YAMAHA trx850 とは?
YAMAHAの大排気量二気筒スポーツ
時は1995年、2ストロークエンジン搭載の過激なバイクたちがラインナップから消えていき、ブームの落ち着きを見せていた頃でした。ヤマハから当時パリダカレースのワークスマシンの技術を持ち込んだオンロードスポーツバイクが発売されました。その名は「trx850」。その性能は高く評価され、当時の二気筒レースなどで数多く採用されるなど活躍を果たしました。
DUCATIのパクリとは言わせない
当時その「trx850」について話題に上がったのが、有名なDUCATIの「900ss」と似すぎているということでした。写真で見るとなるほど確かに、同じ二気筒であることからフレーム、顔つき、シートカウルに至るまで何やら兄弟なのではないかと言いたくなるほどに類似しています。実はこのtrx850は数多く台数が売れた人気バイクとは言えなかったのです。ですが、似せて作ったかどうかは別としてもこの「trx850」、さまざまなYAMAHAらしいこだわりが隠されており、近年になってその性能を評価するインプレも多いです。
YAMAHA trx850の特徴
YAMAHAこだわりの270度クランク搭載並列二気筒エンジン
そのエンジンは、シリンダーを前傾させ、吸気側を3バルブ、排気側を2バルブの計5バルブとするヤマハお得意のジェネシスエンジンであり、優れた燃焼効率、燃費を実現しました。さらにクランクの異相角は270°に設定し、その不等間隔爆発のエンジンによりVツインエンジンのようなトラクション特性を手に入れました。不等間隔の爆発は、タイヤのグリップを失いにくく、エンジンのパワーを効率よく路面に伝えることが出来ます。
二気筒エンジンと相性抜群のトラスフレーム
ヤマハはさらにこのtrx850に、並列並びの構成のエンジンとスリムな車体を両立させるためトラスフレームを採用しました。トラスフレームの利点はフレーム剛性を個所ごとに細かく設定できることであり、さらにパイプフレームゆえのエンジンレイアウト、その他諸々のパーツの配置の自由度の高さなどがあります。フレームのしなり方も自由自在に設定できるので、コーナリングが強みの二気筒バイクにはもってこいのフレームです。
マスの集中化とは??
マスの集中化とは、バイクの中心に重量物を集めてなるべく一転に重心をまとめることです。これをすると、ライダーは自分に近いところに重心があるので、よりバイクをコントロールしやすくなります。それはちょうど金属バットよりテニスラケットの方が振り回しやすいように、ゴルフのアイアンよりパットの方が少ない力でスイングできるように、バイクも人馬一体となるスポーツ用具ですので、ライダーの反応に素直な方がいいのです。
YAMAHA trx850のスペック紹介
trx850のエンジンスペック
trx850のエンジンは、排気量が849ccの水冷DOHC5バルブ並列二気筒です。そのエンジンからは、83馬力の最大出力と8.6kg.mの最大トルクを発生させます。馬力の数値だけで言えばそこまで目立つ数値でもないですが、二気筒ゆえの鋭いダッシュで車体をぐんぐんと加速させます。それでもやはり大型バイク、最高速は230kmほど出てしまいますので、スロットルを全開にする運転は一般道ではよした方がいいでしょう。燃費は17km/L程で、ツーリングのような長距離走行になりますと20を超えていける燃費の良さがあります。
trx850の車体スペック
trx850の車体は、コンパクトなエンジンを搭載しているが故のコンパクトな車体が特徴です。その車体サイズは2070mm × 1155mm × 705mmと、これは400ccのバイクと比較しても遜色ないくらいの小ささです。シート高は795mmと、実用的なシート高で細い車体も相まって身長が170mmもあればしっかりとした足つきが確保できるようです車重に関しても189kgとこちらも同クラスのバイクが車重を200gk前後なのを考えたら軽いといえるのではないでしょうか。コンパクトな二気筒エンジンがもたらす恩恵は凄いものですね。
YAMAHA trx850の走行インプレ
二気筒エンジンと侮るなかれ
trx850のエンジンは意外と高回転寄りの味付けがなされており、パワーが高回転域に集中している分アイドリング~発進程度の回転域ではトルクの細さ、パワー感が希薄な印象を受けるライダーが多い様です。ですがそこから回転を増していくほどに徐々にトルク感が顔をのぞかせてきて、ツーリングなどでも二気筒ならではの心地よい鼓動を味わいながらの巡航が出来ます。
高回転は強烈ダッシュ!
