サツキマスの生態
釣りをする前にまずは生態を知ろう
サツキマスに限らず、釣りする際にまず対象魚の生態を知ることはとても大切なことです。名前は聞いたことがある方も多いかもしれませんが、生態がどうなっているかまではわからない方も多いと思います。そこでまずはサツキマスの生態について考えてみましょう
サツキマスはサケ目サケ科の魚
サツキマスは、アマゴの降海型でサケ目サケ科に属する魚です。アマゴはもともとは河川で一生を過ごしますが、海に降りそしてまた産卵のために河川に戻るものがいて、これをサツキマスと呼びます。海に降るのは主に雌で、雄は河川にそのまま残ります。
サツキマスの形態
サツキマスはサケ科の魚の中ではさほど大きい部類ではありませんが、それでも大型のものは50センチを超えます。体色は銀白色で、赤い斑点も大きな特徴のひとつです。
サツキマスの一生
海から遡上してきたサツキマスが産卵をするのは9月から11月、孵化するのは12月から翌年の1月にかけてで、その年の秋頃から海に降ります。海に降ったサツキマスが河川の遡上を開始するのは、海水温と河川の水温が同じくらいになる4月から6月にかけてで、数ヶ月かけて河川の源流部まで遡上し産卵します。ちょうど5月(皐月)の頃に遡上を始めるのでサツキマスという名前がつきました。
サツキマスの特徴
アマゴとどこが違う?
アマゴにはパーマークと呼ばれる模様が側線にありますが、サツキマスは生まれてから海に降る前にはパーマークが薄れて体色が銀白化します。これをスモルト化と呼びます。
マスにもいろいろあるけれど
前述したとおり、サツキマスはアマゴの降海型ですが、似た生態をもつ魚にサクラマスがいます。サクラマスはヤマメの降海型です。もともとアマゴとヤマメは生息域が別れていましたが、放流等により生息域が被るようになりました。そのため中間的な個体や交雑種も確認されており、琵琶湖では固有種ビワマスとの交雑個体も発見されています。
サツキマスの生息地域
サツキマスはどこにいるの?
アマゴが海に降ったのがサツキマスですので、生息域はアマゴと同じ神奈川県西部より西の太平洋側です。人為的放流により、北陸地方の河川でも生息が確認されています。
サツキマス釣りのシーズン
サツキマスが河川に遡上し始める頃がシーズンイン
サツキマスが河川の遡上を始めるのが4月から6月ですので、その頃がサツキマスのシーズンです。早いところでは3月から河口域付近でサツキマス釣りを楽しむことができます。
遡上するサツキマスに狙いを定める
どんな魚を釣るときにもいえることですが、今釣っている場所に魚がいなければ釣れません。遡上中のサツキマスが河川のおおよそどのあたりにいるのか、予想しながら戦略を練っていくこともサツキマス釣りの魅力のひとつです。
サツキマス釣りのポイント
まずはサツキマスの生息する河川に行こう
どんな河川にもサツキマスがいるわけではありません。まずはサツキマスのいる河川を探しましょう。有名なのは長良川や揖斐川ですが、釣具屋さんやインターネットで近隣の河川の情報を集めてみるのも良い方法です。
下流?中流?上流?
