場合に行います。栽培により球根が増えた場合も同様です。 実際の植え替え手順は以下です。 (1)植え付ける場所に適切な用土を用意する (2)枯れ葉がある場合は取り、株を抜いて、一回り大きい鉢or地植えの場合植えたい場所に植える ※この際、からんでいる根をほぐさないようにしましょう。 (3)植え替え後、肥料をあたえる 植え替えた後は、新しい環境がエビネに合っているか定期的に見てあげましょう。
エビネの年間の栽培方法
ここでは、エビネの年間を通しての栽培方法をご紹介します。 エビネの年間の育ち方を知り、適切なお手入れをしてあげましょう。
年間の栽培方法 1.春(3〜5月)
開花時期を迎えるエビネ
エビネは春になると開花時期を迎えます。 2月下旬頃暖かくなると根の成長が早まり、水分がより行き渡り新芽の成長が促されます。4月頃にはつぼみができ、その後2〜3週間ほどで開花します。一度開花すれば3〜5週間ほど花を楽しむことができますよ。 根の成長により水分を多く摂取する分、水やり回数を増やしましょう。ただしあげすぎると根腐れの原因になりますので、ほどほどにしてくださいね。またつぼみが見えてからは風通しを良くして、病気にならないようにしましょう。
綺麗な花を育てるために
エビネは水が不足すると、茎が曲がったり花の数が少なくなってしまいます。 凛とまっすぐに咲くエビネを楽しむために、乾燥には注意しましょう。 また花は湿度が高いと速くしぼんでしまうため、鉢で育てている方はじめじめした場所には置かない方がおすすめです。鉢を移動させる場合は、エビネは急な変化に対応できない場合があるため、いきなり日陰から日当りの良い場所にするのではなく、数日置きに移動して慣らすなどしましょう。また肥料をあたえるのであれば、この時期までが良いですよ。
年間の栽培方法 2.夏(6〜8月)
勢い良く成長する時期
エビネは夏になると根や葉のが更に成長し、葉は厚みがある緑色になり、夏の強い陽射しや風に向いた身体になります。 梅雨明け頃から球根のようなバルブも肥大化し、早くも翌年の開花のための分化が始まります。日本で多く栽培されている春咲きのエビネは、およそ8月頃まで球根からの花芽分化が行われます。そのため夏仕様の根や葉になっていても、あまりストレスのかからないように高温多湿を避けた環境にしてあげましょう。そうすることで、翌年も立派な花を咲かせます。
こまめな水やりを心がけよう
特に地植えの場合、ほぼ水やりは気にしなくて良い花ですが、夏場は乾燥のしすぎに気をつけ、他の季節よりこまめな水やりを行いましょう。 水やりはほとんどの種類が夕方や夜に行うのを好みます。また日中は暑くても夜間の温度はあまり高くない場合、残った水によって根を痛める原因にもなりますので注意が必要です。 高温が続く場合は葉に水をかけるようにすると、エビネの消耗を抑えることができます。その他、暑さが厳しくても肥料は与えすぎないようにしましょう。何よりも毎日のエビネと用土の様子を見て、時々に合った量の水をあげる事が大事です。
年間の栽培方法 3.秋(9〜11月)
9月中までは細やかな管理が必要
夏の時期は過ぎたものの、9月はまだ暑い日も多くあります。 残暑が厳しい場合は、夏場同様にエビネを気づかうことが大事です。また9月頃までは、エビネが翌春にどのくらいの花を咲かせるが決まる大事な時でもあります。実はこの時期にはつぼみの数が決まっているんですよ。できるだけ毎日エビネの様子を観察し、状態の良いようにしましょう。 また元気がなくなってきたからといって過剰に肥料をあげると逆効果にもなりますので、まず秋になって陽射しがどう変わったかなど、環境をみてあげましょう。
種類により成長が異なる
エビネは園芸用に色とりどりの種類が販売されています。 秋は種類により成長が異なり、主にジエビネなどの種類では、冬至芽の成長は遅めでしっかりとした固さがあり、閉じたまま地中で冬を過ごすものもあります。 一方ニオイエビネやサルメンエビネを原種とする種類だと、冬至芽の成長が早く、冬には大きな芽になります。
年間の栽培方法 4.冬(12〜2月)
開花を待ち寒さに耐える
エビネの成長は夏〜秋でピークを迎え、冬は一番成長がゆっくりになります。冬前にしっかりと成長したエビネであれば、冬の寒さに耐えながら、つぼみを減らさずに春を待ちます。 また凍結を避けるため、根からの給水は少なくなります。葉は下向きになりますが、これは寒さに耐えるためにエビネが行っているためで、枯れ始めた訳ではないので安心してください。また冬といっても日中の直射日光には気をつけましょう。
凍結しない程度の風通しが良い所へ
寒い地域でエビネを育てる場合、長時間寒風に当たる場所へ置くと凍結の恐れがあります。 ですが、風通しの悪い場所だと病気になりやすくなりますので、鉢で育てている場合は鉢通しの感覚を空けるようにしましょう。 地植えの場合は、冬になり葉が下がってくることを元気がないためと思い、水やりしすぎると凍る恐れがあります。地植えで屋根のない雨があたる場所で栽培しているのであれば、ほぼ水やりはいらないため心配しなくて大丈夫です。
開花後のお手入れ
来年の花のために
春の開花時期が過ぎ、花がしぼみ始めたら、早めに花茎を取るようにしましょう。新芽の基は押さえて、花茎と一緒に取れないようにしてくださいね。 花茎が長く残ったままになると段々固くなってしまい、落下した花ガラからカビが発生し、新芽の病気の基になってしまいます。また開花時期の後から、置き肥料を与えだすと夏の時期に根が良く成長します。
エビネを育てる際の注意事項
せっかく育てるのであれば、綺麗な花を気持ちよく楽しみたいですよね。 ここでは、エビネを育てる際の注意事項をまとめました。 実際に育てる前に確認しましょう!
準絶滅危惧に指定されるエビネ
山野草のエビネは、環境省のレッドリストにある準絶滅危惧に指定されています。 減少の主な理由として、園芸用の採取があげられます。自生しているエビネを採集し、販売することは禁止されていますので、山野草のエビネの株を購入する際は注意してくださいね。これからも自然のエビネの姿を見れるように守っていきましょう。
害虫被害
エビネは葉も大きいため、さまざまな害虫がつきやすい花です。 主にエビネにつきやすいのはアブラムシ・ナメクジ・毛虫・ハダニ・ゾウムシなどで、春〜秋の間に多く発生します。 害虫に食べられると、見栄えが悪くなるばかりではなく、株自体が病気になってしまう場合もあります。もし発生した場合、発生初期になるべく早く対処するようにしてください。
環境に合った育て方でエビネを楽しもう!
エビネの育て方や増やし方をご紹介しましたが、いかがでしたか? エビネは複数の種類をミックスすれば、お庭や花壇がカラフルに色づきますよ♪ 用土や肥料も複雑ではなく、また増やし方を知っていれば、成長に沿って多くのエビネを楽しめます。 あなたもぜひエビネを育ててみてくださいね。