trx850は当時はサンデーレースで活躍したバイクです。今のスポーツバイクの基準で考えたら絶対的な速さ、最高速は足元にも及びません。ですがその走らせ方次第では現代のバイクにも劣らぬパフォーマンスを発揮することが可能です。高回転寄りな味付けのエンジンは2st的なパワー感の盛り上がりを見せ、回せば回すほどに元気なエンジンです。その程よい加速感は人間の感覚の限界を超えることのないレベルで、公道にして必要にして十分なパワーです。
YAMAHA trx850のコーナリングインプレ
街乗りでは、素直なコーナリング特性
trx850は、街乗り、ツーリングなどの日常的なライディングのステージであれば、その車重の軽さやコンパクトな車体も手伝って軽やかなコーナリングを楽しむことができます。足つきもよくハンドルの切れ角もある程度確保されているので、大型初心者のライダーでも積極的に車体を操ることができるでしょう。ただし、低速ではツインエンジンならではのギクシャクとしたトラクション特性が顔を出します。そこさえ気を付ければtrxはライダーに素直なコーナリングをしてくれます。
スポーツ走行になると...
ツーリングなどのクルージング程度での素直なコーナリング特性とはまた別に、trxはコーナリングにおいてもう一つの顔をのぞかせる場合があります。それは積極的な荷重移動が要求されるスポーツ走行においてです。この場合になるとtrxはライダーに素直な動きはしてくれなくなり、車体の上で前後左右に積極的に動くようライダーに要求してきます。要求にこたえてくれれば二気筒らしいキレのあるコーナリングで答え返してくれます。
今日まで継承されるYAMAHA trx850イズム
ハンドリングのヤマハ
ヤマハは日本のバイクメーカーの中でも特にバイクのハンドリングに関して深く吟味しているメーカーです。このtrx850も、最高速こそ伸びない二気筒エンジンでもその特性をうまく利用してヤマハらしいといえる高次元のコーナリングをこなせるバイクとなっています。
trx850の技術は現代でも
実はこのtrx850の技術を継承したバイクは今でもヤマハで活躍しています。現在ラインナップ中の「mt-07」は、このtrxと同じ270°のクランクを採用しトラクション性能を高めています。さらにはフラッグシップモデルの「yzf-r1」や、motoGPマシンの「yzr-M1」が採用している「クロスプレーンクランクシャフト」もこのtrxのそれと同じようなシステムでトラクションを稼ぐメカニズムです。いずれも最高速が犠牲になる代わりにコーナリング性能をアップさせます。
不当間隔爆発の恩得
さて爆発がまばらだと何がいいのかいまいちイメージしにくいですよね。基本的にエンジンの中で爆発があった時その力がタイヤにトラクションとして伝わるわけなのですが、この爆発と爆発の間でタイヤはグリップを回復しているのです。この爆発が不当間隔だとその感覚が広いところ狭いところが生まれ、広いところでタイヤのグリップを大きく回復できます。結果、コーナリング中でタイヤがグリップにいっぱいいっぱいの状況でも安定して車体を前に進められるのです。
YAMAHA trx850まとめ
得意ステージは?
trx850はそのとっつきやすさからどんなステージでもこなせてしまうバイクです。ツーリングでも必要十分の最高速は出るバイクですので高速道路などでの巡航においても困ることがありません。街乗りでも車体の軽さがきいて取り回しには苦労しませんし、燃費も良く、サーキットでも腕次第では現代のバイクにもしっかりついていけるポテンシャルの高さがあります。
表向きはオールラウンダ―、裏向きは?
以上のようにどんなステージでもこなせる懐の広さがあります。ただインプレッションを集めると意外と細い低速トルクにしっかりライダーとしての仕事を要求してくるそのコーナリング特性など、少し辛口な一面も垣間見得るようです。ですが最終的にはライダーの満足を勝ち取ってしまう不思議な魅力のあるバイクがこのtrx850なのです。