サツキマスの遡上する河川を見つけたら、次はその河川のどのあたりにサツキマスがいるのかを考えます。シーズン初期であれば河口近くに集まっている可能性が高いですし、少し季節を先取りしていち早く中流域に差し掛かっている個体を狙う方法もあります。分からなければ実際に釣りをしてみてもいいですし、目視できるのであれば橋の上から周辺の状況を探ってみることも大切です。
現地の声が強い
通いなれた場所ならともかく、初めてであったり釣行回数の少ない場所で釣りをする場合は不安材料が多いのも事実。そんなときは近隣の釣具屋さんで情報を集めてみましょう。釣り場の状況やお客さんからの釣果情報はもちろん、店員さん自身も釣りをしていますので、具体的な釣り方に至るまでまさに今、旬な情報を仕入れることができます。
サツキマスの釣り方
サツキマスはルアーで釣るのが面白い
サツキマスの釣り方には餌釣りとルアー釣りがありますが、なんといっても人気はルアー釣り。小魚に似せたルアーという疑似餌を使った釣り方です。ルアー釣りは人間と魚の知恵比べであり、魚との駆け引きを楽しむ高いゲーム性から多くの釣り人がルアー釣りの虜になっています。
サツキマス釣りのタックル1.ロッド
①専用ロッドでなくても大丈夫
サツキマス専用のロッドがあるに越したことはありませんが、必ずしも必要なわけではありません。トラウト用ロッドでも十分ですし、ブラックバス用のロッドやエギング用ロッドなどでサツキマスを釣っている方もいます。後述しますが、使うルアーのウエイトが最大15グラムくらいとなりますのでそのくらいのルアーが使えるものであればかまいません。
②遠投できる長めのロッドが有利
サツキマス釣りでは、河川の河口域や下流域で行うことも多くあります。そこで重要なことのひとつはどれだけ遠投できるかです。河口域や下流部は川幅も広く、どれだけ遠くへ投げることができるかでサツキマスと出会える確率が変わってきます。遠くへ投げるほどルアーを引ける距離が長くなりますし、釣り人から遠く離れるほどサツキマスの警戒心も薄くなってきます。使う釣り人の技量にもよりますが、7フィート(約213センチメートル)から8フィート(約244センチメートル)くらいを目安にすると良いでしょう。
③汎用性があればなおよし
サツキマス釣りでは回遊する個体を狙って場所を転々と移動する場合もあれば、群れが回遊してくるのを待って同じ場所で粘ることもあります。その際にロッドが何本もあっては窮屈です。特定のルアー専用のロッドでもできないことはないですが、1本である程度の種類のルアーをカバーできるロッドのほうがより便利です。
サツキマス釣りのタックル2.リール
①スピニングリールがメイン
リールを選ぶ際にポイントとなるのは、使うラインがどのくらいの太さなのかということです。サツキマス釣りでは主に6lbから8lbのラインが100メートルほど巻ければよいので、スピニングリールですと2500番から3000番がちょうど良いサイズとなります。使うラインが細い場合は、スピニングリールのドラグ性能の良し悪しも重要です。ご自身の使われるタックルバランスを考慮して選んでください。
②ベイトリールでも釣れる
前述したとおりサツキマス釣りでは遠投がとても重要であるため、使われるリールはスピニングリールが主でした。ところが最近ではベイトリールの性能が飛躍的に上がり、サツキマス釣りでも使われるようになってきました。ブラックバス釣りをしている人はベイトリールを使うことも多いと思いますので、手持ちのスピニングリールでちょうどよいものがなければ使ってみるのも良いでしょう。
サツキマス釣りのタックル3.ライン
①使いやすいナイロンラインがおすすめ
ナイロンラインは一般的にとても汎用性の高いラインで、しなやか柔らかく初心者でも扱いやすいのが特徴です。値段も一般的に他のラインよりも安価で、しなやかさがあるため遠投にも向いています。反面劣化しやすいのもナイロンラインの特徴ですので、ある程度の頻度で巻きかえを行う必要があります。
②遠投に適したPEライン
PEラインは極細のポリエチレン素材の原糸を複数本束ねて編み込んで作られるラインです。ナイロンラインやフロロラインに比べて強度が高いため、その分細いラインを使うことができます。そのため、遠投するには有利なラインといえるでしょう。反面ライン自体の重量が軽く腰がないので、慣れないうちはライントラブルに注意が必要です。
③フロロカーボンは不向き?
フロロカーボンラインは海釣りのハリスやブラックバス釣りでよく使われるものです。ナイロンラインに比べて張りがあり伸びが少ないぶん、スピニングリールで使用する際にはトラブルが多くなります。6lb以上のラインは主にベイトリールで使用するものと考えてよいでしょう。
サツキマス釣りのタックル4.ルアーの種類
① ミノー
ミノーとは、小魚に似せて作った細身のルアーです。頭にあるリップというアゴのような部分で水を受け、それによって水中でさまざまな動きを見せます。水に浮くフローティングタイプは初心者には使いやすいタイプです。止めておけば浮いてくるので水底の障害物に引っかかることも少ないですのでおすすめです。一方、水に沈むシンキングタイプは水中の深めの層を引いてくることが得意なタイプです。リールを巻かずに止めておけば沈みますので、任意の層を引けますが、底まで沈めてしまうと障害物に引っかかる可能性が高くなります。ルアーの重さは15グラムくらいまでが良いでしょう。
①-1 ミノーのアクション…ただ巻き
ただ巻きとは、文字通り”ただ”巻くだけです。巻くといっても、早く巻く場合もあれば遅く場合もあり、その日のサツキマスの反応が良いのはどちらなのか見極めることも重要です。状況にもよりますが、早く巻く場合は1秒間にリールのハンドル3回、遅く巻く場合は1回くらいが目安となります。
①-2 ミノーのアクション…ストップアンドゴー
ただ巻きの途中でリールを巻くのを止め、ルアーの動きをストップさせます。ある程度ストップさせたらまたリールを巻きます。この、ただ巻き→ストップ→ただ巻き、の一連の流れをストップアンドゴーと呼びます。ミノーを止めることでサツキマスにルアーに食いつかせる間を与えます。止める間は1秒ほどのときもあれば5秒ほどのときもあります。流れの強いポイントではあまり長い時間止めておくとルアーが流されてしまいますので、少なめが良いでしょう。
①-3 ミノーのアクション…トゥイッチ
水中のミノーを竿先で軽く弾くようにしてアクションさせることをトゥイッチと呼びます。ただ巻きとは違い、ミノーにイレギュラーな動きをさせてサツキマスに食いつかせる方法です。巻きながらトゥイッチする方法と止めている状態でトゥイッチする方法があります。
② スプーン
スプーンとは文字通り、食器のスプーンから柄の部分をとった形をしたルアーです。水中に落としてしまったスプーンにトラウトが食いついてきたことがルアーの起源であるという説もあります。スプーンは金属ですので水中では沈みますが、その際に木の葉が舞うようなひらひらした動きをします。スプーンの重さもミノーと同様に15グラムくらいまでがサツキマスでよく使われています。
②-1 スプーンのアクション…ただ巻き
スプーンのアクションの9割はただ巻きです。ミノーと同じただ巻くだけですが、ミノーと違う点は、あまり早く巻きすぎるとスプーンが回転してしまい、うまくアクションしないところです。スプーンの種類によって違いはありますが、1秒間にリールのハンドル1回から2回くらいを目安に、自分の目で見てきれいな動きをするベストな速度を見つけてみましょう。
②-2 スプーンのアクション…リフトアンドフォール
スプーンが沈むときのアクションを利用する方法です。一旦底まで沈めたスプーンを、ロッドを上方向に煽って底から浮かせ、また底まで沈めます。スプーンが沈んでいくときのひらひらアクションでサツキマスに食いつかせます。サツキマスが底の方にいるときには試してみたいアクションです。
③ バイブレーション
バイプレーションとは、ミノーからリップと厚みをなくした平べったい形をしたルアーです。非常に小刻みに震えるアクションからバイブレーションと呼ばれています。空気抵抗が少ないので遠投にも向いています。反面、根掛かりもしやすいので障害物の多いポイントには向いていません。バイブレーションの重さも15グラムくらいまでが良いです。重すぎるとバイブレーションが底を擦ってしまい、根掛かりの原因になります。
③-1 バイブレーションのアクション…ただ巻き
ミノーやスプーンに比べて速い速度で巻くことができるのがバイブレーションの特徴です。沈む速度も早いので、少しルアーを沈めてから巻き始めると水深のあるポイントでも効果的に攻めることができます。
③-2 バイブレーションのアクション…リフトアンドフォール
スプーンのリフトアンドフォールとルアーの軌道は同じですが、ルアーを煽るときには小刻みなアクションをし、底に沈める際にはアクションはほとんどせず、ストンと落ちていきます。このアクションのギャップによってサツキマスに口を使わせます。スプーンと同様、サツキマスが底の方にいるときに有効ですが、スプーンよりもさらに深い層を狙うことができます。
サツキマス釣りのタックル5.ルアーのカラー選択
① サツキマスの餌に似せたもの
サツキマスは主に小魚を餌としますので、それに似せたカラーが多く存在します。中には工芸品としては芸術の域に達しているものもあり、うろこや模様までそっくりに作られています。これらは主にナチュラル系と呼ばれ、水質がきれいなときに多く使われます。
② 餌とは似ても似つかないカラーの必要性
釣具屋さんにはいろいろがカラーのルアーが存在しますが、中には小魚には似ても似つかないカラーのものがあります。黄色系であったりピンク系など、おおよそサツキマスの餌になるとは思えないカラーです。これらのカラーはアピール系と呼ばれ、水質が濁っていたり、朝夕の光量の少ない時間帯によく使われます。
③ カラーが多すぎてどれを選べばわからない方へ
いろいろなカラーが存在するということは、それだけそのカラーが必要な状況があるということです。こう考えるとどのカラーを選択したらよいか難しいと思われるでしょうが、決してそんな事はありません。考え方を変えれば、どのカラーであっても釣れる可能性は必ずある、ということです。まずは自分の好きなカラー、釣れそうと思えるカラーを使ってみましょう。基準としては、前述したナチュラル系とアピール系でそれぞれ1色づつ選んでみることをおすすめします。
サツキマスの釣り方のコツ
サツキマス釣りは有名ポイントを攻めよう
釣り方やルアー選択も重要ですが、最初に考える必要があることは、サツキマスがどこにいるのかです。有名ポイントであれば、そこはサツキマスが毎年遡上してくる河川ですし、その河川の中でもサツキマスが餌を捕食しやすい場所である可能性が高いわけです。
サツキマスは群れで遡上する
有名ポイントであればその分釣り人も多くなります。しかしサツキマスは群れで遡上しますから、近くの釣り人がサツキマスを釣り上げれば自分にもチャンスがあるわけです。サツキマスの群れを探し当てるには自分以外の釣り人の動向がとても参考になります。
楽しいサツキマス釣行のために
食べても美味しい
サツキマスは他のマス科の魚と同様、美味しくいただくことができます。塩焼きやムニエル、新鮮なものはお刺身で食されています。
どんな釣りでも絶対的に重要なこと
釣りは水辺に立っておこなうものです。陸からの釣りではライフジャケットを着用は義務付けられてはいませんが、身を守るためにぜひ着用しましょう。また、針先は非常に鋭く磨かれています。自分に刺さらないよいうにすることはもちろん、キャスティング時には周りに人がいないか十分注意しましょう。
ルール、マナーを守ろう
河川での釣りにはルールがあります。シーズン以外は禁漁であったり、シーズン中でも遊漁券が必要なところも多いです。それ以外にも立ち入り禁止や釣り禁止の場所もあるので、事前に下調べをしておく必要があります。また、シーズンが限られているので、釣り人が集中しやすい釣りでもあります。先行者がいる場合は一声かけてから邪魔にならない範囲でポイントに入らせてもらうなど、お互いに気持ちよく釣りができるようにしましょう。
一生の記憶に残るサツキマス
サツキマス釣りは、シーズンと場所が限られています。個体数も多くはないので釣り物の中では難しい部類に入ります。それでも一匹との出会いを求めて毎年多くの釣り人がシーズンを心待ちにしています。一生の記憶に残る出会いを求めて、サツキマス釣りに出かけてみてはいかがでしょうか。